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【飲食店の確定申告】手続きには何が必要?揃える書類や経費の処理方法・手順などを解説

最終更新日: 2024年11月15日

飲食店を開業した後、商売を続けていくうえで切っても切り離せないのが確定申告です。

申告にあたっては、日々の収支はもちろん業務上の経費がどの勘定項目にあたるのかまで、正確に判断しなければなりません。

本記事では確定申告に必要な書類をはじめ、飲食店でよく発生する経費の処理や確定申告の流れまでくわしく説明するので参考にしてみてください。

確定申告が正しく行われないとどうなる?【飲食店の場合】

電卓 税金

飲食店を開業したら、毎年2月中旬から3月中旬に所得税の確定申告を行う必要があります。確定申告の期間は、毎年2月16日〜3月15日です。

一部では確定申告を行わなくても良い場合もありますが、申告をしなかった場合は原則ペナルティが発生するので注意してください。

【無申告加算税が発生】確定申告をしないと追加の税金納付が求められる

確定申告をしなかった場合、罰則として「無申告加算税」が課せられます。税額が50万円以下の場合は15%、50万円を超える場合は20%という高額な追徴課税を納めなければなりません。

また確定申告をしていない状態は、言い換えれば自身の収入の証明がない状態です。そのため住宅や車のローンなどを組もうとしても審査が通らないといった事態にも陥ります。

赤字の場合でも確定申告をしておけば、その赤字の額を翌年以降の課税所得から控除することができます(繰り越し控除)。

繰り越し控除は赤字を申告した年から3年間認められるので、大きな節税効果があるでしょう。節税のためにも確定申告は毎年行うのがおすすめです。なお繰り越し控除は「青色申告」の場合のみ可能な点にも注意しましょう。

関連記事:追徴課税とは?金額や取るべき行動を解説|ミツモア

ハードルが低いのは「白色申告」税制面で優遇されるのは「青色申告」

確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があります。青色申告の方が白色申告より帳簿の記入が複雑なので手間はかかりますが、白色申告にはない様々な恩恵を受けられるのが特長です。

青色申告にした場合のメリット

  • 最大65万円の特別控除を受けられる
  • 最大3年間の赤字繰り越し
  • 親族への給与を経費にすることができる  など

<白色申告にした場合のメリット>

  • 開業届を出さなくても良い
  • 単式簿記(簡単な収支内訳書)でかまわない  など

それぞれにメリットはありますが、基本的には白色申告よりも青色申告をおすすめします。

なお青色申告を行うには、事前に開業届を提出して承認を受ける必要があります。申請がない限りは自動的に白色申告になる点に注意しましょう。

関連記事:個人事業主の登録に必要なのは開業届だけ!記入方法を徹底解説|ミツモア

確定申告なしでも良いケース※条件あり

売上が低い場合は、確定申告をしなくても良いケースもあります。具体的な条件は以下の通りです。

  • 1年間の所得(売上-必要経費)が48万円以下
  • お店以外での所得がない

これらの条件をすべて満たしている場合は、確定申告をしなくても罰則はありません。

ただし確定申告をしない場合でも、住民税は申告する必要があります。確定申告をすれば住民税の別途での申告は不要です。

こうした手続きを「手間だな」と感じるようであれば、所得金額に関係なくはじめから確定申告を行ってしまった方がかえって負担が減るのでおすすめです。

飲食店の確定申告に必要な書類

以下は確定申告の、中でも青色申告の場合に提出する書類です。

必須の書類

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書

必要に応じて準備する書類

  • 医療費控除の関連書類
  • 住宅ローン控除の関連書類
  • 生命保険料控除の関連書類  など

そのほか各種の控除を受けるために必要な証明書類を必要に応じて準備しましょう。

なお白色申告の場合も、確定申告書のほかに収支内訳書・各種控除などの証明に必要な書類が必須です。詳しくはこちらもあわせて参考にしてみてください。

関連記事:【初心者向け】白色申告も収支内訳書が必須!所得別の書き方をわかりやすく解説|ミツモア

飲食店の確定申告で経費として計上できる項目は?

清算をする店員

税額を節約してお得に納税したい場合、「経費項目」を幅広く、適切に計上することが重要です。どのような項目が経費として認められるのか?認められる場合はどの項目にすればよいのでしょうか?

