初めて確定申告を行うとき「確定申告ってそもそも何をすればいいの?」「自分は当てはまるの?」「やり方が全然わからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
個人事業主やフリーランスの方はもちろん、会社員でも一定以上の収入がある方や副業をしている方は確定申告する必要があります。
本記事では初めて確定申告する方や、確定申告のやり方を具体的に知りたい方に向けて、必要な書類や実際の流れについてわかりやすく解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
見出し
確定申告とは?いつ何をするのか全くわからない人に解説
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間における収入から、控除や経費などを差し引くことで所得を算出し、それらに基づいて所得税を確定させた上で、税務署に申告・納税(または還付)する一連の手続きを指します。
基本的に、会社員の方や、アルバイト、パートの方は会社が年末調整にて、所得税金額を確定させるため、確定申告は不要ですが、特定のケースでは必要になります。
どの時期に申告するのか、所得とはそもそも何なのかなどについて、この章で詳しく見ていきましょう。
所得とは?種類や収入との違い
「収入」は、売上、給与などその1年間で得た金額全てを指します。
一方の「所得」は、「収入」から仕入れ額や、必要経費を引いた金額を指します。
また、所得から扶養控除や配偶者控除などの各種控除を差し引いた金額は「課税所得」になります。
確定申告では、この所得を確定した上で税金を計算・申告・納税していきます。
なお、所得は以下の10種類に分類されています。
所得の種類 | 概要 |
---|---|
利子所得 | 預貯金などの利子、公社債投資信託などの収益分配に係る所得 |
配当所得 | 株主や出資者が受け取る配当、投資信託などの収益分配(公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託以外)に係る所得 |
不動産所得 | 土地や建物などの不動産、借地権など不動産上の権利、船舶・航空機の貸付などに係る取得 |
事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得 |
給与所得 | 勤務先から受領する給料、賞与などの所得 |
退職所得 | 勤務先を退職する際に受け取る退職手当、厚生年金基金等の一時金などの所得 |
山林所得 | 山林を伐採して譲渡、あるいは立木のまま譲渡した際に生じる所得
※所得してから5年以内の伐採、譲渡は事業所得、雑所得に該当 |
譲渡所得 | 土地、建物などの資産を譲渡した際に得た所得 |
一時所得 | 上記所得に該当しないもので営利を目的とする継続的行為以外の所得 例)懸賞金、生命保険一時金、競馬の払戻金など |
雑所得 | 上記所得のいずれにも該当しない所得 例)公的年金、副業に係る所得、非営業用貸金の利子など |
毎年2月16日~3月15日に申告する
納税義務のある方は、1月1日~12月31日までの1年間の所得を対象に、所得税額を計算して、翌年の2月16日〜3月15日に申告・納付します。
納税義務のある方は個人事業主やフリーランス、副業所得のある会社員などです。
詳しくは『確定申告する必要がある人【個人事業主・給与所得者】』で解説しています。
「還付申告」は翌年1月1日~5年間まで行える
支払いすぎていた税金を還付(返金)してもらう手続きを「還付申告」と呼びます。ふるさと納税などの「寄附金控除」、年10万円以上の医療費を払ったときの「医療費控除」などの申告が可能です。
還付申告は1か所からしか給与をうけとっていない会社員や、一定金額以下の年金受給者など、確定申告する義務がない方も申告できます。
還付申告の申請期間は、その年の翌年1月1日から5年間です。
所得税の計算方法
所得税は以下の計算方法で算出されます。なお、所得税額を割り出した後に、実際の納付税額が算出されるといった、二段階の計算方法であることを事前に把握しておきましょう。
①所得税額=(所得−所得控除)×所得に応じた税率
②実際に納付する所得税額=所得税額−所得に応じた控除額−税額控除
上記を詳しく解説すると、まずは一年間の収入合計から支出合計を引いて所得を求めた後、所得控除の種類に応じた“所得控除額”を引き「課税所得額」を算出します。
そして、その課税所得額に対し、所得に応じた税率を掛けると「所得税額」が算出されます。
