しばらく掃除していないエアコンの吹き出し口には、黒い点々のカビが広がっていることがあります。カビが生えた場所を通ってきた風を浴びていると考えると、あまり気持ちのよいものではありません。
エアコンに生えたカビをそのままにしておくとどうなるのか、どうやって掃除すればよいのか解説します。
エアコンにカビが生える3つの原因
カビが繁殖するのに必要な条件は、「温度」「湿度」「養分(汚れ)」の3つです。エアコン内部はこの3つの条件が簡単にそろうので、住宅の中でもカビが生えやすい環境なのです。
【温度】室温やエアコン内部の温度がカビにとっても最適
カビが最も活発に活動するのは気温が20~30℃のときです。これは人間が快適に過ごせる気温とおおむね重なっています。
夏は冷房で26~28℃、冬は暖房で20~22℃くらいにエアコンの温度を設定するケースが多いですが、これはカビにとっても過ごしやすい環境です。
【湿度】エアコン内部は結露が発生して湿度が上がりやすい
カビは湿度が高い環境で繁殖しやすく、特に湿度80%以上になると活発になります。
エアコンを冷房や除湿モードで運転すると、内部の熱交換器で結露が発生し、湿度が高くなります。長時間にわたって冷房や除湿運転を行う夏場は、特にエアコンにカビが生えやすい季節です。
【養分】カビのエサになるホコリや汚れが溜まりやすい
カビはホコリやゴミ、垢などの汚れを養分にして繁殖します。エアコンは運転時に部屋の空気を取り込みますが、部屋の空気中には、ホコリや油汚れ、人間の皮脂など、カビの養分になる汚れがたくさん含まれています。
エアコン外側からカビが見えたら内部はカビだらけ
エアコンのカビは基本的に内部のパーツから発生します。吹き出し口に黒い点々のカビが見えた場合、すでにエアコンの内部はカビだらけになっている可能性が高いです。
特にカビが生えやすいのは、熱交換器(フィン)、ドレンパン、送風ファンです。自分で掃除できる代表的なパーツであるフィルターには、通常あまりカビは生えません。
パーツ | カビの生え方 | 自分で掃除 |
---|---|---|
熱交換器(フィン) | 結露の発生源。ホコリが付着しやすくカビも生えやすい。 | × |
ドレンパン | 結露水の受け皿。濡れている時間が長くカビが生えやすい。 | × |
送風ファン | 熱交換器やドレンパンからカビが広がる。 | × |
吹き出し口 ルーバー |
内部の部品で発生したカビが広がる。 | ○ |
これらのパーツは掃除するのに分解や高圧洗浄が必要で、自分で掃除するのは難しいです。カビが生えてしまったら、吹き出し口以外の箇所はプロにエアコンクリーニングを頼むのがおすすめです。
お掃除機能付きエアコンにもカビ対策は必要
お掃除機能付きのエアコンは、自動でフィルターのホコリを掃除してくれます。しかし最もカビが生えやすいのは、ドレンパンや送風ファンなど自動で掃除ができない内部の部品です。
近年ほとんどのエアコンには内部クリーン機能もついていますが、こちらもあくまで水気を乾燥させてカビが生えにくい環境をつくるだけで、生えてしまったカビを掃除する力はありません。
エアコンのカビを放置するとどうなる?
エアコンに生えたカビはそのまま放置してよいのか、気になっている方もいるでしょう。特に現時点で臭いや咳などのトラブルに悩まされていないと、急いで対処する必要性は感じられないかもしれません。
しかしカビが生えたままエアコンを使い続けると、以下のようにさまざまなデメリットがあります。
カビを含む空気を吸うことで健康に悪影響が出る
エアコンにカビが生えた状態で運転すると、エアコンの風に乗ってカビの胞子が部屋中に広がります。
1回カビが生えたエアコンを使っただけですぐに病気になるわけではありませんが、その空気を吸い込むことで咳やくしゃみなどのアレルギー反応を引き起こすことがあります。
放置していると、悪化してぜんそくや肺炎などの呼吸器の疾患に発展するリスクもあるのです。特に子どもやお年寄り、アレルギー体質の方は影響を受けやすいので注意しなければなりません。
エアコン内部のカビによる健康への悪影響については、以下の記事でも詳しく解説しています。
エアコンの風からカビの嫌な臭いがしてくる
エアコン内部でカビや雑菌が繁殖すると、エアコンの風から「酸っぱい臭い」や「生乾きのような臭い」がしてくることがあります。カビが成長したり、雑菌がエサとなる汚れを分解したりするときに嫌な臭いを発するのです。
一度臭いがしてくると、発生源を掃除するまでは基本的に消えません。エアコンを使うたびに嫌な臭いを感じることになり、不快感が続きます。
運転効率が下がり電気代が高くなる
