【2023年(令和5年)分の確定申告に関して】
★提出期限(所得税・贈与税の申告や納付期間)
2024年2月16日(金)~ 2024年3月15日(金)
※贈与税は2024年2月1日(木)~2024年3月15日(金)
【2023年(令和5年)分の確定申告に関して】
★提出期限(所得税・贈与税の申告や納付期間)
2024年2月16日(金)~ 2024年3月15日(金)
※贈与税は2024年2月1日(木)~2024年3月15日(金)
ビットコインやアルトコインなど仮想通貨(暗号資産)の取引で利益が出ると、所得税が発生します。それに伴い一定の条件を満たすと確定申告が必要です。では具体的にどうすればいいのでしょうか。
本記事では仮想通貨にかかる税金や利益の計算方法、確定申告のやり方、節税方法について解説します。
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
仮想通貨の取引で得た利益は「雑所得」に該当するため、所得税がかかります。ただし、課税の対象になるのは、20万円以上の利益が出た場合です。なお、利益に該当するのは、仮想通貨の取引で得た金額から必要経費を差し引いた金額となります。
仮想通貨の取引で利益を得ると所得税がかかります。その際に必要な経費を差し引いて年間所得が20万円を超えると、所得税の確定申告(青色申告)をやらないといけません。また20万円以下でも、2箇所以上の会社から給与を受け取ったり他の副業で20万円以上の利益を出していたりした場合も確定申告が必要なので注意しましょう。
ただし、仮想通貨を持っているだけで円に交換したり、商品・サービスを購入したりしていなければ確定申告は不要です。取引で利益が確定した段階で確定申告の対象になります。
なお、仮想通貨の取引で損失を出して収支が赤字の場合や、年間の給与や退職金以外で得た金額の合計が20万円未満の場合、他の要件に該当していなければ確定申告の必要はありません。
20万円以下の利益で確定申告が不要となるのは、あくまでも所得税の規定である点に注意が必要です。住民税についてはこの規定が適用されません。そのため仮想通貨の利益が20万円以下でも住民税が発生し、申告の手続きを要します。住民税の申告をしないと、正しい住民税額や社会保険料が算出されないので、忘れずに手続きを行ないましょう。
仮想通貨の取引で所得が発生するケースは、主に4つあります。
ここでは具体例を交えながら解説します。
主に発生するのは仮想通貨を売却して利益が出たときです。ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を売却したときや、その仮想通貨を取得したときにかかった金額との差額が所得となります。保有した状態で含み益が出たとしても関係はありません。あくまでも売却時の損益で判断します。売却したときに発生する所得の具体的な計算方法と具体例は下記のとおりです。
例:1BTCを200万円で購入し、1BTCが270万円のときに売却した場合
→70万円の所得が発生する
またビットコインとイーサリアム(ETH)、リップル(XRP)など、仮想通貨同士で交換したときも所得が発生します。いったん仮想通貨を売却して日本円に換えた後、新たに他の仮想通貨を購入したとみなされるからです。他の仮想通貨と取引した際に発生する所得の具体的な計算方法と具体例は下記のとおりです。
所得=「購入した仮想通貨の価額」-「売却したときの仮想通貨の価額」
例:保有していたBTCを使ってETHを購入した場合
2/1に1BTCを500万円で購入した
→7/1に購入したBTCをすべて他の仮想通貨(ETH)に交換(※5/1時点の1BTCあたりの価格は700万円)
この具体例を見ると、2月から7月にわたって1BTCあたりの価格が200万円上昇しています。700万円のときにBTCを日本円に換金した後、ETHを手に入れたとみなされ、所得として200万円得ています。
さらに、仮想通貨を使って商品やサービスを購入するときも所得が発生します。商品やサービスを購入する際、一度仮想通貨を売却した後に日本円に換金したとみなされるためです。仮想通貨の価額が取得時の価額を上回っていれば、利益とみなされます。仮想通貨で商品やサービスを購入したときに発生する所得の具体的な計算方法と具体例は下記のとおりです。
所得=購入した商品またはサービスの価額-仮想通貨購入したときの価額
例:1BTCが20万円のときに1BTCを購入し、1BTCの評価額が50万円まで上がったとき、ビットコインで50万円のテレビを購入した。
→30万円の所得が発生する
あわせて「マイニング」という仮想通貨の売買取引を記録する作業で得た報酬も対象です。仮想通貨は「ブロックチェーン」を使って取引日時や取引量などの情報を管理しており、その情報に不正はないか、マイナー(採掘者)と呼ばれる人たちが確認して承認しています。この作業の報酬として仮想通貨を受け取り、必要経費を差し引いた分が所得として発生します。
この他にも、「ステーキング」という特定の仮想通貨を保有して報酬を得たときや、「レンディング」という第三者に仮想通貨を貸し付けて利率を設定し、利息を得る取引も対象です。
仮想通貨の取引で得た利益を確定申告(青色申告)しないと、税務署からペナルティが課せられるでしょう。
税務署は仮想通貨の取引所や利用者の銀行口座に関する入出金履歴などを調査します。多くの利益を出したにもかかわらず適切に申告されていないと、法律で罰せられる可能性があるので、利益が発生したら確定申告することを忘れないでください。
