復興特別所得税は2037年(令和19年)12月31日までの所得に対して課せられる、東日本大震災の復興のための税金です。
本記事では復興特別所得税とはどのような税金なのか、その対象者や税率、確定申告や源泉徴収における納付方法などを詳しく解説します。
復興特別所得税はいつまで支払うのか
復興特別所得税は「2013年(平成25年)1月1日から2037年(令和19年)12月31日」までの期間に得られた所得に対して課せられます。この期間内の各年に、1年間の所得をもとに復興特別所得税を計算して納付します。
要するに最長で25年間、東日本大震災の復興のために、納税義務者が等しくその負担を担うということです。
復興特別所得税とはなにか
復興特別所得税が設けられた経緯や納税すべき対象者など、基礎的な知識について解説します。
復興特別所得税は「東日本大震災の復興に充てる税金」
復興特別所得税とは、2011年に起きた東日本大震災の復興に使う財源として創設された新しい税金です。
政府は2011年に「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」を制定しました。納税者から復興特別所得税を徴収し、東日本大震災の復興のために充てています。復興特別所得税の主な使い道は以下のとおりです。
- 被災者の生活再建のための支援
- 住宅再建や社会インフラの整備
- 産業や生業の再生や支援
- 原子力災害からの整備
復興特別所得税の対象者
復興特別所得税の対象者は、所得税を納めるすべての人です。
会社勤務の給与所得者は、所得税といっしょに復興特別所得税も源泉徴収されています。
個人事業主やフリーランスは確定申告の際に、所得税とともに復興特別所得税も申告・納税します。確定申告をする場合、復興特別所得税が課せられる所得の種類は、所得税が課せられる所得と同じです。具体的には次のような所得が対象となります。
- 給与所得
- 退職手当
- 利子等及び配当等
- 公的年金
- 報酬、料金等
- 事業所得
基本的には「働いているすべての人が復興特別所得税の支払い対象者」と考えて問題ありません。
復興特別所得税は免除・還付は条件次第
復興特別所得税は条件次第で還付を受けられる可能性があります。ただし免除は基本的にないと考えたほうがよいでしょう。
ここでは、復興特別所得税の免除・還付について詳しく解説します。
復興特別所得税の免除は基本的になし
復興特別所得税の免除は基本的にありません。
ただし例外として、災害によって家財や住宅に大きな損害を受けた場合は、復興特別所得税の軽減または免税が許可される可能性があります。収入や損害の大きさによって軽減措置は変わります。詳しくは以下の国税庁ホームページをご覧ください。
復興特別所得税の還付は条件次第で受けられる
源泉徴収や予定納税により税金を納めすぎている場合、還付申告により税金を還付してもらえます。還付申告できるのは、対象期間の翌年1月1日から5年間です。確定申告書に受け取りを希望する金融機関口座を記入する欄があるので、忘れずに記入しましょう。
復興特別所得税を払わないとどうなる?
