エアコンは室内の空気を取り込んで冷やしたり温めたりし、外に吐き出すことで室温を調整する仕組みです。
エアコンが室内の空気を取り込むとき、フィルターは空気中に含まれるホコリなどをろ過してきれいにする役割を果たしています。
フィルターが十分に役割を果たすためには定期的な掃除が必要です。この記事では、フィルターの掃除を怠った場合のリスクや簡単な掃除方法を解説します。
エアコンフィルターを掃除しないとどうなる?
エアコンを運転させるたびに、部屋の空気中に含まれていたホコリや、花粉・ペットの毛・ダニの死骸などのハウスダストがろ過されてフィルターに溜まっていきます。
つまり掃除せずに放置していると、フィルターに汚れがびっしりと付着した状態になります。
この状態になると、エアコンが空気を取り込みにくくなって運転効率が下がったり、フィルターに溜まった汚れを養分としてエアコン内部でカビや雑菌が繁殖したりといった問題が起こってしまうのです。
具体的には、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
エアコンの風から臭いが発生する
フィルターの汚れをエサにしてエアコン内部でカビや雑菌が繁殖すると、エアコンから出てくる風から嫌な臭いが発生することがあります。
「酸っぱい臭い」「生乾きのような臭い」「土っぽい臭い」がしたら、内部でカビや雑菌が増加している合図です。
エアコンを付けるたびに嫌な臭いがするようでは、快適に生活できませんよね。
まずはフィルターについた汚れを掃除してみましょう。臭いが消えない場合は、フィルターよりも内部にカビや雑菌が繁殖している可能性が高いです。
この状態になるとフィルターだけを掃除しても手遅れなので、プロのエアコンクリーニング業者にエアコン内部の分解洗浄でカビや雑菌を取り除いてもらう必要があります。
その後は定期的なフィルター掃除で再発を防ぎましょう。
アレルギーなど健康への影響が出る可能性がある
エアコンフィルターや内部にカビやハウスダストが付着していると、これらの汚れがエアコンの風と一緒に室内に送り出されてしまいます。
カビの胞子やハウスダストが含まれた空気を吸い込むと、くしゃみ、鼻水、せきなどのアレルギー反応があらわれることがあります。
カビを含む空気にさらされ続けることで、たとえばぜんそくやアレルギー性鼻炎、皮膚炎のようなアレルギー疾患に慢性的に悩まされるリスクも。
エアコン内部についたカビやハウスダストだけでなく、部屋の中のホコリやハウスダストをエアコンの風が巻き上げている可能性もあります。
アレルギー症状が出たときは、エアコン内部・フィルターに加えて、部屋の掃除を行うことをおすすめします。
部屋が冷えにくく/暖まりにくくなる
フィルターにホコリが溜まって目詰まりすると、エアコンが一定時間に吸い込む空気の量が少なくなり、エアコンの効きが悪くなってしまいます。
一度にエアコン内で温めたり冷やしたりする空気量が減るので、室温がエアコン設定温度に達するまでに時間がかかるのです。
フィルターにホコリが溜まっているだけであれば、取り除くだけでエアコンの効きが改善する可能性があります。
電気代が高くなる
フィルターの目詰まりによってエアコンの運転効率が下がると、同じ冷暖房効果を得るために多くの電力を消費しなければなりません。
さらに部屋がなかなか冷えない・暖まらないことによって、設定温度を必要以上に低く・高く設定してしまうケースもあります。
その結果、エアコンに大きな運転負荷がかかって電力消費が激しくなり、電気代が高くなってしまうのです。
エアコンメーカーのダイキン工業による調査では、約3年分のホコリが溜まったフィルターを掃除することで、ムダな電力の消費を48.9%も削減できるという結果が出ています。
エアコンフィルター掃除の適切な頻度とタイミング
エアコンのフィルターは、エアコンをよく使うシーズンの前と後に洗剤を使ったしっかり掃除を行い、エアコンを使っている期間はこまめにホコリ取りをしましょう。
時期 | 掃除方法 | 所要時間 |
---|---|---|
使い始め(5月頃) 使い終わり(10月頃) |
中性洗剤+水洗いでしっかり掃除 | 20分+乾かす時間 |
使用中(6~9月) | 掃除機でササっとホコリ取り | 5分 |
フィルターをしばらく掃除していない方は、まず「しっかり掃除」をしましょう。
なおエアコンフィルターの汚れやすさは使い方や設置環境によっても大きく異なります。
- エアコンをつけっぱなしにしている
- 冷房運転の設定温度が低い
