確定申告書Bとは個人事業主やフリーランスの方が主に使用する確定申告書です。会社員やアルバイトの方を対象としていた確定申告書Aとは異なり、どのような所得の人でも使えます。
令和5年より確定申告書のA様式が廃止され、従来のB様式を統合した新様式に変更となりました。2024年提出分(2023年1月~12月分)以降の確定申告は、会社員やパート・アルバイト、個人事業主を問わず「確定申告書【令和5年分以降用】」を利用しましょう。新様式は従来の確定申告書Bに近い様式です。
なお2021年分以前の申告では確定申告書Bを使用できます。還付申告などで確定申告書Bを使用する場合、本記事をご参考ください。新様式と、従来の確定申告書Bとの違いも記事の最後で解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
確定申告書Bとは「すべての所得が対象の誰でも使える申告書」
確定申告書Bはすべての所得を対象とした誰でも使える申告書です。事業所得などを申告する個人事業主やフリーランスの方が主に使用します。
一方で確定申告書Aは給与所得、公的年金等の雑所得など、申告できる所得の種類が限られています。記入内容も異なり、確定申告書Aのほうが比較的簡素化した申告書です。
確定申告書Bは個人事業主やフリーランスの方に最適
確定申告書Bはすべての所得を対象としているので誰でも使える申告書です。事業をしている個人事業主やフリーランスの方は、事業所得や不動産所得があるケースがほとんどなので、確定申告書Bを使用します。
つまり、開業届を出したら確定申告書Bを使用することになります。また確定申告書Aの対象者が確定申告書Bを使用しても問題はありません。
令和5年より確定申告書が新様式となるため、確定申告書Bは令和3年(2021年)分の確定申告(還付申告)で利用できます。
確定申告書Aは会社員やアルバイトの方に最適
確定申告書Aは会社員やアルバイトの方に適しています。確定申告書Aでは申告できる所得の種類が以下のものに限られています。
※予定納税がないことが条件 |
申告できる所得の種類から、確定申告書Aを利用するケースは以下のような例が考えられます。
|
事業所得や不動産所得の申告ができないので、個人事業主やフリーランスの方には適していません。
なお確定申告書Aは令和5年より廃止となり、新しい確定申告書に統合されています。確定申告書Bと同様、令和3年(2021年)分の還付申告の際であれば利用可能です。
確定申告書は国税庁のHPや税務署で入手可能
確定申告書のひな型は、国税庁のホームページからダウンロードして印刷ができます。また、税務署や市区町村の担当窓口でも取得可能です。
確定申告書B(令和3年分用)のひな型は、「確定申告書等の様式・手引き等(令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」よりダウンロードしましょう。申告書の右側に「令和3年分以降用」と記載されています。
最新の確定申告書は様式が異なるため注意しましょう。2024年(令和6年)に提出する、2023年分(令和5年分)提出用の確定申告書は「確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」よりダウンロードしてください。
確定申告書B「第一表」の書き方と記入例
確定申告書には第一表と第二表があり、確定申告の際にはいずれも作成して提出しなければなりません。
第一表では住所や氏名をはじめ、収入や所得、納める税金などの基本情報がまとめてあり、必要に応じて各項目の金額を記載します。
1.税務署名と日付、年度
税務署名は、申告書提出日の住所地等の所轄税務署名を記載してください。わからない場合は国税庁のホームページで調べられます。
日付は申告書の提出する日付を記入してください。年度については、例えば「令和3年1月1日から12月31日まで」の申告をする場合「令和03年分」と記入します。
「申告書B」の前の空欄には「確定」と記入しましょう。
2.住所・氏名など
住所と氏名を記載し、マイナンバーも必ず記載する必要があります。生年月日は元号を数字で記載します(昭和は3、平成は4など)。
職業欄には、個人事業主の方は事業の内容を具体的に記入しましょう。例えば「〇〇小売業」などと記載し、複数の事業をしている場合にはすべてを記載しなくてはなりません。
種類の欄は該当するものにすべて〇をつけます。
【項目と該当者一覧】
項目 | 該当者 |
青色 | 青色申告者 |
分離 | 分離課税を行なう人 (申告書第三表を使用する人) |
国出 | 国外転出時課税制度の適用を受ける人 |
損失 | 損失申告をする人 (申告書第四表を使用する人) |
修正 | 申告書を修正して再提出する人 |
整理番号は税務署から付与された番号です。わからなければ空欄でもかまいません。
3.収入金額等
収入金額等にはそれぞれの所得の1年間の収入金額を記載します。個人事業主の場合は青色申告決算書(青色申告の場合)や収支内訳書(白色申告の場合)を作成したのち、収入金額をご自身の所得項目の欄に転記しましょう。
給与や公的年金の所得がある方は源泉徴収票の「支払金額」の欄を転記します。
4.所得金額等
