接待交際費は確定申告に記載する経費科目のひとつです。
個人事業主は法人と違って接待交際費に明確な上限はありません。ただし接待交際費として計上した金額があまりにも高い場合は税務調査の対象になる可能性があります。
本記事では接待交際費とは何か、接待交際費が発生する具体例とともに、個人事業主が接待交際費を経費計上する際のポイントについて解説します。
取引先を接待した費用は「接待交際費」
接待交際費とは、事業のやり取りをする相手、主に取引先との交流の際に発生する費用を指します。いくつか具体例を紹介します。
- 取引先との会食費用
- 取引先へ訪問した際の手土産の購入代金
- 接待ゴルフを開催した際のゴルフ場利用料
そのほかに多い支出の例は「個人事業主が接待交際費に計上できる支出の例」をご覧ください。
接待交際費に含まれる支出は幅広く、個人事業主の場合は計上する額に上限がないこともあってついついあれもこれも接待交際費として計上してしまいがちです。
しかし売上に対して接待交際費が多く計上されすぎていると「所得隠しではないか」「不正に計上していないか」と税務調査の対象になるケースが多いのでご注意ください。
個人事業主は接待交際費の上限の規定はない
個人事業主は法人とは異なり、接待交際費の上限の規定はありません。そのため理論上は、適切であれば取引先とのやり取りはすべて接待交際費として計上できることになります。
しかし実際のところは、売上に比較して接待交際費の額が大きすぎる場合は不正が行われているのではないかと税務調査の対象になります。税務調査の際に不審点が見つかった場合は経費として認められないので、明確な証拠が必要です。
具体的な割合は公開されていないものの、売上の6~7%以上が接待交際費の場合は不適切な会計処理をしているのではないかとみなされる可能性が高くなります。
適切な会計を処理をしても接待交際費が異様に高くなる場合は、支出の見直しをする必要があるかもしれません。一度税理士に相談することをおすすめします。
法人の接待交際費は上限が定められているので注意する
法人の接待交際費は個人事業主とは異なり、上限が定められています。
資本金の額 | 接待交際費の上限 |
---|---|
資本金1億円以上 | 接待交際費のうち50% |
資本金1億円以下 | 年間800万円まで または 接待交際費のうち50%のいずれか大きい額 |
なお、接待によって支出した1人当たりの金額が10,000円以下の場合は、接待交際費としては計上できません。その場合は会議費等として経費計上するケースが多いです。
個人事業主が接待交際費を計上するためにやること
個人事業主が接待交際費を計上するためにやるべきことは2つあります。
領収証やレシート、参加人数を記載したメモを保管する
接待交際費を計上するうえで大切なことは、領収書やレシートなどお金を払った証拠を残しておくことと接待した相手の記録を残しておくことです。
もし適切な情報を残せていなかった場合、税務調査の際に調査官から指摘され、接待交際費などをはじめとした経費として認められない可能性があります。
指摘を受けた場合に調査官を説得するときにも証拠が必要です。また税務調査が入った後に取引先等に事実確認の連絡が行われることがあるので、なるべく詳細な情報を残しておくことをお勧めします。
以下の情報を残しておくと、突然の税務調査にも慌てずに済みます。
- 接待を行った日時
- 接待を行った際の領収書・レシート
- 接待の相手
- 接待を行った場所・店名
- 接待の内容(食事、ゴルフなど)
領収書の保存期間についても注意が必要です。白色申告の場合は5年、青色申告の場合は7年間領収書の保存義務があります。
領収書をもらえなかった場合は出金伝票を作成する
交通費や祝儀・香典など接待交際費用の中にはレシートや領収書が受け取れないものもあります。
そのような場合は出金伝票を作成し、支出があったことの証明としましょう。以下の事柄をメモしておいてください。
- 日付
- 支払先
- 勘定科目
- 摘要
- 支払金額
確定申告等の税務に使う出金伝票は紙でも電子でも作成できます。テンプレートもあるので活用することをおすすめします。
【出金伝票の例】
日付 | 2024年12月20日 |
---|---|
支払先 | 居酒屋○○ ××店 |
勘定科目 | 接待交際費 |
摘要 | 取引先(○○様)との会食 |
