会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者も、副業収入がある場合や複数の企業から給与を得ている場合、各種控除を適用させるためには確定申告を行う必要があります。
確定申告の手順を事前に確認しておくことでスムーズに手続きを完了させられます。
給与所得者向けに、確定申告書の書き方を分かりやすく解説します。
確定申告書で必ず出すものは「第一表」と「第二表」の2枚
確定申告書は全部で4枚あります。そのうち、必ず提出するべき書類は第一表と第二表です。
確定申告書の各用紙に記入すべき事柄などを解説します。
【必須】収入等を記載する「第一表」
確定申告第一表は、収入などを記載する表です。
左右にそれぞれ欄があり、一見するとすべてに記入するのは大変なように思われます。しかし、実際に記入するべき欄は必要な部分のみなので欄のすべてを埋めることはまれです。
給与所得者であれば、「(オ)給与」に額面給与を転記します。源泉徴収票を用意し、1桁単位で間違いの内容に転記してください。
(13)以降の項目は控除に関する記入欄です。適用したい控除の欄に数字を転記しましょう。
第一表は確定申告の内容のうち、概要を示すものという考え方ができます。
【必須】所得や控除の内訳を記載する「第二表」
確定申告第二表は、所得や控除の内訳を記載します。
第二表に必要項目を記入すると、以下の控除を適用できます。
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済掛金等控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除・特別障害者控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- 専業専従者控除
生命保険料控除や地震保険料控除、住宅ローン控除など控除の適用に添付書類が必要な控除を適用させる場合は、添付書類は貼付け台紙に添付してください。
台紙は国税庁ホームページからダウンロードできます。またe-Taxによる電子申請であれば添付書類の提出が不要なので、利用をご検討ください。
分離課税用の「第三表」
確定申告書の第三表は、分離課税をする際に利用します。内容そのものは第一表とほぼ同一です。
分離課税とは、それぞれの税を分けて課税申告をすることを指します。手間はかかりますが、一般的な「総合課税」と比較すると税率が低くなるため節税効果があります。
損失申告用の「第四表」
確定申告の第四表は、損失申告をするための表です。
主に青色申告や白色申告を行う際に利用します。
ただし、2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災の被災者を対象にした特例によって所得税の控除を適用させるために使うことがあるので、対象者は見落とさないようご注意ください。
確定申告書を手に入れる方法
確定申告書を入手する方法は3つあります。
このうち手間が少ないのは、「② 国税庁サイトからダウンロードする」「③ 「確定申告書等作成コーナー」を利用する」の2つです。
確定申告をカンタン・手軽に終わらせたい方はぜひご覧ください。
かつては確定申告が必要な人に向けて、1月ごろに税務署が確定申告書を郵送してくれていました。
しかし現在は確定申告書に代えて「確定申告のお知らせ」はがき等を送付しています。
確定申告相談会場に向かう際は「確定申告のお知らせ」はがき等を持参すると相談がスムーズにできます。
① 税務署の窓口からもらう
開署時間中に税務署を訪れられるのであれば、税務署の窓口からもらってくることが可能です。
窓口の職員に伝えて受け取る方式と自由に持ち帰ることができる方式の2種類に分かれています。実際に税務署を訪れて、確定申告書の受け取り方を確認しましょう。
② 国税庁サイトからダウンロードする
国税庁のサイトではPDFファイルで確定申告書を提供しています。
普段使っているパソコンにダウンロードをし、プリントアウトするだけで確定申告書を手に入れられます。
③「確定申告書等作成コーナー」を利用する
パソコン、スマートフォン、タブレット端末をお持ちであれば、「確定申告書等作成コーナー」の利用をおすすめします。
自宅で簡単に確定申告書を作成できるうえ、e-Taxを使って自宅にいながら電子申請が可能です。
e-Taxによる電子申請であれば、控除に必要な一部の書類の添付が不要になるなど様々なメリットがあります。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は大きくわけると以下の4種類です。
