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【個人事業主の節税対策】経費・保険・共済・税金で節税できる裏ワザを紹介!

最終更新日: 2022年12月16日

個人事業主は自分で税金の確定申告や納付手続きをしなければなりませんが「なるべく納付額を減らしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

そんなときは経費計上の工夫、各種保険・共済への加入、所得控除の活用で少しでも多くの節税が可能です。

本記事では個人事業主が今すぐ実践できる節税の裏技やテクニック、節税対策のうえでのポイントを解説します。

最大限の節税対策で損することなく確定申告を進めていきましょう。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

 

個人事業主の節税ポイントは経費と控除

節税のポイントは経費と控除
節税は「経費」と「控除」がポイント!

個人事業主の節税ポイントは、経費と控除の適切な活用です。個人事業主が支払う税金の多くを占めるのが所得税ですが、所得税は次のような計算方法で算出します。

所得=売上-経費

所得税額=(所得 -所得控除)× 税率

所得から経費と所得控除を差し引いた数値に税率を乗じて所得税の金額を決めます。つまり、売上額が同じでも経費と控除が大きくなれば所得税の額も小さくなるのです。

個人事業主が節税するには、所得税を小さくするために経費・控除を最大限に適用することが大切です。

【経費計上】節税できる5つのワザ

個人事業主の所得税の節税には、可能な限りの経費計上が必要不可欠です。経費計上における節税対策には次の5つがあります

  • 漏れなく経費計上する
  • 家事按分で家賃や光熱費を経費にする
  • 少額減価償却資産の特例を活用する
  • 短期前払費用の特例を活用する
  • 事業税や固定資産税等の税金を経費計上する

個人事業主が経費計上できる費用の中には、なかなか気づきにくいもの、わかりにくいものも多くあります。

必要な情報を押さえ裏技・テクニックを最大限活用することで、大きな節税効果が期待できます。

漏れなく経費計上する

漏れなく経費計上する
経費を証明する領収書は大切に保管しよう!

もっとも大切なのは、事業のために発生した支出を漏れなく経費計上することです。

売上から経費を引いたものが所得になり、その所得額で納税額を計算するので、経費を最大限計上することが節税に大きくつながります。

【経費計上できるものの例】

旅費交通費 事業で使用した電車・バス・タクシーなどの費用
消耗品費 事業で使う消耗品や備品

※会計上、単価10万円未満もしくは使用できる期間が1年未満のものは消耗品に含まれる

接待交際費 取引先への贈答品購入費や、接待のための飲食代
会議費 打ち合わせ時の飲食代

作業をカフェなどで行った場合、一人でもカフェ代を経費として計上可能※食事代は対象外

広告宣伝費 Web広告出稿料やチラシなどの費用
通信費 宅配や郵便料金など
外注費 外部へ業務委託・依頼した際の報酬
給料賃金 従業員に支払う給与・賃金など
福利厚生費 従業員の生活や労働意欲を向上させるための支出

従業員の残業・休日出勤時の飲食代や健康診断費用など

事業に要した支出は漏れなく経費として計上しましょう。個人事業主の節税におけるメリットが非常に大きいです。

経費にできないもの

個人事業主が経費として計上できるものは事業に要した支出のみです。

本来経費にできないものを計上してしまうと税務署から指摘を受け、追加の納税を指示される恐れがあります。

【経費にできないものの例】

  • 事業と関係のない飲食費:事業と関係ない相手との飲食費は計上できません。またカフェで作業をした場合でも、食事をした場合の費用は対象外です
  • 出張ついでの観光に要した費用:出張のための交通費は経費計上できますが、ついでの観光は事業と関係ないため計上不可能です
  • 事業主本人の健康診断費用:従業員の分は福利厚生費として計上できますが、事業主本人の分は計上できません。なお事業主本人には福利厚生費の適用が不可能です