仮想通貨の取引で20万円以上の利益を得ていたにもかかわらず、確定申告を怠ったり、金額を少なめに申告した場合は税務署からペナルティが課せられます。
申告期限内に申告しなかった場合に追加で納めないといけない税金です。修正申告や更正を行なった後、本来払うべき税金とあわせて最大30%の加算税を納めます。
本来払わないといけない納税額よりも少ない金額を申告した場合に課せられる税金です。
修正申告または更生後、追加で納める税金とあわせて最大15%の加算税を支払います。
申告期限後に確定申告を行なったときにペナルティとして税金を支払います。申告期限の翌日から2か月までの場合は年率7.3%、それ以降を過ぎると年率14.6%の税金を追加して払わないといけません。(実際は延滞税特例基準割合というものが使われるため、年率はもう少し低いです)
仮想通貨の口座を他人名義にして所得を隠したり、利益を出したのにあえて申告をしなかったりするなど、悪質な場合に課せられる税金です。最大35%~40%の追徴課税を受けるほか、刑事罰の対象となる場合もあります。
仮想通貨は売買や資金決済など、保有目的によって勘定科目が異なり、個人事業主の場合は「雑所得」として扱います。では仮想通貨で得た所得はどのように算出するのでしょうか。課税方式と税額の計算方法について紹介します。
仮想通貨の取引にかかる税金は「総合課税」で計算します。総合課税とは仮想通貨での雑所得の他に、給与所得等の他の所得と金額を合算して税額を求める方法です。たとえば、仮想通貨の取引で得た100万円の所得と400万円の給与所得があれば、合計500万円から控除額を差し引いた金額に対して課税されます。
一方でFXや株取引で得た所得は「分離課税」で計算します。分離課税とは総合課税の所得とは分離して個別に税額を求める計算方法です。仮想通貨の取引と、株やFXの取引を同一の方法と勘違いする方が多いため注意しましょう。
仮想通貨で得た所得の確定申告を行う際、「移動平均法」か「総平均法」どちらかの計算方法を選択する必要があります。計算方法は途中で変更できますが、以下の3点に注意しましょう。
届け出なかった場合は「総平均法」が適用されます。それぞれの計算方法は「購入時の単価を求めること」が目的です。ただし下記のようなメリットとデメリットがあるため、自身に合った計算方法を選ぶことが大切です。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
移動平均法 |
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|
総平均法 |
|
|
仮想通貨を購入する度に、購入時の単価を求める方法です。購入の度に平均単価を算出する必要があるので、多くの売買を行う場合、複雑な計算を行ないます。その一方で売買の度に計算することから、実際の損益と計算上の損益が近しくなるほか、年の途中であってもその段階の損益を把握でき、所得や税金の予想がしやすくなるでしょう。
そのため、取引が少ない人や正しい税金の額を出したい人、年の途中で損益を把握したい人などにおすすめです。
1年間に購入した仮想通貨の平均単価で、購入時の単価を求める方法です。対応する期間が終わった後にまとめて計算ができ、非常に容易と言えます。しかし正確な損益を出しにくく、対象期間が終わるまで正しい損益が把握できません。そのため「取引回数が多いから容易に計算を行ないたい人」などに向いています。
仮想通貨の取引で損失が出た場合、給与や株式の売買で得た所得など、他の区分所得に対して損益通算はできません。ただし仮想通貨同士や雑所得内での損益は対象です。
また、仮想通貨は「雑所得」に該当するため、利益から差し引いてもさらに損失が残る場合、向こう3年は損失を繰り越せる「繰越控除」も対象外になるので注意しましょう。
会社員が仮想通貨で得た所得に対する税金は、給与所得と合算して以下の手順で求めます。
会社からの給与所得金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の給与等の額」です。「支払金額」は給与の「収入金額」に該当するため、間違えないようにしましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税の速算表 出典:No.2260 所得税の税率|国税庁
また現在は、求めた所得税額に復興特別所得税として2.1%が加算されます。
実際の計算例として以下の条件で計算を行ないます。
この際に納めるべき税金は182,300円です。
→182,300円(100円未満切捨て)
仮想通貨の損益を正しく把握するには、計算ツールの使用が便利です。
仮想通貨の取引が多ければ多いほど計算は複雑になり、計算ミスが発生するかもしれません。そこでシステムの自動計算で手間とミスの両方を削減できる計算ツールの活用をおすすめします。移動平均法でも簡単なため、損益や税金をシミュレーションしながら仮想通貨の売買ができます。
特におすすめのツールが「Gtax」です。Gtaxでは仮想通貨の損益の自動計算に加えて、仮想通貨の評価方法の届出書も作成できます。また対応している仮想通貨取引の多さと、高いセキュリティも魅力となっています。無料で使用できるプランから提供されているため、税務手続きを簡易に、ミスなくやりたい人に大変おすすめです。