① 確定申告書
確定申告をするときは確定申告書が必要です。
「確定申告書を手に入れる方法」でご紹介した3つの方法のうちいずれかで、確定申告書を手に入れてください。
- 税務署の窓口でもらう
- 国税庁サイトからダウンロードする
- 確定申告書等作成コーナーを利用して作成する
② マイナンバー(個人番号)
確定申告書にはマイナンバー(個人番号)を記載する必要があります。
また、確定申告書の提出時にはマイナンバーカードの提示または両面の写しを求められることがあります。
マイナンバーカードを所有していない場合は、マイナンバーが記載された住民票と運転免許証など、「番号確認書類」と「身分証明書」の提示が必要です。
マイナンバーカード
または
- 住民票など「番号確認書類」
- 運転免許証やパスポートなど「身分証明書」
のいずれか
③ 医療費の領収書など控除に関する書類
確定申告書に添付する書類
確定申告書に添付する書類は申告内容によって異なります。
対象者が多い控除について、必要書類は以下の通りです。
控除の種類 | 添付書類 |
---|---|
医療費控除 | 医療費控除の明細書 |
社会保険料控除 | 支払った社会保険料の金額が記載された控除証明書など |
生命保険料控除 | 保険会社から発行される控除証明書など |
地震保険料控除 | 保険会社から発行される控除証明書など |
小規模企業共済等掛金控除 | iDeCoの掛金額が記載された控除証明書など |
④ 源泉徴収票
確定申告書を作成するときは、源泉徴収票に記載されている内容を転記する必要があります。
源泉徴収票に記載されている項目について解説します。
① 支払金額
給与やボーナス・各種手当を含んだ1年分の給料の金額で、一般的に「額面」と呼ばれる金額です。
② 給与所得控除後の金額
「①支払金額」から給与所得控除額を差し引いた金額です。
所得税の計算では額面の金額に税率をかけるのではなく、額面(①支払金額)から給与所得控除額を引いた「課税する所得額」を求めてから税額を計算します。
③ 所得控除の額の合計額
給与所得控除以外の控除の合計額です。所得税の計算では、「②給与所得控除後の金額」(と副業などその他の所得額を合計した1年間の所得額)から各種所得控除額を引いた上で税率をかけ合わせて税額を計算します。
④ 源泉徴収税額
1年間に源泉徴収された所得税の合計額のことで、毎月の給与やボーナスが支払われる際に天引きされた金額です。
源泉徴収された額はすでに納税が完了しています。ただし、確定申告で再計算した所得税額のほうが少ない場合は、納め過ぎた分が還付金として払い戻されます。
⑤ 配偶者・扶養親族の情報
配偶者や扶養親族の人数などが記載されています。扶養家族がいる場合は、税率をかける前の金額から配偶者(特別)控除額や扶養控除額を差し引くことができます。
⑥ 社会保険料等の金額
健康保険料や厚生年金保険料など1年間に支払った社会保険料の合計額です。税率をかける前の金額から社会保険料控除額として差し引くことができます。
⑦ 各種控除の金額
生命保険や地震保険、住宅ローンに応じた控除額が記載されています。税率をかける前の金額から控除額を差し引くことができます。
源泉徴収票が手元に見当たらない場合は、以下の関連記事を参考にして再発行依頼等を行ってください。
確定申告書・第一表に記入すること
確定申告書「第一表」に記入することは以下の6つです。
1.住所や氏名・生年月日等の基本情報を記入する
確定申告書の提出先は住所地を管轄する税務署です。
確定申告書左上の「○○」税務署長の「○○」には、管轄の税務署名を記載します。
管轄する税務署を調べるには、国税庁ホームページの「税務署の所在地などを知りたい方」をご利用ください。
郵便番号や市区町村名を入力すると管轄の税務署が表示されます。
住所・氏名・年齢月日を記入する
住所や氏名、生年月日も記入します。このうち注意が必要なのは生年月日です。
生年月日は元号で記載しますが、その際は元号に対応する数字を記入する必要があります。
元号 | 対応する数字 |
---|---|
明治 | 1 |
大正 | 2 |
昭和 | 3 |
平成 | 4 |
令和 | 5 |
たとえば「昭和31年9月1日」生まれの方は、右上の生年月日欄に「3 31 09 01」と記入します。
職業や屋号・雅号についての注意点
職業や屋号・雅号については記載時の注意点があります。
