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確定申告書の印鑑押印が不要に|2021年4月以降の改正が簡単にわかる4つのポイント

最終更新日: 2023年01月05日

「確定申告書の押印欄が見当たらない」「どこに印鑑を押せばいいのか」と焦ってはいないでしょうか。令和3年(2021年)の税制改正により、確定申告書をはじめとする税務関係書類のほとんどが押印不要になりました。それに伴い、確定申告書などでは押印欄も廃止されています。

例外で押印が必要な書類や、印鑑を押してしまった場合どうなるのかなど、確定申告を安心して進めるためのポイントをわかりやすく解説します。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

 

税務関係書類の押印義務が廃止!簡単にわかる4つのポイント

印鑑と朱肉

令和3年度税制改正により、令和3年(2021年)4月1日以降、確定申告書を含む多くの税務関係書類の押印義務が廃止されました。しかし担保提供関係書類など、例外的に押印が必要な書類も一部残っています。

なお押印不要の書類に押印してしまった場合も問題はありません。過去に入手した押印欄のある書類も使用可能です。

確定申告書など税務関係書類への押印義務廃止【2021年4月以降】

令和3年度の税制改正で多くの税務関係書類の押印義務が廃止され、改正前と改正後では以下の点に変更がありました。

改正前 改正後
国税 国税通則法第124条2項にて税務書類の押印が必要である旨の定めがあった 改正前の定めが削除され、押印の必要がなくなった(ただし例外あり)
地方税 各自治体の規定によるが押印の必要がある場合が多かった 押印の必要がなくなった

このように多くの税務関係書類の押印義務がなくなりましたが「担保提供関係書類」など例外として押印が必要な書類も一部残っています。

また、代理の方に納税証明書の交付請求等を依頼する時に必要な委任状等への押印も不要になりました。ただしこちらも例外があり、特定個人情報の開示請求や閲覧申請手続は委任状の押印が必要です。これらは実印の押印及び印鑑登録証明書等の添付などで委任の事実を確認しているためです。

これらの改正は令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類に適用されます。

押印義務がある提出書類も存在【例外】

例外として「担保提供関係書類」や「遺産分割協議書」には押印義務が残っています。

税務関係書類の押印要否
引用:財務省リーフレット

例外書類に関しては、いずれも押印をする人の意思を確実に反映させるため、押印(実印)だけでなく印鑑証明書までを要します。このことからシャチハタは使用不可なのでご注意ください。

担保提供関係書類

上記表の(2)担保提供関係書類は以下のような書類です。

  • 納税の猶予の申請、換価の猶予の申請などを行う場合などに際し、担保提供をしたり第三者が納税保証をしたりするケースでの担保提供者や保証人等の真意を確認するための書類
  • 相続税の物納を申請するケースでの登記を嘱託する際に必要となる書類

これらは「法令に定める者の押印(実印)」と「印鑑証明書」の添付が必要になります。

詳しくは国税庁のHPをご参照下さい。

遺産分割協議書

上記表の(3)「遺産分割協議書」ですが、税務関係書類として遺産分割協議書を添付する場合には全ての相続人の押印(実印)があるものの写しと印鑑証明書の添付が必要になります。

必要な場面は、配偶者に対する相続税額の軽減など相続税又は贈与税の税務上の特例を受ける場合です。こちらも詳しくは国税庁のHPをご参照下さい。

押印してしまった場合も問題なし

一部の例外を除いて多くの税務関係書類には押印は不要となりましたが、押印してしまった場合もそのまま提出してかまいません。押印されていても確定申告書の内容への影響はないためです。

「誤って押印してしまったから、書き直しをしないといけないのか・・・」と不安になる必要はありません。そのまま心配せずに提出しましょう。

過去に入手した押印欄のある書類も使用可能

過去に入手した押印欄のある書類も使用できます。また用紙に押印欄があったとしても、例外の書類を除いて押印の必要はありません。

税務署で印刷されている申告書等の用紙は、制度改正前の押印欄があるものもまだ出回っています。ホームページに掲載してある様式は順次更新されているものの、押印欄のあるものが残っていることも。また税務署窓口で備置きや配布をしている様式に関しても押印欄付きのものが存在します。

いずれもそのまま使用可能なので、押印欄があるからといって現在の様式の書類を別で用意する必要はありません。

確定申告の必要書類で押印不要のもの

確定申告の手続

確定申告の手続上で押印不要となった書類を、押印欄がなくなった該当箇所とあわせて紹介します。

  • 確定申告書:申告するすべての人が提出
  • 青色申告決算書:青色申告をする人が提出
  • 収支内訳書:白色申告をする人が提出

確定申告書

確定申告書の押印欄比較
引用:左が令和2年分以前用の確定申告書、右が令和3年分用の確定申告書

確定申告をするうえで欠かせない「確定申告書の第一表」は押印欄が廃止されました。確定申告書AとBのいずれも制度改正前は氏名の右に印を押す場所がありましたが、改正後は印の文字がなくなっています。

