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個人事業主の接待交際費はいくらまで?経費計上の上限と使い過ぎのリスクも解説

最終更新日: 2025年02月17日

接待交際費は確定申告に記載する経費科目のひとつです。

個人事業主は法人と違って接待交際費に明確な上限はありません。ただし接待交際費として計上した金額があまりにも高い場合は税務調査の対象になる可能性があります。

本記事では接待交際費とは何か、接待交際費が発生する具体例とともに、個人事業主が接待交際費を経費計上する際のポイントについて解説します。

接待交際費とは事業に関わる人とのやり取りで発生する費用

接待交際費とは、事業のやり取りをする相手、主に取引先との交流の際に発生する費用を指します。いくつか具体例を紹介します。

  • 取引先との会食費用
  • 取引先へ訪問した際の手土産の購入代金
  • 接待ゴルフを開催した際のゴルフ場利用料

そのほかに多い支出の例は「個人事業主が接待交際費に計上できる支出の例」をご覧ください。

接待交際費に含まれる支出は幅広く、個人事業主の場合は計上する額に上限がないこともあってついついあれもこれも接待交際費として計上してしまいがちです。

しかし売上に対して接待交際費が多く計上されすぎていると「所得隠しではないか」「不正に計上していないか」と税務調査の対象になるケースが多いのでご注意ください。

個人事業主は接待交際費の上限の規定はない

個人事業主は法人とは異なり、接待交際費の上限の規定はありません。そのため理論上は、適切であれば取引先とのやり取りはすべて接待交際費として計上できることになります。

しかし実際のところは、売上に比較して接待交際費の額が大きすぎる場合は不正が行われているのではないかと税務調査の対象になります。税務調査の際に不審点が見つかった場合は経費として認められないので、明確な証拠が必要です。

具体的な割合は公開されていないものの、売上の6~7%以上が接待交際費の場合は不適切な会計処理をしているのではないかとみなされる可能性が高くなります。

適切な会計を処理をしても接待交際費が異様に高くなる場合は、支出の見直しをする必要があるかもしれません。一度税理士に相談することをおすすめします。

接待交際費について税理士に相談する

また、法人の接待交際費は個人事業主とは異なり、上限が定められています。

資本金の額 接待交際費の上限
資本金1億円以上 接待交際費のうち50%
資本金1億円以下 年間800万円まで
または
接待交際費のうち50%のいずれか大きい額

なお、接待によって支出した1人当たりの金額が10,000円以下の場合は、接待交際費としては計上できません。その場合は会議費等として経費計上するケースが多いです。

個人事業主が接待交際費に計上できるか迷った時の判断基準

個人事業主が、支出について交際費に計上できるか迷った際は、事業活動に関係があるかどうかを基準に判断しましょう

税法上、交際費とは事業の円滑な運営のために行う接待・贈答・飲食等の支出です。

そのため、単なる私的な飲食代や交友費ではなく、事業目的であることが明確であれば交際費として認められる可能性が高くなります。

個人事業主が接待交際費に計上できる支出の例

接待交際費を含む「交際費等」の定義は「交際費、接待費、機密費、その他の費用で事業者がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」です。

