青色申告決算書とは、所得税を計算して確定申告をするときに提出する書類のひとつです。
青色申告決算書には一般用、不動産所得用、農業所得用、現金主義用の4種類があります。初めに用紙の違いや書き方を確認しておくと、手続きが進めやすくなります。
この記事では、青色申告決算書の書き方やe-Taxをはじめとした提出方法を紹介します。青色申告をする人は書き方を確認しながら実際に青色申告決算書を作成してみましょう。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
所得税の青色申告決算書とは?
青色申告決算書とは確定申告に関する書類のひとつです。まずは青色申告決算書に関する基本的な事項として、概要や種類、入手方法、作成に必要な書類などを確認していきましょう。
これまで白色申告で収支内訳書を作成していた人は、青色申告決算書を見ると似たような項目があることに気付くと思いますが、収支内訳書よりも記載する項目の数が多くなります。
青色申告決算書とは?
青色申告決算書とは、日頃から記帳して作成した帳簿の内容を決算書の形式でまとめる書類です。収入や支出、財務の状況を表し、損益計算書3枚と貸借対照表1枚の計4枚の用紙で構成されています。青色申告者は、所得税の確定申告をする際に青色申告決算書を提出しなければいけません。
白色申告における収支内訳書にあたるのが青色申告決算書ですが、両者の大きな違いは、貸借対照表を作成するかしないかです。青色申告決算書では貸借対照表があり、期首と期末の資産や負債の状況も記入することになります。
青色申告決算書の種類
青色申告決算書には次の4種類があります。
- 一般用
- 不動産所得用
- 農業所得用
- 現金主義用
事業所得がある人が使うのは通常は「一般用」の用紙です。ただし不動産所得がある人は、賃貸料などの科目が印字された「不動産所得用」の用紙を使い、農業に関連する所得がある人は、種苗費や肥料費などの科目が印字された「農業用」の用紙を使います。
また青色申告者のうち、届出をして現金主義を選択している人は「現金主義用」の用紙を使うようにしてください。
青色申告決算書の入手方法
青色申告決算書の入手方法には主に次の3つの方法があります。
- 税務署に行って用紙を受け取る
- 国税庁のサイトから用紙をダウンロードする
- 国税庁のサイト「確定申告書等作成コーナー」を使う
青色申告決算書の用紙は次の国税庁サイトからダウンロードできます。
税務署で受け取る場合や国税庁サイトからダウンロードする場合は手書きで作成し、確定申告書等作成コーナーを使う場合はパソコンで入力して作成することになります。
青色申告決算書作成に必要な書類
青色申告決算書では収入や経費を記入するので、作成するためには、収入や経費の金額が分かる資料を手元に用意しておく必要があります。収入や経費が分かる資料とは、たとえば請求書やレシート、振込履歴が確認できる銀行預金の通帳、帳簿などです。
また、青色申告決算書を作成した後、確定申告書を作成することになります。所得税の計算では所得控除に関する資料も必要になるので、確定申告に向けた準備をする場合は、控除証明書など適用を受ける所得控除に応じて必要になる書類も準備しておきましょう。
青色申告決算書の書き方
青色申告決算書では収入や経費について詳細に記入していきます。収入や経費の金額を間違えると所得税の計算が変わってしまうので、青色申告決算書ではミスのないように丁寧に記入していくことが大切です。
ここでは青色申告決算書のうち、一般用の書き方について1ページ目から4ページ目まで順に紹介します。書き方を確認しながら実際に青色申告決算書を作成してみましょう。
青色申告決算書の記入の流れ
青色申告決算書を作成する場合、複式簿記で記録された収益や費用を元に「損益計算書」を作成することから始めます。
並行して2・3ページ目にある明細欄も記載していき、損益計算書の金額と明細の金額が一致するかもチェックします。先に2・3ページ目を記入しておくと1ページ目の記入がスムーズです。
損益計算書の記入が終わったら、貸借対照表の作成に移ります。貸借対照表は複式簿記なので、貸方と借方の金額が一致していなければなりません。正確に金額を算出し、全ページの書類の作成が完了したら、確定申告書Bの第一表・第二表の該当部分に金額を記載していきます。
1ページ目:損益計算書(概要)