さらに、実際に納付する所得税額を割り出すために、所得税額から所得に応じた控除額と税額控除額を引きます。すると「納付する所得税額」が算出されるといった計算方法です。
所得税に関するさらに詳しい内容は以下の記事で解説しています。
所得控除の種類
前述の「所得控除の種類」について、以下の表に詳しくまとめています。
【物的控除】
種類 | 概要 |
---|---|
医療費控除 | 納税者本人とその人と生計を一にする配偶者やその他の親族が一定額以上の医療費を支払った際に受けられる |
社会保険料控除 | 納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられる |
生命保険料控除 | 納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に受けられる |
雑損控除 | 災害または盗難もしくは横領によって「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産の損害があった場合に受けられる |
寄附金控除 | 納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し「特定寄附金」を支出した場合に受けられる |
地震保険料控除 | 納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料、または掛金を支払った場合に受けられる |
小規模企業共済等掛金控除 | 納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に受けられる |
【人的控除】
種類 | 概要 |
---|---|
基礎控除 | 確定申告や年末調整において所得税額を計算する場合、総所得金額などから差し引ける控除 |
扶養控除 | 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる |
配偶者控除 | 納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親である場合に受けられる |
勤労学生控除 | 納税者自身が勤労学生である場合に受けられる |
寡婦控除 | 納税者自身が寡婦である場合に受けられる |
配偶者特別控除 | 配偶者に48万円(令和元年分以前は38万円)を超える所得があるため配偶者控除が適用されない場合に受けられる |
障害者控除 | 納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる |
所得税の税率
課税所得額に対して掛けられる「所得税の税率」について、以下の表でまとめています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
※ 平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。
上記表を見て分かる通り、課税所得額が高いほど税率も上がる仕組みとなっています。
税額控除
税額控除とは、最終的に算出された所得税額(所得税額−所得に応じた控除額を指す)に対して差し引ける控除のことを言います。
おもな税額控除は以下の通りです。
- 配当控除
- 分配時調整外国税相当額控除
- 外国税額控除
- 政党等寄附金特別控除
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
- 所得税額から控除される特別控除の特例
など
似たような控除に、前述で解説した「所得控除」がありますが、両者は全く意味が異なります。所得控除は課税所得から直接差し引ける控除であるのに対し、税額控除は「算出された所得税額」から差し引ける控除になります。
確定申告と年末調整の違い
確定申告と年末調整の違いは、所得税に関わる手続きを「誰が行うか」という点です。
「確定申告」とは、所得税額を確定させるために“納税者本人”が行う申告手続きです。一方の「年末調整」とは、被雇用者から預かっている所得税を正しく精算するために、“雇用者側”が行う申告手続きのことです。
どちらも、正しい所得税を納めるための申告業務という点には変わりなく、わりと混同されがちですが、上記の点を理解していないと、認識に齟齬が生まれ、手続きに誤りが起きてしまう可能性もありますので注意してください。
確定申告する必要がある人【個人事業主・給与所得者】
確定申告をして納税しなければいけないのは、個人事業主やフリーランスの方だけではありません。
以下に当てはまる方は納税義務があるため、忘れずに確定申告しましょう。