- キッチンの近くにエアコンがある
- 室内でペットを飼っている
このような状況にあるエアコンは、通常よりも汚れやすいといえます。可能であれば、エアコンの使用中は1週間に1回ほどフィルターのホコリ掃除をすると良いでしょう。
エアコン使い始め・使い終わりのフィルター掃除:中性洗剤+水洗い
エアコンを使うシーズンの始めと終わりや、しばらく掃除していなくてホコリの量が多いとき、カビや油汚れがついているときは、中性洗剤を使って水洗いをすることをおすすめします。
共通で用意しておきたい基本の道具は以下の通りです。
- 古い歯ブラシ(付着した細かいホコリをかき出す)
- 汚れても良いタオル(水洗い後に水分を吸い取る)
- 新聞紙や大判のタオル(乾かすときに下に敷く)
- マスク(ホコリの吸い込み防止)
掃除機がない場合は、ティッシュなどで直接大きなホコリを取るか、最初から歯ブラシでホコリをかき出せば大丈夫です。ただし周囲にホコリが舞いやすくなるので注意しましょう。
ホコリを吸い込んでしまうのを防ぐため、掃除中はマスクをつけることをおすすめします。
1)エアコンの電源プラグを抜いて本体カバーを開ける
万が一の事故が起きないよう、フィルター掃除をする前にエアコン本体のスイッチを切って、電源プラグを抜きましょう。
エアコンに電気が通った状態で電気系統が濡れると感電のリスクがあるからです。
その後、本体カバー(フロントパネル)を優しく上に向かって開けます。
見ても開け方が分からない場合は取扱説明書やメーカーのサイトを確認しましょう。
2)フィルターを外す前に軽く掃除機をかける
フィルターをエアコンから取り外す前に、できれば表面のホコリを掃除機で軽く吸い取っておきましょう。
長年掃除していなかった場合は、相当量のホコリが付着していることがあります。取り外すときの振動でホコリが舞って周辺の床に落ちてしまう可能性があるので、この時点で吸い取っておくとスムーズです。
ただしハンディ掃除機がない場合や、ホースの長さが足りない場合は、エアコンの位置まで掃除機を持ち上げるのが難しいこともあるでしょう。
その場合は無理せず、なるべくホコリを落とさないようにそっとフィルターを外します。あらかじめ床に新聞紙などを敷いておくと、後で掃除するのがラクです。
3)フィルターを取り外して表側に掃除機をかける
大まかにホコリを取った後は、エアコン本体からフィルターを取り外します。
フィルター下部のツマミを両手で持ち上げれば、カンタンに取り外すことができます。やり方が分からない場合は取扱説明書やメーカーの公式サイトを確認しましょう。
フィルターを玄関やベランダなど汚れてもいい場所に移動したら、フィルターの表側(ホコリが付着している面)に掃除機をかけ、ホコリを直接吸い取ります。
エアコンが空気を吸い込むとき、フィルターの表側から裏側に向かって空気が流れるので、ホコリも表側にだけ付着します。裏側に掃除機を当てて吸い込むと、逆にホコリがフィルターに吸着して目詰まりしてしまうので注意しなければなりません。
作業をするときは、フィルターの枠を折ったり、網目をつぶしたりしないように優しく扱いましょう。
特に古いエアコンはフィルターも劣化しており、軽く力を加えるだけでパキッと折れてしまう可能性もあります。
4)フィルターの裏側からシャワーで水をかける
浴室や洗面台などの水場に移動して、今度はフィルターの裏側からシャワーを当て、掃除機で取り切れなかった細かいホコリを落とします。
掃除機を当てるときとは逆に、裏側からシャワーでホコリを押し出すようなイメージです。
また、水洗いするときは40℃以上のお湯をかけてはいけません。高温のお湯をかけると、フィルターの網やプラスチック部分が変形する可能性があります。
5)スポンジに中性洗剤をつけてこすり洗いをする
スポンジやブラシに直接中性洗剤と水を含ませ、やさしくこすってください。
フィルターは薄くて繊細なので、力を込めると枠が割れてしまったり、変形してしまったりするので気を付けましょう。
中性洗剤は普段使っているキッチンの食器用洗剤や浴室用洗剤で大丈夫です。酸性やアルカリ性の洗剤もあるので、必ずpH表記を確認してください。
こすり洗いが面倒なときはスプレータイプの洗剤・クリーナーもおすすめ
スポンジに中性洗剤をつけてこすり洗いをするのが面倒な方は、泡で出てくるスプレータイプの中性洗剤を吹きかけるのもおすすめです。泡の力で、水洗いでは取り切れない網目に詰まった汚れや花粉、カビを浮かせて落としてくれます。
