ミツモアロゴ
ミツモアメディア

【税理士監修】確定申告は赤字なら不要?|するべき理由と書類の書き方を解説

最終更新日: 2019年12月25日

「赤字であれば確定申告は不要」。個人事業主であるなら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? 確かに、赤字の場合には確定申告の義務がないのは本当です。しかし、だからといって「確定申告をしない!」と決め付けてしまうのは早計。確定申告をしないことによるデメリットがあるからです。今回は赤字と確定申告の関係性、赤字であっても確定申告をした方が良い理由、さらに赤字の場合の確定申告書の書き方まで、詳しくご紹介いたします。

赤字の場合は確定申告の義務はない

赤字の場合は確定申告は不要
赤字の場合は確定申告は不要

赤字の場合はなぜ確定申告をしなくても良いのか。その理由は、確定申告がどのような役割を担っているかを考えればすぐに分かります。この章では赤字と確定申告の関係性、さらに同じ確定申告でも青色申告と白色申告ではどのような違いが生まれるのかを解説していきます。

赤字の場合は確定申告の義務はない理由

確定申告を簡単に説明すると、その年の利益を「確定」させ、国や地方自治体に「申告」するためのものです。では、なぜ国や地方自治体に「所得=利益」を「申告」する必要があるのでしょうか。それは、税金を納めるためです。「今年はこの事業で○万円の利益が出たので、税金が△万円発生します」ということを明らかにすることが、確定申告の主な役割なのです。

さらにもう一つ、税金の基本的な性質もおさえておきましょう。一部を除いて、税金というのは利益に課せられるもの。逆に言えば、利益がゼロであれば税金は発生しません。

確定申告は税金の納付のために行なうもの。そして利益がなければ税金は発生しない。この2つを組み合わせれば、「赤字=利益がない=税金を支払う必要がない=税金を納めるための確定申告が必要ない」ということがお分かりいただけると思います。

ただし、確定申告の必要はなくても、帳簿付けや領収書の保管などはきちんとしておかなければなりません。税務調査に入られたとき、確定申告をしなかった根拠である赤字を証明しなければならないからです。赤字を証明できなければ無申告とみなされ、推進課税(※)を受けたり、無申告加算税や延滞税などが課せられる可能性があったりするので、注意しておいてください。

(※)推計課税とは、推計課税とは、帳簿書類の紛失などで正しい売上や経費が分からないときに

  • 近隣の同規模同業者の差益率(売上に対する粗利益の割合)
  • 売上や仕入れ・経費の単価
  • 資産や負債の増減状況
  • 水道やガスの使用量

などから所得を推計して、課税する方法を言います。

確定申告をしないことで発生するデメリット

確定申告をしないことで発生するデメリット
確定申告をしないことで発生するデメリット

ここまでで、「赤字であれば確定申告の義務は発生しない」ことはご理解いただけたと思います。しかし冒頭でも述べたように、確定申告をしないことによるデメリットは確かに存在します。いくつか紹介しますので、確定申告にかかる手間を惜しんだばかりに以下のようなデメリットを被っても問題ないか、ご自身で考えてみてください。

【住宅ローンもダメ】所得の証明書類が手に入らない

確定申告をしないことによるデメリットの1つ目は、「確定申告書」という所得を証明する書類を利害関係者に提示できないことです。

「所得の証明が必要になる場面なんてあるの?」と思われる方もいるかもしれません。一番想像しやすいのは住宅ローンでしょう。ローンの審査を受ける際、所得の証明書類として過去数年分の確定申告書類を求められることがあります。

確定申告書は、いわば国が認めた所得の証明書です。ローン会社にとってどれだけ安定した所得があるのかを判断するのに、何よりも信用できる材料であることは間違いありません。それが用意できないと、ローン会社としても収入の安定性が担保できず、審査も厳しい結果に終わってしまう可能性が高まります。

他には事業資金の融資を受ける際にも、所得の証明が必要になります。いざ法人化して事業を拡大しようと思ったときに、確定申告をしていなかったがために融資を受けられなかった、ということも十分にありえます。

このように、所得の証明が出来ないことのデメリットは数年後に現われます。たとえ今はローンや融資を考えていないとしても、近い将来のことを考えて、確定申告はしておいたほうが無難といえます。

