この記事では、製品、商品の発送や梱包に伴う経費の勘定科目「荷造運賃(にづくりうんちん)」について解説します。
経費処理の際「消耗品」「通信費」と混同しやすい勘定科目ですので、仕訳のポイントについて理解しましょう。
「個人事業主として独立したが、商品販売の際に発生した郵送料金や梱包費用をどのような経費にすればよいかと?」という疑問にお答えします。
この記事を読むことで、「荷造運賃」の正しい使い方を理解して、自信を持って経費の処理ができるようになります。
この記事の監修税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
荷造運賃に該当する経費
まずは「荷造運賃」の勘定科目に含まれる経費を確認しましょう。
荷造運賃とは
「荷造運賃」とは、製品、商品の発送にかかる経費を計上する勘定科目です。具体的には宅配便の配送料、運送料、ゆうパックなどの郵送代と荷造りにかかる梱包資材費用に分類されます。
また、混同しやすい勘定科目として「通信費」が挙げられます。「荷造運賃」と「通信費」を区別するためのポイントは商品の発送に関わる費用かどうかという点です。詳しい解説は次の項目でおこないます。
荷造運賃に含まれる経費
「荷造運賃」に含まれる具体的な費用の内容を確認してみましょう。「荷造運賃」の経費の内容を発送費用と梱包費用に分類して紹介します。
①発送費用
- 郵便手数料(郵送代)
- 宅配便料金
- 飛行機、トラックなどの商品の運送費、運搬費
②梱包資材費用
- 段ボール
- 緩衝材
- ビニールテープ、ガムテープ
- 包装紙
荷造運賃の消費税区分
「荷造運賃」は基本的に消費税の課税対象となります。しかし、海外に商品の発送をする場合は免税となり消費税の対象外となるので注意しましょう。免税となるのは、基本的に消費税は国内での取引に限定されているからです。
荷造運賃と通信費の違い
「荷造運賃」と「通信費」はとても混同しやすい勘定科目です。そのため、仕訳の際には注意が必要です。ここでは「荷造運賃」と「通信費」を区別するポイントを紹介します。
通信費と荷造運賃の違い
発送費用を経費に計上するときには「通信費」と「荷造運賃」の両方の可能性があります。そのため、勘定科目を決定する際には、使用目的を確認する必要があります。商品の発送に関する場合は「荷造運賃」に計上して、それ以外の目的に場合は「通信費」に計上します。
具体的な「通信費」と「荷造運賃」の使い分けの例としては、以下のようなものがあります。
領収書や請求書などの書類を取引先に郵送した経費→「通信費」
商品の発送のために発生した経費→「荷造運賃」
使用目的によって勘定科目が変化するので注意しましょう。
発送のために使用した切手
書類や商品の発送のために切手代が発生することがあります。この場合も、商品の発送に関わる経費の場合は「荷造運賃」となり、それ以外の場合は「通信費」となります。
ゆうパックやレターパックを使用した場合
ゆうパックやレターパックを利用した場合も同様に、商品の発送に関する経費の場合は「荷造運賃」となり、それ以外の経費の場合は「通信費」となります。
emsや国際郵便を利用した場合
次に、emsや国際郵便を利用した場合についても確認していきます。この場合も上記と同様に商品の発送に関する経費の場合は「荷造運賃」となり、それ以外の経費の場合は「通信費」となります。
さらにこの場合は郵送先が海外のため消費税が免税になり、課税対象外であることに注意しましょう。この場合に、消費税が免税となることは「荷造運賃」と「通信費」どちらにも共通しています。
その他の勘定科目を使用する場合
「荷造運賃」と混同しやすい経費には、他にもあります。ここでは「通信費」以外の迷いやすい経費処理について取り上げていきたいと思います。
商品を仕入れるための郵送料は仕入高で処理
郵送料の中でも商品の仕入れに関する経費は、「仕入高」となります。「荷造運賃」は、商品の発送の経費のみが計上されるので注意しましょう。
梱包資材は消耗品費でもOK
商品の発送などに関わる梱包資材ですが、商品の発送以外の事務作業でも使用する場合があります。そのため、「消耗品費」としても処理することが可能です。「荷造運賃」に該当しない使い方も含まれている場合は、「消耗品費」として計上しておくと計算が簡単です。
梱包用品は「荷造運賃」と「消耗品費」のどちらに計上することもできますが、継続して同じ科目を使用することに注意しましょう。会計では同じ経費には同じ勘定科目を継続適用することが基本となります。
引越し費用は荷造運賃で処理可能?