事業との関連性をきちんと説明できない費用については経費計上しないのが安全です。

関連記事:個人事業主の経費はいくらまで?上下や割合を解説!|ミツモア

家事按分で家賃や光熱費を経費にする

家事按分

自宅兼事務所にしている個人事業主は、家賃や光熱費、さらには自宅で使用している通信費などを生活費と事業費に分けて計上が可能です。これを家事按分と言います。

支出の中で生活費と事業費が混在している場合に、合理的な基準により事業で使用する分のみを経費にすることができます。

按分比率の目安は以下の通りです。

  • 家賃:事業として使用している床面積の割合
  • 光熱費、通信費:使用時間の割合

【家賃の場合】

家賃90,000円で60㎡の賃貸マンションのうち20㎡の部屋で仕事をしているとします。その際は以下の計算式から経費を求められます。

90,000円×1/3=30,000円

家賃のうち経費として計上できるのは30,000円です。

なお、家賃だけでなく礼金や仲介手数料、共益費も家事按分して経費計上が可能ですが、敷金は経費計上できません。

また、持ち家で仕事をしている場合、住宅ローンの利息は経費として計上できますが、元本は経費にならないため注意が必要です。

【光熱費の場合】

自宅で仕事をしているのが1日に8時間で平日のみ稼働し、1週間168時間のうち40時間仕事をしているとします

1か月の光熱費が20,000円である場合、以下の計算式で経費を算出します。

按分比率:40時間÷168時間=24%

20,000円×24%=4,800円

上の計算から、光熱費で経費にできるのは4,800円となるのです。

通信費についても同様です。インターネットの使用時間を仕事とプライベートで分け、使用時間のうち仕事の時間分の経費にできます。

関連記事:個人事業主が家賃を経費にする方法~家事按分の仕訳を理解しよう|ミツモア

少額減価償却資産の特例を活用する

事業に関して購入した資産の取得価額が10万円以上である場合、本来は全額を経費として計上できません。

そこで、一定の条件を満たせば購入した年に全額経費として計上できる制度が少額減価償却資産の特例です。現時点で、この制度は2022年(令和4年)3月31日の取得分までに定められています。

通常10万円以上の資産は長期間利用できる「固定資産」とみなされ、減価償却して数年にわたり経費計上していきます。しかし中小企業や個人事業主は、条件を満たせば、購入した年に全額費用として計上が可能です。

少額減価償却資産の特例の適用を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 青色申告である
  • 単価が30万円未満:30万円以上の場合は資産計上が必要
  • 1年間の上限額は300万円まで:300万円を超える部分は資産計上が必要
  • 令和4年3月31日までに購入した分:特例が適用できるのは平成18年4月1日〜令和4年3月31日の取得分(延長の有無は現時点で未定)

短期前払費用の特例を活用する

個人事業主が継続的な将来の役務の提供をまとめて支払う場合は、翌期の経費を前払いする「前払費用」として仕訳を行います。

前払費用は本来、当期の経費に計上できないですが、次の要件を満たす場合には「短期前払費用」として当期の経費に計上できる特例があります。

  • 一括払いを記載した契約書があること
  • 継続的な役務提供であること
  • 実際に支払いをしていること
  • 支払った日から1年以内の役務提供を受けること
  • 同じ支払い方法を継続すること
  • 売上に対応する費用以外であること

ただし、一度でも短期前払費用として年払いにすると毎年継続して同じ計上方法を取らなければなりません。

翌年以降もまた一括で支払わなければならないことは忘れないようにしましょう。

事業税や固定資産税等の税金を経費計上する【租税公課】

税金 経費計上

個人事業主が支払う税金の中で、事業に関するものは「租税公課」として経費計上が可能です。

経費となる税金を漏れなく計上できれば、所得が小さくなるため節税につながります。

一方、事業でなく個人に対してかかる税金は経費として計上できません。正しく経費計上をするためには、経費にできる税金・できない税金の確認が必要です。

経費計上できる

(勘定科目:租税効果)

  • 事業税
  • 個人事業税
  • 事業所税
  • 印紙税
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 自動車税
  • 利子税
経費計上できない

(現金や事業用口座から納付する場合、勘定科目は「事業主貸」とする)

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 贈与税
  • 加算税
  • 延滞税
  • 罰金や交通反則金:業務中に発生した場合も経費の対象外