なお、確定申告の詳しいやり方については『実際の確定申告のやり方と流れ』で解説しています。
給与所得を受け取っている方
(会社員・アルバイト・パートなど) |
|
---|---|
給与所得を受け取っていない方
(個人事業主・フリーランス・年金受給者など) |
|
その他(株取引を行っている方) |
※一般口座は利益が総額20万円以下であれば義務なし(諸条件あり) |
個人事業主は会社員と異なり、自分で税額を申告し、納付を行わなければなりません。
個人事業主の場合は、一部の取引についてはあらかじめ売上から10.21%の税額を差し引いて、取引先が代わりに所得税を納税する仕組みがあります。とは言え、金額はあくまでも概算であるため、年末に所得が確定したタイミングで正確な税額の申告があらためて必要です。追加で納税するケースと、還付金を受け取れるケースがあるでしょう。
会社員の場合、年末調整で会社が代わりに税金を納めてくれるため、基本的に確定申告は必要ありません。ただし、会社の給与や副業の収入が一定の所得を越える場合は、確定申告をする必要があります。年末調整は1か所でしか行なえないため、2か所で給与を受け取っている方も同様です。
確定申告するとお得になる人
確定申告する義務がない場合でも、申告することで税金の控除を受けられたり、還付金を受け取れたりする可能性があります。以下に当てはまる方は確定申告を行うと良いでしょう。
年末調整前に退職し、その後年末調整していない方
年末調整前に退職した場合、本来納めるべき税額よりも多くの源泉所得税が控除されている可能性が高いと言えます。
他の会社に転職した場合はその会社で年末調整が行われます。ただしタイミングによって年末調整ができなかったり、転職せず無職になったりした場合などは、確定申告することで還付金を受け取れるかもしれません。
年10万円超の医療費を払った方
生計を同一とする家族が年十万円超の医療費を支払った場合、医療費控除を受けられます。
ふるさと納税や寄付を行った方
ふるさと納税などの寄附を行った場合、寄附金控除によって税金が還付される可能性があります。
現在では、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」により、確定申告を行わずに寄附金控除や税金の還付を受けることが可能です。
ただし、以下の要件に該当する場合はワンストップ特例制度を利用できないため、控除を受けるためには確定申告が必要です。
- 年間でふるさと納税をおこなった自治体が6自治体以上ある場合
- ワンストップ特例の申請書を提出していない自治体が1自治体以上ある場合
- もともと確定申告の義務がある場合
住宅ローンを組んだ方
ローンを組んで新築住宅を購入した場合や、特定の住宅改修工事をおこなった場合は住宅ローン控除を受けられるため、税金が安くなります。
住宅ローン控除を受けるには税務署から「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を取得する必要があるため、初年度は確定申告が必要です。
2年目以降は、税務署から取得した計算明細書を利用することで、年末調整にて住宅ローン控除を適用できます。
災害によって被害が出た方
台風などの自然災害や盗難被害にあった場合「雑損控除」を適用することで、税金が還付される可能性があります。災害関連支出が5万円超の場合、適用可能です。
確定申告はなぜ必要?しないといけない理由とは
確定申告を行う必要がある理由として、日本では「申告納税方式」が採用されている点が挙げられます。そもそも納税は国民の義務であり、原則として、日本では労働の対価などによって収入を得た納税者個々人が、税金を正しく計算した上で税務署に申告し、納税する必要があります。
ただし、実際には会社員の方や、アルバイト、パートの方など、確定申告をしていないという方も多いでしょう。これは、雇用している会社側が、所得税の計算をした上で給料から天引きし、代理で納税を行っているためです。この場合、毎年年末には「年末調整」を実施し、実際に支払う納税額との差額を清算します。
なお、会社員やアルバイト、パートの方の場合でも、確定申告をする必要があるケースは『確定申告する必要がある人【個人事業主・給与所得者】』で解説しています。
確定申告に必要な書類
確定申告を行う際に必要な書類は以下の通りです。なお、控除に関する申告は3/15以降もできるため、すぐに用意できない場合は、通常の確定申告を先に行いましょう。
必要な人 | 書類 | 入手場所 |
---|---|---|