所得金額等にはそれぞれの所得の1年間の所得金額を記載します。所得金額は「収入-経費」の金額です。青色申告の場合は「 収入-経費」からさらに青色申告特別控除を差し引いた金額が所得金額等になります。
個人事業主の場合、この計算は青色申告決算書や収支内訳書の作成過程で行なわれます。これらの資料を作成したのち、所得金額をご自身の所得項目の欄に転記しましょう。
給与所得がある方は源泉徴収票の「給与所得控除の金額」を転記します。
5.所得から差し引かれる金額
「所得控除」と呼ばれているもので、ご自身に適用できる控除金額を記載します。
中でも基礎控除は合計所得金額2,400万円以下の方はすべて48万円の控除が受けられますので該当する方は忘れずに記載してください。
医療費控除は別途「医療費控除の明細書」を作成し、所得控除の金額を計算した上で「医療費控除」欄に数字を転記します。
社会保険料控除などのその他の所得控除がある場合は、控除証明書などの根拠資料を用意した上で、それぞれの欄に記入しましょう。
6.税金の計算
実際に支払うことになる所得税の金額を計算します。
計算方法は課税所得に税率をかけますが、税率は所得金額によって異なります。以下の速算表を参考にして計算しましょう。
税額控除を受ける場合には、ここで所得税の金額から差し引きます。
税額控除で代表的なものは住宅ローン控除です。住宅ローン控除を受ける場合には「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成し、税額控除の金額を計算した上で数字を「住宅借入金等特別控除」欄に転記します。
個人事業主の方で予定納税がある場合には忘れずに「予定納税額」欄に金額を記入しましょう。予定納税は前期の所得の金額によって発生する所得税の前払いの金額です。確定申告で計算した所得税額から前払分を差し引いた金額が、申告時に納付すべき所得税になります。
給与や公的年金の所得がある方など、源泉徴収された所得税がある方は「源泉徴収税額」欄に数字を記入してください。
7.その他
該当するものがあれば記入します。金額を記入するだけで、所得税の計算過程には影響しません。
8.延納の届出
確定申告により納付する税金の「2分の1以上」の金額を令和4年3月15日までに納付すれば、残りの額を同年5月31日まで延納できます。延納する場合は数字を記入しましょう。
9.還付される税金の受取場所
所得税が還付になる場合に、還付金の振込を希望する口座を記入します。
ただし本人名義であることが必要で、屋号が含まれると振込できない可能性があります。また一部のインターネット専用銀行は対応していないことがあるので、不安な場合は税務署に確認しておきましょう。
確定申告書B「第二表」の書き方と記入例
確定申告書第二表は、所得の内訳や社会保険料控除等に関する内訳など、第一表の内容の詳細部分を記載します。
1.住所・屋号・氏名
第一表と同様に第二表にも住所、屋号、氏名を記入します。
2.所得の内訳
所得の内訳には、給与や公的年金などの源泉所得税が発生する所得の内訳を記入します。
所得の種類には、「給与」や「雑」などの所得区分を記入し、収入金額と源泉徴収税額を記載します。基本的には源泉徴収票などを見ながら転記し、源泉徴収税額の合計金額が第一表と一致していることを確認しましょう。
3.総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項
総合課税の譲渡所得がある場合には、短期と長期に分けて収入と必要経費の金額を記載します。
総合課税の対象になるのはゴルフ会員権の譲渡や金地金などの譲渡で、土地、建物、株式などの分離課税の対象は除いたものになります。短期は5年以内の資産の譲渡、長期は5年を超える資産の譲渡です。
また一時所得についても収入と必要経費の金額を記載します。一時所得の対象になるのは生命保険金の返戻金などがあります。一時所得がある場合には上記「2.所得の内訳」にも記載が必要なので合わせて記入してください。
4.特例適用条文等
記載が指定された場合に記入します。例えば「住宅借入金等特別控除を受ける場合に、居住開始年月日等を記入する」などのケースがあります。
5.社会保険料控除等に関する事項
社会保険料控除には、国民年金や国民健康保険などの内訳を記入します。生命保険料控除なども、控除を受ける場合は指定された項目ごとに内訳金額を記入しましょう。
もし会社員が年末調整を受けた後に追加で控除を受ける金額が出た場合は、追加分を「うち年末調整等以外」に記入します。
6.本人に関する事項
本人が寡婦やひとり親など、記載されているものに該当する場合には〇をつけます。
7.雑損控除に関する事項
雑損控除を受ける場合に、記載されている詳細を記入します。雑損控除は火災や盗難、横領などで損害を受けた場合に受けられる控除です。
8.寄附金控除に関する事項
寄附金控除を受ける場合に名称等を記載します。ただし記載欄が小さいので名称欄にはすべてを記入する必要はありません。「〇〇市、日本赤十字ほか」といった記載で大丈夫です。
9.配偶者や親族に関する事項
最上段の行に配偶者の氏名、マイナンバー、生年月日を記載します。障害者等、右欄に列記されているものに該当する場合には〇をつけましょう。
