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個人事業主の売上の仕分け方|仕訳タイミングや帳簿の書き方も解説

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最終更新日: 2025年02月17日

個人事業主として開業した方がぶつかる壁に、青色申告のための複式簿記があります。

仕訳の際に毎回インターネットで調べている方のために、この記事では売上や売掛金にかかわる仕訳を網羅的に説明していきます。

個人事業主の売上(売掛金)の仕訳方|売上計上日と入金日の2回記入

発生した売上の仕訳をする際に、重要となるのが「売上計上日」と「入金日」の日付を把握することです。売上計上日と入金日が異なっているかどうかをまず確認しましょう。

売上計上日と入金日が異なっている場合は、それぞれのタイミングで異なる仕訳をする必要があります。

売上計上日 売上が確定した日付
入金日 実際に振り込まれた日

なお、売上計上日とは、製品の販売であれば(基本的に)出荷をした日、店頭での商品の販売であれば販売をした日、役務の提供であれば当該役務提供を終えた日を指します。

また売掛金をきちんと回収できたか確認する必要もあります売掛金とは製品の販売やサービスの提供に対して、後日入金される未収入金のことです。

売掛金は、補助科目で取引先ごとに分類して管理すると非常に便利です。代金の回収確認がしやすい仕組みを作っておきましょう。

個人事業主として売上があったときの仕訳例

個人事業主 売上 仕訳例

売上と売掛金が発生する仕訳を、具体例にあてはめて確認してみましょう。今回は使用頻度の多い複式簿記を扱います。

具体例を参考にして、ご自身の事業の売上内容を分類してみてください。

(具体例)

6/1に1,080円(税込)の商品Aを取引先B社に販売し、請求書を発行した。取引先B社からの入金は当月末締め、翌月20日払いの契約である。取引先のB社から入金の際には振込手数料を差し引いた金額が預金口座に振り込まれた。なお、免税事業者を前提とする。

売掛金の仕訳例

今回の具体例では売上計上日と入金日が異なっているので、まずは売掛金を計上します。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
6/1 売掛金 B社 1,080 売上 1,080 商品Aの販売

売掛金の仕訳を行う際は、勘定科目、借方・貸方の記入順にすると良いでしょう。

手数料が発生した場合の仕訳例

入金の際に手数料が発生した場合は、普通預金と支払手数料に分けて計上します。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
8/20 普通預金 972 売掛金 B社 1,080 B社からの振り込み
支払手数料 108

個人事業主の売上から源泉徴収された場合の仕訳例

個人事業主 売上 仕訳 源泉徴収

取引先からの支払いの際に、所得税の源泉徴収がされた場合の、仕訳の方法を具体例にあてはめて考えてみましょう。

報酬の支払い日によって源泉徴収のタイミングが異なることに注意してください。

また使用する勘定科目は「租税公課」ではなく、「事業主貸」です。

本来は事業主のプライベートな給与から支払われる所得税を、事業資金から支払ったとみなして、「事業主貸」という科目で処理することになります。個人事業主の場合のみ発生する科目なので、注意しましょう。

(具体例)

6/1に1,080円(税込)の商品Aを取引先B社に販売し、請求書を発行した。取引先B社からの入金は当月末締め、翌月20日払いの契約である。取引先のB社から入金の際には源泉徴収がされており、残りの金額が預金口座に振り込まれた。なお、免税事業者を前提とする。

売上計上日に対して入金日が後日の仕訳例

ここでは、7/20に発生する入金日の仕訳だけを抜粋して記載します。6/1の売掛金の計上方法は、上述した売掛金の仕訳例の項目と同じです。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
7/20 普通預金 978 売掛金 B社 1,080 B社からの振り込み
事業主貸 102

売上計上日と入金日が同一日の仕訳例

源泉徴収に関して使用する勘定科目は同様に、「事業主貸」となります。源泉徴収の発生タイミングが入金日となるので、売上と同じタイミングで計上します。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
6/1 普通預金 978 売上 1,080 B社からの振り込み
事業主貸 102

年をまたぐ場合や売掛金が回収できなかった場合の仕訳例

個人事業主 売上 仕訳 年またぎ

売上や売掛金の処理で特に注意が必要な、会計年度をまたいだ場合の会計処理の方法を解説します。

また、特殊な場合ではありますが、売掛金の回収が不能となった場合についての会計処理についても確認しましょう。

年度をまたぐ売掛金の仕訳例

年度をまたぐ場合であっても、12/1に発生する売掛金の計上方法と1/20の入金日の仕訳の処理は上述した方法と同じです。

(具体例)

12/1にサービスCを取引先D社に提供して、請求書を発行した。取引先D社からの入金は当月末締め、翌月20日払いの契約である。なお、個人事業主のため会計年度は、1/1~12/31までの期間である。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
12/1 売掛金 D社 1,080 売上 1,080 サービスCの提供
1/20 普通預金 978 売掛金 D社 1,080 D社からの振り込み
事業主貸 102

