確定申告で納付する税金を予め納める「予定納税」をご存じでしょうか?事業が軌道に乗るまでは個人事業主でも無縁の場合がありますが、予定納税の対象になると納税時期が変わるため資金繰りにも影響が出ます。
また予定納税は会社員でも対象になることがあるため、職業に関わらずその仕組みを理解しておくことが大切です。予定納税の制度概要から支払方法、減額申請、還付の受け方まで紹介するので、正しい税務知識を身に付けるためにも是非参考にして下さい。
この記事の監修税理士
しんこう会計事務所 - 愛知県名古屋市中村区
予定納税って?対象者の基準と計算方法が知りたい!
売上が伸びて事業が軌道に乗ることは個人事業主として嬉しい話ですが、ある日突然税務署から予定納税の通知が届いて驚いてしまう人もいるでしょう。
確定申告と同様に予定納税の対象になった場合、納付手続きを忘れずに行わなければいけません。まずは予定納税の目的や対象者、納付時期など制度の概要を理解しておきましょう。
予定納税ってなに?何のためにするの?
個人事業主は毎年2月16日~3月15日の期間に確定申告をして納税するのが原則です。しかし中には納税額が大きい方もいらっしゃいます。そこで一度に高額な税金を支払うことを避けるため、予め分割して納税を行うことで納税者の負担を軽減する制度が導入されています。それが予定納税制度です。
確定申告で一度に支払うか予定納税を利用するかを選択できるわけではなく、後述の減額申請をする場合を除いて予定納税対象者は必ず期日までに納付しなければいけません。
予定納税は年2回
予定納税の対象になると年2回の納税が必要になり、確定申告と合わせた3回に分割して税金を納付することになります。予定納税の納付期間は第1回目が7月1日~7月31日、第2回目が11月1日~11月30日です。後述する予定納税基準額の3分の1ずつをそれぞれの期間に納付します。
予定納税の対象者は誰?
予定納税基準額が15万円以上の人が対象者です。予定納税基準額は前年の所得税額と同じ場合も多く、対象者には6月15日までに金額が記載された通知書が税務署から届きます。
サラリーマンでも予定納税の対象者になるの?
サラリーマンは源泉徴収や年末調整で課税関係の処理が終了するため、確定申告義務が生じないことが多いです。そのため、原則として予定納税の対象にもなりません。
しかしサラリーマンでも給与の年間収入金額が2,000万円を超えている場合や、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円を超えている場合等には確定申告の義務が生じます。
確定申告義務があり、かつ予定納税基準額が15万円以上の場合にはサラリーマンでも予定納税の対象です。税務署から届く通知を確認して忘れずに納付手続きを行いましょう。
予定納税基準額、予定納税額の計算方法
予定納税額は予定納税基準額を基にして決まり、予定納税基準額の計算方法は前年分の所得が以下2点に該当するかどうかで変わってきます。
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上記2点のどちらにも該当する場合には、前年分の所得税額がそのまま予定納税基準額になるので、前年の所得税額の3分の1の金額を7月と11月に納付します。
一方で上記2点のいずれかに該当する場合には、これらの所得や規定の適用がないものとして計算した税額が予定納税基準額です。
例えば事業所得しかなく災害減免法の適用も受けていない個人事業主の場合、確定申告で納付した前年の所得税額が30万円であれば予定納税額は10万円と計算できます。
予定納税の支払方法、どれがあなたに合ってる?
