個人事業主に税理士はいらない？依頼した方がいい場合と費用相場を解説

個人事業主の方は、本業のほかに日々の経理や年度末の確定申告など、煩わしい雑務も非常に多いですよね。

とはいえ「会計ソフトで十分」「Webで情報収集できる」という情報から、“税理士はいらない”と感じている方も少なくないでしょう。しかし正しい知識なしに会計ソフトを使うと間違えるケースも多く、数年後に追徴となる可能性も大いに考えられます。

この記事では、個人事業主は本当に税理士が不要なのかや、依頼する際のメリット・デメリット、費用相場などを解説していきます。

この記事を監修した税理士

※本記事の監修者は、一般的な情報について監修をしています。税理士や口コミは監修者が選定したものではありません。

個人事業主で税理士はいらない？必要な人・不要な人

個人事業主で税理士が必要な人は「会計関連の知識がない」「インボイス制度に対応する必要がある」といったケースが挙げられます。

一方で、税理士が不要な人は「現状の売上が少ない」「時間に余裕がある」といったケースです。

以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

税理士が必要な人

以下のいずれかに当てはまる人は、個人事業主で税理士が必要な人と言えます。

まず、会計関連の知識がない、あるいは基本的な内容しか知らないという方は、税理士が必要でしょう。

日々の経理や年次税務は、知識および経験がないと難しい領域です。例えば記帳業務を自分で行うには、一週間に2〜3時間程度かかります。

さらに年間売上が1000万円以上ある課税業者の方は、インボイス制度への対応や消費税の複雑な計算が必要です。この業務を税理士に任せることで、負担を大きく減らせます。

また、税理士費用は経費として精算できます。税理士に依頼するのはコストがかかるというイメージを持っている方も多いかと思いますが、実際は節税にもつながります。

税理士が不要な人

個人事業主で税理士が不要な人は以下の2種類に分けられます。

現状の売上が少なく、小規模で運営している個人事業主の方であれば、税理士は不要であるといえます。

経理上、売上が少ないと管理する書類（請求書や領収書など）も比例して少なくなるため、税理士がいなくても自力で処理することが可能です。

また時間に余裕がある方は、勉強しながら経理や税務を進められるため、税理士費用を懸念しているケースでは有効な手段の一つであるといえます。

もし1,000万円以上の売り上げがある場合は、税理士に依頼することで高い節税効果が期待できるでしょう。

実際に、自力で経理や確定申告ができるのか気になっている方や、やってみるつもりの方は、以下の記事を参考にしてみてください。

個人事業主が税理士に相談すべきタイミング

個人事業主が税理士に依頼の相談をすべきタイミングは以下の3点が挙げられます。

以下では、その内容について詳しく解説していきます。

売上高が1,000万円を超えた時

売上高が1,000万円を超えた時は、個人事業主が税理士を依頼すべき1つのタイミングです。具体的な理由は以下の3つになります。

消費税の処理が変わる

売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納付義務が発生します。消費税の課税事業者になると、自ら消費税の納付額を計算し、消費税の確定申告を行わなければなりません。売上1,000万円を境に、複雑で新たな業務が増えるわけです。

開業してから2年間、または前々年度の課税売上高が1,000万円を超えていない場合は、「免税事業者」に区分されます。そのため消費税の納税は免除され、売上と一緒に預かった消費税を税務署へ納付する義務はありません。

例えば2023年に初めて売上高が1,000万円を超えると、2023年と2024年は納税義務がなく、2年後の2025年に課税事業者となることが確定します。もし売上高が1,000万円以下に戻ってしまった場合は、再び免税事業者に戻ります。

また、インボイス制度の導入により、課税事業者となった場合も消費税の納付が必須です。上記の猶予期間はなく、該当事業年度から消費税の処理が変わります。

税金が増える

売上高が増えれば、必然的に支払う税金の額も大きくなっていきます。個人事業主の事業所得にかかる所得税は累進課税が基本であり、売上が増加すれば税率も高くなる仕組みがとられています。

そんな時には、税理士のアドバイスを受けながら節税対策を考えることが必要になるでしょう。

税務調査を受ける確率が上がる

事業が拡大して売上高も大きくなり、課税事業者になれば税務署の税務調査対象になる確率も上がります。個人事業主が一人で税務調査に立ち会い、スムーズに対処するのは非常に困難であると言われています。そんな時こそ、適切な税務処理をサポートしてくれる税理士の存在が重要です。