わかりやすくいうと、事業活動に関係あるなら交際費として認められます

個人事業主が接待交際費に支出できる例とそうでない例をご紹介します。

接待交際費として計上できると紹介している例の中でも、きちんとした記録がなければ税務調査の際に接待交際費として認められないケースもあります

大切なことは明確な記録を残しておくことです。接待交際費として認められるケースでも、そうではない場合もこまめに記録をつけておくことをおすすめします。

飲食店で取引先を接待した飲食代

取引先などとの接待での支出は、接待交際費にあたります。通常の飲食代の他にも、

  • 3万円のコース料理などの高額な支出
  • キャバクラでの接待飲食代

なども接待交際費として計上可能です。

また取引先との直接的な接待はもちろんですが、将来的に取引先となり得そうな相手との飲食代なども接待交際費として計上できます

懇親を兼ねて取引先とゴルフをした際のゴルフ代・ゴルフ場利用税

取引先などと懇親を兼ねてゴルフをしたとき、プレーに伴うゴルフ代や、ゴルフ場利用税も接待交際費として計上できます。

ゴルフ場までタクシー等を手配した場合は、タクシーの料金も接待交際費として計上できます。旅費交通費ではないのでご注意ください。

お中元・お歳暮・商品券などの贈答品を取引先に送った際の購入代金・送料

お中元やお歳暮は、取引先などとの良好な関係構築・維持として必要な贈答です。そのため接待交際費として計上できます

商品券は一般の贈答品に比べると相手の好みを選ばないので、贈答に利用しやすいでしょう。贈答やお返しなどの目的で購入した商品券も接待交際費として計上できます。

なお、店舗名などの入ったカレンダーや手帳を取引先に贈答した場合は、交際費ではなく広告宣伝費となりますので注意しましょう。

取引先の家族にお祝い事があり慶弔金を贈った際の金額・送料

慶弔金とは結婚や出産のお祝い金、お葬式などの不幸に際して支払うお金です。取引先やその家族に対しての慶弔金も、接待交際費として計上できます。

慶弔金の場合、領収書をもらうことはできないため、自身で出金伝票などを作成しておかないと接待交際費に計上できないのでご注意ください。

打ち合わせを兼ねての食事で代金を割り勘で支払った時の自分の分

打ち合わせなどで複数人で食事をし、費用を各々で割り勘にした場合は、自分の分のみを経費計上しましょう。

領収書を分割して発行してもらえるケースは少ないので、自身で出金伝票を作成しておきましょう。

打ち合わせの相手の連絡先が分かる場合は連絡先もあわせてメモしておきましょう。税務調査に入った際に調査官が相手に連絡することもあるためです。

個人事業主の接待交際費として計上できない支出の例

個人事業主の接待交際費として、下記のものは経費として計上できません。

  • 私的利用が一部含まれる支出
  • 事業主が1人だけで行う飲食代
  • 友人や親族との飲食代・娯楽費

それぞれについて解説していきます。

私的利用が一部含まれる支出

友人や親族と食事をした場合、事業に関係のある相手とであれば接待交際費として計上できます。たとえば取引先でもある友人と、仕事上の話を居酒屋で飲食をしながら行った場合の飲食費は、接待交際費になります。

ただし事業とは無関係な私的な支出が含まれている場合、接待交際費として計上することはできません。以下のようなケースはNGです。

  • 一人で飲みに行った際の飲食代
  • 自宅用と取引先用の贈答品をまとめて購入
  • 家族との外食を「取引先との食事」として計上

また以下のようなケースも、妻の分の飲食費は接待交際費にはなりません。

  • 個人事業主本人とその妻、取引先でもある友人の3人で食事に行き、妻は仕事に関する話を一切しなかった場合の飲食費

この場合、妻の分の支出はプライベートの支出と考えられるため、接待交際費に計上しないようにしましょう。

事業主が1人だけで行う飲食代

接待交際費は接待や交際の相手がいないと成立しない点に注意してください。1人で食事をした場合の飲食費は原則として接待交際費には計上できません。

  • 1人でのランチやカフェ代は基本的に経費にならない
  • 出張時の食事は「旅費交通費」に分類するのが適切
  • 取引先との飲食でも、レシートを分けて管理すると安心

ただし、オンラインで懇談会をしていた場合などは接待交際費として認められる可能性があります。個別の事例については税理士に確認することをおすすめします。

友人や親族との飲食代・娯楽費

取引先でもある友人と業務に関係なく一緒に出かけた場合の出費は、事業に関係ないので接待交際費としては認められません

友人とテーマパークに行ったり、スポーツ観戦に行った際のチケット代等が接待交際費として認められるケースは少ないでしょう。

ただし、事業の内容によっては一般的には遊興費にあたるような支出であっても経費になる可能性があります。

たとえば自分自身と友人がともに個人事業主の音楽家だった場合は、コンサートのチケット代は事業に関係のある支出として認められる可能性があります。

こちらも個別の事例については税理士に確認する必要があります。相談の際には詳細な情報が必要なので、チケット代や開催日時、場所などの情報をメモしておくようにしましょう。

接待交際費について税理士に相談する

接待交際費と間違えやすい科目の例

交際費と会議費の違い

接待交際費と似た勘定科目には「接待飲食費」「会議費」「福利厚生費」「広告宣伝費」などがあります。これらの勘定科目は会計上処理を間違えやすく混同しやすいため、注意が必要です。

接待飲食費:接待交際費に含められるが計算時に注意が必要

接待飲食費はその名の通り、飲食をした際に発生した費用です。接待交際費とほぼ同義なので、特別な理由がない限りは接待交際費として計上しましょう。

2つを分けて計上すると費用や項目が重複しやすく、計算ミスにつながってしまいます。

会議費(取材費):会議中の食事や飲み物代が対象

取引先とのランチミーティングでのランチ代や会議で出すお弁当代は、一般的には接待交際費ではなく会議費として計上します。

記事作成などの目的で取材が行われた際、発生した費用は取材費とする場合もあります。取材費も会議費とほぼ同義です。

接待交際費と会議費の違いは、その支出の目的です。接待交際費は取引先などとの接待に伴う飲食代であることに対し、会議費は社内外での会議や打ち合わせなどに要した費用を指します。

