一時所得は確定申告をする必要があるほか、一時所得と雑所得では所得の計算方法が異なるため、しっかりと内容を把握しておきましょう。今回の記事では一時所得と計算方法について詳しく解説します。
一時所得とは
一時所得とは、「利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得」以外の所得で、一時的に発生した所得です。
一時所得は金額によって課税対象になるため、確定申告をする必要があります。
詳しく見ていきましょう。
一時所得とは労働をせずに得た収入
一時所得は「利益を得る目的の行為によって生じた所得以外の所得」であり、労働に対する報酬や資産の譲渡によって得た利益などに当てはまらない「臨時的、または偶発的に発生した所得」です。要するに、「労働をせずに得た収入」と理解してください。
ちなみに宝くじの当選金ですが、「当せん金付証票法」という法律によって非課税とされており、所得税は課せられません。
一時所得に該当するものには、主に次のようなものがあります。
懸賞や福引の賞金品
懸賞サイトや懸賞ハガキでの賞金、福引で当選金が当たった場合は一時所得になります。
競馬や競輪の払戻金
競馬や競輪、競艇やオートレースなど公営競技の払戻金のほか、カジノやパチンコで得た収入も一時所得の対象です。
生命保険の一時金
生命保険の満期保険金を一時金として受け取った場合は一時所得になります。ただ、保険料の負担者と保険金の受取人が同一であることが条件であり、保険料の負担者と保険金の受取人が異なる場合には贈与税の対象となるため注意してください。
また、保険期間が5年以下の一時払養老保険などの満期金、または保険期間が5年を超える一時払養老保険などを5年以内で解約した場合は「金融類似商品」として源泉分離課税となり、源泉徴収のみで課税が終了となります。
法人から贈与された金品
法人から個人へ贈与された金品は一時所得の対象です。たとえば、ポイントサイトで得たポイントを換金したり景品と交換したりのほか、キャッシュバックで得た収入などが法人から贈与された一時所得として扱われます。
遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
現金を拾って届け出て、持ち主が現れなかった際に受け取れる報労金も一時所得となります。また、埋蔵物や埋蔵金を発見した際も同様です。
混同しやすい「雑所得」との違い
一時所得と混同しやすいものに「雑所得」があります。雑所得は所得税法で分類されている所得の中で、下記に挙げる9種類のいずれにも属さない所得のことを指します。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
一時所得が労働をせずに一時的・臨時的に得た所得に対し、雑所得は副業で得た副収入やFX・先物取引などで得た所得などを含みます。
一時所得 | 雑所得 |
臨時的・偶発的に得られた臨時収入的なもの | 他の所得に当てはまらない所得のすべて |
・懸賞の賞金品や福引の当選金
・競馬や競輪の払戻金 ・生命保険の一時金 ・法人から贈与された金品 ・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等 |
・講演料・原稿料・印税など
・友人などへの貸付利子 ・公的年金・個人年金 ・FX・先物取引・仮想通貨 |
簡単にいえば、「雑所得=副業で得た所得」ですが、事業所得として申告できる場合もあります。事業所得の場合は、10万円または65万円の青色申告特別控除を利用できるため税制面で優遇されます。ただし、事業所得と認められるためには、「事業として継続して収入を得ている」などの条件を満たす必要があるので注意が必要です。
懸賞金のかわりにもらった商品券も一時所得となる
所得税法では、金銭以外の物や権利など経済的な利益も収入とみなされます。したがって、懸賞金のかわりに商品券をもらった場合も一時所得の対象です。しかし、すべてが対象となるわけではありません。すべての一時所得の合計額が50万円以下の場合には一時所得となる金額は出ません。
ふるさと納税の返礼品も一時所得となる
任意の自治体に寄付する「ふるさと納税」の返礼品も一時所得になります。地方公共団体は法人として扱われるため、前項でご説明した「法人から贈与された金品」になるわけです。ただ、商品券同様すべてが対象となるわけではなく、ふるさと納税の返礼品を含めた一時所得の合計額が50万を超えた場合には総所得金額が増えることになります。
