国民健康保険料は、確定申告することで社会保険料控除として控除を受けられます。
本記事では「少しでも節税したい」「還付金を受け取りたい」方のために、確定申告で正しく国民健康保険料の控除を受けられる対象者の他、申請する際のポイントや手続き方法を解説するので参考にしてください。
国民健康保険料の確定申告をするべき人【年末調整がカギ】
国民健康保険の社会保険料控除を受ける手段は「確定申告」か「年末調整」のいずれかです。
年末調整を受けられなかった人や、個人事業主の方は、確定申告の手続きをして控除を受けましょう。
国民健康保険料は年末調整で提出できる!
国民健康保険料は、実は年末調整で社会保険控除を受けられます。
年末調整を受けられる対象者は以下の通りです。
- 会社勤めで国民健康保険に加入している人※一部例外あり
- 対象の年の途中から会社に復職して働いている人
勤めている職場の年末調整で控除手続きを行っていれば、国民健康保険料の確定申告をする必要はありません。年末調整では職場に「扶養控除等申告書」等の書類を提出するだけで、社会保険料控除を受けられます。
確定申告と比較して手続きが圧倒的に簡単なので、年末調整を受けられる場合は忘れずに控除手続きを行なっておきましょう。
ただし医療費控除や住宅ローンなど、年末調整で受けられない控除を併せて申請したい場合は、確定申告を行なうこととなります。
年末調整をしていない人は確定申告で控除を受けよう
年末調整で国民健康保険の控除申請をしていない人は、確定申告をすることで控除を受けられます。該当するのは以下に当てはまる場合です。
- 中途で退職して年末調整を受けていない人
- 年末調整で国民健康保険の控除申請をし忘れた人
なお、所得税を納税する義務がある方は、年末調整や国民健康保険料の控除の有無にかかわらず、必ず確定申告しましょう。以下の方が該当します。
- 自営業の方(個人事業主やフリーランスなど)
- 給与以外に年間20万円以上の所得がある方(副業収入等)
- 2箇所以上から給与をもらっている方
- 給与所得が2,000万円以上の方
確定申告ではその年の1年間分の収入等をとりまとめ、翌年の2/16~3/15の期間内に申告手続きを行なってください。
控除を受けられるのは「実際に払った金額」かつ「支払った人」
そもそも国民健康保険は会社勤め等で社会保険に入っている方「以外」の、すべての国民が加入する保険制度です。
所得がない子どもなども国民健康保険の加入者であることから、保険料は世帯主がまとめて支払うことになっています。
「家族分まとめて保険料を支払っているが、控除の対象者はだれ?」と迷ったら、国民健康保険料の控除を受けられるのは支払った人で、払った分のみという点を覚えておきましょう。
世帯主以外でもOK・「実際に支払った人」が控除の対象
生計を同一とする家族の国民健康保険料をまとめて支払っている場合、その金額分も控除の対象として申告できます。
国民健康保険料の納税義務者は世帯主と一律で決まっていますが、「実際には配偶者や、子が支払っている」という例も少なくありません。このように世帯主以外の方が支払った場合は、支払った本人の所得税の控除対象となります。
保険料の支払いを折半や按分している場合は、自分が負担した額のみが社会保険料控除の対象です。
対象期間中「実際に払った金額」が控除可能
社会保険料控除の対象となるのは「対象年分の1月1日から12月31日の期間内に支払った国民健康保険料」です。
たとえば令和4年分の確定申告(令和6年2月16日~3月15日に手続き)で対象となるのは、令和5年1月1日から令和5年12月31日までに「実際に支払った保険料の全額」となります。
支払っていない保険料は含まれない
一点「年度内に実際に支払っていない国民健康保険料は社会保険料控除の対象とならない」という点に注意しましょう。たとえば令和5年の12月分の保険料であっても、実際に納付したのが令和6年1月の場合は、令和5年分の確定申告における控除対象とはなりません。
一方で、納付期日が到来していない国民健康保険料であっても、年度内に納付を行なっていれば控除の対象となります。
この部分を誤って算入してしまうと、修正申告などの余計な手続きを行なう必要が出てくるため注意しましょう。
国民健康保険料の納付額を確認するには?