なお自宅兼事務所にかかる固定資産税や、プライベートでも使用する車にかかる自動車税などは、按分して事業分のみを経費計上します。

【税金の控除】節税できる2つのワザ

税金でできる正しい節税の裏ワザ
税金でできる正しい節税の裏ワザ

個人事業主の節税につながるワザは、経費に関するものだけではありません。控除と呼ばれる仕組みを上手く活用すれば、大幅な節税ができる可能性があります。

青色申告で確定申告を行う

確定申告の方法は、青色申告と白色申告の2種類です。このうち青色申告で申請すると、10万円・55万円・65万円いずれかの特別控除が適用されて節税につながります。

青色申告を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 事業に係る取引を複式簿記で記録している(単式簿記の場合、受けられる控除は10万円)
  • 確定申告書と併せて貸借対照表・損益計算書を提出する(損益計算書のみの場合、受けられる控除は10万円)
  • 事前に届出をしている

また最大額である65万円の控除を受けるには、確定申告書をe-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出する必要があります。

一方、白色申告は事前申請は不要ですが単式簿記による帳簿付けも義務付けられています。

しかし白色申告の特別控除が無いので、少しの手間をかけてでも青色申告を行うメリットは大きいでしょう。

青色申告をするには開業届の提出が必須

個人事業主が青色申告をするには事前に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必須です。

開業届」は事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出が必要で、「所得税の青色申告承認申請書」は確定申告する年の3月15日が提出期限です。

ただし、1月16日以降に新規開業して初年度から青色申告で確定申告をする場合は開業日から2ヶ月が期限となります。

届出書・申請書の用意および提出の流れは以下のとおりです。

  1. 事業の開始から1ヶ月以内に開業届を所轄税務署に提出
  2. 確定申告する年の3月15日または開業から2ヶ月以内に所得税の青色申告承認申請書を所轄税務署に提出

なお、2つの書類を同時に提出することもできます。初年度から青色申告を利用するのであれば、開業届と所得税の青色申告承認申請書を一緒に提出するのが効率的です。

参考:

[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

所得控除を受ける

所得控除とは、年間所得金額から一定額を差し引くことができる制度です。複数受けられる控除もあるので、最大限活用して節税しましょう。

【15種類の所得控除】

控除額
社会保険料控除 健康保険、年金保険、雇用保険などの保険料として支払った金額
生命保険料控除 民間の生命保険や医療保険、個人年金などで支払った金額
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済や個人型年金加入者掛金(iDeCo)などで支払った金額
地震保険料控除 地震保険や損害保険などの保険料として支払った金額
寄附金控除 国や地方公共団体などへの寄付やふるさと納税を支払った場合に受けられる
障害者控除 本人または同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる控除
寡婦控除 その年の12月31日時点でひとり親に該当せず、以下いずれかの条件を満たす場合に受けられる控除

  • 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がおり、合計所得金額が500万円以下
  • 夫と死別した後婚姻をしていないまたは夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
ひとり親控除 以下すべての条件を満たす場合に受けられる控除

  • 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
  • 生計を一にする子がいる
  • 合計所得金額が500万円以下である
寡夫控除 以下すべての条件を満たす場合に受けられる控除

  • 妻と死別もしくは離婚した後婚姻をしていない、または妻の生死が明らかでない一定の人
  • 生計を一にする子がいる
  • 合計所得金額が500万円以下である
勤労学生控除 所得税法における勤労学生に該当すれば一律27万円の控除
扶養控除 所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる控除
配偶者控除(配偶者特別控除) 所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる控除。配偶者の年齢や所得によって控除額が変わる
基礎控除 すべての納税者が一律で受けられる控除。ただし年収が一定以上の場合は対象外
医療費控除 年間の医療費支払い額が10万円以上または対象医薬品を12,000円以上購入した場合に受けられる控除
雑損控除 災害や盗難などによる損害を受けた場合に受けられる控除