エアコン内部にカビが溜まって汚れていると、空気の循環や熱交換の効率が下がります。この状態だと、室温が設定温度に達するのに時間がかかるので、エアコンがフルパワーで長時間運転することになってしまいます。
エアコンの効きが悪く部屋がなかなか快適な温度にならないだけでなく、電力消費量が増えて電気代が高くなってしまうでしょう。
エアコンのカビ取りにおすすめの道具
エアコンの吹き出し口のカビを拭き掃除するときは、以下の道具のいずれかを用意しましょう。
- 市販の吹き出し口掃除用グッズ
- 家にあるもので自作するお掃除棒
- 雑巾やウェットティッシュ
雑巾やウェットティッシュを使っても構いませんが、細長い形状の道具なら奥のほうについた汚れまで届きます。
市販の掃除グッズは、吹き出し口奥のカーブにフィットするようにモップが曲がるつくりになっているなど、さまざまな掃除しやすい工夫がされています。以下でおすすめのアイテムをいくつか紹介します。
エアコンのカビ取りにおすすめな市販グッズ
エアコンのカビ汚れを掃除するときは、吹き出し口の奥まで届く細長いモップを使うと便利です。吹き出し口の掃除用に販売されているおすすめ製品を紹介します。
ワイパー本体に防カビ効果のある付属シートを取り付けて拭きます。シートは使い捨てなので、毎回洗う手間がなく手軽に掃除できるでしょう。ただし長年こびりついた頑固な汚れは落としきれなかったという口コミも見られました。本体もシートも薄めのつくりで、強く拭くと折れてしまう可能性があるので、軽く拭き取れる初期のカビ汚れにおすすめです。
【使用NG】カビキラーやアルコールは使わない
エアコンについたカビを掃除するときに、カビキラー(塩素系漂白剤)やアルコール成分が含まれたスプレーを使用してはいけません。
これらに含まれる成分が内部の金属部品や電子部品に付着すると、故障の原因になります。掃除した直後は異常が見られなくても、徐々に腐食が進んで配管の劣化、さらには冷媒ガス漏れにつながることもあります。
住宅のカビ取りや除菌によく使われるアイテムですが、エアコンには使わないようにしましょう。
自分でできるエアコンのカビ取り掃除方法
カビが生えやすいパーツのうち、自分で掃除できるのは、吹き出し口やルーバーです。それよりも奥のパーツはできればプロに依頼しましょう。
フィルター自体にカビが生えることは少ないですが、フィルターに溜まったホコリや汚れは内部のカビ増殖につながるので、あわせて掃除しましょう。
もしフィルターにもカビが生えている場合は、中性洗剤を使って洗います。
吹き出し口のカビの掃除手順(約10分)
エアコンの吹き出し口に生えたカビは、以下の手順で掃除しましょう。
- エアコンの電源プラグを抜く
- 手で風向ルーバーを開く
- 濡らしたモップや雑巾で吹き出し口とルーバーを拭く
- 吹き出し口の水分を乾いた布で拭き取る
- 送風モードで吹き出し口の水分を蒸発させる
1.エアコンの電源プラグを抜く
掃除を始める前に、コンセントからエアコンの電源プラグを抜きましょう。エアコンに通電している状態で掃除すると、作業中に誤って電源を入れてしまってケガをしたり、感電したりするおそれがあります。
2.手で風向ルーバーを開く
上下方向の風向きを調節する横長のルーバーを手で開きます。力を込めると破損するおそれがあるので、優しく開けましょう。特に製造から年数が経過しているエアコンはプラスチックが劣化しているので注意が必要です。
メーカーによっては、ルーバーを取り外せるエアコンの機種もあります(三菱「霧ヶ峰」など)。
3.濡らしたモップや雑巾で吹き出し口とルーバーを拭く
こびりついた黒カビは乾拭きしてもなかなか取れません。濡らして固く絞った雑巾やモップで水拭きをします。それでもカビが取れない場合、中性洗剤を含ませて拭いてみましょう。
使う道具は雑巾やウェットティッシュでも良いですが、吹き出し口の掃除用に販売されているモップを使うと、奥のほうやルーバーの細かい部分のカビまでカンタンに届きます。
4.吹き出し口の水分を乾いた布で拭き取る
中性洗剤を使った場合は、成分が残らないように一度水拭きをしてから念入りに拭き取りましょう。残った洗剤成分はこびりついてカビのエサになり、汚れが悪化してしまいます。
フィルターの掃除手順(約25分)
フィルターは以下の手順で掃除しましょう。
- エアコンのコンセントプラグを抜く
- フィルターを取り外す(ホコリがひどい場合は外す前に掃除機をかける)
- フィルター表面のホコリを掃除機で吸い取る
- フィルターの裏面からシャワーを当てて、水圧で汚れを落とす
- 細かいホコリやカビを歯ブラシでやさしくこする
- タオルで水気を取り、半日ほど自然乾燥させる
①エアコンのコンセントプラグを抜く
感電防止のためまずコンセントプラグを抜いてから作業を開始します。