仕訳上は年度が変化していることがわかりづらいですが、源泉徴収された金額は翌年度の課税分となります。

入金されたタイミングで事業主の所得とみなされて所得税が発生するからです。売上の発生したタイミングとは異なるので注意しましょう。

ただし、継続的に売上計上日に源泉徴収税額を認識する処理を行なっている場合には、実務上、当該処理も認められています。

売掛金が回収できない場合の仕訳例

倒産などの特殊な事情で売掛金の回収ができなくなってしまった場合は、「貸倒損失」という勘定科目で処理します。売掛金が回収できないと確定した日付を利用して仕訳します。

ただし、貸倒損失を経費に計上するには税務上、厳しい要件が定められていますので注意してください。

(具体例)

6/1に1,080円(税込)のサービスCを取引先D社に提供して請求書を発行した。取引先D社からの入金は当月末締め、翌月20日払いの契約である。しかし、取引先D社が7/1に倒産した。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
7/1 貸倒損失 1,080 売掛金 D社 1,080 D社の倒産による貸倒

他社や個人事業主数名と売上を折半する仕訳例

共同で仕事を引き受けて、売上を折半するという場合もあります。その場合、他社に渡す金額を「預り金」という科目で処理するのがポイントです。

ただし取引の形態によっては、一方が売上全額を計上し、もう一方に外注費を支払っているとみなされる可能性もありますので注意が必要です。最初から契約を分ける方が無難と言えます。

(具体例)

6/1日に1,080円(税込)のサービスCを取引先D社に提供して請求書を発行した。サービスCの提供は、提携先E社と共同で行なっており、売上は折半している。取引先D社からの入金は当月末締め、翌月20日払いの契約である。売上の入金は弊社がいったん全額受け取って、提携先E社の取り分は即日入金することになっている。

借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
6/1 売掛金 D社 1,080 売上 540 サービスCの提供
預り金 E社 540 E社に支払い分
借方 貸方
日付 勘定科目 補助科目 金額 勘定科目 補助科目 金額 摘要(具体的な内容)
7/20 普通預金 540 売掛金 D社 1,080 D社からの振り込み
預り金 E社 540

個人事業主の売上を計上するタイミングは業種で異なる

個人事業主の売上を計上するタイミングは、業種によって異なります

業種ごとおよび発生主義・現金主義での違いを以下の表にまとめました。

売上の計上パターン 発生主義 現金主義
棚卸資産の販売による売上を計上する場合 商品を引き渡した時点 顧客からの支払いが実際に行われた時点
役務の提供による売上を計上する場合 役務が顧客に提供された時点 顧客からの支払いが実際に行われた時点

棚卸資産の販売による売上を計上する場合

棚卸資産の販売による売上を計上する場合、発生主義か現金主義かで計上方法が異なります

発生主義で売上を計上する場合、年度末をまたぐ取引で利益が変動することがあるでしょう。税法上、棚卸資産の売上は商品の引渡し時点で計上され、商品が出荷された日や相手が受け取った日が基準となります。

一方で、現金主義の場合は、顧客からの支払いがおこなわれた時点が売上の計上日となります。

現金主義は事業主のキャッシュフローが正確に反映されることが特徴です。発生主義と比べて、年度をまたいだ決算を意識する必要が無いため、決算処理を進めるのがシンプルになります。

役務の提供による売上を計上する場合

役務の提供による売上を計上する場合も、発生主義か現金主義かで計上方法が異なります

役務の提供を発生主義で計上する場合、役務が顧客に提供された時点で計上されます。

この際、顧客からの支払いが完了していなくても売上が計上されることから、棚卸資産の発生主義の場合の売上計上よりもシンプルだと言えます。

一方で、現金主義の場合は棚卸資産の販売の場合と同様で、顧客からの支払いがおこなわれた時点で売上が計上されます。

顧客からの支払いが無い限りは売上を計上しないため、キャッシュフローが正確になることが特徴です。

確定申告書へ個人事業主の売上を記入する際はどこに書く?

