最近では、ダブルワークを認める会社もずいぶん増えています。ライターとしての記事執筆など副業を行なっている方も多いのではないでしょうか。
給料以外の副収入が入ったとき、「雑所得」として確定申告をしなければならない場合があります。この記事では、雑所得の基礎的な事項と確定申告に必要な知識を詳しく解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
雑所得として申告するもの
所得税法では、所得は10種類に分類されています。雑所得は、所得税法で規定された9種類の所得のいずれにも属さない所得です。また雑所得は、公的年金等の収入金額と業務に係る収入金額、どちらにも当てはまらない収入金額の3種類に分類されます。サラリーマンの副業の場合、業務に係る収入金額に該当し、確定申告が必要となる場合があります。
雑所得として申告するもの
雑所得となる収入には色々な種類があり、所得税の手続きもそれぞれ異なります。副業で得た雑所得の金額が20万円を超えると、確定申告する義務があります。所得とは収入金額でありません。収入金額から必要経費を差し引いた金額が雑所得となります。
雑所得の金額は、基本的には総合課税となり、給与所得など他の所得と合計した総所得金額に対して所得税が計算されます。一部の雑所得は他の課税方式により徴収されます。雑所得として申告する主なものと課税方式は次の通りです。
雑所得として申告する主な取引と課税方式
主な取引 | 課税方式 |
公的年金など | 総合課税 |
アフィリエイト(成功報酬型広告)での収入 | 総合課税 |
インターネットオークションなどの収入 | 総合課税 |
原稿料 | 総合課税(源泉徴収あり) |
書籍などの印税 | 総合課税(源泉徴収あり) |
セミナーなどの講演料 | 総合課税(源泉徴収あり) |
先物取引、FX取引等による所得 | 申告分離課税 |
外貨建預貯金の為替差益 | 源泉分離課税 |
雑所得と一時所得の違い
雑所得と同じように一時的な収入がある所得として一時所得があります。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
具体的には、次のような取引があります。
- 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
- 競馬や競輪の払戻金
- 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます)や損害保険の満期返戻金等
- 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
雑所得と一時所得の一番の違いは、課税所得の計算方法です。
【計算方法】
雑所得 = 収入金額-必要経費 一時所得 = (収入金額-必要経費-特別控除額)×1/2 ※(特別控除は最高50万円) |
雑所得の必要経費として計上できるもの
繰り返しますが、雑所得は収入金額ではありません。収入金額から必要経費を差し引いた金額となります。そのため、税法上認められる必要経費をできるだけ多く計上すると課税所得が少なくなり節税につながります。
必要経費とは
必要経費とは、雑所得を得るために直接要した費用です。物販業の仕入代金など収入に直接関連する費用や通信費や交通費など営業活動等に要した費用も含まれます。
パソコン
ネット販売などの副業を行なう場合、パソコンは必需品です。当然必要経費として計上することができます。気を付けなければいけないのは、パソコンの取得価額の金額です。
パソコンなどの備品の購入金額が10万円未満の場合は、消耗品として購入した年に一括で必要経費にできます。
原則として、10万円以上の備品などを購入した場合、取得した年に一括で費用計上はできません。個人の場合は、毎年、取得価額の一定割合を減価償却費として経費計上することになります。これを定額法による減価償却と言います。
また設備によって何年で経費計上するのかは決まっています。これを法定耐用年数といいます。例えば、パソコンの法定耐用年数は4年、コピー機は5年です。
20万円のパソコンを購入した場合、1年で経費として計上できるのは、
20万円÷4年=5万円/年
となります。
また、購入金額が10万円以上20万円未満であった場合には、減価償却の特例(一括償却資産)があり、法定耐用年数より短い3年間で償却することができます。法定耐用年数よりも1年で計上できる減価償却費の金額が大きくなり、償却期間中の課税所得を少なくすることができます。
通信費・電気代
通信費・電気代も必要経費に計上できます。例えば、副業専用のスマホなどの通信費、パソコンなどのネット回線費用などがその例です。レンタル事務所などを借りて副業を行なっている場合の電気代や水道光熱費も費用計上できます。
交通費
取引先との打ち合わせに要した電車代などの交通費も必要経費に計上することができます。自家用車を使った場合も後述する家事按分で費用計上できます。
家賃
レンタル事務所などの家賃だけでなく、合理的な計算式により自宅の費用も必要経費に計上することができます。
飲食代・接待交際費
得意先を招待した場合の接待交際費や、打ち合わせ時の茶菓子代なども必要経費に計上することができます。
消耗品費
10万円以下のパソコンやプリンタ、デジカメなどの取得費用やペン・コピー用紙などの事務用消耗品も費用計上することができます。
プライベートにも係る支出は家事按分する
副業を行なう場合、副業専用の事務所やパソコンなどを用意する人は多くありません。多くの人が自宅ですでに持っているパソコンやスマホなどを使って副業を行なっています。
副業とプライベートの利用が混在している場合は、副業として使った部分だけ必要経費に計上することができます。費用をプライベート部分と副業部分を区別することを家事按分といいます。
家事按分とは
自宅で副業を行なう場合、家賃や電気代など副業部分とプライベート部分が混在する費用が発生します。こうした費用を家事関連費用といい、支出した費用を副業分の割合を計算してプライベート部分と分けることを家事按分といいます。
