確定申告の準備は、思いのほか時間がかかるものです。必要な書類を集めたり、収支を整理したりと、やるべきことは山積みです。また、初めて確定申告を行う場合、「どのように進めて良いかわからない…」といった方も多いでしょう。
そこで本記事では、確定申告の準備について、必要な書類や進め方を含めてわかりやすく解説します。確定申告をスムーズに進めるためのポイントを押さえて、余裕を持って申告を済ませましょう!
確定申告に必要な書類のチェックリスト
確定申告を滞りなく進めるには、必要書類を漏れなく準備することがとても重要です。まずは、全員共通で必要な書類や、個人事業主、会社員、年金所得者それぞれに必要な書類をリスト形式でまとめました。
全員共通で準備が必要な書類
- 確定申告書
- マイナンバー確認書類・本人確認書類
- 所得金額に関する書類
- 医療費控除に関する書類※任意
- 生命保険料控除証明書※任意
- 寄附金控除に関する書類※任意
- その他必要書類
個人事業主の準備が必要な書類
- 青色申告決算書または収支内訳書
- 帳簿類(総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳など)
- 売上や経費の領収書
- 固定資産台帳
会社員・アルバイトの準備が必要な書類
- 給与所得の源泉徴収票
- 各種控除に関する証明書
年金所得者の準備が必要な書類
- 公的年金等の源泉徴収票
- 各種控除に関する証明書
以下では、各書類の詳細について解説していきます。
【全員共通】確定申告で必要な書類
確定申告を行う際、全員共通で必要となる書類は以下の通りです。
確定申告書
確定申告書は、確定申告の基本となる書類です。国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署で入手できます。
以前はAとBに分かれていましたが、2023年分からは様式が一本化されました。「令和○年分の所得税及び復興特別所得税の申告書」を使用します。
マイナンバー確認書類・本人確認書類
マイナンバーが確認できる書類と本人確認書類も必要です。申告方法によって、提示または写しの添付が求められます。
マイナンバーカードがあれば、マイナンバーの確認と本人確認を1枚で済ませられます。マイナンバーカードがない場合、マイナンバー通知カードと運転免許証やパスポートなどの顔写真付き身分証明書が必要です。
所得金額に関する書類
所得金額を証明する書類は、所得の種類によって異なります。
事業所得がある場合は青色申告決算書や収支内訳書、株式取引がある場合は年間取引計算書などが必要です。会社員などの給与所得者であれば源泉徴収票、年金受給者は公的年金等の源泉徴収票が該当します。
医療費控除に関する書類※任意
医療費控除を受ける場合、医療費の領収書または医療費控除の明細書が必要です。ただし、2017年分の確定申告から領収書の提出が不要となり、代わりに「医療費控除の明細書」の添付が必要になりました。医療費控除を受けることで、所得税が還付される可能性があります。
生命保険料控除証明書※任意
生命保険料控除を受ける場合、保険会社から送付される控除証明書が必要です。生命保険料控除証明書には、支払った保険料の金額や控除額が記載されています。生命保険料控除を受けることで、所得税が還付される可能性があります。
寄附金控除に関する書類※任意
ふるさと納税や認定NPO法人への寄附などの寄附金控除を受ける場合、寄附先から発行された寄付金受領証明書が必要です。寄附金控除を受けることで、税金の還付を受けられる可能性があります。寄附をした場合は、必ず受領証明書を保管しておきましょう。
なお、ふるさと納税については、ワンストップ特例制度を使えば確定申告不要で適用となりますが、確定申告をする場合はワンストップ特例制度の対象外となります。そのため、確定申告を予定している場合は受領証明書の提出が必要です。
その他必要書類
上記以外にも、状況に応じて各種控除申請に必要な書類があります。
例えば、住宅ローン控除を受ける場合は住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、小規模企業共済等掛金控除を受ける場合は掛金払込証明書などが必要です。また、還付金を受け取るための銀行口座情報も忘れずに準備しましょう。
