税理士に確定申告を依頼する際、個人事業主の場合は白色申告か青色申告で料金が設定されているのが一般的です。
給与所得者の場合は、所得2,000万円超の申告か、副業に対しての申告かなど、内容の違いにより料金が変わってくるでしょう。
この記事では、税理士に確定申告を依頼した場合の費用相場やメリット・デメリット、依頼する手順について紹介します。
この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
税理士に確定申告を依頼した場合の費用相場

料金体系は税理士事務所ごとに異なるため、一概に「この値段」とは言い切れないのが現状です。ここではざっくりとした費用相場を3パターンに分けて解説します。
- 白色申告の個人事業主:5万~10万円程度
- 青色申告:10万円~20万円が目安(年商による)
- 白色申告のサラリーマン:3万円程度
個人事業主の白色申告は「5万~10万円程度」
個人事業主が行う確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。
白色申告は、複式帳簿で帳簿をつける必要がなく簡易帳簿でよいという点がメリットです。確定申告も確定申告書と収支内訳書、添付書類の提出だけで済みます。
青色申告に比べて作業が少ないため、税理士に依頼した場合も5万円~10万円程度と相場も安めです。
個人事業主の青色申告は「10万~20万円が目安」
青色申告の費用は売上規模(年商)と記帳代行の有無により異なります。
以下の相場表を参考に、税理士事務所に予算を確認してみましょう。年商が500万円~1,000万円ほどであれば、10万円~20万円が目安です。
年間の年商 | 報酬相場 | |
記帳を自分で行う場合 | 記帳を代行する場合 | |
500万円未満 | 5万円〜 | 10万円〜 |
500万円以上1,000万円未満 | 7万円〜 | 15万円〜 |
1,000万円以上3,000万円未満 | 10万円〜 | 20万円〜 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 15万円〜 | 25万円〜 |
5,000万円以上 | 要相談 | 要相談 |
売上高が高ければそれだけ取引が増えて作業量が多くなり、内容も煩雑になるため高額です。また記帳の代行も任せる場合、領収書をそのまま渡せばいいので楽ですが、倍近い費用がかかります。
サラリーマンの白色申告は「3万円程度」
サラリーマンは毎月の給与から税金が源泉徴収され、会社が年末調整を行なって納税が完了します。そのため、サラリーマンは基本的に自分で確定申告をする必要はありません。
サラリーマンが確定申告をする必要があるのは、次のような場合です。
- 医療費控除や雑損控除などを受けたいとき
- 年末調整で所得控除の漏れがあったとき
- 副業収入が20万円を超えるとき
- 1年間の給与が2,000万円を超えるとき
- 年途中で退職して年末調整を受けていないとき
追加での控除申請や退職時の確定申告を行なった場合は、税金の還付が受けられる可能性があります。逆に副業や給与の関係で確定申告を忘れると追徴課税が課せられるリスクもあるため、注意しましょう。
これらの確定申告を自分で行わずに税理士に依頼する場合、作業が少ないため費用も安く、3万円程度が相場です。ただし、同時に申告する控除の内容や量によっては、追加料金が発生する場合もあります。
確定申告を税理士に依頼した方が良い場合とは?