非課税証明書が発行できない事による不利

2つ目のデメリットは、非課税証明書が発行できないことです。

非課税証明書というのは、住民税が課税されていないことを証明する書類で、確定申告をしていなければ発行することが出来ません。非課税証明書自体が馴染みのあるものではありませんので必要になる場面もなかなか想像できないかもしれませんが、たとえば児童手当の申請時に求められる書類の1です。他には保育園の入園の申請など、主に福祉分野で重要な書類といえるでしょう。

こちらも所得を証明する書類と同様今は関係ないかもしれませんが、数年後にお子さんが生まれた際には大いに役立つものです。「やっと仕事が軌道に乗ってきたのに、非課税証明書が発行できないから子供を保育園に入れられない!」ということにならないよう、今からしっかりと考えておく必要がありそうです。

国民健康保険料が増える

個人事業主であれば、国民健康保険に加入している方がほとんどです。無所得であれば国民健康保険料が大きく優遇されるのですが、そのためには自分に所得がないことを証明しなければなりません。しかし確定申告をしていなければ先ほどの住宅ローンや事業資金の融資と同じで無所得を証明できないので、保険料の優遇が受けられず、結果的に保険料が増えてしまいます。

以上が確定申告をしないことによる大きなデメリットです。赤字であっても確定申告をすることの重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか?

赤字でも確定申告することによるメリット

赤字でも確定申告することによるメリット
赤字でも確定申告することによるメリット

前章では確定申告をしないことによるデメリットを紹介しました。この章では、赤字で確定申告をしたからこそ享受できるメリットをお伝えします。赤字の繰り越しや繰り戻しによる還付金請求など、個人事業主の方にぜひ知っておいてもらいたいポイントも抑えておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

純損失の繰越控除による節税

赤字の状態で確定申告をした際に受けられる一番大きなメリットは、純損失の繰越控除ができることです。

純損失の繰越控除とは簡単に説明すると、損失と利益を複数年にわたって差し引くことができる仕組みです。たとえば、今年の黒字分から去年の赤字分を差し引くことで、今年の黒字分を圧縮し、課税所得を少なくすることが出来るのです。

損失申告により赤字の繰越ができる

まずは純損失の繰越控除の概要からお話していきます。

前提として、純損失の繰越控除を適用できるのは青色申告の個人事業主のみです。個人事業主の中には白色申告をしている方もたくさんいらっしゃいますが、これから紹介するメリットを活用するためには青色申告に切り替える必要があることにご留意ください。

純損失の繰越控除とは3年間に限り赤字分を繰り越していける制度です。たとえば平成27年が赤字だった場合、赤字分を3年に限りマイナスとしてキープし(あくまでも税務上の話です)、黒字になった時に課税所得から差し引くことができるのです。ただし、純損失の繰越控除は3年が限度と定められているので、平成27年分の赤字が繰越せるのは平成30年分の黒字までです。

純損失の繰越控除のことを理解できたところで、具体的な計算をしてみましょう(簡略化のため青色申告特別控除も含め、各種控除はないものとしています)。

1【平成29年は100万円の赤字、平成30年は150万円の黒字だった場合】

平成31315日が期限の確定申告では、平成30年の黒字150万円から、平成29年の赤字100万円を引いた50万円を、課税所得として申告することが出来ます。

しかし、赤字だからといって平成29年分の確定申告をしていなければ、純損失の繰越控除は適用できず、150万円全てが課税所得となってしまいます。税率を5%とすると、課税所得が150万円の場合は75千円、50万円の場合は25千円ですので、最終的な納税額の差は5万円になります。

2【平成28年は100万円の赤字、平成29年は150万円の赤字、平成30年は300万円の黒字だった場合】

考え方自体は例1と同じです。きちんと青色申告をしていれば、平成30年の黒字300万円から、平成28年の赤字100万円と平成29年の赤字150万円を足した250万円をマイナスして、50万円を課税所得として申告することが出来ます。

3 平成29年に50万円の赤字、平成30年は30万の黒字だった場合】

上の2パターンと同じ方法で考えていけばいいのですが、このケースでは赤字と黒字を差し引きすると利益がゼロになり、さらに赤字分が余ってしまいます。利益がゼロということは課税所得がゼロなので、税金は発生しません。そして、余った赤字分20万円に関しては、さらに翌年以降に繰り越すことができます(3年という限度に変わりはありません)。