【個人事業主】確定申告で必要な書類
個人事業主の方は、事業の収支を正確に把握して申告しなければなりません。そのため、以下の書類が必要となります。
青色申告決算書または収支内訳書
青色申告を行う場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書が必要です。これらの書類には、1年間の事業における収入と経費の内訳を記載します。
青色申告決算書は複式簿記で記帳するため作成に手間がかかりますが、最大65万円の控除を受けられます。一方、白色申告の場合は作成が簡単ですが、控除額は10万円が上限です。
帳簿類(総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳など)
日々の取引を記録した帳簿類は、収支の証拠となる重要な書類です。総勘定元帳は全ての取引を勘定科目ごとに整理したもの、仕訳帳は取引を日付順に記録したもの、現金出納帳は現金の出入りを記録したものです。これらの帳簿は最大で7年間保存する必要があります。
売上や経費の領収書
売上や経費の領収書も、適切に保管しておく必要があります。これらは収支内訳書や青色申告決算書を作成する際の根拠となります。領収書は日付順に整理して、経費の種類ごとにファイリングしておくと便利です。
また、経費を適切に計上することにより、節税のメリットもあります。
固定資産台帳
事業で使用する固定資産(機械、車両、建物など)を記録した台帳です。固定資産の取得価額、減価償却費、残存価額などを記載します。減価償却費は経費として計上できるため、正確に記載しましょう。
【会社員・アルバイト】確定申告で必要な書類
会社員やアルバイトの方が確定申告を行う場合、主に以下の書類が必要となります。
給与所得の源泉徴収票
勤務先から発行される源泉徴収票は、1年間の給与総額や源泉徴収された所得税額が記載された書類です。複数の勤務先がある場合は、全ての源泉徴収票が必要です。
通常、年末調整で済んでいる場合は確定申告不要ですが、医療費控除などを受ける場合には確定申告が必要となります。
各種控除に関する証明書
給与所得者の場合も、各種控除を受けるための証明書が必要です。生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン控除に関する書類などが該当します。控除が適用となれば、還付を受けられる可能性があります。
【年金所得者】確定申告で必要な書類
年金所得者の方が確定申告を行う場合、主に以下の書類が必要となります。
公的年金等の源泉徴収票
日本年金機構や共済組合などから送付される公的年金等の源泉徴収票が必要です。この源泉徴収票には、受け取った年金の総額や源泉徴収された所得税額が記載されています。複数の年金を受給している場合は、全ての源泉徴収票が必要です。
各種控除に関する証明書
年金所得者の方も、各種控除を受ける際は各種証明書が必要です。医療費控除、生命保険料控除、寄附金控除などの証明書が該当します。
節税するならe-taxでの提出がおすすめ
確定申告を行うなら、e-Tax(国税電子申告・納税システム)での提出がおすすめです。e-Taxは、インターネットを通じて確定申告や納税を行うことができる便利なシステムです。スムーズに申請できるだけでなく、通常の青色申告で受けられる55 万円の控除に加えて、「e-Tax による申告」もしくは「優良な電子帳簿の保存の要件を満たしている」場合、最高65万円を差し引くことができます。
e-Taxを利用するためには、マイナンバーカードとICカードリーダー、または税務署で発行される「ID・パスワード方式の届出完了通知」が必要です。初めて利用する場合は、事前に利用開始届出書を提出する必要がありますが、この手続きもオンラインで行うことができます。
確定申告の手続きを効率化できることはもちろん、節税効果も得られます。複雑な申告内容がある場合や、毎年確定申告を行う必要がある方はe-Taxを検討してみるとよいでしょう。
確定申告のやり方4選
ここからは、確定申告のやり方について解説します。確定申告書の作成方法は以下の通りです。
それぞれの特徴やメリットについて解説します。
確定申告書作成コーナーで作成する
国税庁のウェブサイトにある確定申告書等作成コーナーを利用して、オンラインで確定申告書を作成する方法です。画面の案内に従って必要事項を入力していくだけで、自動的に計算や記入漏れのチェックを行ってくれます。