まずは経費項目のポイントについてまとめていきます。

飲食店の確定申告における経費項目

経費として計上できる費用の種類は以下の通りです。たくさんの種類がありますが、この他にも様々な費用項目があります。

  • 仕入れ・・・飲食物を作るための原材料費用。販売用に仕入れた飲料なども
  • 荷造運賃・・・商品などを発送する際に生じる費用。例えば、デリバリーで飲食物を届けるために雇ったアルバイト代など
  • 水道光熱費・・・飲食物を作るため、スナックなどの飲食店を運営するために生じた水道、電気、ガス代など
  • 地代家賃・・・店舗を営む際、賃借で借りた場合はその賃料
  • サービス費・・・例えば有線で音楽を流す場合などに生じた費用
  • 広告宣伝費・・・飲食店のショップカード、スナックのチラシ、インターネット上の広告を出すための要した費用など
  • 消耗品費・・・割り箸・ストロー・つまようじ・コースターなど、飲食店を営むにあたって必要になる「使ったらなくなる物」に関する費用
  • 給与賃金・・・従業員に払った給料
  • 福利厚生費用・・・従業員の健康保険料、雇用保険料、労働災害保険などの費用
  • 租税公課・・・収入印紙の購入費用、事業用の店舗に関する固定資産税やデリバリー用の車両に関する自動車税など
  • 損害保険料・・・店舗、デリバリー用の車両など事業用の資産に関する保険料
  • 修繕費・・・店舗や厨房機器など、備品類の修繕費

以下からさらに詳しく解説します。

まかない:「福利厚生費」もしくは「給与」

まかないを作る費用は「福利厚生費」もしくは「給与賃金」のどちらかで処理することになりますが、福利厚生費で処理したほうがお得です。

なぜなら「給与所得」として処理してしまった場合、給与額に応じてかかる源泉所得税の対象となり、結果的に支払う税額が増えてしまうからです。

基本的に、高額でなく従業員に平等に支給されている場合は、福利厚生費と処理して問題ありません。原価ベースで月額3500円以内が基準であれば問題ないでしょう。

ただし税務署から何らかの指摘があった場合にきちんと説明できるように、1食あたりの費用を明らかにしておく必要があります。

ごみ袋や掃除用品:「衛生管理費」

掃除用品は「衛生管理費」に分類されます。一見「消耗品費」に分類されそうに見えるので注意しましょう。

なお、毎年の確定申告で計上する項目がコロコロ変わると税務署からの印象も悪くなります。しっかりと、計上すべき項目を決めたら翌年以降も項目を変えないようにしましょう。

ネオンサインの看板:「広告宣伝費」

ネオンサインの看板は基本的に「広告宣伝費」になりますが、一方で量販店で売っているようなイーゼルに立てかけたものを作った場合は消耗品費に分類されます。

雨風にさらされても平気で、長年使うタイプの看板は広告宣伝費となるといった具合に考えておくのがよいでしょう。

厨房設備やエアコン:数年に分けて経費算入する

厨房設備やエアコンなどは「資産」として扱われます。長年使い、その使用期間に応じて劣化していくものと考えられるためです。

このように購入後、一定期間使用していく設備類は資産として計上し、耐用年数に応じて数年に分けて費用計上しましょう(これを「減価償却」といいます)。

国税庁が公表している耐用年数表に、その計上期間である耐用年数が示されています。たとえば厨房設備は電気・ガス機器に分類され、耐用年数は6年間です。

確定申告の進め方

税金計算をする女性

以下では「確定申告書」の作成方法を中心に、確定申告の進め方を解説します。

確定申告の手順

  1. 帳簿を整理する
  2. 所得税を計算する
  3. 確定申告書に記入する
  4. 必要書類を揃えて税務署に提出

【1】帳簿を整理する

確定申告書を作成するためには帳簿が必要です。帳簿とはお店を運営する中で生じた収入・支出などのお金の流れを記録したもので、イメージとしては家計簿に近いです。

青色申告の場合は、一つひとつの取引の日付や収支の流れを複数の科目に分類して記入する必要があり、自力で全て行うためには簿記の知識が必要になります。また毎日マメに記帳を行うのが望ましいため、かなりの手間がかかるでしょう。

一方で、便利な会計ソフトを利用したり、税理士に記帳代行を依頼するなどして帳簿管理の手間を減らすことが可能です。本業に力を入れたい方や、細かいお金の管理に自信がない方は、これらの方法を活用するのがおすすめです。

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【2】所得税を計算する

①売上-経費で所得を算出

確定申告書を作成する際に、申告用紙に記載する売上や経費などの計算をしなければいけません。
まず「所得」を算出します。飲食店における所得は「売上−経費」で算出できます。

お店で料理などを売って得られる売上金額から、経費を引きましょう。経費とは業務上でかかったさまざまな費用を意味します。飲食店の場合であれば、食材を仕入れた費用、配送費などの運賃・交通費、販促品(チラシ、看板など)の製作費用、通信費などです。自営業として店舗兼住居を賃借している場合、家賃の一部も経費として認められます。(経費として認められる項目はこちら)