多くの家庭にある製品だと、浴室・キッチン用のマジックリンや、ウタマロクリーナーなどが当てはまります。
上記の製品はもともと網戸用のクリーナーですが、公式でエアコンフィルターにも使えると推奨されています。ただし、汚れがひどいと泡を洗い流すだけでは取り切れないことがあります。この場合はスポンジやブラシで軽くこすって落としましょう。
※エアコン内部洗浄スプレーとは異なります。内部洗浄用のスプレーは故障やカビ汚れ悪化のリスクがあるのでおすすめできません。
6)陰干しで乾燥させてから取り付ける
水洗いが終わったら、エアコンフィルターの水気をタオルや雑巾でよく拭き取って、風通しのよい場所で陰干しします。乾燥時間の目安は3~6時間ほどです。
直射日光に当てたり、ドライヤーで乾かしたりすると、フィルターが変形する可能性があります。窓のそばで吊り下げたり、新聞紙の上に置いたりして、自然乾燥させましょう。
濡れたままのフィルターを取り付けると、せっかく掃除したのにカビや雑菌にとって最適な環境を作ってしまいます。またエアコンの電気系統に水が垂れると、ショートや故障などの原因になることもあるので注意してください。
フィルターが乾ききったら、もとのように取り付けなおしましょう。取り付けたあとは、湿気を取るために30分~1時間ほど送風運転しておくとより安心です。
▼フィルター以外の部分も含めたエアコン全体の掃除については以下の記事もご覧ください。
エアコンを使う時期のフィルター掃除:掃除機でホコリ取り
夏や冬にエアコンを使っている間は、フィルターについたホコリを定期的に掃除機で吸い取りましょう。
フィルターを水洗いすると、乾燥させるのに数時間から半日かかってしまい、その間エアコンが使えません。エアコンを常につけるような暑い時期に、使えない時間が発生するのは大変です。
水洗いが面倒で掃除頻度が下がってしまうよりは、2週間に1回くらいのペースで軽くでもよいのでこまめにホコリを吸い取り、溜めないようにすることが大切です。
フィルターのホコリを取るときは以下の手順で掃除しましょう。
- エアコンのコンセントから電源プラグを抜く
- 本体カバーを開けてフィルターを取り外す
- フィルターの表側に掃除機をかける
- フィルターを元に戻して本体カバーを閉める
フィルターを取り外すだけであっても、エアコンの電源プラグは忘れず抜いてから作業しましょう。
コードレスのハンディ掃除機があれば、エアコン本体にフィルターを付けたまま、表面のホコリを吸い取ってしまっても構いません。掃除機にブラシ付きのヘッドが付属していると、ホコリを取り除きやすくて便利です。
油汚れや臭いがひどいフィルターの掃除:アルカリ性洗剤・重曹
エアコンが料理の油やタバコのヤニを吸い込んでいる場合、フィルターにベタベタした油性汚れがついたり、酸化して臭いがしたりすることがあります。
油汚れは酸性の性質を持っているので、弱アルカリ性の性質を持つ洗剤や重曹を使うと汚れが落ちやすいです。
キッチンや浴室用の洗剤は中性が多いですが、油汚れに特化した製品はアルカリ性のものもあります。各製品の用法に従って使用しましょう。
泡の状態で出てくるスプレータイプの洗剤であれば、吹きかけて洗い流すだけで簡単に掃除できます。
重曹水はキッチン周りや換気扇など他の場所の掃除にも使えるので、大掃除のときなどにおすすめです。
- 基本の掃除方法で水洗いまで行う
- ゴミ袋や湯船にぬるま湯約2Lを入れ、重曹を大さじ8溶かして重曹水を作る
- フィルターを入れて1時間ほどつけ置きする
- 歯ブラシで汚れが残っている部分を優しくこする
- シャワーでしっかり洗い流す
- タオルで水気を取り、完全に乾燥させる
水でも構いませんが、水温が高いほうが重曹がよく溶けます。ぬるま湯に対して重曹の量が多すぎると、溶け切れずに残った重曹が目詰まりの原因になってしまうので注意しましょう。
エアコンフィルターの洗浄・乾燥に使ってはいけない道具
エアコンフィルターを洗うとき、以下の道具は使わないようにしましょう。フィルターのキズや変形につながってしまうおそれがあります。
洗うときに使ってはいけないもの
- 硬いたわし
- シンナー
- 磨き粉
- 漂白剤
- 40度以上の熱湯
また、乾かすときは必ず日陰に干し、以下を利用した乾かし方はしないように気を付けましょう。直射日光や極端な高温を当てることは、フィルターの劣化につながります。
乾かすときに使ってはいけないもの
- 直射日光
- ドライヤー
- ストーブ
お掃除機能付きエアコンのフィルターも掃除が必要?
