キャバクラやホステス、ボーイといった夜職、水商売の業界で勤めている方は、確定申告が必要だと知っていながらもしていない方がいらっしゃるのかもしれません。
しかし、給与手渡しであっても無申告が発覚する恐れはありますし、その場合、追徴課税の対象になります。また、確定申告をしたら税金の還付が受けられる場合もありますので、しっかりと制度を理解することが重要です。
本記事では、確定申告が必要な人の条件や、水商売の人が申告するメリット・デメリット、確定申告のやり方までくわしくご紹介していきます。
水商売・夜職で確定申告すべき人とは
水商売で働く方の中でも確定申告をすべき人は多数います。確定申告の概要からどのような人が確定申告が必要なのか、そして水商売で働いていて確定申告すべき人の条件についても、お伝えしていきます。
確定申告とは
確定申告とは、毎年1月1日~12月31日までの所得を「確定」して「申告」する手続きです。手続きをすることで支払うべき所得税が確定します。
会社から給与を得ているサラリーマンの場合、「源泉徴収」といって給与から所得税が天引きされており、確定申告が不要となるケースが多いです。
しかし、水商売の場合は源泉徴収がされていないケースが多く、その場合は自分で確定申告をしなければなりません。確定申告で所得を確定させ、所得に応じた所得税を納付します。
水商売・夜職で働いていて、確定申告すべき人
では、水商売で働いている人で確定申告が必要なケースについて解説しましょう。
水商売の場合、働き方のスタイルに応じて、確定申告が必要かどうかが決まります。
以下の4タイプに分けてご説明します。
- 水商売専業で、店舗と労働契約を結んでおり、「給与」を受け取っている
- 水商売専業だが、店舗と労働契約を結んでおらず、「個人事業主」として働いている
- 水商売が副業で、店舗と労働契約を締結しており、報酬を「給与」として受け取っている
- 水商売が副業で、店舗と労働契約を締結せず、「個人事業主」として働いている
1.水商売・夜職専業で、店舗と労働契約を結んでおり、「給与」を受け取っている
サラリーマンと同じ扱いとなり、会社が源泉徴収し年末調整を行う義務を負っておりますので、原則確定申告は不要です。ただし、年間給与が2,000万円を超える場合は、確定申告が必要となります。また、年度の途中で退職したために年末調整を受けていない場合にも、確定申告が必要です。
2.水商売・夜職専業だが、店舗と労働契約を結んでおらず、「個人事業主」として働いている
キャバクラ嬢などはこのタイプに属するケースが多いのではないでしょうか。個人事業主の場合、年間48万円以上の所得がある場合に確定申告が必要です。また、仕事上の必要経費(例:キャバ嬢の仕事のために使用したドレスやタクシー代)を収入から差し引くことが可能です。
3.水商売・夜職が副業で、店舗と労働契約を締結しており、報酬を「給与」として受け取っている
副業による所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。ただし、本業・副業どちらも報酬を「給与」として受け取っている場合は、年間収入20万円以下でも確定申告をすると一部税金が返ってくる可能性があります。副業の場合は、会社は年末調整をする義務がない為、払いすぎた税金は自身で取り返さないといけません。
4.副業で労働契約を締結せず、「個人事業主」として働いている
副業でキャバクラやガールズバーで働いている場合が、このケースに該当します。副業の場合は年間所得20万円を超えると確定申告が必要です。経費や基礎控除などを差し引いた金額が、20万円以下であれば確定申告は不要です。
水商売・夜職で働く方が確定申告するメリット
水商売で働く方が確定申告をすると、払いすぎた税金が還ってくるケースがあります。本項では、水商売で働く方が確定申告をするメリットについてお伝えしていきます。
給与から源泉徴収されている場合、払いすぎた税金が戻ってくる
キャバクラなどでは、雇用形態や店のポリシーによっては給与から所得税が「源泉徴収」されていることがあります。源泉徴収とは、毎月の給与から一律で10.21%の所得税が差し引かれて支払われる仕組みです。しかし、所得額によっては10.21%の差し引き金額が、本来の納税額を上回る場合があります。
サラリーマンの場合は、会社が「年末調整」することで払いすぎた所得を給与所得者に還付しますが、個人事業主扱いの場合はそれがありません。自ら確定申告をすることで、払いすぎた所得税の還付を得ることができます。
業務上必要な費用は「経費算入」が認められる
給与所得ではなく個人事業主として働いている場合、業務上必要な費用は経費として所得から差し引けます。確定申告では、収入から経費・控除を差し引いた所得を申告するため、経費が多くなればなるほどに所得額(所得税)も低くなるのです。
ヘアメイクにタクシー代…経費で認められる費用
キャバ嬢やホステスなど水商売で働く人に認められる経費には、次のようなものがあります。
- 仕事専用のスマホ代
- 常連客との食事代
- 仕事に使う衣装代
- 仕事に必要なヘアメイク・ネイル代
- 仕事によって終電を逃した際のタクシー代
出勤時に着用するドレスや、お客さんやお店と連絡するためのスマホ代も経費として認められる可能性が高いです。ただし、領収書や通帳などで支払いを証明しなければ、経費として認められません。
水商売・夜職で働く方が確定申告しないデメリット
水商売で働いており、手渡しでお金のやり取りをしている場合でも、確定申告をしないと税務署に捕捉されるケースがあります。その場合は重いペナルティを課されるので注意が必要です。
水商売・夜職で働く人は確定申告しないとバレる?
