「自分の所得が事業所得と雑所得のどちらに当てはまるのかわからない」


「事業所得は何を指すのか知りたい!」
上記のような疑問や悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。
事業所得と雑所得は「事業規模であるか」という点でどちらに当てはまるかを判断されます。
本記事ではより詳細に事業所得はどういった所得を指すのか、それぞれで税率は異なるかなどについて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
事業所得と雑所得の判断基準は「事業規模であるかどうか」
事業所得と雑所得の判断基準は、事業規模であるかどうかです。
国税庁によると、事業所得は「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得」と定義されています。
対して雑所得は、上記の所得には属さない所得を指す区分けです。たとえば「公的年金」「趣味で作ったハンドメイド作品を売った」「仮想通貨運用で利益を出した」のような場合は雑所得になります。
事業規模であるかというあいまいな線引きであるものの、客観的に見て「事業としての持続性やスケールが期待できるか」によって区分けが変わります。
「年収300万円以上&帳簿あり」ならほぼ確実に事業収入
事業所得と雑所得を分ける要素は「年収300万円以上か以下か」と「帳簿をつけているかいないか」の2つで、特に帳簿の有無が重要です。以下の表をご覧ください。
副業であっても、「ある程度の収益がある」+「帳簿をつけている」状態であれば、事業所得と判定される可能性が高いです。「ある程度の収益」とは、本業収入の10%以上が目安になります。
逆に帳簿がない場合、収入が年300万円を超えていても雑所得に区分けされてしまうかもしれません。
帳簿について詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
事業所得として認められるための4つの要件
あなたの仕事が以下4つの要件を満たしていれば、事業所得として認められる可能性が高いです。
それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。
反復継続性があるか
事業所得として認められる要件の1つ目は、反復継続性があるかどうかです。
事業が単発で終わるような場合や、事業がスタートしたばかりでほとんど営業実績が存在していないような場合は「反復継続性がなく、一時的な所得に過ぎない」と判断されるため、事業所得として認められません。
営利性があるか
事業所得として認められる要件の2つ目は、営利性があるかどうかです。
事業は営利目的で行うものなので無償で商品を与えたり、著しく安い対価でサービスを提供したりする場合は事業性が否定されます。
自己の計算と危険において独立して遂行する業務か
事業所得として認められる要件の3つ目は、自己の計算と危険において独立して遂行する業務であるかどうかです。
個人事業においては、事業資金を銀行から借りる際は事業主名義であるため、事業活動で事故が起きた場合は事業主個人が賠償責任を負います。自分でリスクを負って業務を行っていれば、事業所得として認められやすくなります。
事業として客観的に成立しているか
事業所得として認められる要件の4つ目は、事業として客観的に成立しているかどうかです。
「日々その事業に専従する」「屋号を掲げて仕事をする」「事業主としての名刺や連絡先を用意し、取引先とやりとりする」といった条件をクリアしていれば、事業所得として認められやすくなります。
雑所得と判断されやすいケース
事業所得に見えても、実際は雑所得と判断されやすいケースをいくつか紹介します。共通するのは、事業として認められる規模・継続性に欠ける点です。
- フリマアプリやネットオークションで得た収益
- 副業のアフィリエイトで得た収益
- FXや仮想通貨など投資で得た少額の利益
ただしどれも、本業として一定以上の収益を持続的に得ていれば事業として認められることがあります。本業として注力する場合は、帳簿をつけることも忘れないようにしましょう。
この所得は事業所得にできる? 8つの具体例でシミュレーション
ここでは具体例とともに、事業所得と雑所得の区別を確認していきます。ポイントは「事業性の有無」と「所得金額の大きさ」です。
副業での収入は基本的に「雑所得」
副業は本業ではないため、基本的に雑所得です。サラリーマンで副業収入がある場合は、給与所得と雑所得の2つの所得が発生することになります。
ただし「副業収入が年300万円以上&帳簿記帳あり」の場合は事業収入になる可能性が高いです。
副業であっても、年間の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。20万円以下であれば所属する会社の年末調整にて所得税の納税手続きは完了します。