自動お掃除機能付きエアコンは、フィルターの表面に溜まるホコリを自動で掃除して取り除いてくれます。そのため、自分で定期的にフィルターを取り外して掃除する必要はありません。
集められたホコリは、ダストボックスに溜まっていくタイプと自動で屋外に排出されるタイプがあります。ダストボックスに溜まるタイプの場合は、ダストボックスを取り外して中のホコリを捨てる必要があります。
また、自動お掃除機能で取り除けるのはゴミやホコリくらいで、油汚れやカビは落としきれません。自分でフィルターを外して掃除するか、外せない場合はプロにクリーニングを依頼しましょう。
エアコンフィルターに汚れがつきにくくする方法
エアコンフィルターの掃除は、思ったよりも頻繁にしなければならないと感じた方も多いかもしれません。
そもそもフィルターを汚れにくくするにはどうすればよいのか、解説します。
定期的に部屋の換気・掃除をする
エアコンは室内の空気を中に取り込んで吐き出すので、「吸い込む空気がきれいなら、フィルターにも汚れが付きにくい」といえるでしょう。
部屋の空気が入れ替わらないと、ホコリやハウスダストがどんどん積み重なっていきます。定期的に窓を開けて換気を行いましょう。
ただし風が強い日や、花粉が飛来する時期には無理して換気をする必要はありません。部屋にホコリや花粉が入ってきて、逆にアレルギー症状に悩まされてしまう可能性があります。
また、床や家財にもホコリが積もっていくので、こまめに掃除機やフローリングワイパーをかけたり、ハンディモップで掃除をしたりすることもフィルターの汚れ予防につながります。
冷房・除湿運転の後に内部を乾燥させる
エアコンで冷房や除湿を使うと、温度差でエアコン内部に結露が発生します。結露を放置するとカビや雑菌が繁殖する原因になるので、「内部クリーン」や「送風」モードで内部を乾燥させましょう。
内部クリーン運転は電源を切ったあとに自動で運転する方法と、手動で運転する方法の2つがあります。自動で作動するように設定しておけば、毎回忘れずに内部クリーン運転ができるのでおすすめです。
内部クリーン機能がついていないエアコンの場合は、送風運転を1時間ほど行うことで同じ効果が得られます。
エアコンフィルター以外の掃除はクリーニング業者に依頼を
ここまで述べてきた通り、エアコンのフィルターは2週間に1回ほど自分で掃除をすることできれいに保てます。
しかし、こまめにフィルターを掃除して適切にエアコンを使っていたとしても、エアコン内部に少しずつ汚れは蓄積していきます。
自分でフィルターよりも奥を分解するのは故障のリスクがあるので、プロのエアコンクリーニング業者に依頼するのがおすすめです。
エアコンのフィルター以外にも汚れが蓄積する
自分で行うエアコンのお手入れの基本はフィルターの掃除ですが、エアコンにはフィルター以外にも汚れが溜まる箇所があります。
- 熱交換器(フィン)
- 送風ファン
- ドレンパン
- 室外機
- ドレンホース
室外機やドレンホースはある程度の範囲を自分でお手入れすることができます。
熱交換器、送風ファン、ドレンパンなどエアコン内部のパーツは、自分で掃除するのが非常に難しい場所です。
きれいにするには分解や高圧洗浄が必要ですが、専門知識がなく作業に慣れていない人が行うと故障や不具合のリスクがあります。
フィルター・本体カバー・室外機周辺の掃除以外は、エアコンクリーニング業者に依頼しましょう。
内部洗浄用のエアコン掃除スプレーなども販売されていますが、エアコンメーカー各社はそういった製品を推奨しておらず、専門の事業者に依頼するように案内しています。
エアコンクリーニング業者に依頼する場合の費用相場
エアコンクリーニングを依頼するときは、以下のような費用相場です。もちろんフィルター掃除も一緒にしてもらうことができます。
壁掛けタイプお掃除機能なし | 7,000円~12,000円 |
壁掛けタイプお掃除機能あり | 16,000円~20,000円 |
天井埋込タイプ | 15,000円~18,000円 |
消臭抗菌コートオプション | 1,000円〜2,000円 |
室外機洗浄オプション | 3,000円~4,000円 |
一見高そうに見えますが、ファン用やフィン用のクリーナーをそろえるとおよそ6,000円くらいかかるので、自分で掃除する場合と比べてそこまで高いわけではありません。
60~90分程度の短時間で、エアコンを分解洗浄してもらうことができます。内部に溜まった汚れやカビを除去して、快適に過ごしましょう。
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