水商売で働く人は労働契約を交わしておらず、給与も手渡しであることが多いので、「確定申告をしなくてもバレにくい」と言われています。
税務調査をされたとしても、働いている店との雇用関係を証明できず、銀行口座を調べても振り込みの記録がないため、追及される心配は少ないかもしれません。
しかし、税務署は非常に優秀です。個人のSNSもチェックしているので、高額所得を得ていることを突き止められることも十分にあり得ます。
高額プレゼントや密告…無申告がバレるケース
確定申告をするべきなのにしていないことを知った知人が、税務署に報告したために無申告がバレることがあります。また、キャバ嬢などはマンションや車などを常連客からプレゼントされることがあるかもしれませんが、その場合は確定申告はもちろんのこと、贈与税の納付が必要です。
しかし、マンションや車の贈り主から情報が漏れることもあり、確定申告と贈与税という2つの無申告の発覚に繋がる可能性があるのです。
副業キャバ嬢は住民税額で会社にバレる!
副業でキャバ嬢をしている人が確定申告をすると、所得の情報が管轄の役所へ送られて住民税額が計算されます。住民税は所得税と同じく給与から天引きされるので、会社に住民税額が知られてしまいます。本業での給与に対して住民税が高いことで、副業をしていることが会社にバレる恐れがあるのです。
無申告には、加算税や延滞税など重いペナルティが
確定申告をするべき人が確定申告をしない場合、「無申告」と扱われます。無申告の場合、加算税や延滞税が課せられます。税務調査は5年分をさかのぼって調査できるので、数年分のペナルティを課せられると、数十万~数百万円もの追徴課税を納めることになるかもしれません。
確定申告をするメリットよりも、しないデメリットの方が大きいため、バレる・バレないに関係なく必ず確定申告をするべきでしょう。
水商売・夜職の方向け!確定申告のやり方
2025年の確定申告の時期は下記の通りです。
2025年の確定申告は、2024年1月1日~12月分の確定申告書やその他の必要資料を申告期間中に、管轄の税務署に提出する必要があります。また、申告だけでなく納税に関しても、3月17日までに済ませなければなりません。
確定申告のやり方は下記の通りです。
- 経費として落とせる領収証を集める
- 源泉徴収票を用意する
- 青色申告か白色申告かを選択する
- 確定申告書を入手して記入する
- 確定申告書を最寄りの税務署に提出する
経費として落とせる領収証を集める
確定申告をする際は、経費として処理できる領収書が必要です。経費とは、業務を行ううえで必要になる費用のことを指します。所得税は、所得に対する税金であり、経費が多くなるぶん所得が下がるため、納税する所得税を抑えることができます。
水商売・夜職の方が経費として落とせる費用は下記の通りです。
- 衣装代:ドレスなど衣装にかかる費用
- 美容関連費:メイクアップやヘアサロンにかかる費用
- 交際費:プレゼントや外食にかかる費用
- 交通費:通勤などで利用するタクシー代や電車賃
- 携帯代:業務で発生する通話代や通信費
ただし、美容関連費や携帯代といったプライベートでも共用する費用は、業務以外でも使用できるものとみなされる可能性があるため、業務で使用するぶんと日常生活で使用するぶんを計算して経費として計上することになります。
経費の対象となる領収書をまずは集めるようにしてください。
源泉徴収票を用意する
確定申告をする際は、所得税など税金を納付したことがわかる源泉徴収票が必要になります。源泉徴収票は毎年1月頃に勤め先から貰うことができます。
水商売や夜職でお勤めの方は、お店が源泉徴収票を発行していないというケースもあります。そのような場合は、源泉徴収票の代わりに、支払調書をもらうようにしてください。
青色申告か白色申告かを選択する
個人事業主や副業として水商売や夜職の店舗でお勤めの方は、青色申告か白色申告の選択を行う必要があります。結論としては、白色申告を選択することをおすすめします。
青色申告と白色申告の主な違いは、申請の手間と選られるメリットです。青色申告と白色申告のメリットとデメリットを下記にまとめました。
申告種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