仮想通貨で得た所得の確定申告を行うには、確定申告書をはじめとした税務署に提出する書類を準備しましょう。事前に確定申告のやり方を把握することで、実際の手続きもスムーズになるでしょう。
仮想通貨の確定申告を始める前に下記の提出書類を用意しましょう。
確定申告書は税務署の窓口や国税庁のホームページから入手できます。なお電子申告で手続きを行う場合、確定申告書の用紙は不要です。また源泉徴収票は職場から、仮想通貨の取引に関する書類(年間取引報告書)は取引所から年の始めに郵送されます。
確定申告書は分離課税の申告でない限り「第一表」と「第二表」で構成されています。そして仮想通貨の税金の確定申告をする際は「第二表」からの作成がおすすめです。
第二表は所得の内訳や各種控除の詳細等を記載する欄となっています。そのため先に第二表を作成することで、第一表の一部は転記をするだけで記載ができるのです。
【確定申告書第二表の書き方】
記載項目に該当していない場合は空欄での提出で問題ありません。
ただし「住民税に関する事項」の「住民税の徴収方法の選択」をする際に注意が必要です。ここで「給与から天引き」にすると、仮想通貨分の所得に関する住民税も会社で徴収されます。一方で「自分で納付」にすると給与所得以外の住民税の税金は自分で納付することとなります。住民税の徴収で会社に仮想通貨の利益がバレたくない場合は「自分で納付」を選択するといいでしょう。
確定申告書第二表の記載が完了したら、次に第一表の作成を行ないます。
【確定申告書第一表の書き方】
確定申告の提出方法は以下の3点です。
確定申告の提出期間は原則として2月16日から3月15日までです。ただし開始日か終了日が土日の場合は、変更となる可能性があります。必ず国税庁のホームページで確認しておきましょう。
税金の納付方法は以下の5つです。
所得税の税率は累進課税を採用しており、仮想通貨の取引で得た利益が多ければ多いほど税率は上がります。少しでも税額を減らしたい人は、適切な節税対策を練ることが大切です。
仮想通貨の取引でも、必要経費を正しく計上することで支払う税金を抑えられる場合があります。仮想通貨の売買だけでなく市場の動向調査や、運用に関する学習などで発生するさまざまなコストを経費として計上すれば、節税できるかもしれません。たとえば仮想通貨の投資にあたって、以下のような項目は必要経費と認められる可能性が高いでしょう。
仮想通貨の取引を行うための端末購入費が10万円を超えた場合は、基本的に固定資産として計上して減価償却の対象となってしまい、一括で経費計上することはできません。
また、上記以外にも、家賃や電気代・通信費といった項目は必要な割合を按分することで経費として認められる場合があります。按分とは家賃などの生活と事業の両方に必要な費用を、一定の割合で分割して経費として計上することです。このような費目を「家事関連費」といい、使用している割合や頻度で割合が変動し、一定の割合で按分計算します。
仮想通貨の取引で得た利益と別の仮想通貨で損失が発生した場合、相殺できます。この損益通算の特例を利用することで全体の課税所得が減るため、税負担を軽減できるでしょう。
たとえばビットコインで60万円の利益を得た一方、イーサリアムで20万円の損失を出した場合、この2つを相殺すると課税所得は40万円となります。ただし、この手法を考えるときは確定申告で正確に損益を計算して報告しましょう。
また年末調整を行なったうえで年間の取引で得た利益を20万円以下に抑えられれば、所得税の確定申告を行う必要はありません。税率も考慮しつつ、計画的に取引することをおすすめします。
個人事業主として青色申告の手続きを行い、登録が認められれば最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。登録されると仮想通貨の取引で得た所得が「事業所得」として認められるため、「損益通算」や「繰越控除」が適用されるでしょう。ただし、1年間に300万円を超える収入金額があり、かつ、暗号資産取引にかかる帳簿書類を保存しているなどの要件があります。
仮想通貨の取引で大きな利益を得られるようになった場合は、法人を設立して法人税を納めるのもおすすめです。法人税の最高税率は25.5%と所得税よりも低いため、大幅に税負担を軽減できるでしょう。
ただし法人を設立すると、赤字や利益が少なくても毎年決算と確定申告が必要なほか、事務処理が煩雑化するため手間が増えます。さらに赤字を出しても最低で年間7万円の法人住民税均等割を支払う必要もあり、個人よりも年間の運営コストが多くかかるので注意しましょう。
さらにふるさと納税や生命保険料控除、住宅ローン控除など、税額控除を利用するのもおすすめです。これらの制度を上手に活用することで所得税や住民税の負担を軽減できるので、ぜひ活用してみてください。
今回は仮想通貨に関する税金の計算方法や、確定申告の方法、利益を申告しなかった場合のリスク、節税対策について解説しました。
確定申告は税区分や経費計上の分類など煩雑な業務が多く、それだけで手間と時間がかかります。税理士に依頼すれば手間なく正確な確定申告ができるので、申告漏れの心配はありません。
仮想通貨によって得た所得を正しく申告しなかったり、申告を忘れたりすると多額の追徴課税が課せられます。専門家に任せられる点は任せ、負担を減らして適切に申告しましょう。
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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