支払金額 | 4,600円 |
出金伝票はダイソーなどの100円均一ショップでも販売されています。手書きで作成する場合は100均の安価な出金伝票がおすすめです。
100円のものでも出金伝票としての機能は有しています。はじめて出金伝票を作る場合にもおすすめです。
100円均一の出金伝票の記載内容
- 日付
- 支払先
- 勘定科目
- 摘要
- 個別の金額
- 合計金額
以上で挙げた項目のほかにも、「コード」や承認印、係印など、内部で処理をする場合に使用する欄も設けられています。
個人事業主が接待交際費に計上できる支出の例
接待交際費を含む「交際費等」の定義は「交際費、接待費、機密費、その他の費用で事業者がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」です。
わかりやすくいうと、事業活動に関係あるなら交際費として認められます。
個人事業主が接待交際費に支出できる例とそうでない例をご紹介します。
接待交際費に計上できる例
接待交際費に一部計上できる例
接待交際費とは認められない例
接待交際費として計上できると紹介している例の中でも、きちんとした記録がなければ税務調査の際に接待交際費として認められないケースもあります。
大切なことは明確な記録を残しておくことです。接待交際費として認められるケースでも、そうではない場合もこまめに記録をつけておくことをおすすめします。
【〇】飲食店で取引先を接待した
取引先などとの接待での支出は接待交際費にあたります。通常の飲食代の他にも、
- 3万円のコース料理などの高額な支出
- キャバクラでの接待飲食代
なども接待交際費として計上可能です。
また取引先との直接的な接待はもちろんですが、将来的に取引先となり得そうな相手との飲食代なども接待交際費として計上できます。
【〇】懇親を兼ねて取引先とゴルフをした
取引先などと懇親を兼ねてゴルフをしたとき、プレーに伴うゴルフ代や、ゴルフ場利用税も接待交際費として計上できます。
ゴルフ場までタクシー等を手配した場合は、タクシーの料金も接待交際費として計上できます。旅費交通費ではないのでご注意ください。
【〇】お中元・お歳暮・商品券などの贈答品を取引先に送った
お中元やお歳暮は、取引先などとの良好な関係構築・維持として必要な贈答です。そのため接待交際費として計上できます。
商品券は一般の贈答品に比べると相手の好みを選ばないので、贈答に利用しやすいでしょう。贈答やお返しなどの目的で購入した商品券も接待交際費として計上できます。
なお店舗名などの入ったカレンダーや手帳を取引先に贈答した場合は、交際費ではなく広告宣伝費となりますので注意しましょう。
【〇】取引先の家族のお祝い事に慶弔金を贈った
慶弔金とは結婚や出産のお祝い金、お葬式などの不幸に際して支払うお金です。取引先やその家族に対しての慶弔金も、接待交際費として計上できます。
慶弔金の場合、領収書をもらうことはできないため、自身で出金伝票などを作成しておかないと接待交際費に計上できないのでご注意ください。
【〇】打ち合わせ時に食事をし代金を割り勘した
打ち合わせなどで複数人で食事をし、費用を各々で割り勘にした場合は、自分の分のみを経費計上しましょう。
領収書を分割して発行してもらえるケースは少ないので、自身で出金伝票を作成しておきましょう。
その際、以下の事項をなるべく具体的に記載する必要があります。
- 日時
- 店名・所在地
- 金額
- 使用目的・内容
- 参加人数・相手
打ち合わせの相手の連絡先が分かる場合は連絡先もあわせてメモしておきましょう。税務調査に入った際に調査官が相手に連絡することもあるためです。
【△】友人や親族と食事をした
友人や親族と食事をした場合、事業に関係のある相手とであれば接待交際費として計上できます。
たとえば取引先でもある友人と、仕事上の話を居酒屋で飲食をしながら行った場合の飲食費は接待交際費になります。
ただし事業に関係のない相手に対する支出は接待交際費にはなりません。
たとえば以下の例では、妻の分の飲食費は接待交際費にはなりません。
この場合、妻の分の支出はプライベートの支出と考えられるため、接待交際費に計上しないようにしましょう。
【×】1人で食事をした際の食事代
接待交際費は接待や交際の相手がいないと成立しない点に注意してください。1人で食事をした場合の飲食費は原則として接待交際費には計上できません。