②フィルターを取り外す(ホコリがひどい場合は外す前に掃除機をかける)
本体カバーを開けて、フィルターを取り外します。
ホコリがたくさんついている場合、そのまま取り外すとホコリが飛び散ってしまいます。先に軽く掃除機をかけてから取り外しましょう。
③フィルター表面のホコリを掃除機で吸い取る
フィルターを取り外したら、汚れてもいい場所(ベランダや庭がおすすめ)に移動し、表面に掃除機を当ててホコリを吸い取ります。
この際に使用年数が長いエアコンだと、劣化しているためフィルターのプラスチックが折れてしまう恐れがあります。慎重に掃除機をかけてください。
④フィルターの裏面からシャワーを当てて、水圧で汚れを落とす
次に風呂場や洗面台に移動して、シャワーで水洗いをします。熱湯をかけるとフィルター変形の原因になるので気を付けましょう。
フィルターの裏側からシャワーを当てて、表面に残っているホコリを押し出すイメージです。
⑤細かいホコリやカビを歯ブラシでやさしくこする
シャワーだけで落とし切れなかったホコリやカビは、中性洗剤を含ませた歯ブラシなどで優しくこすり洗いをしましょう。力が強すぎると網目が崩れてしまうので、優しくかき出します。
⑤タオルで水気を取り、半日ほど自然乾燥させる
フィルターをタオルでやさしく挟み、水気を拭き取ってから半日ほど自然乾燥させましょう。
早く乾かそうとして直射日光にさらしたり近距離でドライヤーを当てたりすると、変形するおそれがあります。
また生乾きの状態で戻すと、エアコン内部の湿度が上がりカビの好む環境になってしまいます。完全に乾いたことを確認してから元の位置に取り付けましょう。
エアコンのカビ取り掃除でやってはいけないこと
エアコンのカビ取りをするときはいくつかやってはいけないことがあります。以下の3点を守りましょう。
電装部品に水や洗剤、アルコールをかけない
多くのエアコンの内部には、右側に精密機器が設置されています。そこに水や洗剤、アルコールをかけると、本体の故障や火災の発生に繋がってしまいます。
自分で水や洗剤を使って掃除するのはフィルターや吹き出し口までにして、内部部品にかからないようにしましょう。
自分でエアコン部品を分解しない
熱交換器(フィン)やドレンパン、送風ファンを掃除したいからといって、自分でエアコンを分解するのはおすすめしません。
エアコン構造の知識や取り外しの技術がないと、掃除ができるまで部品を分解するのは難しいです。
特に古いエアコンは、プラスチックがもろくなり割れやすくなっています。分解に慣れているエアコンクリーニング業者でも、10年以上経過したエアコンは破損時の保証不可としているところが多いです。
素人が分解しようとすると、余計壊れるリスクが高いのでやめておきましょう。
市販の洗浄スプレーはなるべく使わない
エアコン内部の洗浄用として売られているエアコン掃除スプレーがありますが、スプレーを使って自力で内部を掃除するのはおすすめしません。
洗浄成分が残ってしまって腐食やカビ悪化の原因になったり、電装部品にかかってしまって故障の原因になったりするリスクが高いからです。エアコンメーカー各社もスプレーを使った自力での内部洗浄は避けるように注意喚起しています。
エアコンクリーニングの予約がかなり先までとれないときなど、どうしても使いたい場合は、リスクを把握し、取扱説明書をしっかり読んだ上で使用しましょう。
エアコンのカビを予防する習慣
エアコンのカビを取り除いてきれいにしたら、なるべくカビが生えないように予防することが大切です。以下の3つを習慣づけましょう。
1.冷房・除湿運転のあとに内部クリーン運転をする
エアコンで冷房や除湿運転をしたあとは、内部が結露で濡れた状態になっています。内部クリーン運転で内部を乾燥させ、カビが好む水分が残らないようにしましょう。
毎回手動で動かすのは大変なので、冷房運転のあとに自動で内部クリーンが起動するように設定しておくと便利です。
メーカーによって機能の呼び方や詳細は異なりますが(日立「カビバスター」「ヒートアタック」など)、現在発売されているエアコンの多くにはカビ抑制を目的としたお手入れ機能がついているので、取扱説明書などを確認してみましょう。
自宅のエアコンに内部クリーンに相当する機能がついていない場合は、1時間ほど送風モードで運転をしましょう。
2.エアコンを使う時期はフィルターを掃除する
エアコンを稼働させると、部屋の空気を取り込むときにろ過したホコリや汚れがフィルターにどんどん溜まっていきます。フィルターの汚れはカビのエサになるので、エアコンを使う時期は、2週間に1回を目安にフィルターを掃除すると良いでしょう。
