サラリーマンが副業で得た所得は、年末調整で給与所得として源泉徴収される会社の給与と違い、一定額を超えると自分で確定申告しなければなりません。
雑所得として申告することが多い副業の所得に係る所得税と住民税について解説しつつ、確定申告で認められる経費や所得の計算方法から申告書の書き方まで詳しくご説明します。
雑所得とは
雑所得とは所得税の所得区分のひとつです。混同しやすい雑所得と一時所得の違いについてもご説明します。
雑所得とは
雑所得とは所得の区分のひとつで、次に挙げる1~9に該当しないものです。他の所得に分類できないもので、サラリーマンの副業・公的年金・講演料・原稿料や金融類似商品の収益などが雑所得に該当します。
【所得の区分】
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雑所得と一時所得の違い
雑所得と一時所得は性質が明確に違います。上の1~8に該当しないもので、継続性がなく労働の対価でないものが一時所得で、それ以外は雑所得です。
一時所得の代表的なものは、その場限りで労働の対価でない、懸賞や福引きの賞金品や競馬などの払戻金で、雑所得の代表的なものは営利目的の労働の対価の副業収入です。雑所得となる副業収入については次の項目で細かく確認します。
雑所得となるもの
【雑所得の一例】
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※は実態によっては事業所得となる場合もあります。
雑所得で確定申告が必要な場合とは
雑所得は一定金額を超えると確定申告が必要です。確定申告が必要となる基準が、収入ではなく所得なのもポイントです。雑所得となる公的年金には控除があり受け取る人の年齢によって控除額が変わります。
例外的に金額に関係なく確定申告が必要な雑所得もあります。雑所得の確定申告や住民税の申告について詳しくご説明します。
「所得」が20万円以下なら確定申告は不要
会社員が会社で年末調整をして源泉徴収票を発行されており、雑所得以外の所得がない場合は、雑所得が20万円以下なら確定申告は不要です。雑所得は収入の内容により計算方法が違い、具体的には次のように計算します。
①公的年金等以外のもの
総収入-必要経費=雑所得
②公的年金
収入×割合-公的年金等控除額=雑所得
※割合は「公的年金等に係る雑所得の速算表」を参考にしてください。
雑所得が20万円以下でも確定申告が必要な場合
雑所得が20万円以下でも確定申告が必要な場合があります。具体的には次の1~6に該当する場合などです。
- 給与が2,000万円を超える人(会社から発行される源泉徴収票で確認できます)
- 2カ所以上から給与をもらっている人で、主たる給与以外の所得が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 給与から源泉徴収されていない人
- 退職金の源泉徴収額が正規で計算した金額より少ない人
雑所得が20万円以下でも住民税の申告は必要
雑所得が20万円以下で、所得税が申告不要でも住民税の申告は必要です。住民税は雑所得の金額に関係なく、1円でもあれば所得額として翌年の住民税の計算に反映します。
収入があっても、経費を引いた所得がマイナスで損失なら申告は不要です。
また、確定申告している場合は「住民税に関する事項」にチェックすることで所得税と一括申告できるので、改めて住民税を申告する必要はありません。ただし、金融類似商品の収益で源泉徴収されている場合は申告不要です。
雑所得の計算方法
雑所得についてご説明してきましたが、具体的な課税計算はどのようにするのでしょうか。
サラリーマンが副業で雑所得を得ている場合を例に、通常の課税計算の方法と、FXや先物取引などの支払者から支払時に源泉徴収されている雑所得の扱いについて詳しく解説します。
雑所得は総合課税
雑所得は各所得区分の所得金額を合計して所得税額を計算する、総合課税制度により所得税を計算します。
【総合課税の計算例】
- 給与所得:6,500,000円、源泉徴収額872,500円(会社が発行した源泉徴収票で確認します)
副業(アパレルの転売):収入1,500,000円、仕入れ等の経費1,000,000円副業の雑所得を計算すると
収入1,500,000円-仕入れ等の経費1,000,000円=雑所得500,000円 - 雑所得が200,000円を超えているので確定申告が必要だと判断します。総合課税される所得金額を計算すると
給与所得6,500,000円+雑所得500,000円=課税される所得金額7,000,000円 - 所得税の速算表から所得税を計算すると
課税される所得金額7,000,000円×税率23%-控除額636,000円=所得税額974,000円
納付すべき所得税は974,000円となります。
会社の給与に係る所得税はすでに源泉徴収されていますから、
総合課税の所得税974,000円-給与の源泉徴収額872,500円=納付すべき所得税101,500円
副業により生じた所得税は101,500円となります。
参考:所得税の速算表|国税庁 |
FXや先物取引は申告分離課税
雑所得の中でも、FXや先物取引は特別で総合課税ではなく分離課税制度が適用されます。分離課税は他の所得と分離して、所得を支払う者が支払時に所得税を源泉徴収し、所得税の納税が完結する制度です。分離課税の対象は金融類似商品の収益で、一律20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の税率で所得税を計算します。
総合課税の項目で例にあげた副業はアパレルの転売でしたから総合課税で所得税率が23%になりましたが、FXや先物取引で同じ50万円の雑所得を得ているのであれば税率は給与所得20%・分離課税20.315%となり、結果として総合課税より支払う所得税は少なくなります。