副業収入の扱いについてより詳しく知りたい方は、あわせて以下の記事もご覧ください。
個人(フリーランス)の活動で得た報酬は「事業所得」
フリーランスの場合における所得区分は「事業所得」になります。
フリーランスは会社などと雇用契約を結ばず、取引先と委託契約を結び仕事を請け負うため基本的に個人事業主と同じ扱いです。
そのため個人事業主と同様、事業所得として確定申告を行わなければなりません。事業所得の場合は、赤字ではない&課税所得金額がマイナスでない限りは確定申告の義務が発生します。
フリーランスが払うべき税金について、以下の記事でより詳しく解説しています。
フリマアプリ・ネットオークションで得た利益は「雑所得」
ネットオークションで不要になった服や小物、本などを売ってお小遣いにするという方も多いでしょう。このような場合、ごく一般的な利用であれば雑所得に区分されます。
ただし、個人事業主か会社員(サラリーマン)であるかどうかで雑所得の扱いは異なります。
個人事業主の場合
個人事業主の場合雑所得が20万円以下なら個別の確定申告が不要」の慣例が当てはまりませんので、オークションで得た雑所得がたとえ1万円でも申告する必要があります。
会社員の場合
本業がサラリーマンの人なら「雑所得が20万円以下なら個別の確定申告が不要」という慣例があります。「年に数回程度、不要な物をオークションで売り、数万円の所得を得ている」という場合なら、確定申告は不要です。
転売やオークションと確定申告の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
単発バイト・ギグワークは一時的なら「雑所得」・継続的かつ事業規模なら「事業所得」
単発バイト・ギグワークについては、事業規模に達していない一時的な労働であれば「雑所得」として扱われます。
一方で、継続的で本業として稼働しているのであれば「事業所得」とみなされます。
家庭教師の収入は「事業所得」または「雑所得」
家庭教師の収入は事業所得または雑所得に分類されます。2つのどちらの所得区分に該当するかどうかは、主たる収入が家庭教師の収入であるかどうかで判断します。
事業所得になるケース
家庭教師は教える子の親から請け負う場合は個人間契約になります。
主たる給与がなく派遣会社などと委託契約を結んで家庭教師をおこなう場合は、雇用契約ではないフリーランス契約と同等に扱われます。
したがってその所得は「事業所得」となり、申告をおこなうべき所得金額の計算は事業所得と同じ扱いです。
雑所得になるケース
主たる給与があり副業として家庭教師をおこなう場合は個人間契約であっても雑所得となります。そのため、給与所得と雑所得の2つの所得区分での確定申告が必要となります。
しかし、この場合は雑所得の年間合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
20万円を超えていなければ、所属する会社の年末調整にて所得税の納税手続きは完了したことになります。
太陽光発電による売電で得た利益は「雑所得」
太陽光発電による売電で得た所得は、事業所得ではなく雑所得となります。
自分の家や土地にソーラーパネルを設置し、太陽光発電を行って得た電力は、国が定めた「固定価格買取制度」に基づいて電力会社に売却できます。
個人が太陽光発電によって売電する場合、目的はあくまでも生活に必要な電力を発電することです。そのため雑所得に区分されるのです
ただし、自宅兼事務所の屋根にソーラーパネルを設置し、主に事業用電力を確保するために太陽光発電を行う場合、事業所得に区分けされます。
太陽光発電の確定申告については、以下の記事で詳しく解説しています。
先物取引で得た利益は「雑所得」
先物取引で得た利益は雑所得であり、分離課税の対象となります。
分離課税とは、一定の先物取引をおこなった際に、先物取引に係る事業所得や雑所得については他の所得と区分して、独立した税率で課税額が計算される制度です。
先物取引が本業かどうか によって、所得の区分や課税方法が異なる可能性があります。
先物取引で継続的で利益を得ている、または主たる収入源である場合などは、事業所得や譲渡所得として扱われる可能性があります。
副収入として投資の利益を得ている場合は、雑所得として扱われます。
趣味で出ているコンテスト・大会などの賞金は「雑所得」
絵画や音楽などの作品およびスキル発表など、以下のような趣味で出場したコンテストや大会などで得た賞金は雑所得として扱われます。
- マラソン大会
- eスポーツ大会
- 絵画コンテスト
中でも、eスポーツ大会については年齢制限が無い場合もあるため、学生であっても賞金を得る可能性があります。
その場合、学生自身が確定申告をおこなう必要が出てくるため、賞金は雑所得として扱われるということには注意が必要です。
事業所得と雑所得、同じ額ならどっちがいい?