普段はフィルターを取り外して掃除機でホコリを吸い取るだけでも十分です。シーズンの初めと終わりには、ホコリ取りに加えて中性洗剤でこすり洗いをして水で流すのがおすすめです。
3.1日に1回は部屋を換気する
部屋の空気が汚れていると、エアコンがその空気を吸い込み、内部にカビが増える原因となります。部屋を1日に1回は換気することで、ホコリやハウスダストを外に出し、空気をきれいに保つことができます。
特にエアコンを使う時期は窓を閉め切ってしまいがちですが、こまめに窓を開けて新鮮な空気を取り入れましょう。
雨の日などで窓を開けづらい場合は、換気扇を使うと効果的です。換気をすることで、部屋の湿度も下がり、カビの発生を防ぐことができます。
エアコンのカビ予防に効果的なアイテム4選
エアコンのカビを予防するには、前述のように日頃から内部クリーン運転や部屋の換気、フィルター掃除の習慣をつけることが大切です。
日頃のお手入れにカビ予防グッズをプラスして、予防効果を高めましょう。ここでは4つの製品を紹介します。
Panasonic わさび防カビパック CZ-SW5A
Panasonicから販売されている、わさびの成分でカビの発生を防ぐ製品です。エアコンのフィルターに取り付けて使用します。
カビ予防はもちろん、エアコンのイヤなにおいもカットしてくれるのが魅力。取り付けてしまえばわさびのにおいは気になりません。
Panasonic製にエアコンに合うように作られていますが、他社製のエアコンでも取り付けることができるようです。
コジット パワーバイオ エアコンのカビきれい
エアコン上部の吸気口に貼りつけて使用し、3か月を目安に交換します。
お風呂やシンク下、窓など、家中のさまざまな場所に合わせたシリーズ製品も販売しているので、エアコン以外もまとめてカビ対策をしたい方におすすめです。
東洋アルミ ウイルス対策ホコリとりフィルター
エアコンの吸気口に貼るフィルターです。カビのエサとなるホコリや花粉の侵入を防ぎ、エアコン内部をきれいに保ってくれます。
冷房・暖房・除湿・送風などどのモードでも使用可能です。
エアコンのほかに空気清浄機にも張ることができます。
スターフィルター カビブロックバイオ酵素フィルター
溶菌酵素という成分が配合されたフィルターで、キャッチしたホコリにまぎれたカビや細菌の働きを99%おさえてくれるという製品です。
エアコンの吸気口や本体カバー下のフィルターに貼りつけて使います。
静電気の力で細かいチリやホコリも逃さず、ホコリのキャッチとカビの無力化の両面に優れています。
自分で掃除できない内部のカビはプロにクリーニングを依頼しよう
エアコンクリーニング業者は、自分では掃除しにくい内部の部品を高圧洗浄機と専用洗剤できれいにしてくれます。素人が市販のスプレーなどを使って掃除すると洗浄成分が内部に残ってしまいがちですが、技術力のある業者ならもれなく洗い流してくれるでしょう。
少し料金が高くなりますが、エアコンから部品を取り外してパーツごとに洗浄する「完全分解洗浄」をしてくれる事業者もいます。
エアコンクリーニングの料金相場
エアコンクリーニングをプロに依頼した場合の料金の目安は以下の通りです。
メニュー | 料金相場 |
家庭用エアコン1台 | 8,000~12,000円 |
お掃除機能付きエアコン1台 | 13,000~18,000円 |
天井埋め込み型エアコン1台 | 15,000~18,000円 |
消臭抗菌コート(オプション) | 1,000~2,000円 |
室外機洗浄(オプション) | 3,000~4,000円 |
上記はルーバー、フロントパネル、フィルターだけを分解する場合です。完全分解洗浄の場合は1万円ほど料金が高くなります。
オプションで消臭抗菌コートを提供している業者も多いです。カビがつきにくくなり、きれいな状態が長持ちします。
複数台の依頼なら安くなる場合も
2台以上でエアコンクリーニングを依頼すると、2台目以降で1,000円前後の割引がつく業者が多いです。複数台での依頼を考えている方は、2台以上で割引があるか見積もり時にチェックしてみましょう。
エアコンクリーニング業者の探し方
エアコンクリーニングをはじめて依頼する方は、料金相場がわからないので、複数業者から見積もりをとって比較してから依頼しましょう。
業者を比較するときに見ておきたいポイントは以下の4点です。
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「自分で何社も電話やメールをするのは大変」という方は一括見積もりサービスを利用するのがおすすめ。
ミツモアは簡単な質問に答えるだけで、無料で最大5件の見積もりを受け取ることができます。エアコンクリーニング業者をお探しの際はぜひお試しください。