国民健康保険料は主に市区町村によって運営されていて、納付額の通知方法はその区によって異なります。
「納めた国民健康保険料がわからない」という場合には、まずはお住まいの自治体のHPを確認してみましょう。窓口や書面で納付額がわかる書類を発行できたり、通帳で確認できたりするようです。
一般的には、1~2月頃に「国民健康保険料の納付額証明書」が送られてきます。こちらも「国民健康保険料年間納付済額のお知らせ」など、自治体により名称は様々です。
国民健康保険料控除を受けるための3STEP【確定申告の流れ】
社会保険料控除を受けるには、所得税の確定申告書「社会保険料控除」の記入欄に、その年に支払った国民健康保険料の全額を記載します。
なお確定申告の提出時に、国民健康保険料の納付証明書類の添付は不要です。
本記事では確定申告書類の準備から提出までの大まかな流れを解説します。より詳しい手順を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
①必要書類を用意する
まずは確定申告書を作成するための必要書類を用意します。
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確定申告書は以下の方法で入手しましょう。
- 国税庁のホームページからダウンロード
- 税務署の窓口で入手
- 税務署へ電話を行ない郵送してもらう
給与所得者は、年末までに勤務先から源泉徴収票が渡されます。個人事業主の場合は、取引先から支払調書として、源泉徴収票に近いものが送付されることがあります。必ず送付されるものではありませんが、確定申告書を作成する際には、便利なものなので保管しておきましょう。
国民健康保険料の納付額証明書(控除証明書)は、1~2月頃、自治体から送られてきます。自治体によっては送付されないこともあるので、領収書は日頃から保管しておくようにしましょう。
領収書を紛失したり、保険料の納付金額が分からなくなってしまった場合は、お住まいの自治体のHPや電話から問い合わせてみてください。
納付額証明書の添付は不要
国民健康保険料の納付額が確認できる「納付額証明書」は、確定申告書への添付は不要です。ただし、納付額証明書の記載事項を基に、確定申告書の社会保険料控除欄を記載するため、大切に保管しておきましょう。領収書とは異なり、年間で合計いくら支払ったかが記載されているので、申告手続きが容易になります。
②確定申告書を作成・提出する
必要な書類が揃ったら、確定申告書に記入していきます。確定申告書作成コーナーを利用した電子申告だと計算が自動で行なわれるため、労力が減って楽です。
収入金額等:
個人事業主は主に事業収入、給与所得者は給与額や副業での収入を記載します。給与所得者は源泉徴収票を確認して、手取りではなく支給額を記入してください。
所得金額等:
経費がかかった場合は、それを差し引いた額をそれぞれの収入に対し記載します。給与所得の場合は、源泉徴収票の給与所得控除後の金額を所得金額として記入しましょう。
所得から差し引かれる金額:
「社会保険料控除」の欄に、支払った国民年金保険料を記入します。
なお、社会保険料控除は、国民健康保険料以外にも国民年金保険料等のさまざまな保険料が対象となっています。そのため該当する社会保険料を全て合算した金額を記載する必要がある点に留意しましょう。
何が社会保険料控除に該当するかは以下のページを参考にしてください。
そのほか扶養控除や基礎控除など、該当する控除の金額を記載してください。
税金の計算:
記載されている式に従って、税金の額を計算します。
国民健康保険料等の所得控除額を計算したら「所得金額-所得控除額」を行ない「課税される所得金額」を求めましょう。その金額に応じた税率から所得税額を算出します。「課税される所得金額」に応じた税率は、以下のページを参考にしてください。
計算式に沿って復興特別所得税額(2.1%)を掛け、既に源泉徴収税額がある場合は記載の上、最終的な申告納税額を算出しましょう。
還付される税金の受取場所:
「還付される税金」がある場合、振り込まれる銀行口座を記入します。
第一表の記載が終わったら、第二表も記載しましょう。
なお、確定申告書の作成は「確定申告書作成コーナー」を使えば、案内に沿って入力するだけで計算が完了します。初めて確定申告を行なう方は、確定申告書作成コーナーの利用がおすすめです。
その後に青色申告を行なう場合は決算書等を必要な申告書類を揃え、確定申告書を提出しましょう。税務署に持参または郵送するか、e-taxで作成の上ネット上で提出してください。
なお、青色申告に必要な書類は以下の記事で解説しています。
③還付金の受取や住民税の減額を受ける
税額が還付だった場合、問題が無ければ2週間から1か月半程度で還付金の振込が行なわれます。
住民税の減額は、3月15日までに確定申告した場合、支払った年の翌年6月分からの適用です。
個人事業主などで所得税の納税が必要な場合は、3月15日までに納税手続きをしてください。
還付申告だけなら申告期間に余裕がある(翌年1月1日から5年間)
たとえば令和5年12月31日までであれば、平成30年(2018年)に支払った金額まで遡れます。
ただし、5年間遡れるのはあくまでも「還付申告」の場合のみである点に注意しましょう。国民健康保険の控除を受ける場合であっても、納税義務のある方は確定申告の期限内に申告を行なってください。
なお、既に確定申告を行なった方が、後から追加で控除のための申告をしたい場合は「更正の請求」という手続きをしましょう。確定申告期限(3/15)から5年間申請可能です。
国民健康保険料を確定申告するといくら戻ってくる?