純損失の繰戻しによる還付金を受け取る

繰越と同じ考え方で、今年の赤字分を前年以前の黒字と相殺する「繰戻し」という制度もあります。ただし前年の黒字分の税金は、既に支払い済みのはず。そのため、繰り戻しの場合には「還付金」という形で納めた税金を返還してもらう方法をとります。

例4 【平成29年が200万円の黒字、平成30年が100万円の赤字】

計算方法としては、

前年支払った税金-(前年の黒字-今年の赤字)×前年の税率

が還付金となります。

つまり例4を税率5%として計算すると、

200万円×5%-(200万円-100万)×5%=5万円

が還付金として戻ってくることになります。

気をつけて欲しいのは、繰り越しと繰り戻しは二者択一だということ。上記の例4で言えば、平成30年の赤字100万円は、すでに繰り戻しで使用してしまっているので、翌年以降に繰り越すことはできません。赤字が出たとき、その赤字を繰り越すべきか繰り戻すべきかはその都度判断する必要があります。

この記事を監修した税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区

赤字だからといって確定申告しなくて良いと安易に決めつけるのではなく、前年の所得の金額や、翌年以降の節税効果も考えて、適切な意思決定をしましょう。
ミツモアでプロを探す

【書類の書き方】赤字の場合の損失申告方法

【書類の書き方】赤字の場合の損失申告方法
【書類の書き方】赤字の場合の損失申告方法

ここまで、赤字が出た際に確定申告をしないことのデメリット、反対に確定申告をすることによるメリットを紹介してきました。たとえ赤字であっても、確定申告をしたほうがいいということは多くの方が理解できたと思います。しかし、頭では分かっていても、手間がかかりそうでなかなか手が出ないという方も多いはず。そこで最後に、赤字になった場合の確定申告書の書き方(青色申告)をお伝えしたいと思います。

確定申告で損失申告するのに必要な書類

個人事業主が赤字の確定申告をする際には、通常の

  • 申告書B第一表
  • 申告書B第二表

に加え、

  • 申告書B第四表(損失申告用)

が必要になります。

さらに以下の損失を申告する場合には、それぞれに対応した添付書類を別途用意する必要があります。

  • 被災者事業用資産の損失→申告書付表(東日本大震災の被災者の方用)
  • 上場株式等に係る譲渡損失→確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
  • 特定投資株式に係る譲渡損失→確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除用)
  • 先物取引・FXに係る損失→申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

特に申告書第四表(損失申告用)は赤字でなければ必要のない書類なので、忘れないようにしてください。

赤字が出た年の確定申告書Bの書き方

次は申告書Bの書き方を、赤字に関係のある部分を中心に解説していきます 。申告書は国税庁のHPから見ることができるので(ダウンロードも可能)、参照しながら読んでみてください。

参考:確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等|国税庁

申告書B第一表の書き方

確定申告書B第一表
確定申告書B第一表
  1. 住所、氏名、マイナンバーなど必要な情報を記入
  2. 「種類」欄の「青色」と「損失」に○
  3. 「収入金額等」欄に、自分の収入を記入
  4. 「所得金額」欄に収入から経費・青色申告特別控除額などを引いた金額を記入。赤字の場合は頭に△をつけて記入
  5. 「所得から差し引かれる金額」欄に各種所得控除額を記入
  6. 「税金の計算」欄に各種対応する金額を記入。
  7. 算出された納税額がプラスであれば㊼に記入、マイナスの場合は㊽に記入

第二表は通常の確定申告と同じなので、割愛します。

申告書B第四表(損失申告用)の書き方

申告書第四表(損失申告用)【平成28年分以降用】
申告書第四表(損失申告用)【平成28年分以降用】

表一、表二に申告分の年を以下のように記入します(事業所得以外の所得が無いことを前提とします)。

【表一】

  1. 住所、氏名を記入
  2. 損失額又は所得金額」の「59」欄に赤字額を記載(数字の頭に赤字を示す「△」を記載)
  3. 損益の通算」の「59」欄に③の赤字額を転記
  4. 71」欄に③の赤字額を転記

【表二】

  • 3翌年以降に繰り越す損失額」の「72」欄に③の赤字額を転記

以上で書類の記入は完了です。意外と簡単だったのではないでしょうか?