福利厚生費:従業員の慰安のために飲み会を開いた場合など

福利厚生費は、従業員の慰安のために開催される行事に伴う支出を指します。

「従業員を慰労するための食事会」「会社のレクリエーションのために要する費用」などは接待交際費からは除外され、福利厚生費として計上するのが一般的です。

ただし、食事などの目的が従業員の慰安ではなく接待であれば、接待交際費として処理する点に注意しましょう。たとえば退職を検討している従業員を引き留めるための食事の場や、採用したい従業員をもてなす食事会などです。

広告宣伝費:得意先や取引先以外の不特定多数へ配布した場合

広告宣伝費は、一緒に事業を行う得意先・取引先以外へプレゼントやノベルティを渡す場合に用いられます

例えば、自社のロゴが入ったカレンダー・ボールペンなどのノベルティ配布です。他にも、抽選で少人数に金券をプレゼントする・旅行やアミューズメントパークなどへ招待するキャンペーンなども該当します。

ただし、同業者間でのやり取りは対象外です。機械の製造業者が鉄工業者へ部品を贈ったときや化粧品業者が美容(理容)業者へ化粧品を贈る場合などが該当します。

旅費交通費:接待のための移動にかかる費用・宿泊費用

接待のための移動費や宿泊費は、接待交際費ではなく「旅費交通費」として計上するのが適切です。正しく仕訳を行うことで、経費処理のミスを防ぎ、税務調査の際にもスムーズに説明できます。

旅費交通費に計上できる費用の具体例

費用の種類 具体例 計上のポイント
交通費 電車代・タクシー代・飛行機代 領収書やチケットの控えを保管する
宿泊費 ホテル代・旅館代 予約時の明細を保存する
車両費 レンタカー代・駐車場代 走行距離と使用目的を記録する

旅費交通費を正しく経費計上するために、以下の点に注意しましょう。

  • 接待交際費と区別する
  • 領収書・明細を必ず保管する
  • 出張の場合は旅費精算書を作成する

取引先との飲食費は「接待交際費」、それに伴う移動費や宿泊費は「旅費交通費」に区分されます

交通機関のチケットや、宿泊費の領収書を残しましょう。タクシー利用時は、移動区間と目的を領収書の裏にメモすると管理が楽になります。

出張を伴う接待では、移動・宿泊の詳細を記録し、旅費精算書を作成しておくと税務調査時にも安心です。

接待に関する費用はすべて「接待交際費」ではなく、正しく「旅費交通費」に分類して仕訳することで、税務上のリスクを軽減できます。

個人事業主の接待交際費の仕訳例

接待交際費の複式簿記における仕訳は、以下のとおりです。摘要欄に取引相手の名前や人数を具体的に記載することを忘れないようにしましょう。

年月日 借方 貸方 摘要
2024年11月1日 交際費 20,000円 現金 20,000円 〇〇会社代表〇〇様と2人で会食
2024年11月15日 交際費 30,000円 現金 30,000円 △△会社へオフィス移転祝い金

個人事業主にとって、接待交際費の正しい仕訳は節税対策の基本です。しかし、どのように帳簿へ記載すればよいのか迷うことも少なくありません。

ここからは、接待交際費の帳簿付けの方法や確定申告時の記入例を解説します。

接待交際費の帳簿の付け方

接待交際費を適切に帳簿へ記載することで、確定申告時にスムーズな処理が可能となります。記帳の際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • 日付・内容の明記:いつ、誰と、どのような目的で使用したかを記録する。
  • 領収書の保存:税務調査の際に証拠として求められることがあるため、必ず保管する。
  • 仕訳の方法:「交際費」勘定に分類し、適切な勘定科目を選択する。

また、国税庁が推奨する帳簿のテンプレートを活用するのも有効です。詳細は国税庁の帳簿記入ガイドを参考にしてください。

確定申告書の書き方

確定申告時には、接待交際費を適切に記載する必要があります。青色申告を行う場合、帳簿と一致する形で申告書へ記入しなければなりません

記載すべき主な箇所は以下の通りです。

  • 収支内訳書の「経費」欄:接待交際費の合計額を記入する
  • 青色申告決算書の「販売管理費」欄:事業に関連する交際費として計上する
  • 領収書や証拠書類の添付:税務調査対策として、書類を整理しておく