雑所得と事業所得の違い
副業は雑所得と事業所得のどちらで確定申告するほうが節税になるのでしょうか。雑所得と事業所得の違い、それぞれのメリット・デメリット、また、副業が事業として認められる条件について詳しくご説明します。
雑所得と事業所得の違い
雑所得はサラリーマンの副業・公的年金・講演料・原稿料など他の所得に属さない雑多なもので、事業所得は農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業その他の独立・継続・反復して行う事業で得る所得です。
雑所得と事業所得の、それぞれのメリット・デメリットは次のようになります。
【雑所得】
- メリットは、帳簿づけが不要で事務処理の負担が軽いことです。
- デメリットは青色申告を選択できないこと、損失が発生した場合に損失繰越も損益通算もできないことです。
【事業所得】
- メリットは、損益通算ができることです。
そして、青色申告を選択することで最大65万円の控除ができる青色申告特別控除や親族などに支払う給与も届出によって必要経費として認められます。
また、少額減価償却資産の必要経費算入や損失が発生した時に純損失の繰越控除ができることも大きなメリットです。 - デメリットは青色申告承認申請書の提出や複式簿記での記帳・会計書類の作成など事務処理に手間がかかることです。
副業が事業と認められるには
副業が雑所得ではなく事業と認められるには、独立・継続・反復して事業として成立しているか、肉体的労力の程度や人的・物的設備の有無、生活の状況などを考慮して判断します。
事業を開始した場合の確定申告前に行う手続きをご紹介します。事業を開始した時は、開始日から1カ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄の税務署に提出します。
また、青色申告を選択する場合は、原則青色申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しなければなりません(開業年から青色申告を選択する場合は原則開業日から2ヶ月以内)。他にも各種の届出書類がありますので、該当する場合は忘れないよう提出してください。
雑収入との違い
雑収入とは事業所得に付随する事業の売上以外の収入です。例えば、商品の販売手数料(リベート)・社内の自販機の設置手数料・廃品や段ボールなどの売却代金などが該当します。雑収入と雑所得は税金についても次のような違いがあります。
雑収入:事業所得のため損益通算でき、青色申告の対象
雑所得:損益通算の対象外
雑所得の確定申告書の書き方
サラリーマンの副業の雑所得は白色申告になります。確定申告書の書き方について見ていきましょう。
確定申告の必要書類
会社で年末調整したサラリーマンが雑所得を確定申告する場合は次の1~3の書類が必要です。通常の白色申告は確定申告書と収支内訳書を提出しますが、雑所得の場合は収支内訳書の提出は不要(※)です。
※前々年度の業務に関わる雑所得の収入が1000万円を超える場合は必要
【確定申告に必要な書類】
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確定申告書の書き方
雑所得を申告する場合の確定申告書には第一表、第二表があり、それぞれ赤枠部分を記入します。
【確定申告書第一表】
収入金額と所得金額を記入します。収入金額は公的年金と業務、その他の収入にわけます。
公的年金等 | 国民年金や厚生年金などの所得金額 |
業務 | 原稿料、講演料などの副収入による所得金額 |
その他 | 生命保険の年金 (個人年金保険)や互助年金、暗号資産取引など「公的年金等」「業務」以外に該当する雑所得の所得金額 |
【確定申告書第二表】所得の内訳に雑所得の内容を記入します。また、住民税の納付方法も選択します。
副業が会社にばれたくない場合
副業の雑所得が会社にばれたくない場合は、住民税を自分で納付する普通徴収にします。普通徴収の手続きは確定申告書第二表の住民税の納付方法の欄で「自分で納付」を選択するだけです。
会社はアルバイトやパートを含むすべての従業員に支払った給与額を、翌年の1月末までに住民票のある市町村に給与支払報告書で届け出ます。また翌年の3月15日までに副業の収入を確定申告し、その申告情報は市町村へ送られます。
住民税は会社が給与天引きして市町村に支払う特別徴収を基本としていますから、自社が支払っている給与額をもとに計算した税額以上に翌年の住民税が高ければ「他に収入があるのでは?」と気付くのです。
まとめ
サラリーマンの副業は、自分で所得税や住民税の申告をすることになります。副業する場合に気を付けるポイントを確認しておきましょう。
【サラリーマンが副業する場合に注意すること】
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1~5までをサラリーマンが判断して手続きするのは手間がかかり大変です。間違えると税務署の調査で指導を受けたり、会社に副業がばれる可能性もあります。
副業で得た収入の額が大きくなってきたら、税理士に相談することをお勧めします。税理士は税金の専門家ですから手続きに間違いはありませんし、副業を続けていくための相談にも乗ってくれます。
この記事を監修した税理士からのコメント
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
この記事を監修した税理士
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