節税効果を発揮するためには、自分が条件を満たす所得控除を漏れなく活用することが大切です。

関連記事:個人事業主が押さえておくべき所得控除、節税対策を一斉解説!|ミツモア

ふるさと納税

ふるさと納税とは応援したい自治体に寄附をする制度で、寄附金控除とは少し異なります。

寄附により希望する特産品を受け取り、寄附金のうち2,000円を超える部分については所得税の還付や住民税の控除を受けられます。

控除額は寄付金から2,000円を差し引いた額です。ただし総所得金額の40%を超えることはできません。

故郷の自治体などを支援し、特産品も受け取れるうえに節税もできる魅力的な制度です。

関連記事:個人事業主もふるさと納税を利用できる 控除限度額や確定申告の方法を解説|ミツモア

【保険・共済への加入】節税できる4つのワザ

個人事業主の節税は経費や各種控除だけでなく、次のような保険や共済へ加入する方法もあります。

  • 小規模企業共済
  • 経営セーフティ共済
  • iDeCo(イデコ)
  • 国民年金前納割引制度

生命保険や介護医療保険などに加入している場合、支払い金額に応じて所得から控除ができます。このほか、個人年金に加入している場合にも節税の裏技があるため、忘れずに計上しましょう。

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などが積立を行う退職金制度です。

月々の掛金は1,000~70,000円から500円単位で自由に設定可能で、加入後も増額や減額ができます。

確定申告ではその全額を課税所得から控除でき、高い節税効果と将来の備えができる魅力的な制度です。

最高額の掛け金である70,000円の場合は1年で84万円の控除を適用できます。

小規模企業共済の支払いは経費計上ではなく「小規模企業共済等掛金控除」の所得控除に該当します。

事業とは関係のない支払いであるため帳簿づけをする必要はありません。 事業用の口座から振替をした場合は「事業主貸」の勘定科目で仕訳します。

参考:小規模企業共済|中小機構
関連記事:事業主貸、事業主借とは?個人事業主の生活費の仕訳方法を解説|ミツモア

経営セーフティ共済に加入する

経営セーフティ共済とは、取引先事業者が倒産した場合に中小企業や個人事業主が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐ制度です。

掛金は5,000円~20万円の間から選択可能で、すべてを経費に計上できます。

取引先の事業者が倒産した際は、無担保・無保証人で「回収困難となった売掛金債権等の額」もしくは掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れが可能です。

また、解約手当金が受け取れるメリットもあります。

自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば全額が戻るのも魅力です。

経営セーフティ共済の掛金は経費として計上できるため、仕訳の際は「保険料」の勘定科目を用いて処理します。もし資産計上する場合は「保険積立金」などの勘定科目を用いて処理しましょう。

iDeCo(イデコ)に加入する

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金で、確定拠出年金法に基づく私的年金の制度です。掛金とその運用益の合計額を給付として受け取れる制度で、掛金全額を所得控除にすることが可能です。

20歳以上60歳未満の国民年金・厚生年金加入者であれば個人事業主に限らず誰でも加入できます。

(※厚生年金加入者の場合は60未満なら誰でも加入可能)

金融商品を運用した場合、通常は運用益に課税されますがiDeCoに加入すれば非課税になるのもポイント。

年金として給付を受ける場合は「公的年金等控除」の対象になり、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」として所得から差し引くことができます。

また、iDeCoは全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象になるため、帳簿につける場合は小規模企業共済と同じく「事業主貸」の勘定科目で処理します。