税理士に確定申告を依頼した方が良いのは、本業が忙しい場合でしょう。税理士に依頼して作業の手間が省けた分、事業に時間をかけて売上アップにつなげられます。
とくに事業規模が拡大して日々の業務が忙しい場合、顧問契約を結ぶのが理想的です。記帳や確定申告の作成だけでなく資金繰りや節税対策などの相談ができ、経営コンサルティングを受けられる事務所もあります。毎月の顧問料はかかるものの、業績アップなどそれ以上の利益が得られる可能性が高いでしょう。
一方、まだ事業を始めたばかりで事業規模が小さいうちは、記帳も難しくなく作業に手間がかかりません。特に白色申告の場合は確定申告の作成も複雑ではなく、税理士への費用をかけるよりは自分でやった方が良いといえるでしょう。
税理士に確定申告を依頼するメリットとデメリット
確定申告を税理士に依頼するか迷っている方は、メリットとデメリットも把握しておきましょう。
「時間が有効活用できる」「税務調査の心配が減る」ことを踏まえ、その金額を支払っても依頼する価値があるかどうかを考えることが大切です。
メリット①時間を有効活用できる
自分で確定申告する場合、「①必要な書類や証明書の用意②収支内訳書や青色申告決算書の作成③確定申告書の作成④作成した書類の提出⑤税金の納付」をすべて1人で行なう必要があります。
会計帳簿をつけるのも手間です。会計の知識と確定申告の知識がなければ、なかなか正しい課税額の計算はできません。売上規模が大きくなればなるほど、適用されるルールも増えていき、どのルールを適用するのかを調べるのにも時間がかかるでしょう。
税理士に確定申告を任せれば、帳簿付けや確定申告にかける時間を一気に減らせます。その分、通常の業務に時間をかけることが可能です。
メリット②ペナルティの課税の心配がなくなる
確定申告期間を過ぎてしまうと、延滞税を支払うことになります。
また自分で確定申告をする場合、納めるべき税額を間違って過小に計算してしまえば、過少申告加算税のペナルティを受けてしまうかもしれません。意図的な過小評価の場合には、刑事罰に問われる可能性もあるので注意が必要です。
税理士に頼めば、期日までに確実に確定申告が完了するため、こういったペナルティ課税の心配がなくなります。
メリット③税務調査が安心
税理士に確定申告を任せてしまえば、万が一税務調査があった場合でも安心です。税務調査の対応を税理士が行ない、申告内容についてもきちんと説明してくれます。
確定申告を自身で行なった場合、なぜそのように計算したのかなども自分で説明しなければなりません。
メリット④節税対策ができる
税理士に確定申告を依頼すれば、節税にもつながります。個人で確定申告を行う場合、所得税や消費税の特例を見逃して、税制上有利となるルールを適用せずに申告してしまうかも知れません。そうなると、税金を過剰に納めてしまうことになります。
税務署は税金が過剰に納付されたとしても、基本的にはわざわざ過剰ですと言ってはくれません。税理士に任せれば、税制上有利となるルールをきちんと適用してくれ、ルールの中で税金が少なくなるように対応してくれます。
デメリット①費用がかかる
税理士に依頼した場合、当たり前ですが費用がかかります。記帳代行のない場合でも最低5万円程度はかかり、対応内容が複雑になるほど高額です。
費用が妥当であるかどうかは、税理士に頼むメリットと比較すると良いでしょう。
デメリット②事業のお金の流れに対する意識が希薄になりがち
記帳代行も含めて依頼する場合、事業のお金の流れが見えないことで意識が希薄になる可能性があります。
お金の流れを把握しておくことは経営判断を行う上で重要です。もし記帳もすべて丸投げしてしまうと、業績をあげるための有効な対策を取りづらくなるかもしれません。
帳簿を付けてもらったら、その内容をしっかりと確認することが大切です。
なお、お金の流れを確実に掴みたい方は、顧問契約を結ぶことでも解決できます。月次での収支に関する報告や、分析・アドバイスなどのサポートを受けることが可能です。
税理士に払った報酬は経費として計上可能
個人事業主が税理士に支払った報酬は原則として経費に計上できます。その際の仕訳の勘定は「支払手数料」が一般的です。
支払調書(※)を作成する必要がある場合には、作成を容易にするために独立した科目で集計するのもおすすめです。税理士への費用は「支払報酬」「雑費」などにして他の勘定と区別します。
(※) 報酬を支払った場合に、支払金額と源泉徴収税額を税務署に報告する書類
税理士に報酬を50,000円支払った場合の仕訳例
報酬として50,000円支払った場合の仕訳例は次の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
支払手数料 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
個人事業主が源泉所得税の徴収義務者である場合は、次の通りです。源泉徴収税率は10.21%で計算しています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
支払手数料 | 50,000 | 現金 | 44,895 |
預り金 | 5,105 |
取引によっては、源泉徴収が発生するケースと発生しないケースがあり、入り乱れると記帳がややこしくなりかねません。取引1回ごとに記録を取っておき、後で混乱しないようにしておきましょう。