職業は総務省の「分類項目名」を基準に、具体的に記述してください。
給与所得者は「会社員」「パート」「アルバイト」等を記入します。
個人事業主やフリーランスは、具体的な事業内容を記載する必要があります。
× フリーランス
○ システムエンジニア
個人事業主で酒屋を営んでいる場合
× 個人事業主、販売業
○ 酒類小売業
職業欄は税率を確定させる際の参考になります。不適当な職業を記載すると、税率が高くなるなどの不利益が発生する可能性があるのでご注意ください。
2.「収入金額等」の欄を記入する
「給与」の欄には源泉徴収票の「支払金額」欄に書かれた金額を記入します。
年末調整済みで勤務先から給与情報が税務署に伝わっている場合でも、確定申告をする場合には給与額を記入する必要があるので、記入例のように金額を記入してください。
会社員でダブルワークをしている人やアルバイト・パートを掛け持ちしている人は、各勤務先から受け取る源泉徴収票に書かれた金額を合計した額を記入しましょう。
なお給与の横の「区分」欄は、給与所得と公的年金等の雑所得の両方がある人や、給与収入が850万円を超える人など、一定の要件に該当する人が記入する欄です。
3.「所得金額等」の欄を記入する
「給与」の欄には源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に書かれた金額を記入します。ダブルワークなど複数の勤務先から給与を得ている場合は、各勤務先から受け取る源泉徴収票に書かれた金額を合計して記入してください。
副業をして雑所得に該当する所得がある場合は「雑・業務」や「雑・その他」に記入します。記入する所得額は収入金額から必要経費を引いた額です。
そして確定申告書の「(7)公的年金等」~「(9)その他」の合計額を「(10) (7)~(9)までの計」に記入します。
配当所得や一時所得がある場合には「(5)配当」や「(11)総合譲渡・一時」欄に記入した上で合計額を「(12)合計」に記載します。
なお給与の横の「区分」欄は、職務上の旅費や研修費など「特定支出」の額が一定額を超える人が特定支出控除を受ける場合に記入する欄です。
特定支出控除の適用方法は以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
4.「所得から差し引かれる金額」の欄を記入する
確定申告書の「所得から差し引かれる金額」欄には各種控除額を記入します。
源泉徴収票に記載された社会保険料等の金額や各種控除の金額を確認しながら、間違えないように注意して転記してください。
各種控除を適用させるための確定申告書の書き方は「確定申告書の書き方」の章をご参考ください。
5.「税金の計算」の欄を記入する
確定申告書第一表の左側の欄をすべて記入・転記できたら、右側の「税金の計算」欄を記入します。
このうち「(30)課税される所得金額」と「(31) 上の(30)に対する税額」は第三表に記載することも可能です。
課税所得と所得税の計算方法
「(30)課税される所得金額」を求める方法は非常にシンプルです。以下の式で求められます。
求められた数字から千円未満を切り捨てた額を「(30) 課税される所得金額」に記入します。
「(31) 上の(30)に対する税額」を計算するときは、課税される所得額によって異なる税率をかけます。
所得税の速算表は国税庁サイトに掲載されています。
こちらの画像の例では、「(30) 課税される所得金額」は3,370,000円であれば、税率は20%です。
「(31) 上の(30)に対する税額」に記入する税額は以下の式で求められます。
この場合は「(31) 上の(30)に対する税額」に「246500」と記入します。
「(32)配当控除」~「(40)住宅耐震改修特別控除等」,「(42)災害減免額」に記入することがら
必要に応じて確定申告書の「(32)配当控除」~「(40)住宅耐震改修特別控除等」および「(42)災害減免額」に記入します。該当するものがない場合にはすべて空欄で構いません。
「(32)配当控除」~「(40)住宅耐震改修特別控除等」に記入した場合は、「(41)差引所得税額」欄に、「(31) 上の(30)に対する税額」から「(32)配当控除」~「(40)住宅耐震改修特別控除等」を引いた額を記入します。
「(42)災害減免額」に記入した場合は、「(41)差引所得税額」から「(42)災害減免額」を引いた額を、(43)再差引所得税額(基準所得税額)」欄に記入します。