国民年金前納割引制度

国民年金はその年に支払った保険料が社会保険料控除の対象ですが、1年あるいは2年分を前納すると割引になる制度が「国民年金前納割引制度」です。

現金で1年度分を前納すると年間3,520円2年分で14,590円の割引になります。口座振替の場合は1年度分前納で年間4,160円、2年分で15,840円です。

さらに「4月~翌々年3月」までの2年間を前納した場合、前納した保険料全額を所得控除にするか対象となる年度ごとで控除を選ぶことができます。

例えば、例年よりも所得が多い年に2年前納して全額を所得控除すれば、税額を減らして割引と節税の両方ができます。

国民年金はプライベートな支出のため、帳簿づけの必要はありません。事業用口座から振替納付した場合は「事業主貸」の勘定科目で仕訳しましょう。

個人事業主から法人化で節税対策

法人化で節税対策

個人事業主は経費と控除によって節税できますが、法人化することでさらに高い節税効果が得られます。

所得税から法人税になって税率が下がったり、個人事業主では経費にできなかった支出も経費に計上できたりなど、さまざまな節税につながります。

所得税率と法人税率を比較して切り替えよう

個人事業主に課せられる所得税と法人に課せられる法人税で、税率が異なります。

所得税は所得が大きくなるほど税率が高くなり、5%~45%と幅広くあります。

一方で法人税は、年所得額が800万円以下の中小企業であれば15%、800万円を超えれば23.2%です。

【所得税率】

所得税率 早見表
引用:国税庁「No.2260 所得税の税率」

【法人税率

所得額 税率(法人税)
年800万円以下の部分 15%
800万円超の部分 23.2%

※資本金1億円以下の法人の場合

例えば個人事業主で所得が1,000万円の場合、所得税率は33%ですが法人税率は23.2%です。

このように所得額で税率を比較した際、法人にした方が税率が低くなるのであれば節税対策のためにも法人を検討してみるとよいでしょう。

法人化の4つのメリット

税率以外にも法人のみが利用できる制度や仕組みが存在します。法人化のメリットとして、大きく以下の4つが挙げられます。

給与所得控除を受けられる

社長(事業主本人)が会社から受け取る報酬は会社の経費になり、受け取った報酬は給与所得控除の対象となります。

経費枠が拡大する

法人化によって出張手当や慶弔費など、経費にできる支出が増えます。

個人事業主でも出張の際の交通費や宿泊費は経費になりますが、法人ではさらに出張手当の支給が可能です。

中小企業税制上の優遇措置がある

法人のなかでも中小企業は赤字全額を最大10年繰り越せたり、交際費等を損金算入できたりなどの優遇措置が適用されます。

退職金、生命保険等が経費になる

法人は退職金制度を設ければ、退職金の積立を会社の経費として計上できます。

また、保険については契約者・受取人を法人にすれば保険料が経費にできる可能性もあります。

個人事業主は車でも節税できる

個人事業主は車も経費にできる

個人事業主は車でも節税が可能です。事業に使う車であれば車購入に要した支出やリース費用を経費計上することができます。

事業で使う自動車は経費計上が可能

車購入の費用が経費として認められるのは、以下いずれかに該当する場合です。

  • 車を事業のみで利用している場合
  • 車を事業・プライベートで兼用している場合

ただし車は購入した年に全額経費として計上できるわけではありません。一旦は資産として計上し、耐用年数に従って毎年少しずつ経費計上します。

新車の普通自動車であれば耐用年数は6年軽自動車であれば4年と定定められています。

車をローンで購入した場合は経費計上の仕方が異なります。その場合、車の本体費用は経費にすることができず、経費として落とせるのは支払利息のみです。

借入金の元本部分は経費にならないのでお気をつけください。

リースなら全額を経費にできる

個人事業主本人が車を所有せず、リース契約で車を取得した場合は全額経費にすることができます。

また、リースの場合は車の所有者はリース業者であるため、固定資産への計上や減価償却計算も必要ありません。車に関する手間が少ない点も大きなメリットです。

個人事業主の節税対策で気を付けるべき2つのポイント

個人事業主の節税対策では以下の2つのポイントに気を付けましょう。

  • 売上1,000万円を超える場合は消費税が課される可能性
  • 無理な節税は脱税になるおそれがある

節税のメリットや効果のみに意識を向けてしまうと、思わぬ落とし穴に遭遇してしまうこともあるので注意が必要です。

売上1,000万円を超える場合は消費税が課される可能性

売上が1,000万円を超える個人事業主は、消費税の支払い義務が生じる可能性があります。以下いずれかに該当する場合、消費税の課税対象事業者です。

  • 前々事業年度の課税売上が1,000万円を超える場合
  • 前事業年度の上半期の売上が1,000万円を超える、もしくは給料総額が1,000万円を超える場合

その年の課税売上高ではなく、過年度分の課税売上高が対象の点に注意しましょう。