確定申告と同様に予定納税の対象者になれば拒否することはできませんが、予定納税の納付方法に関しては納税者が選択できます。各支払方法の特徴を理解しておくことが大切です。
以下では現金・コンビニ・振替・電子・クレジットカードの5つの支払方法について紹介するので、各方法のメリット・デメリットを踏まえてご自身に最適な納付方法を選ぶようにして下さい。
直接納付
金融機関又は所轄税務署の窓口で納付書を添えて現金で納付する方法です。金融機関や税務署に出向く手間がかかりますが、税務署に行けば税務署職員に直接話を聞くこともできるので、税金に関する悩みを解決できる良い機会になるでしょう。
納付書の書き方がよく分からない方は以下をご覧ください。
コンビニ納付
税務署に依頼してバーコード付きの納付書を発行してもらうか、以下の参考サイトからコンビニ納付用QRコード作成専用画面を開き、必要な情報を入力してQRコードを印刷すればコンビニでの納付が可能です。ただし、コンビニ納付は納税額が30万円以下の場合しか使えません。
直接納付と同様に、バーコード付き納付書の場合はその場で間違いなく納付できる一方、税務署に発行を依頼する手間がかかります。一方でQRコードを使う方法は自宅のPCで出力した用紙をコンビニに持参すれば良いだけなので便利です。
振替納付
事前に届け出た金融機関の口座から自動的に納税額が引き落とされる方法です。以下のサイトからダウンロードできる「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を所轄税務署又は金融機関に提出します。
納付をし忘れる心配がなく、振替の取りやめ申請をしない限り次回以降も引き落とされる点がメリットですが、引落の際には口座残高不足にならないように注意が必要です。
電子納付
電子納付はネットで納税を完了させる方法で、自宅のパソコンから納付手続きをすることが可能です。ダイレクト納付とインターネットバンキングの2種類があり、どちらも事前にe-Taxの利用手続きが必要になります。
ダイレクト納付の場合は事前に「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」を所轄税務署に提出しなければならず、手続き完了まで1ヶ月程かかる点がデメリットです。
既にe-Taxやインターネットバンキングを利用している方には便利な方法ですが、新たに利用開始する方は早めに準備を始める必要があります。
クレジットカードでの納付
予定納税額をクレジットカードで支払えばポイントが付くのでお得になります。しかし、税金をクレジットカード払いにする場合は納付受託者(トヨタファイナンス株式会社)に納付の立替払いを依頼するという形になり決済手数料がかかる点がデメリットです。
手続き自体は国税クレジットカードお支払サイトから簡単にできるので便利ですが、最低でも83円(税込み)の手数料がかかる上に予定納税額が1万円を超えるごとに83円ずつ決済手数料が加算されてしまいます。振替納付のように次回以降も自動的に引き落とされるわけではなく毎回手続きが必要です。
納税準備預金で少しでも節税しよう!
予定納税をはじめとした納税資金の準備のために是非活用したいのが納税準備預金です。納税資金を預けるためのもので、一般的に普通預金よりも利率が高く設定されている上に利息が非課税になります。
払出手続きの際には納税目的であることを確認するため納付書や納税告知書などの書類が必要ですが、手続き自体が複雑なわけではありません。納税資金の準備を確実に行うための口座を用意して定期的に積立を行えば、納税期日の間際になってから慌てたり資金繰りに苦しんだりすることもなくなるでしょう。
予定納税が払えない時は減額申請
予定納税額は前年の所得を基準に決まるので、前年の業績が良かった場合には予定納税額も高くなります。しかしいざ納めようとしたときに、前年に比べて業績が振るわず予定納税額を払えない場合もあるでしょう。
確定申告や予定納税は義務なので拒否したり払い忘れたりすることは許されませんが、正しい手続きを踏めば予定納税額の減額申請を行って承認を受けることができます。ここでは減額申請の方法について確認していきましょう。
予定納税は拒否できない!延滞税に注意!
予定納税の対象になれば期限までに納付することは義務であり拒否できません。予定納税を忘れると納付期限の翌日から延滞税が課されてしまうので、確定申告と同様に予定納税でも支払い忘れをしないように注意が必要です。
減額申請の方法
業績不振や休業等の理由で申告納税見積額が払えないと見込まれる場合には、減額申請が可能です。以下のサイトから減額申請書をダウンロードして、所轄税務署に提出して下さい。
手続きの際には、その年の業績をベースに申告納税見積額を計算して申請書に記載することになります。そのため、添付書類として損益計算書など計算の基礎となる事実が分かる書類を添付しなければいけません。
予定納税は年2回ですが、2回分をまとめて申請する場合には6月30日時点の現況で計算して7月1日~7月15日に申請を行います。11月の予定納税のみ減額申請をする場合は10月31日の現況で計算して11月1日~11月15日に提出して下さい。
払いすぎた税金が戻ってくる!還付の受け方
その年の業績が良くなかったとき、最終的な確定税額が既に納付した予定納税額よりも低くなることがあります。その場合、税金を払い過ぎていることになるので還付金を受け取ることが可能です。
しかし、還付を受けるには一定の手続きが必要であり、還付申告をできる期限も決まっています。予定納税で払い過ぎた金額の還付金を確実に受け取るためにも、以下で解説する手続き方法や申告期限について理解しておきましょう。
還付を受ける方法
確定申告を行って最終的な税額と既に納付した予定納税額を申告して差額の還付を受ける方法と、確定申告とは別に還付のみ申請する還付申告があります。確定申告であれば2月16日~3月15日に、還付申告であれば確定申告期間とは関係なく申請が可能です。
確定申告または還付申告を行えば予定納税で払い過ぎた分の還付を受けられますが、逆に言えば手続きをしなければ還付は受けられません。過去分に遡って手続きすることもできるので忘れずに手続きを行って下さい。
還付申告は5年以内に!