住宅ローン控除を受ける人が、年末調整でこの控除の適用を既に受けている場合には、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」欄の額を 「(34)住宅借入金等特別控除」欄 に転記し、「区分2」欄に「1」と記入しましょう。
「(44)復興特別所得税」「(45)所得税及び復興特別所得税の額」に記入する額の求め方
「(44)復興特別所得税額」には「(43)再差引所得税額(基準所得税額)」に税率2.1%をかけて求めた税額を記入します。計算の結果、1円未満の端数が生じた場合は端数を切り捨てた金額を記入してください。
画像の例では、以下の計算式で求められます。
「(45)所得税及び復興特別所得税の額」には、「(43)再差引所得税額(基準所得税額)」と「(44)復興特別所得税額」を合計した額を記載します。画像の例では「224,500円 + 4,714円 = 229,214円」です。
6.「雑」欄は公的年金等受給者や副業収入がある人が記入する
「収入等所得金額等」項目の真ん中あたりにある「雑」欄は、「雑所得」を示します。
雑所得とは、事業所得や山林所得、不動産所得等青色申告・白色申告の対象の所得でも、給与所得でもないものを指します。
主に公的年金等や副業収入を指すケースが多いです。
たとえば副業をして原稿料や講演料などを受け取った場合には雑所得の「(キ)業務」欄に収入金額を記入ます。
暗号資産取引などで利益を得た場合は雑所得の「(ク)その他」欄に収入金額を記入します。
確定申告書・第二表に記入すること
確定申告「第二表」には所得や控除の内訳を記載します。
源泉徴収票がある場合は源泉徴収票の対応する額を転記します。
副業が会社にバレたくない人は住民税の納付方法を「自分で納付」を選択する
サラリーマンなど給与所得者は、住民税が毎月の給与から天引きされる「特別徴収」が行われます。
副業収入がある場合は所得が増え、住民税の特別徴収の額も増加し、それがきっかけで会社に副業をしていることがバレてしまう可能性があります。
副業収入の分の住民税を「自分で納付」することを選択すると、給与所得からの天引きはなくなるので会社の関係者に副業がバレるリスクが低くなります。
各種控除を適用させる確定申告書の書き方
ここでは、具体的に各種控除を適用させるための確定申告書の書き方をご紹介します。
必要な書類なども解説しているので、確定申告作業を始める前にぜひご一読ください。
配偶者控除・配偶者特別控除を適用させる確定申告書の書き方
配偶者控除・配偶者特別控除の適用要件のうち、共通している条件は以下の通りです。
- 納税者本人の合計所得額が1,000万円以下
- 法的な配偶者であること(内縁関係ではない)
- 納税者と同一生計であること
- 青色申告の専業専従者としてその年を通じて一度も給与を受けていないこと、または白色申告者の千十専業者でないこと
配偶者控除の場合は、所得が48万円以下、または給与収入のみの場合は給与収入が103万円以下の場合、控除適用の対象となります。
配偶者特別控除の場合は、所得が48万円超133万円以下の場合適用可能です。ただし配偶者特別控除を、配偶者同士で適用することはできないのでご注意ください。
配偶者控除・配偶者特別控除を適用させる確定申告書の記入方法
配偶者控除・配偶者特別控除を適用させるためには、確定申告書第一表左側下部「(21)~(22)配偶者(特別)控除」欄に記入をします。
項目名「配偶者(特別)控除」の右側にある「区分1」は、配偶者控除の場合はなにも記入しません。配偶者特別控除の場合は「区分1」に「1」と記入してください。
配偶者控除・配偶者特別控除は控除される額が決まっているので、以下の表から当てはまる数字を転記してください。
配偶者控除の控除額一覧表
控除を受ける納税者本人の合計所得額 | 一般の控除対象配偶者の控除額 | 老人控除対象配偶者の控除額 |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円を超え950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円を超え1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人を指します。
令和2年分以降 配偶者特別控除の控除額一覧
控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合
配偶者の合計所得額 | 控除額 |
---|---|