雑所得として取り扱うより、事業所得として所得計算や確定申告をする方が大きなメリットがあります。ここでは、事業所得として確定申告をする5つのメリットを紹介します。
他の所得と損益通算ができる
不動産所得・事業所得・総合譲渡所得・山林所得の4種類の所得は、各所得の計算上発生した損失を、総所得等の計算において控除することが可能です。これを「損益通算」と言います。
事業所得で発生した損失は、損益通算を活用することで給与所得などの本業で得た所得から控除できるので、節税につながります。これは雑所得との大きな違いです。
青色申告特別控除が受けられる
青色申告の承認を受けている場合には、青色申告特別控除が受けられることも事業所得の大きなメリットです。
青色申告特別控除とは、不動産所得または事業所得のある人が受けられる控除制度です。
以下の要件を満たした場合には最高65万円の控除、それ以外の納税者には10万円の控除が認められます。
- 複式簿記による記帳
- 貸借対照表および損益計算書の提出
- 申告期限内の申告
- 30万円未満の少額減価償却資産を一括経費計上できる
最高65万円の特別控除を受けるには、e-taxを使用した電子申告または電子帳簿保存が条件なので注意が必要です。
青色申告についてより詳しく知りたい方は、あわせて以下の記事もご覧ください。
損失額の繰越しと繰戻しができる
青色申告の適用を受ける事業所得に対しては「損失額を3年間繰り越せる」という特典が与えられます。
事業所得で大きな赤字が出た場合に、前掲の損益通算では控除しきれないことがあります。その場合でも最大3年間赤字を繰り越せるので、節税につながります。
また青色申告2年目以降の個人事業主は、今年の赤字を前年に繰り戻して計算することも可能です。
繰り戻し計算の結果、所得税の払いすぎが明らかになれば、還付申告をすることでお金が戻ってくるでしょう。
30万円未満の少額減価償却資産を一括経費計上できる
青色申告の適用を受ける個人事業主は、30万円未満の少額減価償却資産を一括で経費に計上できます。
たとえば事務所で使うパソコンやプリンタ、電話機などが少額減価償却資産の例として挙げられます。
少額減価償却資産の購入または使用を開始した年度にまとめて経費に計上すれば、その分黒字を圧縮できて節税につながるのです。
家族の給与を経費計上できる
個人事業主として配偶者などの家族を従業員として雇う場合、家族に支払った給与は「専従者控除」という形で経費計上することができます。
個人事業主として配偶者などの家族を従業員として雇う場合、家族に支払った給与は「専従者控除」という形で経費計上することができます。
専従者控除には以下の2種類があります。
青色事業専従者給与 | 生計を一にする配偶者やその他の親族で、専らその事業に従事している人に給与を支払っている場合、その支払った金額のうち、相当であると認められる金額を必要経費として扱える。 |
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事業専従者控除額 | 生計を一にする配偶者やその他の親族に支払った給与等を必要経費に算入することができないが、これらの方が専ら事業に従事している場合には、配偶者は最高 86 万円、15 歳以上のその他の親族は最高 50 万円を必要経費として差し引くことができる。 |
事業所得も雑所得も基本的に確定申告が必須
事業所得も雑所得も、基本的には確定申告が必要です。
確定申告が必要なパターンとして、以下の2点について解説します。
事業所得の申告が必要になる条件
個人事業主などが事業所得を得ている場合、1年間の所得が48万円を超えていれば確定申告が必要です。
また、確定申告には以下のような書類が必要であり、売り上げや経費を記した帳簿の作成が必須になります。
- 本人確認書類(マイナンバーカード・その他)
- 確定申告書
- 収支内訳書または青色申告決算書
- 収支がわかる帳簿・領収書・レシートなど
- 控除証明書や給与・年金の源泉徴収票(ある場合)
日頃から帳簿をつけておかないと確定申告の際に焦って準備することになるため、気を付けましょう。
雑所得の申告が必要になる条件
会社員で雑所得(副業での収入など)がある場合は、以下のパターンです。
- 雑所得が20万円を超えている場合
- 雑所得が20万円以内であるが、勤め先で年末調整が行われていない場合および複数個所からの収入がある場合
基本的には雑所得が20万円を切っていれば確定申告は必要ありませんが、上記のように状況によっては申告が必要です。
自身の副業としての勤務先で、年末調整が行われているかチェックしておきましょう。
事業所得と雑所得の判断を誤ると税務調査のリスクがある
事業所得を得ているにも関わらず誤って雑所得として計上するなど、所得の判断を誤ると、税務署から指摘が入る可能性があります。
誤って申告してしまった場合、申告の修正が必要になります。
また、数年後に税務調査でまとめてミスが発覚した場合は追徴課税が課されることに加え、悪質と判断された場合は延滞税や重加算税が発生する恐れがあるため、正確に申告することが重要です。
税理士のサポートを受けてミスなく所得を計上しよう

何かと大変な確定申告を、初心者がミスなく行うことはなかなか難しいものです。そんな時は、税務のプロである税理士の手を借りてみてはいかがでしょうか。
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