確定申告には青色申告と白色申告の2種類のやり方があります。違いがよく分からず、どちらの申告方法を選べば良いのか迷う人もいるでしょう。副業による所得がある会社員の場合、多くは白色申告ですが青色申告で申告するケースもあります。
この記事では、青色申告と白色申告の違いやそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。申告方法の見極め方をフローチャートで分かりやすく解説するので、はじめて確定申告をする人は参考にしてください。
青色申告と白色申告の基本
青色申告と白色申告のどちらで確定申告をするのか、それぞれ対象者が決まっています。この2つは異なる申告方法です。
確定申告をするときには、青色申告と白色申告がどのような申告方法なのか、この点を理解しておく必要があります。まずは青色申告と白色申告の概要について見ていきましょう。
確定申告の青色申告と白色申告とは?
青色申告とは、日々の取引を正規の簿記(一般的に複式簿記)で記帳し、その帳簿に基づいて申告することでさまざまな税制優遇措置を受けられる制度です。青色申告以外の確定申告は白色申告と呼ばれます。青色申告と白色申告の概要は以下の表のとおりです。
白色申告では所得の種類によって違いが生じ、青色申告では適用を受ける控除の金額によって違いが生じます。青色申告で確定申告をできるのは、この後に解説する要件に該当する人で事前に税務署に届出をした人です。
青色申告は記帳方法が複雑で帳簿の作成に手間がかかりますが、白色申告にはない特典があるため節税になります。
青色申告の条件 ~会社員、副業、個人事業主の場合~
所得税を計算する際、所得を10種類に分けて計算します。青色申告で確定申告をできるのは、次の3つのいずれかの所得がある人です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
青色申告を選択する場合は、青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以降に事業を開始した場合は事業開始日から2月以内)に、「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。期限までに申請書を提出しなかった場合、青色申告で申告することはできません。
また青色申告を選択する場合は「個人事業の開業届出書」を税務署に提出している必要があります。届出書の提出期限は事業開始日から1月以内です。
青色申告と白色申告 見極めのポイント
会社員で副業による所得がある人が、確定申告に向けて確認すべき点は次の2つです。
- 確定申告の義務が生じているのか
- 青色申告の要件を満たしているのか
副業の所得が少額など、確定申告の義務が生じていない場合には申告手続きは不要です。申告の義務がある場合は青色申告・白色申告いずれかの方法で申告することになり、青色申告の要件を満たしているかどうかが見極め方のポイントになります。
確定申告が必要かどうか確認する
会社員は一般的に勤務先で年末調整を受けられるので、確定申告をする必要はありません。しかし会社員が副業で所得を得ると、確定申告の義務が生じる場合があります。確定申告の義務が生じるのは次のような場合です。
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1か所から給料をもらっている人は、副業による所得額が20万円以下であれば確定申告は不要です。ダブルワークで複数の会社から給料をもらっている人は、主たる給与以外の給与収入額と副業所得額の合計額が20万円以下であれば、確定申告の義務は生じません。
所得の種類で判断する
さきほど紹介したように、青色申告で確定申告をできるのは事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得がある人です。それ以外の人は白色申告になります。
所得税の計算で使う所得区分の種類や違いは次の表のとおりです。自分が副業で得た所得がどの所得区分に該当するのか、確認してみましょう。
①利子所得 | 預貯金や公社債の利子、合同運用信託などの収益の分配に係る所得 |
②配当所得 | 株主が受け取る配当や投資信託などの収益の分配に係る所得 |
③不動産所得 | 家賃や地代など不動産の貸付による所得や船舶・航空機の貸付による所得 |
④事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業を行って得た所得(ただし不動産の貸付や山林の譲渡による所得は原則として不動産所得や山林所得) |
⑤給与所得 | 勤務先から受ける給料や賞与など |
⑥退職所得 | 勤務先から受け取る退職金や退職に基因して厚生年金保険法に基づいて支払われる一時金などの所得 |
⑦山林所得 | 山林を伐採して譲渡したときや立木のままで譲渡したときに生ずる所得(ただし山林の取得から5年以内に伐採・譲渡した場合は山林所得ではなく事業所得または雑所得) |
⑧譲渡所得 | 資産の譲渡によって生ずる所得や建物などの所有を目的とする地上権の設定による所得で一定のもの |