青色申告 | 青色申告特別控除(最大65万円)を受けられる | 記帳が複雑で手間がかかる |
赤字を3年間繰り越して、他の収入と相殺が可能 | 特別控除を受けるための要件が厳しい | |
生計を一にする家族への給与が経費として認められる | 帳簿の細かな管理が求められる | |
白色申告 | 記帳が簡単で手間が少ない | 控除額が小さい |
特別な控除要件がないので手続きが簡単 | 赤字繰越ができない | |
提出書類が少ない | 財務の信頼性が低いと見なされる場合がある |
青色申告は節税効果が高いものの記帳の手間がかかるのに対し、白色申告は手間が少ないが節税効果が制限されることがわかります。
青色申告は、確定申告を行うためのハードルがとても高いため、個人事業主や副業としてお勤めの方で、初めて確定申告を行う場合は、まずは白色申告で書類を作成することがおすすめです。
青色申告を行いたい場合は、ご自身で手続きを進めようとせず、一度税理士に相談してみてください。
確定申告書を入手して記入する
確定申告書は、下記いずれかの方法で入手できます。
- 税務署に行って用紙を受け取る(手書きで作成)
- 国税庁のサイトから用紙をダウンロード(手書きで作成)
- 国税庁のサイト「確定申告書等作成コーナー」を利用(サイト上から入力して作成)
税務署に行けない場合は、確定申告書の郵送の依頼も可能です。また、インターネット環境が整っていれば、国税庁のサイトにある「確定申告書作成コーナー」から申告書を作成できます。
書き方の説明を読みながら作成できるため、初めて確定申告する人でもスムーズ作成ができて便利です。
確定申告では、控除関係の書類の提出や生命保険、ふるさと納税など複数の確認事項があるため、初回は作成に時間がかかります。書き方がわからない場合は、早めに税務署でアドバイスを受けることが大切です。
▼収支内訳書を手書きで作成する方は次の国税庁サイトからダウンロードしてください。
令和 0 年分収支内訳書(一般用)|国税庁
▼サイト上から入力して作成する方は次の国税庁のサイトから作成してください。
確定申告書等作成コーナー|国税庁
確定申告書を最寄りの税務署に提出する
確定申告書は、最寄りの税務署に提出しましょう。直接、税務署に持っていく方法だけではなく、e-Taxというインターネットを経由して提出する方法もあります。カードリーダーやマイナンバーカードなど必要なものがあるため、不慣れな場合は税務署で作成してそのまま提出するといいでしょう。
提出した確定申告書に誤りがある場合は、修正申告が必要になります。書き漏れ、提出書類の不足、数字が連動していないといったことに注意しましょう。
確定申告のお悩みは税理士へ相談を
水商売の方でこれまで確定申告をしていなかったけれども、これから申告を検討される方は、是非税理士に相談してみてください。過去の手続きが不適当であった場合でも、どのように対応すればよいのか、今後どうすればよいのか優しく説明してくれるはずです。
確定申告は複雑で面倒
確定申告の際には、毎月の収入を合算したり必要書類を揃えたりすることになります。非常に複雑で面倒な手続きですが、税理士に確定申告を任せれば、修正申告などの心配もありません。
収入がわかる書類、領収書、控除関係書類などを税理士に渡すことで、確定申告書への記入を任せられます。
税理士に相談すれば節税策も授けてくれる
税理士は法的な知識を駆使して、適切な確定申告をサポートしてくれます。
経費算入を考えている費用が、実際に経費として認められるかもアドバイスしてもらえるため、算入できない経費を算入してしまい税務調査の際に指摘されるような心配もありません。
また、税理士であれば最新の節税情報を提供してくれるので、結果的に税理士費用よりも納めるべき所得税額を抑えられることも多いのです。
ただ、税理士に相談するにしても、どういう税理士がいいのかわかりませんよね。
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2025年(令和6年分)の申告に関する最新情報
申告は期限後にも行えますが、ペナルティが発生するため期限内に行いましょう。