一時所得の計算方法
一時所得を申告する際には、一時所得と給与所得など他の所得を合算する「総合課税」によって税額を計算します。ですが、一時所得のすべてが課税対象となるわけではなく、特別控除後の所得金額の2分の1に相当する金額だけを他の所得金額と合計して、総所得金額を求めます。また、住民税は計算方法が異なるので詳しくチェックしていきましょう。
一時所得の金額を求める計算式
一時所得の金額は「総収入金額」から「収入を得るために支出した金額」と「特別控除額」を引いた残額に、2分の1を掛けて算出します。
一時所得の金額={総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)}×1/2 |
「収入を得るために支出した金額」とは
上記の計算式で出てきた「収入を得るために支出した金額」とは、いわゆる「経費」として考えてよいでしょう。しかし、「収入を得るために支出した金額」として計上できるのは、「一時所得を得ることになった原因に対し、直接に要した金額に限る」とされています。要するに、利益に直結した経費のみが認められるわけです。
たとえば、「競馬で5レースに3万円ずつ均等に馬券を購入し、予想が的中したのが1レースのみだった」というケースでは、支出した合計金額は15万円ですが、「収入を得るために支出した金額」は的中した1レース分の3万円のみとなるのです。
また、生命保険や損害保険などで満期保険金を受け取る契約においては、支払った保険料や掛け金は「収入を得るために支出した金額」に該当します。
「特別控除額」とは
一時所得には特別控除額が設けられており、最高限度額は50万円です。一時所得をすべて合算した金額に対して適用されるものであり、一時所得が生じた個々の取引ごとではないので注意してください。
税額は総合課税で計算される
一時所得は、給与所得など他の所得と合算する「総合課税」によって税額を計算します。
住民税は計算方法が違うので注意が必要
一時所得には所得税のほか、住民税も課税されます。住民税は課税所得の原則10%の「所得割」と、所得の大小にかかわらず住民すべてに課せられる「均等割」から算出されます。住民税の申告は確定申告の際、自動的に計算されるので手続きは必要ありません。
ただ、住民税の徴収期間は6月から翌年5月までと、確定申告の時期とは異なるため注意してください。
一時所得の計算シミュレーション
では、一時所得を得たと仮定した場合のシミュレーションをおこなっていきましょう。一時所得の税額計算は総合課税のため、一時所得以外に所得があれば合算して総所得金額を計算します。課税される所得金額によって税率と控除額が異なるため、下記の表を参考にしてください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40 % | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
クイズの賞金で100万円もらった人
給与収入600万円の人が、クイズの賞金で100万円を一時所得として受け取った場合をシミュレーションしてみましょう。
まず、一時所得の金額を計算します。
一時所得の金額:(賞金100万円-特別控除額50万円)×1/2=25万円 |
次に、給与所得の金額を計算します。
給与収入が660万円未満の場合には、「簡易給与所得表」を用いて、給与所得金額を求めます。660万円以上の場合には、「給与所得の速算表」を用いて計算をします。
給与収入600万円の場合の給与所得金額は、426万円になります。
次に、給与所得の金額と一時所得の金額を合計し、総所得金額を出します。
総所得金額:一時所得の金額25万円+給与所得の金額426万円=451万円 |
次に、総所得金額から所得控除を引いて、課税される所得金額を求めます。所得控除の種類はたくさんありますが、ここでは仮に社会保険料控除額85万円、基礎控除額48万円とします。
課税される所得金額:総所得金額451万円-(社会保険料控除額85万円+基礎控除額48万円)=318万円 |
課税される所得金額328万円の累進課税による税率10%を掛けた金額から控除額97,500円を引き、復興特別所得税を足した金額が所得税及び復興特別所得税の額となります。