関連記事:【個人事業主の消費税】いつから払う?売上1,000万以下は免税!計算と納税手続きを詳しく解説|ミツモア

無理な節税は脱税になるおそれがある

個人事業主の節税として認められるのは、あくまでも制度や仕組みを正しく活用した適切な範囲です。

節税しようとするあまり経費にならない支出まで経費計上してしまうと、脱税行為になってしまいます。

事業に要した経費と証明できないと脱税とみなされてしまい、加算税や延滞税などのペナルティが課されます。

経費計上の際は「何の目的でいくら使ったか」を証明できる書類を保管するなど、経費を説明できる証拠を残しておくことが重要です。

個人事業主が支払う4種類の税金【所得税・消費税・住民税・個人事業税】

個人事業主が支払う主な税金は「所得税」「消費税」「住民税」「個人事業主税」の4種類が挙げられます。

納付時期 備考
所得税 3月15日まで 所得額によって7段階の税率がある
消費税 3月末まで 前々年の課税売上高が1,000万円未満であれば免除
住民税 一括払いの場合:6月

分割の場合:6月、8月、10月、翌年1月

税額は「均等割」と「所得割」の2階建てで計算する
個人事業税 8月、11月 業種によって3%~5%と税率が変化する。所得額が290万円以下の場合は免除

納付時期に遅れないよう、税金には正しく対応しましょう。

所得税

所得税とは、1年間で稼いだ所得に応じて課税される税金です。所得は総収入(売上)から、必要経費や各種控除額を差し引いた額を指します。

所得税の税率は所得金額によって異なります。具体的な税率は以下のとおりです。

所得税率 早見表
<所得税率>

申告する年度の翌年2月16日~3月15日までに確定申告・納税が必要です。期限に間に合うよう、余裕を持って書類準備や申告書の作成などを進めましょう。

消費税

前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える個人事業主は、消費税の支払いが必要です。

個人事業主の消費税納税には一般課税と簡易課税という2種類の計算方法があり、どちらかを選択します。

簡易課税は仕入率を用いるため計算が容易ですが、人によって納税が得になる、逆に損となるケースがあります。また簡易課税は事前の申請が必要です。

消費税の確定申告および納税は申告年度の翌年3月31日が期日です。原則として一括で納付しますが、一括納付が難しい場合は税務署に申請すれば分割で納付できます。

住民税

所得税の確定申告をすれば、住民税の税額も決定されます。そのため個人事業主の場合、住民税の申告は原則として不要です。

住民税は「均等割」と「所得割」の2階建てで、納税は自治体から送付される納付書を用いて行います。

均等割は非課税者以外のすべての人にかかってくる税額で、居住している自治体によって金額は異なります。およそ5,000円ほどです。詳しくは各自治体のホームページをご確認ください。

一方、所得割は1年間の所得に応じて課される税金です。基本的には所得の10%が所得割の金額となります。

関連記事:個人事業主の住民税はどうやって納める?計算・節税方法も紹介!|ミツモア

個人事業税

個人事業税は都道府県に支払う地方税です。消費税と同様、課税対象になる個人事業主と、それ以外の非課税の個人事業主が存在します。

個人事業税の税率は、業種によって3~5%と幅がありますが、一部の業種を除いてほとんどが5%です。

また一部の業種は、個人事業税の対象外です。さらに、個人事業税の課税対象となる業種でも年間の所得が290万円以下の場合は免除されます。

個人事業税は所得税の確定申告の内容に応じて自動で計算されるため、都道府県から送付される納付書を用いて納めます。

確定申告と一緒に個人事業税の申告を行い、8月と11月の年2回納付時期があります。

納付書の送付が8月ごろなので、納付書が届いたらすぐに行えるよう準備しておくとよいでしょう。

関連記事:個人事業税とは?いつ納める?業種による税率と計算方法を解説!|ミツモア

監修税理士からのコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

自営業として開業をすると、なんでも経費にしてしまう方がいる一方で、家事按分を知らず事業費として経費計上できるものも経費として計上していない方もいるかと思います。基本的な考え方としては、事業経費となるものには適切にお金を使い、ならないものは節約するように心がけることでお金をしっかりと残していくことができるかと思います。 なお、税金の種類によって、事業費となるものとならないものがあるため、申告の際は正しく理解し、確定申告を期限内に行うようにしましょう。

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この記事の監修税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大院卒業。 上場会社経理部にて一般経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業を果たす。現在は会計監査やIPO実務だけではなく、個人・法人税務からM&Aや事業承継に係る税務業務まで幅広く対応している。