確定申告をする必要があるにもかかわらず申告しない場合、「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課せられます。
もちろん還付金を受けることも、医療費控除などの控除を受けることもできません。さらに「故意の隠匿や不正会計」などの悪質さが認められたときは「重加算税」が課せられることもあります。結果的により多くのお金を支払うことになってしまうので、必ず期限内に申告・納付するようにしましょう。
復興特別所得税以外で節税できそうな項目
個人事業主やフリーランスが節税ができそうなポイントは、復興特別所得税以外にもたくさんあります。以下がその一例です。
- 青色申告特別控除の活用
- 小規模企業共済の活用
- ふるさと納税の活用
- 法人化
- 経費の前払い など
節税を正確に行うためには、それなりの手間と知識を必要とします。「計算が複雑でわからない」「確定申告に時間を使いたくない」とお悩みの方は、確定申告に強い税理士へ相談するのがおすすめです。
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復興特別所得税の税率と計算方法
復興特別所得税の税率・計算方法を紹介します。会社勤務の方は会社のほうで源泉徴収・年末調整してもらえますが、確定申告をする個人事業主などは自分で算出しなければなりません。
確定申告の際にあわてないように、きちんと計算方法を把握しておきましょう。最後にわかりやすく計算例も挙げているので、ぜひ参考にしてください。
復興特別所得税額は所得税額の2.1%
復興特別所得税額は所得税額の2.1%です。
後述する復興特別所得税を求める計算式に「基準所得税」がありますが、基本的に日本に住所がある人は、所得税と基準所得税は同じ意味と捉えてかまいません。
復興特別所得税額の計算式
所得税や復興特別所得税は、次の計算式から算出されます。
- 所得税(基準所得税)=課税総所得金額×税率−控除額
- 復興特別所得税=基準所得税×2.1%
復興特別所得税を求めるには、最初に所得税を算出しなければなりません。所得税を求めるときの税率は課税総所得金額によって次のように5%〜45%の7段階に分けられます。
課税される所得金額(課税総所得金額) | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
参照:国税庁「所得税の税率」
この表から所得税を求めてみましょう。たとえば課税総所得金額が5,000,000円の場合は、所得税は次のように簡単に算出できます。
- 所得税:5,000,000×0.2−427,500=572,500円
基準所得税額とは
基準所得税額とは、「所得税額」から「所得税額から差し引かれる金額(たとえば配当控除など)」を差し引いた税額のことです。ただし、日本国内に住所や居所を有しているかどうかや、有していた期間、また日本国籍かどうかによって、基準所得税額が異なります。詳細は次のとおりです。
区分 | 基準所得税額 | |
居住者 | 非永住者以外の居住者 | 全ての所得に対する所得税額 |
非永住者 | 国内源泉所得以外の所得及び国外源泉所得のうち国内払のもの又は国内に送金されたものに対する所得税額 | |
非居住者 | 国内源泉所得に対する所得税額 |
日本の所得税法上では「居住者」を、国内に住所を有しているか、または現在まで1年以上「居所」を有する人と定義しています。「居住者」以外の個人を「非居住者」として区別しているわけです。基本的には日本に住所がある人は、所得税と基準所得税を同じ意味だと考えれば問題ないでしょう。
また「非永住者」とは居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内で日本に住所または居所を有していた期間が5年以下である個人のことです。
復興特別所得税の計算例
次に復興特別所得税の計算例を2つ見ていきます。上述の表を参考にした計算結果は次のとおりです。
事例1:課税される所得金額が3,000,000円の場合
- 所得税:3,000,000×0.1−97,500=202,500円
- 復興特別所得税:202,500×0.021=4,252.5円
事例2:課税される所得金額が10,000,000円の場合
- 所得税:10,000,000×0.33−1,536,000=1,764,000円
- 復興特別所得税:1,764,000×0.021=37,044円
確定申告での復興特別所得税の書き方
確定申告では、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得額を算出し、その金額を基に所得税や復興特別所得税を割り出し申告・納税します。ここでは確定申告書の書き方について説明しましょう。とくに復興特別所得税は、税率が2.1%で端数が出やすいため注意が必要です。
復興特別所得税の端数処理
所得税や復興特別所得税などの端数処理は次のとおりです。