1ページ目では売上金額や売上原価、経費などを記入し、各種引当金や青色申告特別控除額を記入した上で所得金額を計算します。
①売上(収入)金額・売上原価
先に2ページ目の「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「売上(収入)金額」と「仕入金額」を記入しておきます。それぞれの金額を1ページ目の「①売上(収入)金額」と「③仕入金額」に転記しましょう。
②経費
帳簿に記載されている勘定科目にしたがって経費を記入していきます。主な勘定科目は最初から印字されていますが、該当するものがない場合は、㉕以降の空欄になっている欄に勘定科目名と金額を記入しましょう。
「⑱減価償却費」には、3ページ目にある「減価償却費の計算」の「本年分の必要経費算入額」の計の金額を記入します。
③各種引当金・準備金等
回収できない可能性のある金銭債権を評価し、取立不能見込額を費用に繰り入れる貸倒引当金や、将来の特定の支出や損失に備えるために設定した各種引当金の金額を記入します。
また青色事業専従者に支給した給与は、「⑳給料賃金」ではなく「㊳専従者給与」に記入してください。
④青色申告特別控除額・所得金額
ここまでに記入した金額をもとに、「青色申告特別控除前の所得金額」を計算して㊸に記入します。
青色申告特別控除額は65万円・55万円・10万円のいずれかの金額です。自分が該当する金額を記入してください。なお65万円の控除を受けるには、55万円の控除の要件に加えて、電子帳簿保存かe-Taxを使っての確定申告が必要です。
最後に、青色申告特別控除額を引いて所得金額を計算し、㊺に記入します。
2ページ目:損益計算書(売上、仕入、給与)
2ページ目では売上や仕入の月別の金額、給料賃金・専従者給与の内訳などを記入していきます。
①月別売上(収入)金額及び仕入金額
月ごとの売上額と仕入額を記入していきます。帳簿に記載されている金額をそのまま転記していきましょう。
②貸倒引当金繰入額の計算
貸倒引当金に計上した金額を計算します。既に複数年事業を営んでいる場合には、繰入対象額と本年度繰入額を加算していきましょう。
③ 給与賃金の内訳
従業員を雇用している場合には、月々の給与と合計額、賞与と源泉徴収額を記入していきます。
④ 専従者給与の内訳
青色事業専従者がいる場合には、専従者の月々の給与と合計額、賞与と源泉徴収額を記入していきます。記載する数値は「青色申告専従給与者に関する届出書」がベースになっています。
⑤ 青色申告特別控除額の計算
青色申告特別控除額を記載します。基本的には1ページ目の額と同じです。もし青色申告特別控除する前の所得が控除額より低い場合、たとえば控除額が65万円で所得が40万円だったときは、40万円と記入します。
「青色申告特別控除する前の所得」は、1ページ目の㊸の数値です。
3ページ目:損益計算書(減価償却、地代家賃)
3ページ目では減価償却費や利子割引料、地代家賃などを記入していきます。
① 減価償却費の計算
減価償却の対象となる資産ごとに減価償却金額を計算して記入します。減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があり、どちらを選択するかは物品により選択可能です。個人事業主の場合には基本的に定額法で計算しますが、機械装置など一部の物品は定率法を選択できます(ただし届出が必要)。定額法と定率法の計算方法は以下の通りです。
定額法…「取得原価×定額法の償却率」
定率法…「期首残存価額×定率法の償却率」
② 利子割引料の内訳
利子割引料の内訳には借入金がある場合、借入内容と利子を記入します。ただし金融機関からの借入については記入する必要はありません。
③ 地代家賃の内訳
家賃に関する概要と金額を記入します。自宅を事務所にしている場合には、事業で使用する比率分を経費に計上する「家事按分」によって家賃を算出してください。
④ 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
税理士や弁護士などの専門家に対する報酬や料金を記入します。
⑤本年中における特殊事情
売上が大きく変動した場合や、黒字から赤字に転落した場合など経営状況が大きく変化した場合に、その理由を記入します。
4ページ目:貸借対照表
4ページ目は貸借対照表です。期首と期末の財産や負債の状況などを記入していきます。
①資産の部
