課税証明書とは、前年の1月1日から12月31日までの期間に得た所得に対し発生した住民税の額が記されており、住民税の課税額を把握できる書類です。
保育園の入園手続き、銀行ローンを組むときなど、さまざまな手続きの際に提出が求められます。
ここでは課税証明書がどのような書類で、どのような場合に必要とされるのかを詳しく解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
課税証明書とは?必要なケースや納税証明書との違い
課税証明書は、過去に住民税を納付した自治体から発行される公的な書類です。過去に行われた所得計算に基づいて作成され、自治体により3年〜10年程度までさかのぼって取得できます。
1年間の所得金額や所得控除額、住民税の年税額など住民税の課税の基礎となる金額が記載されており、所得があるかどうかの確認が必要な場面で提出を求められることが多いです。
課税証明書が必要な場面と、名称が似ていて間違えやすい納税証明書との違いを確認しましょう。
課税証明書が必要な場面
融資を受ける際、給付金や手当の申請時、保育園の入園手続きの際など、課税証明書が必要な場面は少なくありません。
申請や手続きを行う資格があるのかどうかを判断するために、所得金額を照明する課税証明書の提出が求められます。
実際に課税証明書が必要になるのは、以下のようなケースです。
- 住宅ローンやクレジットカードの申込時
- 公営住宅の入居申込時
- 保育所への入園申請時
- 奨学金の申請時
- 年金の請求手続き時
- 児童手当の申請時
住宅ローンやクレジットカードの申込時
所得金額がなければ返済の見込みがないため、住宅ローンやクレジットカードを利用することはできません。
所得金額があることを証明するために、課税証明書が必要になります。
公営住宅の入居申込時
公営住宅には所得金額の低い人が優先的に入居できることとしている場合があります。
所得の有無や所得金額を明らかにするために、課税証明書が必要になります。
保育所への入園申請時
公立の保育園の入園申し込みに課税証明書の提出が求められる場合があります。入園順位や保育料の額を決定する際に、住民税の金額をもとに判断するためです。
課税証明書を提出せず住民税が不明のままだと、入園順位が下げられ保育園に入園できなくなる可能性があります。
奨学金の申請時
奨学金は生活が困窮し学費を支払うのが難しい学生に対してお金を貸す制度なので所得制限があります。そのため所得証明が必要です。
非課税証明書のほか、源泉徴収票や給与明細の写しを提出する場合もあります。
年金の請求手続き時
「特別支給の老齢厚生年金」などを受給する際には、受給資格の有無を判定するため、所得金額を確認する必要があります。
所得金額がわかる書類として、課税証明書が必要になります。
児童手当の申請時
児童手当は中学校卒業までの児童を扶養する人に対して支給されるお金です。児童手当を受け取るには所得制限があるため、課税証明書で「制限を超える所得がないこと」を確認されます。
年金や児童手当の手続きの際には、個人番号(マイナンバー)を記載することで、課税証明書の提出が必要ない場合もあります。
課税証明書と納税証明書の違い
課税証明書と納税証明書は証明する内容や目的が異なります。
- 課税証明書:住民税に関する所得金額を明らかにする書類
- 納税証明書:税金を納付したか滞納しているかを明らかにする書類
納税証明書は発生した税額を納付したか、あるいは未納のままとなっているかを明らかにする書類です。融資や軽自動車の継続検査(車検)など、納税をしているかが重要な審査に用いられます。
また課税証明書は住民税のみに関する書類であるのに対し、納税証明書は住民税に限らない点が異なります。固定資産税や軽自動車税など、あらゆる税目についての納税証明書があり、それぞれの用途に応じて入手できます。
課税証明書と非課税証明書の違い
非課税証明書はその年度に住民税が課されていないと証明する書類です。住民税の課税が0円ならば非課税証明書、1円でも住民税が課税されていれば課税証明書の交付を受けます。課税証明書と非課税証明書の同時取得はできません。
ただし、課税がなく非課税証明書が発行される人でも、所得は0円とは限らない点に注意しましょう。たとえば1年間の所得が30万円あったとしても、基礎控除で43万円が差し引かれるので課税所得は0円です。