確定申告を税理士に依頼する場合の手順・スケジュール
2~3月の確定申告期間は繁忙期でもあるため、早くに依頼の受付を終了する税理士もいます。そのため早めの依頼が大切です。
依頼することを決めているのであれば秋ごろまでに、確定申告の期間に突入しているのであればなるべく早くに依頼しましょう。
基本的には以下の流れで進めます。
- 依頼したい作業範囲を決める
- 税理士に連絡し、見積もりをとる
- 必要書類や証明書を税理士にまとめて渡す
- 確定申告が完了したら、税金を納付する
1.依頼したい作業範囲を決める
まず、何を依頼したいかを決めます。記帳も含めた丸投げで依頼したいのか、記帳なしでできるだけ格安に済ませたいのかを考えておきましょう。
2.税理士に連絡し、見積もりをとる
依頼する内容が決まったら、自分に合いそうな税理士事務所を探しましょう。税理士事務所のWebサイトを見れば、サービスの内容やその税理士が得意とする業種・業態がある程度分かります。自分に合いそうな税理士事務所を見つけたら、連絡できる手段で連絡をとり、見積もりを申し込みます。
税理士事務所は初回の相談が無料のところも多く、何件か相談をして相見積もりするのもおすすめです。顧問契約をすることで確定申告の代行がお得になる場合など、よりコストのかからない契約がないかも検討できます。
3.必要書類や証明書を税理士にまとめて渡す
契約が成立したら、確定申告の必要書類や証明書を税理士にまとめて渡します。税理士に渡す書類は主に次の通りです。
- 領収書・レシート、請求書(記帳を依頼する場合)
- 会計のデータ(記帳を自分で行った場合)
- 預金通帳もしくはネットバンキングの取引記録(コピー)
- 源泉徴収票や支払調書
- 控除の証明に必要な書類
とくに領収書やレシートは、必要経費を漏れなく計上するために大切です。支出を経費として計上できるかどうかの相談にも使うので、月や用途ごとに分けて整理・保存をしておきましょう。
4.確定申告が完了したら、税金を納付する
税理士が確定申告を済ませたら、納税額を教えてもらい、ご自身で税金を納付します。納め忘れを防ぐためにも、口座振替の手続きをしておくと良いでしょう。
また所得税を納め過ぎていた場合、確定申告後に還付金を受け取ることができます。
信頼できる税理士の選び方
確定申告を税理士に任せる場合、費用だけで選ぶのはおすすめしません。これまでの経験によって税理士個々人の能力は異なるうえ、人柄も様々です。
信頼できる税理士を選ぶには、業界に対する知識や連絡のスムーズさも確認しましょう。
自身の業界に対して知識があるかどうか
税理士にも得意分野、不得意分野があるものです。税金のプロである税理士なら誰でも安心して任せられるというわけではありません。
たとえば次のような業種は特に、業界への知識があるかどうかを確認しましょう。
- IT関係
- 医療・飲食・建築など業種特有の会計を扱う業務
どの業界について知識や経験があるのかは、Webサイトを確認する際や、最初の相談の際などに十分に確かめておくのがおすすめです。
確定申告の作成経験が豊富かどうか
確定申告の税理士を選ぶときには、確定申告に注力してくれる税理士を選ぶようにしましょう。他の業務などで忙しい税理士に確定申告を頼んでしまうと、細かい部分まできちんと対応できない可能性があります。
また、確定申告の作成経験が豊富な税理士に任せることも忘れないようにしましょう。確定申告の作成経験が豊富であれば、必要な手続きはすべて税理士の側から提案してくれますし、親身に相談に乗ってくれるでしょう。
会話や連絡がスムーズで相談しやすいかどうか
確定申告は税理士1人で行なうわけではありません。確定申告をする人と税理士が緊密に連携して、申告書類を作成する必要があります。
そのため、税理士として有能というだけではなく、会話がスムーズか、相談しやすい人柄かどうかも加味することが大切です。
連絡や会話がスムーズに行く相手であれば、よくわからない領収書や、節税に関する不明点があったときにそれぞれ確認をとりやすいでしょう。
電話・FAX・メールなどをきちんと使い分けて対応してくれるかどうか、返信が早いかどうかも重要です。
適正価格である情報を提示してくれるかどうか
確定申告の費用は税理士により異なるため、その価格が適正であるかどうかはなかなか判断しにくいものです。
そこで「依頼した業務に対して適正な価格であるかどうか」の判断材料となるような情報を、きちんと提示してくれる税理士を選ぶようにしましょう。これだけの作業を行うので、価格がこれだけかかるということを事前にきちんと説明してくれる税理士であれば信頼できます。
契約のときには、事後に料金が追加で請求されることがないかどうかについてもきちんと聞いておきましょう。
また適正価格かどうかを判断するためには、相見積もりをとるのもおすすめです。ミツモアなら簡単な質問に答えるだけで、おすすめ5社の費用を自動で相見積もり。チャットや口コミで税理士の人柄も分かるため、ご自身にぴったりの税理士が見つかります。
監修税理士からのコメント

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この記事の監修税理士

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