➈一時所得 | 懸賞や福引の賞金品、競馬の払戻金、生命保険の一時金など(営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもので、労務の対価や資産譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得) |
➉雑所得 | 公的年金や副業による原稿料、講演料など(他の9種類の所得のいずれにも該当しない所得) |
事業所得と雑所得の違い
所得の種類の判定で間違えやすい点のひとつが事業所得と雑所得です。事業所得は文字通り事業に関連する所得のことですが、自分の副業が事業に該当して事業所得になるのか、それとも一般的な趣味などと同じく事業とは言えず雑所得になるのか、違いが分からず迷う人もいるでしょう。
まず、事業所得として認められるためには反復継続して行っている必要があります。仮に株式投資をして1回の取引で大きな利益を出した場合でも、反復継続性が認められなければ事業所得にはなりません。副業で稼いで年収が大きく増えても、事業所得になるとは限らないということです。
また、事業として独立しているかや成立しているかもポイントになります。この点に関しては、日々その事業に関わっているかなど、その人の状況に鑑みて総合的に判断します。
会社員の副業では、屋号や事業主としての名刺がないことが多く、事業とはいえないことが一般的です。副業による所得が少ないことを以て事業性を否定される場合もあります。そのため、会社員の副業所得が事業所得にあたり青色申告を選択できるケースは多いとはいえません。
青色申告と白色申告 見分け方チャート
会社員で副業による所得がある場合、確定申告が必要かどうかや青色申告と白色申告のどちらで確定申告をするのかは、次のフローチャートを使えば確認できます。自分がどのケースに該当するのか確認してみましょう。
青色申告と白色申告の違い
事業所得や不動産所得、山林所得がある場合でも、白色申告から青色申告に変えるかどうかはその人の自由です。どちらにするのかを決めるにあたっては、青色申告と白色申告の違いを理解しておく必要があります。
ここでは2つの申告方法の違いを具体的に紹介するので、違いを踏まえた上で自分に適した申告方法を選ぶようにしてください。
青色申告と白色申告 違い一覧
青色申告と白色申告には次のような違いがあります。
以下では主な違いについて、それぞれ解説していきます。
記帳方法の違い
白色申告者の記帳方法は単式簿記と呼ばれる方法で、これは単式、つまり1つの勘定科目を使うシンプルな記帳方法です。複式簿記のような複雑な簿記の知識は必要ありません。シンプルであるが故に複式簿記に比べて記帳内容から分かることは限られますが、簿記に詳しくない人でも使いやすい方法といえます。
一方で、青色申告者の記帳方法は複式簿記と呼ばれる方法で、これは複式、つまり複数の勘定科目を使って仕訳する記帳方法です。さらに勘定科目を資産・負債・純資産・収益・費用の5つに分類して、財政状態を表す貸借対照表や儲けを表す損益計算書を作成します。
帳簿の種類と保存義務の違い
事業所得や不動産所得、山林所得がある場合、帳簿や書類の保存義務がある点は青色申告でも白色申告でも同じです。しかし保存義務がある帳簿や書類の種類が青色申告と白色申告では違い、青色申告者のほうが多くなっています。一覧表で紹介したとおり、青色申告ではさまざまな帳簿の作成が必要です。
なお白色申告者のうち事業所得・不動産所得・山林所得がない人には、帳簿の作成や保存の義務はありません。会社員が副業で稼いでも雑所得に該当する場合が多く、会社から受け取る給料と副業による雑所得のみであれば帳簿の作成や保存は不要です。
ただし雑所得がある場合で、前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超える場合には、法改正により令和4年以降、領収証等の保存義務が生じる点に注意してください。
提出書類の違い
確定申告をする際、青色申告者は青色申告決算書を作成し、白色申告者のうち事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得がある人は、収支内訳書を作成します。
青色申告決算書と収支内訳書は、収入や経費に関する事項を記入する点では同じですが、青色申告決算書のほうが記入する項目数が多く、作成に手間がかかります。
ただし、確定申告に対応した会計ソフトを使って記帳している場合は、1年分の記帳データをもとに青色申告決算書や収支内訳書を作成できる機能が付いていることが一般的です。手計算で集計したり用紙に手書きしたりする手間は基本的にかからず、どちらの書類を作成する場合でもかかる手間に大きな違いはありません。
確定申告にも対応した会計ソフトを探したい場合は、以下も併せてご覧ください。
控除額の違い
青色申告者のうち次の要件を満たす人は、税率をかける前の所得額から青色申告特別控除額55万円を控除できます。55万円に所得税率をかけた額だけ、税負担が減って節税になる計算です。
【青色申告特別控除(55万円)の条件】
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さらに、仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存を行っているか、e-Taxで確定申告をしている場合は、控除額が増えて55万円ではなく65万円になります。逆に上の3つの条件を満たさない場合は控除額が少なくなり10万円です。