- 課税所得額(税率を乗じる前)から1,000円未満は切り捨て
- 納税確定額(税率を乗じた後)から100円未満は切り捨て
たとえば課税所得額が3,508,321円である場合、課税所得額は3,508,000円となり、この数値に税率を乗じて所得税や復興特別所得税が算出されます。また算出された納税確定額が654,321円だとすると、100円未満は切り捨てのため、納税額は654,300円です。
納税する場合は端数は切り捨てて算出しますが、還付を受ける場合は1円単位で支払われます。
確定申告書の書き方
復興特別所得税は、確定申告書の「税金の計算」内に記入する欄があります。「復興特別所得税」と「所得税及び復興特別所得税の額」の欄は、黄色にハイライトされてわかりやすくなっています。
算出した「復興特別所得税」と「所得税+復興特別所得税」をそれぞれ㊹と㊺に記入します。
また予定納税をした場合は、確定申告書に納付額を記入しなければ、支払ったことになりません。予定納税の対象者であった人は「㊿予定納税額(第1期分・第2期分)」の欄に、今年納めた予定納税額の合計を記入しましょう。
復興特別所得税の源泉徴収や年末調整のしくみ
各事業所の給与担当者は、給与を支払う度に所得税や復興特別所得税を源泉徴収します。源泉徴収した税額と支払うべき税額を一致させる年末調整は欠かせません。
一方、個人事業主も場合によっては源泉徴収義務者となり、源泉徴収や年末調整が必要です。ここでは、所得税や復興特別所得税にかかわる、源泉徴収と年末調整に焦点をあてて説明しましょう。
復興特別所得税の源泉徴収額の計算方法
源泉徴収は、給与や報酬を支払う側が、支払い前に所得税や法人税などの税金を差し引いて納税をするしくみです。
基本的に源泉徴収税額は差し引く前の金額に税率(10.21%)を乗じて求めます。ただし報酬の支払いを税引き後の手取額で契約をしている場合は、手取金額から逆算して算出した金額です。ちなみにこのような契約を手取契約といいます。
手取契約の源泉徴収税額の計算方法は次のとおりです。手取金額を10万円として計算しています。
ステップ1:源泉徴収税額の元となる支払い金額を求める
手取金額(100,000円)÷(100%−税率10.21%)=111,370円(支払い金額)
ステップ2:源泉徴収税額を算出する
111,370円×10.21=11,370円(源泉徴収税額)
復興特別所得税の年末調整の必要性
所得税や復興特別所得税を源泉徴収した場合、その年の最後に年末調整を行わなければいけません。年末調整によって、源泉徴収で徴収しすぎた金額を支払主に還付します。
年末調整を行わないと、不正確な金額を税として納めてしまうリスクがあります。一人でも従業員を雇っている場合は必ず年末調整を実施しましょう。
所得税及び復興特別所得税の予定納税
ここではまず、所得税及び復興特別所得税の予定納税とはどのような制度なのか、また支払い時期や納付額についても詳しく説明します。
予定納税をするかどうかは個人の選択ではなく、対象者に税務署から予定納税通知書が送られてきます。
予定納税とは
前年分の所得税および復興特別所得税の申告額である予定納税基準額が15万円以上の場合、その一部を事前に納付する制度のことをいいます。税務署から通知書が届いた対象者は、期限内に納付しなければなりません。通知書は所轄の税務署から6月15日までに送付されます。
予定納税の支払い時期
支払い時期は次のとおりです。ただし納付期限の最終日が土日・祝日の場合は翌営業日となります。
- 第1期の支払い時期:7月1日〜7月31日
- 第2期の支払い時期:11月1日〜11月30日
支払い期限に遅れると、延滞税が発生するため注意しましょう。
予定納税の納付額
上述したように、予定納税をするのは予定納税基準額が15万円以上である場合です。ほとんどの人の予定納税基準額は、前年分の申告納税額となるでしょう。ただし、前年の所得に以下のような特定の所得が含まれている場合は、これらの所得を差し引いた額を用いて基準額を算出します。
- 山林所得・退職所得など分離課税の所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
- 平均課税を受けた臨時所得
第1期、第2期の納付額は、それぞれ予定納税基準額の3分の1の金額です。翌年の確定申告の際に算出した金額とズレる場合は、納付済みの金額を差し引いて支払います。反対に納めすぎの場合、還付金を受け取れるため安心です。
復興特別所得税を正しく納付しよう
復興特別所得税は比較的新しい税金のためよく知らない人が多く、確定申告で記入もれの多い箇所です。
しかし知らないからと申告もれがあると、ペナルティが課せられるので注意が必要です。復興特別所得税を所得税とともに正しく計算し、納期限内に納付しましょう。
監修税理士からのコメント
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