引越しに伴う費用は商品の発送に伴う費用でありませんが、例外的に「荷造運賃」に計上することもできます。しかし、一般的には「雑費」として計上することが多いので、特に理由がなければ、「雑費」に計上しましょう。
着払いの勘定科目
相手から送られてきた荷物、郵便を着払いで受け取る際の勘定科目についてはその配送物の使用目的、内容により勘定科目が変わります。
社内で統一した勘定科目のルールを作り、それに沿って仕訳をすることが大切です。
例えば、書類、カタログなどが送られてきた場合は「通信費」、仕入れた商品の場合は「仕入」、消耗品を購入した場合の着払いは「消耗品費」になります。
着払いで商品、製品が返品された場合は「荷造運賃」とルール化している場合は、それに沿って仕訳を行いましょう。
荷造運賃の仕訳例
次に、「荷造運賃」の具体的な仕訳の方法を紹介します。「荷造運賃」は費用となるので、基本的に借方(左側)に計上されることになります。その場合の貸方(右側)は、現金払いや引き落としなどの支払い方法によって勘定科目が変化します。
商品を発送した際に生じる発送費の仕訳例
商品を発送する際に発生した経費を仕訳する場合を具体例で確認してみましょう。
(具体例1)
9/1日に商品を取引先に発送した。発送費用1,080円(税込)を現金で支払った。 |
借方 | 貸方 | ||||||
日付 | 勘定科目 | 補助科目 | 金額 | 勘定科目 | 補助科目 | 金額 | 摘要(具体的な内容) |
9/1 | 荷造運賃 | 1,080 | 現金 | 1,080 | 商品の発送代金 |
商品の発送の際に発生した経費は「荷造運賃」となります。商品以外の発送の場合は「通信費」なるので注意しましょう。
梱包用ガムテープを購入した際の仕訳例
次に商品を発送するために必要な梱包用ガムテープを購入した場合の仕訳例を紹介します。
(具体例)
9/1日に商品発送の際に必要な梱包用ガムテープ1,080円(税込)で購入した。代金は現金で支払った。 |
借方 | 貸方 | ||||||
日付 | 勘定科目 | 補助科目 | 金額 | 勘定科目 | 補助科目 | 金額 | 摘要(具体的な内容) |
9/1 | 荷造運賃 | 1,080 | 現金 | 1,080 | 梱包用ガムテープ代 |
梱包用ガムテープは「荷造運賃」ではなく、「消耗品費」として計上することもできます。ただし、一度処理方法を決めたら継続適用を確実にするようにしましょう。
荷造運賃を正しく理解して経費を計上しよう
ここまで、「荷造運賃」を正しく経費処理する方法について紹介してきました。重要なポイントをまとめる以下の3点となります。
- 「荷造運賃」に計上できる経費は、商品の発送に伴う場合の発送費用と梱包費用のみである。
- 「荷造運賃」と混同しやすい勘定科目として「通信費」が挙げられる。「通信費」は商品以外の発送に伴う費用が計上される。
- 梱包用の資材は「荷造運賃」と「消耗品費」のどちらでも計上できるが、継続適用することが重要である。
「荷造運賃」を正しく計上することで、適切な経費計上をしていきましょう。もし経費の計上でわからないことがあれば、迷わず税理士に相談するようにしましょう。
監修税理士のコメント
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この記事の監修税理士
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