全員(電子申告の場合は不要) | 確定申告書 | 税務署または国税庁ホームページ |
全員 | 本人確認書類 (マイナンバーカード、運転免許証など) |
市区町村役場など(手続きあり) |
事業所得 / 不動産所得 / 山林所得がある方 | ・青色申告決算書または収支内訳書 ・帳簿など |
税務署または国税庁ホームページ、会計ソフトなど |
給与所得がある方 | 給与や退職金の源泉徴収票 | 勤務先 |
控除を受けたい方 | 各種、控除を受けるための控除証明書 | 各種入手先 |
確定申告書
確定申告書とは、事業収入などの金額と所得から差し引ける社会保険料控除などの各種控除、所得税額を記載する書類です。
令和4年提出分までは給与所得者用の「A」、誰でも使える「B」の2種類がありましたが、令和5年提出分より1種類に統合されました。従来のB様式に近いですが、第一表に修正申告用の欄が設けられるなど、よりシンプルな仕様になっています。
確定申告書は税務署または国税庁HPで取得しましょう。なお「確定申告書作成コーナー」にて確定申告書を作成したり、電子申告したりする場合は用意しなくて大丈夫です。
本人確認書類
確定申告には本人確認書類が必須です。
マイナンバーカード(裏表の写し)があれば問題ありませんが、持っていない場合は以下の書類の写しを用意しましょう。
【マイナンバーカードがない場合の本人確認書類】
マイナンバー通知カードまたは住民票(マイナンバー記載)
+
- 運転免許証
- 公的医療保険の被保険者証(保険証)
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
電子申告を行う場合はマイナンバーカードがあるとスムーズです。
マイナンバーカードは、市区町村役場などで申請して作成できますが、届くまでに申請から1か月~2か月かかるため注意しましょう。
青色申告決算書または収支内訳書
青色申告決算書と収支内訳書は、1年間の収入と勘定科目ごとの経費をまとめたものです。2種類とも税務署や国税庁のホームページで入手できます。
事業所得がある個人事業主などは、「青色申告」と「白色申告」のどちらの方法で申告するかによって、必要な帳票や控除額などが大きく異なります。
青色申告を行う場合は青色申告決算書、白色申告を行う場合は収支内訳書を作成しましょう。
「青色申告」「白色申告」の違いと必要書類
青色申告を行う場合は「所得税の青色申告の承認申請書」を事前に税務署へ提出する必要があります。何も手続きを行っていなければ、自動的に白色申告となります。
青色申告の場合、必要書類は多いですが、最大65万円の特別控除が得られるため、事業所得が多い方は青色申告を選択すると良いでしょう。
以下に「青色申告」「白色申告」の対象者や控除金額、書類などの違いをまとめました。
青色申告 | 白色申告 | ||
---|---|---|---|
対象者 | ・事業活動を行う事業者 ・家賃収入など不動産収入がある人 |
全ての人 | |
特別控除金額 | 65万円、55万円 | 10万円 | なし |
条件 | 以下の届出書をその年の3月15日までに提出
・所得税の青色申告承認申請書 ※帳簿の電子保存や、確定申告時にe-Taxで電子申告を行うと65万円控除 |
なし | |
提出書類 | ・確定申告 ・青色申告決算書(貸借対照表が必要) |
・確定申告書
・青色申告決算書(貸借対照表不要) |
・確定申告書 ・収支内訳書 |
保存帳簿 | ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛 ・固定資産台帳 ・経費帳 ・総勘定元帳 ・仕訳帳 |
・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 ・経費帳 |
・法定帳簿 ・任意帳簿 |
記帳方法 | 複式簿記 | 単式簿記 | 単式簿記 |
不動産所得の場合の要件 | 5棟10室以上 | マンション一室から | なし |
メリット | ・青色申告特別控除(65万円、55万円) ・専従者給与 ・繰越損失(3年間) ・少額減価償却資産の特例 |
・青色申告特別控除(10万円) ・専従者給与 ・繰越損失(3年間) ・少額減価償却資産の特例 |
手続きが簡単 |
以下の記事では、青色申告と白色申告の違いを詳しく解説しています。どちらの申告方法にするか迷っている方は参考にしてみてください。
源泉徴収票
給与所得がある方は、会社から受け取る源泉徴収票を用意しておきましょう。ここに記載されている金額に沿って、確定申告書を作成していきます。
控除を受けるための証明書等