48万円超95万円以下 | 38万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 |
控除を受ける納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合
配偶者の合計所得額 | 控除額 |
---|---|
48万円超95万円以下 | 26万円 |
95万円超100万円以下 | 24万円 |
100万円超105万円以下 | 21万円 |
105万円超110万円以下 | 18万円 |
110万円超115万円以下 | 14万円 |
115万円超120万円以下 | 11万円 |
120万円超125万円以下 | 8万円 |
125万円超130万円以下 | 4万円 |
130万円超133万円以下 | 2万円 |
控除を受ける納税者本人の合計所得金額が950万円超1,000万円以下の場合
配偶者の合計所得額 | 控除額 |
---|---|
48万円超95万円以下 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 1万円 |
社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除を適用させる確定申告書の書き方
健康保険料や厚生年金保険料、国民健康保険料を支払った場合は全額が控除の対象です。
同一生計の家族の分の社会保険料も控除の対象となるので、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に記載された額をそのまま「(13) 社会保険料控除」欄に転記しましょう。
生命保険料控除を適用させる確定申告書の書き方
生命保険や介護医療保険、個人年金保険契約の保険料を支払っている場合は一定額を控除できます。
控除される額については以下の表をご参照ください。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円 |
80,000円超 | 一律80,000円 |
たとえば年間の支払保険料が50,000円だった場合、控除額は以下の式で求められます。
源泉徴収がされている場合は源泉徴収票に記載されています。記載されている額を「(15) 生命保険料控除」欄に転記しましょう。
地震保険料控除を適用させる確定申告書の書き方
地震などの損害に対する保険の保険料や掛金を支払った場合は一定額の控除が受けられます。
以下の表に記載された控除額を参照し、「(16) 地震保険料等控除」欄に記載しましょう。源泉徴収を受けている場合には源泉徴収票にも記載されています。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|---|
地震保険料 | 50,000円以下 | 支払額の全額 |
地震保険料 | 50,000円超 | 一律50,000円 |
旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払額の全額 |
旧長期損害保険料 | 10,000円超20,000円以下 | 支払い額 × 1/2 + 5,000円 |
旧長期損害保険料 | 20,000円超 | 15,000円 |
地震保険料と旧長期損害保険料の両方 | – | それぞれの方法で計算した金額の合計額(最大50,000円) |
「旧長期損害保険料」とは、平成18年12月31日までに締結している保険契約によるものを指します。税制改正により平成19年分から現在の地震保険料に替わっているので、契約開始日を確認してから控除額をチェックしましょう。
雑損控除を適用させる確定申告書の書き方
雑損控除では、災害や盗難、横領等の被害にあった場合に控除を適用できます。
源泉徴収票には控除額が記載されないので、以下の計算式で控除額を求めましょう。いずれか多い方の金額を適用できます。
② (災害関連支出の金額 – 保険金等の額) – 50,000円
以下の例でシミュレーションをしてみましょう。
災害等関連支出の金額:60万円
保険金等の額:30万円
総資産所得金額:600万円
まずは①の式で計算をします。
続いて②の式で計算をし、①で算出した控除額とどちらが大きいかを確認しましょう。
この場合は①の式で算出した額の方が大きいため、①の式の計算結果を「(26) 雑損控除」に記載します。
寄附金控除を適用させる確定申告書の書き方
寄附金控除はふるさと納税や特定団体への寄付などを行った際に適用できる控除です。