なお令和5年(令和4年度の確定申告)より確定申告書AとBが統合となり1本化されましたが、こちらにも押印欄はありません

青色申告決算書

青色申告決算書の押印欄比較
引用:左が令和2年分以前用の青色申告決算書、右が令和3年分用の青色申告決算書

青色申告をする際に添付が必要な「青色申告決算書」も押印不要です。制度改正前は氏名の右に印を押す場所がありましたが、改正後は印の文字がなくなっています。

収支内訳書

収支内訳書の押印欄比較
引用:左が令和2年分以前用の収支内訳書、右が令和3年分用の収支内訳書

白色申告をするうえで必要になる「収支内訳書」も押印欄が廃止されています。制度改正前は氏名の右に判子を押す場所がありましたが、改正後は「印」の文字がなくなりました。

最新の青色申告決算書・収支内訳書は以下を参考ください。

参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

「開業届」や「給与所得者の扶養控除等証明書」も印鑑押印不要に

確定申告書以外にも、押印が不要となっている税務関係書類は多くあります。

例えば青色申告を選択するために届け出が必要な「開業届」や「青色申告承認申請書」も押印不要です。以前は氏名の右側に押印欄がありましたが、新しいひな型ではなくなっています。

また会社員など給与所得者が勤務先に提出する「扶養控除等証明書」も印鑑の押印が不要となりました。

押印欄がなくなった扶養控除等証明書
引用:給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書

このように、押印不要の書類は確定申告をする人だけでなく会社員にも関係しています。たかが押印といえども何気にひと手間かかる作業。押印の必要がなくなれば、書類作成も少しは楽になりますね。

印鑑廃止の背景は行政手続きのデジタル化

デジタルトランスフォーメーション

令和3年度税制改正でほとんどの税務関係書類の押印が廃止された背景には「行政のデジタル化によって行政手続コストを削減すること」および「感染症の拡大による税務手続の負担軽減を図りたい」といった事情がありました。

2021年の税制改正では書類の押印廃止だけでなく、ペーパーレス化の動きによる電子帳簿保存法の改正やスマホのアプリ決済サービスを利用した国税の納付が可能とする制度の創設が行われ、実際に実行されています。「脱ハンコ」を先駆けに、今後ますますデジタル化の動きが進んでいくことが推測されるでしょう。

ペーパーレス化【電子帳簿保存法】

電子帳簿保存法は帳簿書類を紙ではなく電子データで保存する際の取り決め(条件)を定めている法律です。帳簿のペーパーレス化を狙って創設された制度ですが、保存するための要件が厳しく普及がなかなか進みませんでした。令和3年度税制改正では税務署への事前承認制度の廃止など、電子保存が利用しやすいように要件を緩和しています。

しかし逆に義務化された部分や必要な準備も増え、改正への対応に追われる側面も。2022年1月1日から電子データ保存義務の改正が施行される予定でしたが、令和4年度税制改正大綱では2年間(2023年12月31日まで)の猶予期間が設けられています。

関連記事:【2022年1月施行】電子帳簿保存法改正の5つのポイントをわかりやすく解説|ミツモア

国税のスマホアプリ決済

国税のスマホアプリ決済対応が2022年12月1日よりスタートしました。「PayPay」「d払い」「au PAY」「LINE Pay」「メルペイ」「amazon pay」に対応しており、国税スマホ決済専用サイトで手続きできます。

スマホアプリ決済は自動車税などの地方税では一部の自治体で導入されてきていますが、国税は対応していませんでした。それが令和3年度税制改正により「30万円以下であれば税目の制限なく対応」することとなったのです。

クレジットカードで国税を支払う場合は決済手数料がかかっていましたが、Pay払いの場合は決済手数料がかからず、また金額に応じてポイントがたまる点がメリットと言えるでしょう。

確定申告の準備はお早めに【脱ハンコで簡略化】

行政のデジタル化を背景とした税務関係書類の印鑑不要の改正についてご紹介しました。ハンコを押す手間がなくなるだけでなく、押し忘れによる再提出なんてこともなくなります。今まで税務関係書類には押印が当たり前だったので、いきなり押印欄がなくなると不安になってしまいますが、安心して印鑑なしで申告してください。

そして確定申告の準備は早めに行いましょう。内容に不安がある場合や事務手続の負担を減らしたい場合など、専門家に相談したい方は早めに税理士に相談してみることをおすすめします。 

監修税理士からのコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

印鑑の押印が不要になったことで、確定申告の手間が一手間減りました。今後はよりデジタル化への流れが加速して行くものと思いますので、この機会に電子申告にチャレンジしてみるのもおすすめです。

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