生命保険料控除や社会保険料控除、寄附金控除などを適用するためには、内容に応じて証明書等を準備する必要があります。
たとえば以下を用意しておきましょう。
▼医療費控除
書類 | 入手先 |
---|---|
医療費控除の明細書(内訳書) | 税務署または国税庁ホームページ |
※「領収書」「医療費のお知らせ」などでも良し
▼住宅ローン控除
書類 | 入手先 |
---|---|
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署または国税庁ホームページ |
住宅ローンの年末残高証明書 | 借入先 |
認定通知書(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合) | 不動産会社 |
耐震基準適合証明書又は住宅性能評価書の写し(一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合) | 不動産会社 |
対象物件の登記事項証明書 | 法務局 |
▼ふるさと納税
書類 | 入手先 |
---|---|
寄附金受領証明書 | 寄附先の自治体より郵送 |
▼雑損控除
書類 | 入手先 |
---|---|
災害による復旧のための領収書 | 支払先 |
災害にともなう罹災証明書 | 市区町村 |
火災等にともなう被害届出書の証明書 | 消防署 |
盗難等にともなう被害届出書の証明書 | 警察署 |
実際の確定申告のやり方と流れ
確定申告に必要な書類を準備したら、いよいよ確定申告を行いましょう。基本的な流れは「確定申告書を作成する→提出する→納税する、または還付を受ける」です。
確定申告書を作成する
確定申告書は大きく分けて次の4つの方法で作成できます。
- 申告書用紙に手書きで作成する
- 国税庁の「確定申告書作成コーナー」で作成する(給与所得者におすすめ)
- 確定申告用の市販ソフトを使用して作成する(個人事業主におすすめ)
- 税理士に依頼して作成する(個人事業主におすすめ)
■申告書用紙に手書きで作成する方法
確定申告書用紙を税務署または国税庁ホームページにて入手し、手書きで確定申告書を作成します。この方法の場合パソコンや専用ソフトが不要であるため、誰でも作成可能です。
しかし、記載ミスが発生する可能性も高く、作成に時間がかかります。
■国税庁ホームページ内で作成する方法
国税庁ホームページ内にある「確定申告書等作成コーナー」を使用し、ウェブサイト上で確定申告書等を作成します。
画面に確定申告のやり方や流れが表示されており、案内に沿って金額等を入力するだけで簡単に確定申告書を作成できます。
事前に集計した金額を入力するだけなので、手書きに比べ手間がかかりません。
また上の図左3つの「e-tax」を選べば、提出もネット上で行えます。ただし利用にはマイナンバーカードと、マイナンバーカードを読み取れるスマホやICカードリーダー、または事前取得したIDとパスワードが必要な点に注意しましょう。
■確定申告用の市販ソフトを使用して作成する方法
市販の会計ソフトなどを使用することで、日々の会計データを反映させて確定申告に必要な書類を簡単に作成できます。
青色申告や白色申告を行うために、会計ソフトで日頃から帳簿をつけている方にはとくに便利でしょう。確定申告ソフトは会計ソフトと一体型になっている場合もあります。
ミツモアでは、複数の会計ソフトを比較してあなたにぴったりの製品を探せます。
■税理士に依頼して作成する方法
専門知識がない場合や、確定申告の手間を省きたい方は税理士に依頼するのもおすすめです。
税理士に依頼することで、適切かつ手間をかけずに確定申告書を作成できます。ただし、依頼ごとに数万円のコストが発生するため慎重に判断しましょう。
【本人以外で確定申告書類の作成ができるのは税理士だけ】
本人以外の確定申告書類作成は原則として禁止されています。本人以外が作成する場合は、税理士や税理士法人に依頼する必要があります。そのため、家族であっても確定申告書類作成を代理することはできません。
確定申告書を提出する
確定申告書が用意できたら、いよいよ税務署に提出です。提出方法は以下の3種類があります。
- 税務署に直接提出
- インターネット(e-tax)で提出
- 郵送で提出
税務署には時間外収受箱が設置されているため、開庁時間に関係なく提出できます。
e-taxにてネット上で提出する場合、外出する手間がかかりません。前述の通り、マイナンバーカード等が必要です。
郵送の場合は消印有効のため、3月15日までに郵便局に持っていけば問題ありません。
【確定申告書の提出は本人以外も可能】