控除額が源泉徴収票に記載されていないので、以下の方法で控除額を計算して「(28) 寄附金控除」欄に記入しましょう。
② その年の総所得金額等の40%相当額
いずれかのうち低い額から2,000円を引いた額が寄附金控除額
たとえばふるさと納税で60,000円分の寄付をした、年間所得額350万円の人であれば、寄附金控除額は以下のように算出できます。
② 350万円 × 40% – 2,000円= 1,398,000円
→額が低いのは① 58,000円なので、「(28) 寄附金控除」には58000と転記する。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を適用させる確定申告書の書き方
その年に住宅ローンを組んだ人は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を適用させるために確定申告が必要です。
控除額を求める計算式はいくつかあるので、計算式を間違えないよう注意してください。控除額は源泉徴収票にも記載されています。
居住の用に供した年 | 控除期間 | 各年の控除額の計算(控除限度額) |
---|---|---|
平成27年1月1日から令和元年9月30日まで | 10年 | 1~10年目 年末残高等 × 1% (50万円) |
令和元年10月1日から令和2年12月31日まで | 13年 | 【住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合】 【1~10年目】年末残高等 × 1% (50万円) 【11~13年目】次のいずれか少ない方が控除限度額 ① 年末残高等(上限5,000万円) × 1% ② (住宅取得等対価の額 – 消費税額[上限5,000万円]) × 2% ÷ 3 |
令和元年10月1日から令和2年12月31日まで | 10年 | 【上記以外の場合】 1~10年目 年末残高等 × 1% (50万円) ※ 住宅の取得等が特定取得以外の場合は30万円が限度額 |
令和3年1月1日から令和3年12月31日まで | 10年 | 【上記以外の場合】 1~10年目 年末残高等 × 1% (50万円) ※ 住宅の取得等が特定取得以外の場合は30万円が限度額 |
令和3年1月1日から令和4年12月31日まで | 13年 | 【住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合】 【1~10年目】年末残高等 × 1% (50万円) 【11~13年目】次のいずれか少ない方が控除限度額 ① 年末残高等(上限5,000万円) × 1% ② (住宅取得等対価の額 – 消費税額[上限5,000万円]) × 2% ÷ 3 |
令和4年1月1日から令和5年12月31日まで | 13年 | 【認定住宅に該当する場合】 年末残高等 (上限5,000万円) × 0.7% 【特定エネルギー等消費性能向上住宅に該当する場合】 年末残高等(上限4,500万円) × 0.7% 【エネルギー消費性能向上住宅に該当する場合】 年末残高等(上限4,000万円) × 0.7% |
令和6年1月1日から令和7年12月31日まで | 13年 | 【認定住宅に該当する場合】 年末残高等 (上限4,500万円) × 0.7% 【特定エネルギー等消費性能向上住宅に該当する場合】 年末残高等(上限3,500万円) × 0.7% 【エネルギー消費性能向上住宅に該当する場合】 年末残高等(上限3,000万円) × 0.7% |
平成27年:2015年
平成28年:2016年
平成29年:2017年
平成30年:2018年
平成31年/令和元年:2019年
令和2年:2020年
令和3年:2021年
令和4年:2022年
令和5年:2023年
令和6年:2024年
令和7年:2025年
障害者控除を適用させる確定申告書の書き方
障害者控除は対象となる障害者の障害等級によって控除額が異なります。
勤労学生控除と記入欄が同一ですが、勤労学生控除と同時に控除を受けることもできます。その場合は双方の控除額を合算した額を記入します。
障害者の区分は以下をご参照ください。
- 身体障害者手帳 1級、2級
- 精神保健福祉手帳 1級
- 療育手帳(愛護手帳、みどりの手帳など)A級(重度)
- 戦傷病者手帳 特別、第1~第3項症
- 原子爆弾の認定被爆者
- その年の12月31日の現況で引き続き6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で複雑な気顎を必要とする人