副業とプライベートの案分比率については、副業の内容や時間などが異なりますので、明確な基準はありません。脱税を疑われないように、副業として使用した割合をきちんと税務当局に説明できる基準で費用計上する必要があります。
家事按分の計算例
自宅の一部を副業に使っている場合は、貸家か持ち家かで費用の範囲は異なってきます。貸家は家賃などが必要経費となります。持ち家の場合は、住宅ローンの元本は経費になりません。減価償却費と住宅ローンの金利、火災や地震などの保険料、固定資産税は必要経費に計上できます。
家賃の家事按分は、面積と使用時間をベースに比率を計算することが一般的です。
計算例
家賃15万円(60平方メートル)のマンションの1部屋(15平方メートル)を、土日に(8日/30日)副業に使用している
- 場所の比率:15/60
- 時間の比率:8/30
副業部分の家賃=150,000円×15/60×8/30=10,000円
雑所得の確定申告書の書き方
所得税では、サラリーマンの副業の場合、本業での収入が「給与所得」になり、副業の分は基本的に「雑所得」に分類されます。
副業を行なっていなければ「年末調整」で申告納税を会社が代行してくれます。しかし、雑所得が年間20万円以上の場合には、自分で確定申告書を作成・提出し、申告・納税を行なう必要があります。
なお雑所得が20万円以下の場合でも住民税の申告は必要になりますのでご注意ください。
確定申告の必要書類
確定申告書には、「確定申告書第一表・第二表」「確定申告書第三表(分離課税用)」「確定申告書第四表(損失申告用)」の3種類があります。一般的に確定申告をする方は全員、「確定申告書第一表・第二表」を使って申告することになります。
※従来の確定申告書A・Bは令和5年(2023年)提出分より廃止となりました。
添付する書類は以下の3種類です。
- マイナンバーカードなどの本人確認書類
- 給与所得や報酬などの源泉徴収票
- 所得控除や税額控除の証拠書類(医療費の領収書等)
確定申告書の書き方
確定申告書の作成は、特に初めての場合特に難しいです。国税庁が案内している手引きを読んでも中々理解することができません。確定申告は、雑所得の申告だけでなく、医療費控除などの所得控除を併せて申告することで払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
毎年、雑所得が発生するような副業を行っている場合は、e-TaxによるWeb申告をお勧めします。画面の案内に沿って数値を入れていくと自動計算などを行なってくれますので、数値の記入漏れもなくなり、申告が正確にかつとても楽になります。
雑所得の申告書は、確定申告書の第一表と第二表がメインになります。
第一表の収入金額等の㋖㋗欄(図①)と所得金額⑧⑨欄(図②)にそれぞれ収入と所得の金額を記入します。
雑所得のなかの「㋖⑧業務」「㋗⑨その他」の違いは、明確には分かりにくいかもしれません。簡単に言えば、ハンドメイドやアフィリエイト、講演など、なにか物やサービスを提供して得た所得は「業務」、仮想通貨やFXなど金銭の変動で得た所得は「その他」に当てはまります。
第二表には「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄(図③)に記載します。所得の種類を「雑」と書き、副業(または公的年金)の種類や、収入を受ける顧客ごとに収入金額と、源泉徴収された金額を記入しましょう。
原稿料や講演料は、原則として顧客(発注先)が、報酬を支払う際に一定額を源泉徴収され納付しています。確定申告を行ない、税金を再計算することで、源泉徴収された税金が戻ってくる可能性があります。源泉徴収された報酬があるときは、記載を忘れないようにしましょう。
必要経費の申告に領収書は必要?
雑所得の確定申告では、収支内訳表による収入と必要経費の内訳は一般的には必要ありません。ただし、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額(≒売上高)が1,000万円を超える方は収支内訳書の添付が必要となります。
また前々年の収入金額が1,000万円を超えている方も、いない方も、必要経費に計上している領収書などはきちんと保管しておく必要があります。
領収書やレシートは保管する
領収書などは確定申告の提出が終わった後も一定の期間保存することが求められています。それは、税務調査を受けることとなった際に提示を求められる可能性があるためです。所得税の税務調査は、原則として事業所得のある個人事業主が中心です。最近では、副業でまとまった収入を得ているサラリーマンへの税務調査の事例が増えています。
税務調査に備えて、領収書などの証憑や帳簿・申告書類は一定期間保管しておきましょう。白色申告者の場合、申告に関する書類、領収書、請求書、などの保存期間は5年間とされています(法定帳簿は7年間)。
領収書などの保管方法は様々です。「紙に貼る」「封筒に入れておく」などの方法があります。後から確認しやすいように、月別や取引の内容別(費目別)などに分けておくことがお勧めです。
必要経費を集計する
確定申告書に必要経費を記載するためには必要経費の集計を行なう必要があります。副業が単発的なものであれば、エクセルなどを使って集計し、帳簿の代わりにするのが良いでしょう。
雑所得が20万円以下でも、ネット販売などでは、収入金額が数十万円以上(時には100万円超も?)になる場合もあります。その場合には、税務申告の目的だけでなく、事業所得と同じように損益管理や資金繰り目的で会計ソフトを使ってきちんと帳簿付けを行なうことをお勧めします。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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