初めて利用する方でも、画面の指示に従って進めていけば比較的簡単に作成できます。ただし、複雑な申告内容の場合は、専門知識が必要になる場合があります。
確定申告のソフトで作成する
市販の確定申告ソフトや会計ソフトを使用して、確定申告書を作成する方法もあります。
確定申告書作成コーナーでは網羅していないような、より細かな収支管理や複雑な申告にも対応しています。個人事業主や不動産所得がある方など、複雑な申告が必要な場合におすすめです。
ただしソフトの購入費用がかかるため、利用するメリットと照らし合わせて検討してみましょう。
手書きで作成する
確定申告書を手書きで作成しても問題ありません。パソコンやインターネット環境がない場合は手書きで作成することになりますが、計算ミスのリスクが高く、労力もかかります。また、修正が大変なため、手書きで提出する場合は下書きを作成してから清書することをおすすめします。
パソコンやインターネットが使える場合は、他の方法を検討すると良いでしょう。
税理士に依頼する
専門知識を持つ税理士に確定申告の作成を依頼する方法です。申告内容が複雑である場合や、時間の余裕がない場合に適しています。
税理士への依頼費用は依頼案件や税理士ごとに異なりますが、一般的に5万円〜20万円程度が目安となります。簡単な確定申告の場合であれば、それよりも安く依頼できる場合もあります。確定申告の直前は依頼が立て込みやすいため、早めの相談をおすすめします。
確定申告の準備はいつから始めるべき?
2024年分の確定申告の期間は2025年2月17日(月)から3月17日(月)までです。この期間に必ず申告を完了するようにしましょう。
準備をこの期間に始めていては書類収集や確認に時間がかかり、計画的に進められなくなる可能性があります。必ず早めに準備に取り掛かりましょう。
理想を言えば、確定申告の準備は前年の12月頃から始めるのがおすすめです。
源泉徴収票や各種控除証明書などは年末年始の休業により、金融機関や取引先から書類を取り寄せることが難しくなることもあります。また、締め切りが近づくにつれて税務署の窓口や電話相談も混雑し、すぐに対応が得られない場合があります。スムーズに申告を済ませるためにも、早めに準備を進めましょう。
確定申告の準備に関するよくある質問
最後に、確定申告の準備に関するよくある質問をまとめました。
失敗しない確定申告準備のコツは?
失敗しない確定申告準備のコツは、以下のとおりです。
- 早めに準備に取り掛かる
- 必要書類を事前にリストアップし、漏れなく揃える
- 日々の収支を記録し、帳簿をつける習慣をつける
- 控除対象となる支出を把握する
- 不明点は早めに相談する
確定申告のことで不明点がある場合はどこに聞く?
確定申告に関する不明点がある場合、以下の方法で相談できます。
- 所轄の税務署に電話で相談
- 国税庁のウェブサイトで情報を確認
- 税理士に相談
- 確定申告書等作成コーナーのヘルプデスク(e-Taxや確定申告書等作成コーナーの操作方法に関する質問)
確定申告に間違いがある場合はどうなる?
申告内容に明らかな誤りがある場合、税務署から連絡が来ることがあります。その場合は、税務署の指示に従って対応しましょう。
自分で間違いに気づいた場合は、修正申告を行います。修正申告書を作成して、税務署に提出しましょう。
確定申告の準備は早めに取り掛かることがカギ!不安な人は税理士に相談しよう
確定申告ではさまざまな書類の準備が必要となるため、早めに準備に取り掛かることをおすすめします。できれば12月頃から始めて、必要書類の収集や収支の整理を計画的に進めましょう。
申告方法には、Webでの作成や確定申告ソフトの使用、手書きでの作成、税理士への依頼などがあります。また、提出方法はe-Taxを選ぶことで節税のメリットも受けられるため、積極的な利用をおすすめします。
なお、申告内容が複雑な場合や不安がある方は、税理士への相談もおすすめです。税理士選びの際におすすめなのが、全国の税理士が登録している「ミツモア」です。
地域と依頼したい内容に応じて、まずは見積もりが確認できます。その後、メッセージでのやりとりで担当業務の範囲やオプションなどを確認できるので、面談するのと同じように、税理士の人柄が見えてきます。