確定申告書の提出は本人以外でも代理できます。代理提出を行う際には、以下の3つのものを準備しておきましょう。
- 本人による委任状
- 本人のマイナンバーカードなど本人確認書類
- 代理提出者の本人確認書類
税金を納める(納税義務のある方のみ)
所得税と消費税は、原則として以下の納付期限までに納める必要があります。
- 所得税:毎年3月15日
- 消費税:毎年3月31日
また、納税方法には次の6つがあり、好きな方法を選べます。
振替納付 | 預貯金口座からの引き落とし
※事前に金融機関へ依頼書を提出 |
---|---|
e-Tax(電子納税) | e-taxを経由し、預金口座やネットバンキングから引き落とし
※事前にe-Taxで手続き |
クレジットカード納付 ※納付税額に応じた手数料が必要 |
「国税クレジットカードお支払いサイト」で手続き |
スマホアプリ納付(Pay払い) ※納付税額が30万円以下の場合 |
「国税スマートフォン決済専用サイト」(※)で手続き
PayPay、d払い、au PAY、LINE Pay、メルペイ、Amazon Pay、楽天ペイを利用可能 |
コンビニ納付 ※納付税額が30万円以下の場合 |
確定申告書作成コーナー等で作成したQRコードを利用して、最寄りのコンビニにて納付 |
銀行や税務署窓口で現金納付 | 金融機関か所轄の税務署の窓口にて、現金に納付書を添えて納付 |
※スマートフォン専用サイト
還付金を受け取る(還付金がある方のみ)
確定申告は必ずしも納税額が発生する訳ではなく、場合によっては所得税や消費税の還付が発生する場合もあります。還付金の返金方法は以下の2つです。
- 預貯金口座への振込
- 郵便局窓口での受け取り
確定申告時に還付方法の情報を記載することで選択できます。確定申告から1~2か月ほどで還付金が振り込まれるでしょう。
【預貯金口座への振込を希望する場合】
預貯金口座への振込を選択する場合は確定申告書の「還付される税金の受取場所」欄に以下のことを記入しましょう。
- 金融機関名
- 支店名
- 預金種類
- 口座番号
【郵便局窓口による受け取りを希望する場合】
郵便局窓口による受け取りを希望する場合は「還付される税金の受取場所」欄に「ゆうちょ銀行の支店名や郵便局名」を記載してください。
後日、税務署から国庫金送金通知書が郵送されてきます。届いた通知書を郵便局窓口に持参することで還付金を受け取れます。
全くわからないからといって確定申告しないとどうなる?バレる?
確定申告をしなかった場合、どういったリスクやデメリットがあるのかを紹介します。
税務署はさまざまな方法で個人の所得を調べています。無申告直後はバレなかったとしても、いつかはバレると考えましょう。
税務署から職員が直接自宅や事務所に訪れ、突然の税務調査が行われるようなケースもあります。
納税義務がある場合、ペナルティが発生する
納税義務のある方が確定申告をしなかった場合や、税金の納付期限を超過してしまった場合は、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」などの追徴課税が発生します。
支払い義務が発生する事由 | 税率 | |
---|---|---|
無申告加算税 | 納めるべき税金があるにもかかわらず、申告期限までに確定申告をしなかったとき | 原則、納付すべき税金の内50万円までは15%、50万円を超える部分については20% |
延滞税 | 納付期限までに支払うべき税金を納めなかったとき | 原則、納付期限の翌日から2ヵ月間は納付すべき税金の年7.3%、2ヵ月を越えたときは年14.6%
※期間により異なる |
上記のペナルティ以外にも、少ない税額を申告してしまったときの「過少申告加算税」や、悪質な事実の仮装・隠蔽などが発覚した際に課せられる「重加算税」などがあります。
また「控除が受けられない」「還付金が受け取れない」といったデメリットもあるでしょう。
納税義務がなければ、控除が受けられず損する
納税する義務がない方は、確定申告を行わなくとも特にペナルティはありません。
ただし、控除を受けられる対象の方は、確定申告していれば、得られたかもしれない還付金を受け取れない可能性があります。
還付申告は、発生した年の翌年1月1日から5年間申告が可能なので、気づき次第、申告手続きを行いましょう。
インボイス発行事業者は、消費税の確定申告も必要
適格請求書発行事業者の登録を行って課税事業者となった個人事業主の方は、消費税の確定申告と納税も必要です。
消費税申告の期限:適用事業年度(1月1日~12月31日)の翌年3月31日(申告期限が土曜日/日曜日/祝日等の場合、その翌日が期限)