②所得-控除で課税所得を算出

所得を計算したら、次に求めるのは「課税所得」です。課税所得とは、所得税率を掛けて納めるべき所得税額を算定するための元の金額を意味します。

課税所得は「所得-所得控除」で求められます。所得控除とは条件を満たせば所得から控除される(差し引かれる)金額のことです。

主な所得控除の項目としては、医療費控除や社会保険料控除などが挙げられます。また、先に触れた「青色申告」事業者の場合、青色申告特別控除(65万円)があります。

③課税所得に税率をかけ、所得税額を算出

次に所得税額を計算します。課税所得に、所得税率(下記の所得税率早見表を参照)を掛け合わせることで所得税額が確定します。

例えば、課税所得額が195万円以下なら税率は5%、195万円超330万円以下なら10%と、課税所得額が増えるに応じて税率も段階的に上がります。その結果、納めなければならない税金も増えるという図式です。

所得税率 早見表
所得税率 早見表 出典:国税庁

④所得税額から税額控除を行う

確定申告で納める所得税を計算する最後のステップは、「所得税額からの税額控除」です。所得税率をかける前に控除する所得控除と違い、所得税率をかけた後の最終的な税額から直接控除するのが「税額控除」です。混同しやすいので注意しましょう。

所得税率表に記載されている所得額に応じた控除額の他、住宅借入金等特別控除や配当控除などが挙げられます。

【3】確定申告書に記入する

確定申告書B 第一表(令和3年分以降用)
確定申告書B 第一表 (令和3年分以降用) 出典:国税庁HP

課税所得が計算できたら、確定申告書に必要事項を記入します。記入する先は、青色申告・白色申告ともに「確定申告書B」という用紙です。

確定申告書Bには「第一表」「第二表」があり、それぞれに以下の内容を記入していきます。

第一表

  • 住所・氏名
  • 収入額
  • 所得金額
  • 各種の控除の金額
  • 所得税額

第二表

  • 住所・屋号
  • 所得の内訳
  • 雑所得や一時所得など、事業所得以外の所得に関する事項
  • 事業専従者に関する事項
  • 住民税・事業税に関する事項

詳しい記入方法は以下の記事で解説されているので、参考にしてみてください。

関連記事:確定申告書Bとは?書き方やAとの違い、令和5年度の変更点をわかりやすく解説!|ミツモア

【4】必要書類を揃えて税務署に提出

記入が終われば、確定申告書・青色申告決算書、そのほか控除に必要な各書類を持って税務署に提出します。その際きちんと全ての書類が揃っているかを確認しましょう。

税務署によっては、ハイシーズンになると休日も申告を受け付けている場合があるため、あらかじめチェックしておくと良いでしょう。

なお、税務署に直接提出する以外にも、

  • 郵送での提出
  • 国税庁が提供するシステム「e-Tax」を使って電子申請

などの方法があるので、事前に調べてみるのがおすすめです。

関連記事:確定申告は郵送でできる! 封筒のサイズやマイナンバーについて解説|ミツモア

飲食店の経費処理は複雑・確定申告の準備はこまめに行おう

税金

申告前に慌てないためにも、確定申告の準備は日ごろから進めておくことが大切です。

日々の売上や支出を定期的に帳簿記録する

飲食店を経営していく場合、日頃の帳簿管理は必須と言えます。どの程度の売上があり、仕入れに際してどのような支出があったのかをきちんと把握することが求められます。その時に役立つのが「現金出納帳」で、個人事業の店舗における家計簿のようなものです。

帳簿に一元的に売上や支出を管理しておくことで、お金の流れが把握でき、確定申告時にも簡単に書類を作成できるでしょう。個人事業主でも税務署の調査が入る場合がありますが、出納帳があれば、税務官からの質問にも自信を持って答えられます。

経費は早めに仕分けしておく

現金出納帳を作成することで、経費の仕分けも自然とクセ付けることができるので便利です。通常、現金出納帳では費用項目として「消耗品費」や「仕入れ」などを記載します。

そして、それに対応するように費用の概要として、消耗品費の場合には「つまようじ。○○商店で購入」として購入先などを記載しましょう。

このように経費項目・取引先・金額などがまとめられるため、確定申告前に一気に費用項目を仕分けする労力から開放されることになります。

レシートや領収証は保管する

現金出納帳の作成とあわせて行っておくことは、取引にまつわるレシートや領収証類の保管です。せっかく費用項目をしっかり仕分けしていても、仕入れなどの取引行為を証明するための書類がなくては意味がありません。

確定申告の書類作成においてはレシートや領収証も必要になります。現金出納帳と対応させるように、日付順で保管しておくことがおすすめです。

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確定申告の手続きは自力ですることもできますが、内容が複雑で手間がかかります。もしも書類の記載にミスや書き漏れがあった場合には、手続きがやり直しになったり、納税額が増えてしまう恐れもあるでしょう。

そのため確定申告の手続きは税理士に依頼するのがおすすめです。依頼する料金はかかりますが、確実に申告を済ませられるのでとても安心できます。

また節税方法や経営についての相談ができる場合も多く心強いです。ぜひ信頼できる税理士に確定申告を頼んでみてはいかがでしょうか?

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