ただし、オンラインで懇談会をしていた場合などは接待交際費として認められる可能性があります。個別の事例については税理士に確認することをおすすめします。
【×】取引先でもある友人と業務に関係なく出かけた
取引先でもある友人と業務に関係なく一緒に出かけた場合の出費は、事業に関係ないので接待交際費としては認められません。
友人とテーマパークに行ったり、スポーツ観戦に行った際のチケット代等が接待交際費として認められるケースは少ないです。ただし、事業の内容によっては一般的には遊興費にあたるような支出であっても経費になる可能性があります。
たとえば自分自身と友人がともに個人事業主の音楽家だった場合は、コンサートのチケット代は事業に関係のある支出として認められる可能性があります。
こちらも個別の事例については税理士に確認する必要があります。相談の際には詳細な情報が必要なので、チケット代や開催日時、場所などの情報をメモしておくようにしましょう。
接待交際費と間違えやすい科目の例
接待交際費と似た勘定科目には「接待飲食費」「会議費」「福利厚生費」「広告宣伝費」などがあります。これらの勘定科目は会計上処理を間違えやすく混同しやすいため、注意が必要です。
接待飲食費:接待交際費に含められるが計算時に注意が必要
接待飲食費はその名の通り、飲食をした際に発生した費用です。接待交際費とほぼ同義なので、特別な理由がない限りは接待交際費として計上しましょう。
2つを分けて計上すると費用や項目が重複しやすく、計算ミスにつながってしまいます。
会議費(取材費):会議中の食事や飲み物代が対象
取引先とのランチミーティングでのランチ代や会議で出すお弁当代は、一般的には接待交際費ではなく会議費として計上します。
記事作成などの目的で取材が行われた際、発生した費用は取材費とする場合もあります。取材費も会議費とほぼ同義です。
接待交際費と会議費の違いは、その支出の目的です。接待交際費は取引先などとの接待に伴う飲食代であることに対し、会議費は社内外での会議や打ち合わせなどに要した費用を指します。
福利厚生費:従業員の慰安のために飲み会を開いた場合など
福利厚生費は、従業員の慰安のために開催される行事に伴う支出を指します。
「従業員を慰労するための食事会」「会社のレクリエーションのために要する費用」などは接待交際費からは除外され、福利厚生費として計上するのが一般的です。
ただし、食事などの目的が従業員の慰安ではなく接待であれば、接待交際費として処理する点に注意しましょう。たとえば退職を検討している従業員を引き留めるための食事の場や、採用したい従業員をもてなす食事会などです。
広告宣伝費:得意先や取引先以外の不特定多数へ配布した場合
広告宣伝費は、一緒に事業を行う得意先・取引先以外へプレゼントやノベルティを渡す場合に用いられます。
例えば、自社のロゴが入ったカレンダー・ボールペンなどのノベルティ配布です。他にも、抽選で少人数に金券をプレゼントする・旅行やアミューズメントパークなどへ招待するキャンペーンなども該当します。
ただし、同業者間でのやり取りは対象外です。機械の製造業者が鉄工業者へ部品を贈ったときや化粧品業者が美容(理容)業者へ化粧品を贈る場合などが該当します。
接待交際費の仕訳例
接待交際費の複式簿記における仕訳は、以下のとおりです。摘要欄に取引相手の名前や人数を具体的に記載することを忘れないようにしましょう。
年月日 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2024年11月1日 | 交際費 20,000円 | 現金 20,000円 | 〇〇会社代表〇〇様と2人で会食 |
2024年11月15日 | 交際費 30,000円 | 現金 30,000円 | △△会社へオフィス移転祝い金 |
経費計上できるか迷ったときは税理士に相談しよう
個人事業主が経費にできる接待交際費は、法人と異なり上限が決まっていません。しかしどのような支出も無条件で計上できるわけではないため、接待交際費の範囲を正しく理解することが大切です。
「これは経費計上できるのだろうか」と迷ったら、税務のプロである税理士に相談しましょう。
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