①所得税:課税される所得金額328万円×10%-控除額97,500円=230,500円
②復興特別所得税:①×2.1%=4,840円 ③①+②=235,300円(100円未満切り捨て) |
生命保険の満期金700万円を受け取った人
次に年金収入と不動産収入のある人が、生命保険の満期金700万円を受け取った場合のシミュレーションをみてみましょう。
まず、生命保険の満期金に対する一時所得の金額を計算します。満期までに払い込んだ保険料を500万円とします。
一時所得の金額:(満期保険金700万円-払込保険料500万円-特別控除額50万円)×1/2=75万円 |
年金と不動産の所得ですが、ここでは簡単に600万円として計算します。
総所得金額:一時所得の金額75万円+年金と不動産の所得金額600万円=675万円 |
課税される所得金額:総所得金額675万円-基礎控除額48万円=627万円 |
課税される所得金額637万円に対応する税率20%を掛けた金額から控除額427,500円を引き、復興特別所得税を足した金額が所得税及び復興特別所得税の額となります。
①所得税:課税される所得金額637万円×20%-控除額427,500円=846,500円 ②復興特別所得税:①×2.1%=17,776円 ③①+②=864,200円(100円未満切り捨て) |
一時所得の確定申告書への記入方法
一時所得を得た場合には、確定申告にて1年間に得た所得税額を計算し納税しなければなりません。確定申告の書類は税務署で入手できるほか、国税庁のホームページで直接入力して確定申告書を作成し、郵送やインターネットで提出することもできます。
では、一時所得の確定申告書への書き方をご説明しましょう。
一時所得の確定申告書への書き方
所得税の申告の際には、確定申告書第一表の「所得金額」の「総合譲渡・一時」に、一時所得で得た金額の合計額(2分の1をかけた後の金額)を記入します。
また「所得金額」の上の「収入金額等」にも「一時」があります。「収入金額等」の「一時」には、2分の1を掛ける前の金額を記入しましょう。
この他にも、第二表の「所得の内訳」や「総合課税の譲渡所得、一時所得関する事項」に内訳を記入します。
確定申告書第一表・第二表の記入例は以下です。
確定申告をしないとどうなる?
「サラリーマンだから確定申告しなくてもいいのでは?」という人もいるかもしれませんが、一時所得のようにサラリーマンが給与所得以外に所得を得た場合は確定申告する必要があります。給与以外の収入は勤務先で年末に行なわれる「年末調整」では申告できないため、自分で確定申告書を作成して提出しなければならないのです。
確定申告書を提出する時期は、1年間に得た所得を、その年の翌年2月16~3月15日(曜日によって毎年異なる)の間です。仮に申告期限を過ぎてしまった場合には速やかに提出する必要がありますが、故意に納税しないと判断されると無申告加算税・延滞税・重加算税を課せられるほか、悪質な場合には刑事罰を処せられる場合もあるため注意してください。
確定申告書の作成は、経験のないサラリーマンには難しいと感じる場合もあるかもしれません。「調べたけどよくわからない」「忙しくて書類を作成している暇がない」場合には、税金の専門家である税理士に相談してみましょう。
監修税理士のコメント
今回は、一時所得の基本的な部分について解説をした記事でした。基本的に一時所得となるものでも、場合によっては雑所得となるものなどもあります。所得税には10種類の所得があります。どの所得に該当するのかにより計算方法が異なり、税額が異なりますので、国税庁のホームページでよくご確認されることをお勧めいたします。
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この記事を監修した税理士
都立芸術高校音楽科を卒業後、船上での演奏のほか、老人ホーム、カー用品店でバイトをし、ハンガリー・リスト音楽院に留学。帰国後、都内大手ダイビング会社に勤務。営業、webマーケティング、コールセンター事業部の立ち上げに携わり、年間営業成績No.1の実績を残す。税理士事務所へ転職後、診療所、医療法人、IT関連会社、輸出販売業、建設業等、約60社の税務顧問、および相続税申告業務を経験。12年間の事務所勤務を経て、独立。