非課税証明書は課税証明書と同様に、ローンを申し込む際や各種手当の申請、クレジットカードの審査等で使用します。
課税証明書の見方
課税証明書には住民税の納税義務者ごとに、その人の住民税の計算根拠が記載されています。
所得の内訳 | 給与収入や事業所得、不動産所得といった所得ごとの金額が記載されます。 |
所得控除の内訳 | 基礎控除のほか、医療費控除、配偶者特別控除の金額が記載されます。 |
課税総所得金額 | 課税の対象となる所得金額です。 |
住民税 | 上記の画像では、区民税と都民税が該当します。 |
年税額 | 住民税の合計金額です。 |
参考 | 課税証明書の対象となっている本人の情報や、配偶者・扶養親族の情報が記載されます。 |
課税証明書の取得方法や手数料
課税証明書は住民税に関する書類であることから、市役所や区役所といった役所で取得できます。また自治体によっては、コンビニで取得できるほか、郵送により請求し返送してもらうことも可能です。
課税証明書の取得場所や、取得できる人、手数料についてまとめました。
取得する場所 | 市役所・区役所などの窓口 | コンビニエンスストア | 郵送 |
---|---|---|---|
取得できる人 | 本人
代理人(委任状が必要) |
マイナンバーカードを持っている本人 | 本人 |
手数料 | 300円~400円程度 | 200円~300円程度 | 300円~400円程度 |
受付時間(一例) | 平日 午前8時30分~午後5時15分 |
平日・土日祝 午前6時30分~午後11時 |
なし |
市役所や区役所での課税証明書の取得方法
課税証明書は市役所や区役所の窓口に申請書を持参することで取得できます。
- 必要書類
課税証明書の申請書、および窓口で申請する人の本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)が必要です。
同一世帯の親族以外の代理人が申請する場合は、委任状も必要になります。
申請書類や委任状は自治体のホームページか、役所の窓口に用意されているのが一般的です。
- 手数料
1通あたり300円〜400円程度かかります。
現金のほかクレジットカードや電子マネー、QRコード決済が利用できる場合もあります。
- 取得できる時間
市役所や区役所の開庁時間(例:午前8時30分〜午後5時15分)に取得できます。
- 取得できる人
課税証明書が必要な年度1月1日時点で住所がある人が申請できます。たとえば、令和5年度の課税証明書(令和4年分の所得に対する住民税が記載されています)は、令和5年1月1日に住所がある市町村に対して申請します。
- 代理申請(本人以外)の場合
課税証明書の交付を受けようとする本人のほか、住民票上の同一世帯の親族も取得できます。また委任状があれば、本人や親族以外の人も取得できます。
コンビニでの課税証明書の取得方法
課税証明書は全国のコンビニエンスストアでも取得できます。なお、利用方法の詳細は自治体によるため、それぞれの自治体のホームページで確認が必要です。
コンビニで課税証明書を取得できる時間帯は、午前6時30分〜午後11時で窓口よりかなり長い時間対応していますが、コンビニだからといって24時間対応ではない点に注意しましょう。
- 取得できるコンビニ
マルチコピー機を設置しているコンビニで発行でき、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなど多くのコンビニで対応しています。
- 必要書類
マイナンバーカードが必要です。
- 手数料
1通あたり200円〜300円程度かかります。
多くの市町村で、窓口で取得する場合より安くなっています。
- 取得できる時間
午前6時30分〜午後11時に取得できます。また平日のみでなく、土日や祝日でも取得できます。
コンビニだからといって24時間365日対応ではない点には注意が必要です。
- 取得できる人
課税証明書が必要な年度の1月1日時点で住所がある人が申請できます。たとえば、令和5年度の課税証明書(令和4年分の所得に対する住民税が記載されています)は、令和5年1月1日に住所がある市町村に対して申請します。
マイナンバーカードを保有している本人のみが取得できます。
自治体によっては郵送請求も
自治体によっては、遠方に住む人が課税証明書の交付を郵送で請求できます。返信用封筒と切手の同封を忘れないようにしましょう。