個人事業主の売上を確定申告書へ書く場合、以下の項目への記載が必要です。

  1. 住所や氏名・生年月日等の基本情報
  2. 「収入金額等」の欄
  3. 「所得金額等」の欄
  4. 「所得から差し引かれる金額」の欄
  5. 「税金の計算」の欄
  6. 「雑」の欄

確定申告書

確定申告書の左上の「〇〇」の箇所には、管轄の税務署名を記入しましょう。

生年月日を入力する際は、以下の表をもとに対応する元号を記載する必要があります。

元号 対応する数字
明治 1
大正 2
昭和 3
平成 4
令和 5

また、職業や雅号を記載する際は、総務省の「分類項目名」を基準に具体的に記載しなければなりません。

例えば、個人事業主やフリーランスの場合は、「フリーランス」ではなく、フリーランスのデザイナーであれば「デザイナー」のように記載する必要があります。

以降の項目については以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

個人事業主の売上に含まれる消費税の仕訳方は2種類

個人事業主の売上に含まれる消費税の仕訳方法には、以下の2種類があります。

税込経理方式 取引内容を記載する際に、商品・サービスの価格と消費税を合算して計上する方法
税抜経理方式 本体価格と消費税を分けて計上する方法
「仮払消費税」「仮受消費税」等の勘定科目を用いて仕訳をおこなう

それぞれの仕訳方法について具体的に解説していきます。

税込経理方式

税込経理方式では、消費税を含んだ金額で経理処理を行います

取引における売上や仕入、経費などを消費税額込みの金額で記帳するため、消費税の処理が簡単で分かりやすい点が特徴です。

以下に6000円の商品①を仕入れ、8000円の商品②を販売した場合の税込み経理方式の計上の例を示します。

仕入れ

借方 貸方 適用
仕入高 6,600円 現金 6,600円 商品①

販売

借方 貸方 適用
現金 8,800円 売上高 8,800円 商品②

決算

借方 貸方 適用
租税公課 200円 200円 消費税

税抜経理方式

税抜経理方式とは、消費税を除いた金額で計上し、消費税額を別に仕訳して管理する方法です

売上や仕入れ、経費などの金額と消費税額を分けて計上するため、消費税の納付額が明確になるというメリットがあります。

以下に例を示します。

仕入れ

借方 貸方 適用
仕入高 6,000円 現金 6,600円 商品①
仮払消費税 600円

販売

借方 貸方 適用
現金 8,800円 売上高 8,000円 商品②
仮受消費税 800円

決算

借方 貸方 適用
仮受消費税 800円 仮払消費税 600円 消費税
未払消費税 200円

個人事業主は必ず売上の仕訳を帳簿づけしよう

個人事業主の場合、売上の帳簿をつけていなくても確定申告自体は可能です。しかし、申告内容に漏れや誤りがあった場合に、税務調査に引っかかるなどのリスクが生じます。

帳簿を残さないことによるリスクには、以下のようなものがあります

  • 申告額が少ない場合、過少申告加算税が課される
  • 意図的に不正な申告をしていた場合、最大50%の重加算税が生じる
  • 青色申告が取り消される
  • 納める必要があった税金が納められていないことになるため、延滞税が課される
  • 仕入税額の控除対象外となる
  • 推計課税が課される

帳簿が準備できていないと、払う必要のない税金が発生する、青色申告が取り消されることで控除が受けられないなどの不利益が発生するかもしれません。必ず帳簿をつけておくようにしましょう。

個人事業主の売上の仕訳方・書類の書き方が不安な方向けの対策

個人事業主の方で売上の仕訳方や書類の書き方に不安があるという方は、以下のような対策を検討することがおすすめです。

  • 会計ソフトを利用して仕分け作業を自動化する
  • 税理士に依頼して確定申告まで一貫してお願いする

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

会計ソフトを利用して仕訳作業を自動化する

個人事業主の方で売上の仕訳に不安がある方は、会計ソフトを活用することがおすすめです

会計ソフトを利用することで、仕訳作業が自動化できる上に、経理に割く手間を大幅に軽減できます。

会計ソフトは月額を支払わないと利用できないものが多いですが、日々の経理業務にかかる工数を減らし、より正確に記帳することができるようになるでしょう。

税理士に依頼して確定申告まで一貫してお願いする

仕訳方法がわからない、書類の書き方に不安があるという方は、税理士に依頼して確定申告まで一貫してお願いすることもおすすめです

税理士に依頼することで正確かつ迅速に確定申告までの税務を巻き取ってもらえる他、節税などのアドバイスを受けることもできます

税理士に確定申告を依頼する場合、「白色申告」か「青色申告」かで依頼費用が変わってきます。

費用相場については以下表を参考にしてください。

申告の種類 費用相場
白色申告 70,000円~150,000円
青色申告 150,000円~250,000円

税理士への依頼は一定の費用はかかりますが、税務にかけていた時間を本業に向けられるといったメリットもあります。

誤った申告をしてしまうと追徴課税が発生する恐れもあるため、確定申告に不安が残る方は税理士に依頼することがおすすめです。

確定申告を税理士に依頼する

個人事業主の売上の仕訳は税理士に依頼しよう

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

公認会計士・税理士・1級FP技能士、 1987年 香川県生まれ 2008年 公認会計士試験合格 2010年 京都大学経済学部経営学科卒業 大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。