その他扶養控除や障害者控除を受ける人の氏名などを記入します。また所得税では扶養控除を受けられない16歳未満の親族についても、住民税の計算には影響します。そのため必ず記入し、右の「住民税」欄の「⑯」に〇をつけましょう。
10.事業専従者に関する事項
青色申告で青色事業専従者給与を支払っていたり、白色申告で事業専従者控除を受けたりしている場合に、専従者の氏名、マイナンバーなどを記入します。
11.住民税・事業税に関する事項
記載されている事項で該当するものがある場合に記入します。
「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄では、特別徴収か自分で納付するかを選べます。例えば、会社員が副業で雑所得などの所得を得ている場合に、住民税の納付方法を自分で納付するケースなどがあてはまります。忘れずに〇をつけましょう。
確定申告書Bで申告する際の必要書類
確定申告書Bで確定申告をする際は、申告書の「第一表」「第二表」の他にも必要書類があります。また青色申告と白色申告では必要書類が異なります。
【必要書類】
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青色申告決算書【青色申告の場合】
青色申告をする場合は「青色申告決算書」の作成、提出が必要です。
青色申告決算書は、事業所得などの所得金額を計算するための明細書です。損益計算書、損益計算書の内訳の書類2枚、貸借対照表からなる4枚で構成されています。
一般用の他に農業所得用、不動産所得用があるのでご自身の所得に応じて選択します。
収支内訳書【白色申告の場合】
白色申告をする場合は「収支内訳書」の作成と提出が必要です。
収支内訳書も事業所得などの所得金額を計算するための明細書ですが、青色申告決算書とは違い貸借対照表の作成が求められていないことが大きな違いです。
貸借対照表を作成するには複式簿記で記帳する必要があるため、これを求められない白色申告は青色申告よりも簡素化した事務処理で済むといえます。
本人確認書類(マイナンバーカードなど) 【共通】
マイナンバーカードなどのマイナンバーを確認できるものは全員が必要です。
もしもマイナンバーカードがない場合は、通知カードなどの書類に加えて運転免許証などの身元確認書類も必要です。忘れずに用意しましょう。
各種控除関係の証明書【医療費控除など各種控除を受ける場合】
医療費控除などの所得控除を受ける場合、証明書類が必要になります。
【必要書類の例】
控除 | 必要書類 |
医療費控除 | 医療費控除の明細書 (自身で作成) |
社会保険料控除 | 国民健康保険料、国民年金保険料の控除証明書 |
生命保険料、地震保険料控除 | 保険料控除証明書 |
令和5年から確定申告書ABが一本化!従来との違いとは?
2023年(令和5年)に提出する、2022年(令和4年)分の確定申告から、確定申告書Aが廃止され、Bに近い様式に統一されました。
記入すべき項目は大きくは変わりませんが、数点、異なる点があるため注意しましょう。
第一表に「修正申告」欄ができた
従来、修正申告を行う際は通常の第一表と、修正申告用の第五表を同時に提出していました。令和5年より第一表に「修正申告」の欄が設けられたため、この第五表が廃止となります。
「業務にかかる雑所得」で収支内訳書の提出が必要に
確定申告に必要な書類についてはもう一点、変更点があります。業務にかかる「雑所得」の収入が1,000万円を越える場合、収支内訳書の提出が必要になりました。
雑所得とは本業とは別に得る収入のことで、「公的年金」「業務」「その他」の区分に分けられています。「業務」は、給与をもらっている方が副業のハンドメイドやアフィリエイト、ネットせどりなどで稼ぐお金です。
令和4年分より、確定申告書作成コーナーでも収支内訳書の作成が可能になっています。
なお業務にかかる雑所得の収入が300万円以上1,000万円未満の場合、収支内訳書は必要ないですが、税務署から問い合わせがあった時のために領収書はとっておきましょう。
確定申告書の作成で悩んだら税理士に相談を
確定申告書Bの基本的な作成方法をご紹介しました。確定申告書を作成するには国税庁の確定申告書等作成コーナーが便利です。第一表や第二表だけでなく青色申告決算書も作成できます。
しかし個人事業主は、決算書や申告書を作成するまでに収入と経費の集計が必要です。この過程で税務上の判断に迷うことや、事務手続が煩雑で時間をとられることもあるのではないでしょうか。
確定申告書の作成に行き詰ってしまったり、確定申告書を作成する時間がなかったりするときには、税理士に依頼することも選択肢のひとつです。
青色申告をする場合は申告書作成だけでなく、仕訳作成から税理士に依頼するのが効果的。仕訳作成から依頼すると売上の金額やボリュームによって違うものの「10万円程度」が相場です。消費税の申告も必要になってくると「15万円から25万円程度」の費用負担が生じます。
「確定申告書の作成に行き詰まってしまった・・・」という場合は、税理士への相談も検討してみてはいかがでしょうか。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通