繰戻しによる還付金請求書の書き方

純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書【平成29年分以降用】
純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書【平成29年分以降用】

次に前の見出しで説明した、繰り戻しによる還付金を受け取るのに必要な書類「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」の書き方を説明します(事業所得以外の所得が無いことを前提とします)。

なお、「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」は、以下のリンクからダウンロード可能です。

純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書【平成29年分以降用】(PDF/221KB)|国税庁

「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」の書き方

  1. 書類の提出日を記入し、住所、氏名、マイナンバーなど必要な情報を記入
  2. 「純損失の金額の生じた年分」「純損失の金額を繰り戻す年分」にそれぞれ対象の年を記入
  3. 提出年の所得額(赤字額)を②欄と⑤欄に記入
  4. 前年の確定申告書の㉖、㉗、㊵欄の金額を、それぞれ「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」の⑦、⑩、⑭欄に記入
  5. ⑮欄に前年の黒字と提出年の赤字を差し引いた所得金額を記入
  6. ⑱欄に⑮の金額に応じた税率をかけて算出した税額を記入
  7. ㉒欄に⑩から⑱を引いた金額(還付されるべき金額)を記入
  8. ㉒を「還付請求金額」に記入
  9. 還付金が振り込まれる口座を指定

確定申告の期限を過ぎてしまった場合

この記事を読んでいる方の中には、過去に赤字だからと確定申告をしていなかった方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、期限後申告をしておきましょう。

期限後申告というのは、個人事業主の申告期限である3月15日を過ぎてから確定申告を行なうことです。期限後であっても、青色申告の特典である赤字の繰り越しは可能ですので(繰り戻しによる還付金申請は、赤字が出た年の確定申告を期限内に行なっていることが条件になるので認められません)あきらめることなく今からでも確定申告を行ないましょう。

まとめ

今回は赤字が出た場合でも確定申告をしたほうがいい理由についてご紹介してきました。最後に、記事全体の要点をまとめておきます。

  • 赤字の場合は確定申告の義務は発生しない
  • ただし、所得の証明が出来ないなど、確定申告をしないことによるデメリットは存在する
  • 純損失の繰越控除の適用など、赤字でも確定申告をすることのメリットが存在する
  • 赤字での確定申告に必要な書類は、申告書Bの第一表、第二表、第四表
  • 繰り戻しによる還付金を請求するなら、「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出
  • 確定申告の期限がすでに過ぎてしまっている分は、今からでも期限後申告の準備を

今回は網羅的に説明していきましたが、細かい部分は個別で判断が必要になるケースもあります。もし少しでも分からない部分があれば、税務のプロである税理士まで相談してみてください。

この記事を監修した税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区

確定申告には手間も時間も(税理士に依頼する場合はお金も)掛かります。赤字であることが明らかで、確定申告の義務が無いのであれば確定申告をしたくないという気持ちも分かりますが、来年以降の税金のことを考えた場合、ほとんどのケースで申告しておいた方が良いと言えます。本業で忙しい方は税理士に頼まれることをおススメします。ミツモアにも多数の税理士が登録しておりますので、利用してみてはいかがでしょうか。
ミツモアでプロを探す

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区

こんにちは、神戸市で会計事務所を開業している安田亮と申します。 私は大手監査法人と東証一部上場企業で働いてきましたが、上場企業の経理部の方でも決算や税務申告が分からない、良い経理人材を確保できない、繁忙期にどうしても人手が足りないなど、様々な悩みを持っておられることに気付きました。 1つの会社の中で縛られることなく、もっと色々な企業様や、これから事業を起こそうとしている個人の方々に私自身の知識・経験を活かして決算・税務申告業務、経営全般のサポートをしていきたいという思いから、31歳になった2018年に神戸市中央区で独立開業しました。 公認会計士・税理士・FPのトリプルライセンスを有しており、実務経験も豊富ですので、実務能力には自信があります。その知識・経験を活かして皆様の経営に貢献していきます!
ミツモアでプロを探す

ミツモアならチャットで税理士を比較できる

ミツモア 税理士
ミツモアならチャットで税理士を比較できる

ミツモアは、完全無料、すべてWeb完結のシステムで、税理士と直接チャットでやり取りをすることができます。気軽に気になることを確認してから、直接会ったり、仕事を依頼したりできる簡単で便利なプラットフォームです。

また、チャット開始の際には、見積もり金額を含めたメッセージが届きますので、料金やサービス内容の問い合わせまで自然に行うことができます。隙間時間にスマホで税理士探しをしてみてください。

ミツモアで税理士を探す