還付申告をする分の年のその翌年1月1日から5年間は還付申告を行うことができます。例えば2014年分については2019年12月31日までに還付申告が可能なので、過去分について還付申告のし忘れがないかどうか確認してみることをおすすめします。
利子がついて戻ってくる!
還付申告を行うと、払い過ぎた金額だけでなく利子に相当する還付加算金も受け取ることができます。利率は1.6%なので普通の銀行預金などよりもお得です。業績が振るわず前年よりも納税額が少なくなりそうな場合でも、予定納税額の減額申請をせずに確定申告で精算したほうが還付加算金を受け取れるメリットがあります。
受け取った還付加算金は雑所得の扱いになるので翌年の課税所得や税金が増えることにはなりますが、1.6%という高い利率は大きな魅力です。
確定申告の際に予定納税は記入するの?
税金関連の知識は複雑なので理解するだけで大変ですが、制度のメリットを活かすためには手続き方法まで含めて正しく理解することが大切です。
予定納税は事前に分割して納税することで確定申告時に一括して納めるよりも負担が減るものの、確定申告の際に気を付けないと税金の二重払いになる可能性もあります。予定納税を行った場合の確定申告書の書き方や添付書類の有無について確認しておきましょう。
確定申告時の書き方
確定申告書にはAとBの2種類がありますが予定納税額がある人は確定申告書Bを使います。
各種所得や所得控除、税額控除の欄を記入して上記赤枠内の「45.申告納税額」に記入した後、「46.予定納税額」に納付済の予定納税額を記入します。そして申告納税額との過不足を計算して金額を記載するのがその下の47又は48の記入欄です。
確定申告書の予定納税に関する欄さえ記入すれば良いので書き方自体は難しくありません。確定申告では1つ1つを間違えず丁寧に申告することが大切なので、予定納税額についても忘れずに記載しましょう。
予定納税の証明書は添付するの?
確定申告書に予定納税額を記載する際に添付書類が必要なのかどうか気になる人もいると思いますが、証明書や領収書の添付は不要です。
確定申告時に予定納税の記入漏れがあったときは
確定申告書に予定納税額の記入漏れがあった場合には還付を受けるために修正が必要になります。確定申告期間内であれば正しい申告書を作り直して税務署に提出すれば問題ありませんが、既に確定申告期間を過ぎている場合は手続き方法が異なるので注意が必要です。
税額を実際より多く申告したときは更生の請求を行うことになり、提出する書類も確定申告書Bではなく国税庁HP「更生の請求手続」からダウンロードできる更生の請求書を使用します。更生の請求ができる期限は5年以内なので、過去の確定申告で記入漏れがあった場合には期限内に手続きを行うようにして下さい。
監修税理士からのコメント
しんこう会計事務所 - 愛知県名古屋市中村区
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確定申告や予定納税は対象者であれば当然の義務なので、期日までに必ず手続きを行わなければいけません。しかし日頃の事業経営で忙しい中、納税手続きまで手が回らないという人もいるはずです。
予定納税額の支払いを忘れて延滞税を課されて事業資金が減っては元も子もないので、手続きミスによる不必要な手間や時間をかけないためにも税理士に相談・依頼することをおすすめします。
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この記事の監修税理士
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