障害者に該当する者
- 身体障害者手帳 3級~6級
- 精神保健福祉手帳 2級、3級
- 療育手帳(愛護手帳、みどりの手帳など)B級
- 戦傷病者手帳 第4項症~第6項症、第1~第3款症
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
勤労学生控除を適用させる確定申告書の書き方
合計所得金額75万円以下の学生は勤労学生控除を受けられます。控除額は一律27万円です。
「(19)~(20)勤労学生、障害者控除」の欄に「27」と記入します。
障害者控除と併用できるため、その場合は双方の控除額を合算した額を記入してください。
確定申告書の提出方法
確定申告書の提出方法は以下の3つです。
土日・祝日や夜間に確定申告書を提出する方法については、関連記事で詳しく解説しています。
e-Taxで電子申請を行う
最も手軽な方法はe-Taxを使って電子申請を行うことです。
確定申告書等作成コーナーで確定申告書を作っていれば、自宅にいながらにして提出ができるので、封筒や切手を購入したりする手間もありません。
実際に確定申告をe-Taxで行う人は年々増えており、今後もさらに増加する見込みです。
税務署の窓口へ提出する
税務署が開いている時間に訪問できるのであれば、税務署の窓口に直接提出ができます。
ただし確定申告期間中は大変な混雑が予想されます。提出に時間がかかるだけではなく、インフルエンザや風邪などの感染症にかかるリスクが考えられるので、可能であれば他の手段をおすすめします。
また税務署には時間外収受箱が設置されているので、税務署が開いていない時間であれば時間外収受箱へ投函して確定申告書を提出できます。
税務署や業務センターへ郵送する
管轄の税務署や業務センターに郵送することでも確定申告書を提出できます。
基本的には管轄の税務署に郵送すればよいですが、東京都内など利用者が多い税務署では、内部事務作業を業務センター化しているケースがあります。
業務センター化している税務署に確定申告書を郵送しても受け付けてもらえないので注意が必要です。
確定申告書をカンタンに作成する方法
確定申告書を簡単に作成する方法は以下の3つです。
確定申告書等作成コーナーを利用する
確定申告書に手書きで記入すると手間や時間がどうしてもかかります。しかし確定申告書等作成コーナーを使って作成すれば、パソコン画面で必要な情報を入力すると申告書を作れるので効率的です。
例えば生命保険料控除を受ける場合、保険料額を入力すると以下のように控除額が自動的に計算されます。手書きで作成する場合のように自分で控除額を計算する手間はかかりません。
また紙の確定申告書に手書きすると書き方がよく分からず困る場合がありますが、確定申告書等作成コーナーでは入力のやり方に関する説明書きが入力画面の随所に記載されていて、分かりやすくなっています。
必要な情報の入力漏れがあるとエラーが表示されるので、不備があるまま書類を提出して手続きがやり直しになる可能性を下げられる点でもおすすめです。
アプリや会計ソフト、テンプレート等を活用する
確定申告アプリや会計ソフトの多くは、普段から記帳をしておくと確定申告書を自動的に作成してくれます。
記帳のやり方など簿記の知識を学ぶ必要はありますが、申告書を手書きしたり確定申告書等作成コーナーで入力したりする手間がかからず効率的です。
費用がかかる点はデメリットですが、銀行口座の履歴情報を取り込んで自動的に仕訳や記帳をしてくれるアプリやソフトもあります。
ミツモアでは、複数の会計ソフトを比較してあなたにぴったりの製品を探せます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
税理士に確定申告書の作成を依頼する
税金の専門家である税理士に依頼すれば確定申告をミスなくスムーズに終えられます。依頼すると費用はかかりますが、記帳や確定申告書の作成を任せれば自分でやる手間はかかりません。
また最新の税制に基づいて適切な内容で申告してもらえるので、その年に何が変わったのか法改正内容を自分で確認する手間がかからずに済む点もメリットといえるでしょう。
副業をしているなど来年以降も確定申告をする可能性がある人は、税理士に相談して毎年の確定申告を依頼することも検討してみてください。税理士に普段から相談すれば、節税に関するアドバイスを受けられるなどさまざまなメリットがあります。
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