一方で白色申告者には控除の適用がありません。青色申告だと特別控除によって節税になる点が白色申告との大きな違いといえます。
経費の扱いの違い
経費の扱いに関して青色申告は白色申告に比べて有利な点が多くなっています。青色申告でより多くの経費を計上できれば、収入から経費を引いた所得額が小さくなり節税になります。
事業専従者給与
15歳以上など一定の要件に該当する家族を事業に従事させて給与を支払った場合、青色申告では妥当な金額であれば基本的に全額経費にできます。
しかし白色申告では、配偶者に支払った場合は最大86万円、配偶者以外の家族に支払った場合は最大50万円までしか経費にできません。
貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などが将来回収できなくなり貸倒れになる場合に備えて、合理的な方法で算出した金額を損失の見込額として計上する際の見込額のことです。貸倒引当金の計算方法には個別評価と一括評価の2つの方法があります。
青色申告ではいずれの方法も認められますが、白色申告では個別評価のみで一括評価による貸倒引当金の計上はできません。青色申告のほうが計上できる貸倒引当金が多くなります。
少額減価償却資産
減価償却資産とは、建物や器具備品、車など事業用の資産のうち、使用期間が1年以上で取得価額が10万円以上の資産です。減価償却資産を取得した場合、取得費用をその年に一括して経費計上することは原則としてできず、法定耐用年数に応じて複数年に分けて費用を計上します。
しかし青色申告では、取得価額が10万円以上でも30万円未満であれば、一定の要件のもとで全額を経費にすることが可能です。少額減価償却資産の一括償却の特例と呼ばれる制度で、最初の年にまとめて計上することで節税になる場合があります。
赤字の繰越し・繰戻しの違い
赤字になった場合でも青色申告では翌年以降最大3年間、赤字を繰越せます。翌年以降に黒字だった場合、その年の黒字と繰越し済の赤字を相殺できて節税になる仕組みです。
また前年も青色申告をしている場合は、その年の損失額を前年に繰戻して、前年分の黒字分から引いて所得税の還付を受けることもできます。白色申告では赤字の繰越しや繰戻しはできません。
青色申告と白色申告 メリットとデメリット
青色申告と白色申告にはさまざまな違いがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。事業所得や不動産所得、山林所得がある人は、どちらの申告方法でも選ぶことができますが、2つの申告方法のメリット・デメリットを踏まえて決めるようにしましょう。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告のメリットは、白色申告にはない特典をうまく活用すると節税になることです。納税額が小さくなれば翌年以降に使える事業資金が増えることになります。
ただし青色申告では原則として複式簿記で帳簿を作成する必要があり、作成や保存が義務付けられている帳簿の種類が多いため、手間がかかる点はデメリットです。
白色申告のメリット・デメリット
白色申告のメリットは、事業所得・不動産所得・山林所得がない人であれば帳簿の作成や保存の義務がないことと、これらの所得がある人でも単式簿記による記帳で良いので、青色申告よりも手間がかからないことです。
しかし白色申告には青色申告のような特典がありません。最大65万円の特別控除を受けられる青色申告とは違い、節税につながる税制優遇措置の適用を受けられない点が白色申告のデメリットです。
現在の状況と将来の継続性によりメリット・デメリットは変わる
たとえば事業を開始した直後、初期投資により経費が多くかかって赤字になる場合、青色申告であれば損失を翌年以降に繰越すことが可能です。初期投資費用が大きくなる事業の場合は、青色申告のほうが節税になり有利な場合があります。
しかし経費があまりかからない事業では、各年の収支が赤字にならないことも多く、このような場合は青色申告にしても損失の繰越し・繰戻しができません。
また青色申告であれば65万円・55万円・10万円の特別控除を適用できますが、所得額がこの金額を下回る場合は、控除できるのは所得額までです。仮に会社員が副業で年間5万円の所得を得ても、5万円しか控除できないことになります。所得額が小さい場合は青色申告特別控除のメリットは大きくありません。
一方で今は所得額が小さくても、今後事業を継続して所得額を増やしていく予定であれば、将来的に青色申告のほうがメリットが大きくなる可能性があります。いつかは白色申告から青色申告に変更するのであれば、早めに青色申告に変えておいても良いでしょう。
監修税理士のコメント
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青色申告と白色申告ではさまざまな点で違いがあり、記帳方法や経費の取扱い、特別控除の有無などが異なります。それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、自分に適した申告方法を選ぶようにしましょう。
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