消費税の申告は、以下のステップで行います。
①取引関連書類を令和5年9月30日までと10月1日以降に分ける | 消費税はインボイス登録日以降の申告が必要となるため、納品書、請求書などの取引関連書類を令和5年10月1日以降と令和5年9月30日以前のものに区分します。 |
②課税売上と非課税売上を区別 | 売上のうち、消費税がかかるものと非課税のものを区別します。 |
③金額を税率毎に区分 | 売上(収入)や仕入れ金額を、8%と10%の税率毎に区分した帳簿を準備します。 |
④確定申告書を作成 | 必要な書類を準備し、申告を行います。
必要書類の入手手段は以下があります。
一般課税方式と簡易課税方式で必要書類は異なるため、国税庁の計算方法のフローチャートを参考にして、適用される課税方式を確認しましょう。 |
確定申告が全くわからないなら税理士にまるまる依頼する手も
とくに事業で利益を得ている方で、確定申告のやり方が全くわからない場合は、税理士に依頼するのもおすすめです。手間がかかる帳簿の整理や確定申告書類の作成をお願いすることで、本業に集中できるでしょう。
そこで以下では、確定申告を税理士に依頼する際、把握しておくべきポイントを解説していきます。
税理士に依頼できること
確定申告関係で税理士に依頼できる業務内容は「記帳代行」「決算書・申告書の作成」「節税対策の提案」などが挙げられます。
- 記帳代行:会社が提出した資料に基づき、帳簿の記帳を代行
- 決算書・申告書の作成:各種確定申告書類の作成
- 節税対策:個々人に応じた節税対策の提案
税理士の費用相場はいくら?
青色申告の確定申告を税理士に依頼した場合、申告書作成だけでなく仕訳込みで依頼するとだいたい10万円~20万円程度の費用が発生すると見込まれます。
年間売上500万円以下 | 10万円 |
---|---|
年間売上500~1,000万円以下 | 15万円 |
年間売上1,000万以上 | 20万円 |
確定申告書の作成だけなら10万円以下が相場です。
詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらも参考にしてくださいね。
税理士の探し方は?
後悔せずに済む方法として、複数の税理士を同時に比較検討する探し方がおすすめです。
安易な税理士探しはトラブルの原因になりかねません。
税理士として、あなたの業務に係る税務に精通している点や、申告業務が滞りなくこなせる点などは当然ですが、コミュニケーションが円滑にとれるか、担当税理士の雰囲気なども重視することで、後々のトラブルを避けられるでしょう。
税理士に業務を依頼するのが初めてで、基準がまだできていないうちは、複数の税理士や税理士法人を同時に比較することで、相対的に正しく評価でき、失敗のリスクを低減できます。
以上を踏まえた具体的な方法として、確定申告のために評判の良い税理士を探したいとお考えの方は、全国の税理士が登録するビジネスマッチングサイトを利用すると良いでしょう。
たとえばミツモアであれば、依頼内容と地域を指定すれば、近隣に拠点を置く複数の税理士に見積依頼がかけられます。事前に費用感を把握、コミュニケーションを取った上で比較検討し、正式な依頼が可能です。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
ミツモアで税理士に見積もりを依頼しよう
確定申告は、個人事業主の方や副業などで一定の収入を得ている会社員の方が、避けては通れない業務です。
確定申告で分からないことがあれば税理士への相談がおすすめです。申告書を作る時間が取れない場合でも、税理士に相談すればスムーズに確定申告を終えられますよ。
簡単!最短1分で税理士を探せる!
信頼できる税理士を探すには、全国からプロが集まっているマッチングサイト「ミツモア」がおすすめです。
ミツモアなら簡単な質問に答えていただくだけで最短1分で見積もり依頼が完了します。パソコンやスマートフォンから操作できてお手軽です。
最大5件の見積りが届く
見積もり依頼をすると、税理士より最大5件の見積もりが届きます。その見積もりから、条件にあった税理士を探してみましょう。税理士によって料金や条件など異なるので、比較できるのもメリットです。
チャットで相談ができる
依頼内容に合う税理士がみつかったら、依頼の詳細や見積もり内容などチャットで相談ができます。チャットだからやり取りも簡単で、自分の要望もより伝えやすいでしょう。
2024年(令和5年分)の申告に関する最新情報
申告は期限後にも行えますが、ペナルティが発生するため期限内に行いましょう。