国税庁の例では以下の箇所に記載します。

確定申告書の接待交際費の欄

具体的な記入例や詳細な記載方法については、国税庁の申告書ガイドを確認してください。

個人事業主の接待交際費に関する注意点

個人事業主にとって接待交際費は必要な経費ですが、誤った処理をすると税務調査で指摘されるリスクがあります。適切に管理するためのポイントを解説します。

  • 支出を証明できる請求書・領収書・レシートを必ず残しておく
  • 支出した際の状況(接待相手・同席者・人数など)を記録する
  • 常識の範囲を超えて使いすぎると否認されるリスクがある

支出を証明できる請求書・領収書・レシートを必ず残しておく

接待交際費を計上する際には、支出の証拠となる請求書や領収書、レシートを必ず保管しましょう。レシートがないと、税務調査の際に経費として認められない可能性があります。

接待の目的や相手の情報を領収書の裏に記入すると管理が楽になります。確定申告に備え、ファイルやクラウドストレージを活用して整理しておきましょう。

また請求書や領収書などには5年間の保存義務があるため、紛失しないようにします。

領収書やレシートがもらえなかった場合は出金伝票を作成する

接待費の支払い時に領収書をもらえなかった場合、出金伝票を作成して記録を残す必要があります。特に現金支払い時には注意しましょう。

出金伝票の記入項目

項目 記入内容
日付 支払日を記載
金額 実際の支出額
取引先 接待相手の名前
用途 接待の目的(例: 取引先との会食)
支払い方法 現金 / クレジットカード

出金伝票のテンプレートを活用し、適切な管理を行いましょう。

支出した際の状況(接待相手・同席者・人数など)を記録する

税務調査では、接待交際費の支出が本当に事業に必要なものだったかを確認されます。そのため、以下の情報を詳細に記録しておくことが重要です。

  • 接待相手の氏名・会社名(例:○○商事の担当者)
  • 同席者の人数(例:自社2名、取引先3名)
  • 会食の目的(例:新規契約の打ち合わせ、関係強化のため)

記録を怠ると、個人的な交際費と見なされる可能性があります。領収書の裏にメモする習慣をつけると管理しやすくなります。

常識の範囲を超えて使いすぎると否認されるリスクがある

個人事業主には接待交際費の上限がありませんが、不自然に多額の費用を計上すると税務署に疑われる可能性が高くなります。たとえば高額な交際費を継続的に計上すると、不正な経費と判断されるかもしれません。

個人事業主でも多額の接待交際費を計上し続けると、調査対象になりやすくなります。詳細は国税庁の統計資料を参考にしてください。

常識の範囲内で適切に計上し、リスクを回避しましょう。

個人事業主と法人では接待交際費の扱いが異なる

個人事業主と法人では、接待交際費の計上ルールが大きく異なります

個人事業主には明確な上限はありませんが、法人の場合は法律で定められた制限が存在します。これを理解し、適切に処理することが重要です。

法人の接待交際費は、資本金によって損金算入できる金額が異なります。

資本金 損金算入できる範囲
1億円以下 年間800万円まで損金算入可
1億円超 原則として損金不算入(例外あり)

このため、小規模法人(資本金1億円以下)は接待交際費の一部を経費として計上できますが、大企業は基本的に経費として認められません。詳細は国税庁の解説を参照してください。

また、個人事業主には、法人のような上限はありませんが、過度な金額を計上すると税務調査で指摘される可能性があります。以下のポイントに注意しましょう。

  • 事業関連性の証明が必要
    • 家族や友人との食事は原則として経費にならない
    • 取引先との会食・接待は具体的な内容を記録する
  • 支出のバランスを考える
    • 事業規模に対して異常に高額な交際費を計上すると、不正計上を疑われる
    • 目安として、売上の5~10%以内が一般的
  • 領収書・メモの保管が必須
    • 「誰と、どのような目的で、いくら使ったか」を明記する
    • 領収書の裏にメモを残すと記帳時に便利

個人事業主は無制限に計上できるわけではなく、適正な範囲での管理が必要です。
法人と比較してルールが緩やかである分、税務調査で疑われないよう慎重な処理を心がけましょう。

個人事業主の接待交際費を正確に計上するなら税理士へ相談

個人事業主が接待交際費を適切に計上するには、税理士への相談が最も確実な方法です。なぜなら、税務処理のルールが複雑であり、誤った計上は税務調査の対象となる可能性があるからです。

例えば、以下のようなケースでは判断が難しくなります。

  • 取引先との飲食費:業務上の必要性が認められるか?
  • 贈答品の購入:経費として計上できる金額の上限は?
  • 社内懇親会費:従業員福利厚生費として認められるか?

税理士に相談することで、これらの不明点をクリアにし、節税対策や税務調査のリスクが回避できます。また、適切な記帳方法を学ぶことで、日々の経理業務も効率化できます。

接待交際費の計上に迷ったら、税理士のアドバイスを受けるのが賢明です。

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