資産の部には現金や預金額、手形や前払金などを記載していきます。なお「棚卸資産」は1ページ目にある「売上原価」の「期末商品(製品)棚卸高」に転記します。
② 負債・資本の部
負債・資本の部には借入金や買掛金、未払金などの負債と元入金や事業主借といった資本を記入します。「資産の部」と「負債・資本の部」の合計金額は必ず一致させましょう。
③ 製造原価の計算
製造業の場合は、原材料仕入高や労務費といった製造原価を記載します。
青色申告決算書の作成と提出
青色申告決算書の作成方法には、「手書きで作成する」「エクセルテンプレートや会計ソフトを使って作成する」「確定申告書等作成コーナーで作成する」などの方法があります。
また青色申告決算書は確定申告書Bに添付して提出しますが、主な提出方法は次の3つです。
- 税務署に行って窓口で提出する
- 税務署に書類を郵送して提出する
- パソコンでe-Taxを使って提出する
以下では、作成方法や提出方法のうち特におすすめの方法について紹介していきます。
エクセルテンプレートを使って作成する
紙の用紙を使って手書きで作成すると手間がかかりますが、青色申告決算書のエクセルテンプレートをダウンロードして使えば、パソコン画面上で入力して作成できるので手書きよりも楽に作成できます。
ネットで検索すれば無料でテンプレートをダウンロードできる場合があるので探してみましょう。ただし、年号部分が平成になっているなど、古いテンプレートが検索表示されることがあるので、現在の確定申告に対応した用紙を使うようにしてください。
会計ソフトを使って作成する
一般的に確定申告に対応した会計ソフトであれば、日頃から記帳した内容をもとに青色申告決算書を作成できます。
会計ソフトによって機能や利用料は異なりますが、普段記帳した情報をもとに売上や経費の年間の額が自動的に集計されるソフトを使えば、自分で計算する手間はかかりません。
手書きの場合は計算ミスをする可能性があり、また書き方がよく分からず困る場合がありますが、会計ソフトであれば入力方法に関する説明書きやサポート機能が付いていることも多く、青色申告決算書を作成しやすくなります。
自分に合った会計ソフトをお探しなら、以下の記事も併せてご覧ください。
「確定申告書等作成コーナー」で作成する
確定申告書等作成コーナーを使えば青色申告決算書や確定申告書Bを作成できます。
以下の画像のように、画面上に青色申告決算書を作成するための案内が表示されます。必要な箇所に入力していけば作成できるので分かりやすくて便利です。
次に説明するように、確定申告書等作成コーナーで作成した申告書類をe-Taxで提出すれば、書類を税務署に持参したり郵送したりする手間はかかりません。青色申告決算書の作成では確定申告書等作成コーナーの活用がおすすめです。
青色申告決算書の提出方法 e-Taxのメリット
e-Taxとはネットで申告手続きを終えられるシステムで、所得税や法人税、消費税などの申告に対応しています。
税務署に書類を持参する場合は、税務署が開いている平日の日中しか手続きができませんが、e-Taxであれば基本的に平日でも土日でも24時間申告手続きが可能です。自分の都合にあわせて手続きを進められます。
e-Taxを使うには、事前に利用者識別番号を取得したり、マイナンバーカードを用意したりといった手続きが必要です。実際にe-Taxを使えるようになるまで時間がかかる場合があるため、早めに手続きを行いましょう。
なお、e-Taxで申告した場合、確定申告書の控えは発行されません。提出が完了するとその旨を知らせる通知がメッセージボックスに届きます。
監修税理士のコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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所得税の確定申告で青色申告を選択している人は青色申告決算書の提出が必要です。白色申告で提出する収支内訳書とは違い、貸借対照表があるなど記入する項目が多いので、確定申告に向けた準備は早めに始めましょう。
青色申告決算書の書き方が分からない場合は税理士への相談がおすすめです。仕事が忙しくて自分で作る時間が取れない人は税理士に依頼すると良いでしょう。税理士に相談すれば確定申告をミスなくスムーズに終えられます。
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