封筒のサイズは規定があれば従います。規定がない場合は「縦23.5cm×横12cm」のサイズを利用する人が多いようです。
- 必要書類
自治体の申請書のほか、本人確認書類や返信用封筒を郵送します。
郵送可能な自治体では、ホームページで申請書を取得できることが多いです。
- 手数料
窓口で取得する場合と同様、1通あたり300円〜400円の手数料がかかります。
手数料分の定額小為替を郵便局(ゆうちょ銀行)で購入し、必要書類と一緒に郵送します。
- 取得できる時間
郵送の場合、受付時間の決まりはありません。
必要書類を発送してから課税証明書を返送してもらうまでは、通常、1週間以上かかると見込まれます。
- 取得できる人
課税証明書が必要な年度の4月1日が属する年の、1月1日時点で住所がある人が申請できます。
- 代理申請(本人以外)の場合
代理人が郵送で課税証明書を取得する場合は、必要書類に委任状も同封しなければなりません。
課税証明書を取得するときの注意点
課税証明書を取得するときには、どの年度の証明書が必要なのかを確認してから取得するようにしましょう。
課税証明書は、課税証明書が必要な年度の1月1日時点で住所がある市町村で取得できます。たとえば、令和5年度の課税証明書(令和4年分の所得に対する住民税が記載されています)は、令和5年1月1日に住所がある市町村に対して申請します。
たとえば令和5年1月1日時点では横浜市に居住しており、その後令和5年9月1日に大阪市に転居した人が令和5年度の課税証明書を取得したい場合、令和5年1月1日に住所を置いていた横浜市に申請することとなります。
また、課税証明書は過去にさかのぼって取得できます。自治体によってさかのぼることができる年数は異なり、当年度を含めて5年度までといった期限が定められています。
課税証明書の申請書の書き方
課税証明書の交付申請書は自治体によって書式に若干の違いはありますが、主な記載事項に違いはありません。申請書の入手方法と書き方を解説します。
課税証明書の申請書の入手方法
課税証明書を取得する際に提出する申請書は、各自治体の役場の窓口やホームページで入手が可能です。所によって課税証明書単体の申請書になっている場合と、所得証明書や納税証明書の交付申請書と一緒の場合があります。
電子申請はできないため、印刷してから記入しましょう。家にプリンターがなければ、コンビニのマルチコピー機が便利です。ダウンロード書式を登録し、パスワードを店頭のマルチコピー機に入力することで印刷できます。
課税証明書の申請書の書き方
横浜市のフォーマットを使って、課税証明書の申請書の書き方を見ていきましょう。
交付申請書は「申請人の情報」「証明が必要な人の情報」「証明を必要とする理由」の3つに大きく分かれており、各項目の記載方法は下記の通りです。
申請人の情報
課税証明書の申請者の住所や氏名、生年月日を記載します。証明書を必要とする人(納税義務者)と申請人が異なる場合には、委任状も併せて提出してください。
証明が必要な人の情報
課税証明書が必要な人の住所や氏名、生年月日を記入します。住所は1月1日時点での住所になる点に注意してください。申請人と住所が同じ場合は「同上」で構いません。
証明書の部数
いつの課税証明書がどれだけ必要なのか、年度と必要な数を記載します。「令和5年度」とした場合、令和4年1月〜12月の所得が記載されるため、年度と実際に所得が発生した年がずれる点に注意しましょう。
証明を必要とする理由
最後に課税証明書を必要とする理由を記入します。「融資申請」「扶養申請」「児童手当」「高校就学支援金」というように項目が列挙されているので、該当する項目に〇をつけるか、用途を任意に記入してください。
監修税理士のコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
課税証明書は必要な書類を揃えてスムーズに取得しよう
所得金額を証明するために、課税証明書を提出するように求められることがあります。課税証明書は所得額や住民税の課税額を証明する書類で、融資を受ける際や児童手当の申請に必要です。
発行は役所の窓口のほか、郵送やコンビニ交付にも対応しています。その年の1月1日時点の住所地を管轄する役所に申請する必要がある点に注意しましょう。
この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通