「確定申告で国民健康保険料の社会保険料控除を活用すると、どのくらい税額が異なるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
ここでは国民健康保険料の還付金の計算方法を説明し、還付金が実際いくら戻るのかどうかをシミュレーションしてみましょう。
還付金の計算方法
還付金とは「事前に天引きされた源泉所得税が本来の税額よりも多い場合に、差額が戻ってくる」制度です。計算方法は以下の通りです。
天引きされた源泉所得税額額-確定申告で実際に算出された所得税額=還付金 |
中には「国民健康保険料を支払っていれば源泉所得税の有無に関わらず還付される」と勘違いしている方もいますが、あくまでも還付金の上限は「天引きされた源泉所得税額」である点に留意しましょう。
還付金額をシミュレーション
年間の収支が以下のような方を例に、確定申告をすることによって還付金がいくら戻るのかをシミュレーションしてみましょう。
※他所得控除無し ※社会保険料控除には、国民年金といった各種保険料も含まれます(参考:No.1130 社会保険料控除|国税庁) |
還付金の計算式は以下の通りです。
課税所得金額=2,400,000円-(420,575円+480,000円)=1,499,425円≒1,499,000円 (1,000円未満切捨て)
所得税額=1,499,000×5%=74,950円 (「所得税の税率」に準じた税率) 復興特別所得税を含めた所得税額=74,950円+(74,950円×2.1%)=76,523円 還付金額=245,040円-76,523円=168,517円 |
この方の所得税の還付金額は「168,517円」となりました。
事業年度中に245,040円が源泉所得税として天引きされていましたが、実際に納めるべき税額は76,523円であったため、差額の168,517円が還付されます。
仮に国民健康保険料221,255円を算入していなかったとすると、還付金は「157,234円」です。国民健康保険料の控除をしっかりと受けるだけで、還付金に1万円以上の差が生まれたことが分かりました。
シミュレーションをご自身でも行ってみたい方は、シミュレーションツールを利用するのもおすすめです。
国民健康保険料・対象者は確定申告で控除を受けよう!
年末調整を受けられるなら、職場での手続きのみで国民健康保険料の控除を受けられます。職場で手続きした方であれば、確定申告する必要はありません。
しかし年末調整していない場合や、医療費控除なども受けたい場合は、しっかりと納めた保険料を確認して確定申告しましょう。
期限内に正確に申告すれば、還付金を受け取れたり、所得税と住民税の負担を減らせたりできます。
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国民健康保険の控除以外にも、確定申告時には知っておきたい節税の方法がたくさんあります。確定申告は収入や経費に関する書類の準備だけでなく、さまざまな控除についての書類の準備などがあり、わからないことも少なくありません。
そんなときは、税金のプロである税理士に不明点の相談や書類作成を依頼するのがおすすめです。
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帳簿付けに慣れていて、日々処理をしている事業者であっても、確定申告書作成には時間がかかるもの。万が一申告が遅れれば、延滞税や加算税などのペナルティも発生します。
日々の仕事にできるだけ影響を与えず、早く確定申告を終わらせるためにも、税理士への依頼は有効な方法です。
確定申告の期間だけ、帳簿付けや書類作成などをお願いする個人事業主の方も増えています。
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