国税庁の平成28年度の調査によると、税務調査を受けた64万7千件のうち40万件、つまり60%近くが申告漏れを指摘されています。税理士のサポートを受けて、漏れを指摘されない正しい申告を行いたいですね。

法人化する時

個人事業主が法人化する時も、併せて税理士に業務を依頼すると良いでしょう。

なお売上が1,000万円を超えたら、法人化することがおすすめです。法人化すると法人税率が適用され、所得税よりも低い税率が受けられる場合があります。

また、経費として認められる範囲を広げることも可能です。

法人化した際は税理士をつけることで、法人税申告のサポート、節税対策のアドバイス、複雑な経理業務の代行などをしてもらえます。依頼費用以上の多くのメリットが受けられるでしょう。

確定申告だけ丸投げしたい時

確定申告だけを税理士に丸投げしたい場合も、税理士に依頼すべきタイミングと言えます。

税理士には、スポットで確定申告をお願いすることもできます。

税理士への確定申告はおよそ4万円〜10万円で依頼することが可能です。

ただし、青色申告と白色申告で依頼費用が異なるため、注意しましょう。 以下に青色申告と白色申告の違いをまとめたので、参考にしてください。

個人事業主に税理士がいらないと言われる3つの理由

「個人事業主に税理士はいらない」と言われる理由は以下の3つです。

それぞれの理由について詳しく解説していきます。

会計ソフトで十分だから

個人事業主でも、会計ソフトがあれば経理や税務を比較的簡単に進められ、税理士は必要ないと判断されがちです。元々、簿記や税制に詳しい個人事業主の方であれば、確かに会計ソフトがあれば十分であるといえるでしょう。

しかし上記のような知識が乏しく、“なんとなく”日々の経理や申告業務を行っている方は要注意です。

会計ソフトというのは、あくまでも効率的に経理をサポートしてくれるアイテムであり、税理士のように全てを担ってくれるものではありません。勘定科目や仕訳の設定などの理解がないと、決算書や確定申告書にミスが生じます。

そのほか、多少申告内容に誤りがあったとしても「税務調査は入らない」と思い込んでいる方も要注意です。税務調査は、個人事業主であろうといつ入るか分かりません。経理や申告業務をは常に正しく行う必要があります。

こうした点も踏まえて、会計ソフトだけを信頼し「税理士はいらない」というのは少々強引であるといえます。

Web上で情報を得られるから

Web上で経理や税務関係の情報を簡単に得られるため、税理士はいらないと言われています。確かに現代はWeb上に有益な情報が溢れており、Googleで検索をかけたり、YouTubeで学んだりできる時代です。

しかし「ネットリテラシー」という言葉も存在している通り、その情報が本当に正確なものなのかを判断する能力が問われます。

その点税理士はその道のプロであり、わからない点があればすぐにWeb検索以上の信憑性がある情報を返してくれます。

税理士とのコミュニケーションが必要だから

税理士に業務を依頼すると、連絡や会話などのコミュニケーションが必要になります。税理士とのコミュニケーションは重要であり、良い関係性を築いていくための手段ですが、面倒に感じてなかなか税理士への依頼に踏み切れない個人事業主もいます。

ただ税理士に経理や税務を依頼すれば、これまで負担に感じていた本業以外の業務を軽減でき、より事業の成長にフォーカスできます。

コミュニケーションの回避と事業の成長、自分の中でどちらが優先度が高いか、という視点も持っておくと良いでしょう。

個人事業主が税理士に任せられる仕事

個人事業主が税理士に任せられる仕事には以下の4つがあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

確定申告に関する業務

個人事業主が税理士に任せられる仕事の1つ目は、確定申告に関する業務です。

確定申告に関する業務には、以下のようなものがあります。

これらの確定申告業務について、税理士に任せることが可能です。顧問契約を結ばず確定申告業務のみを依頼することもできるため、必要に応じて依頼することで費用を抑えられます。

また、確定申告にかかる時間は個人や企業によって大きく異なりますが、平均752分もかかると言われています。確定申告を税理士に依頼するすれば、この作業時間を業務に回すことができます。

「納税に関することをプロに任せて、自分の仕事に集中したい」という方は、税理士に任せることがおすすめです。

決算書・申告書の作成

個人事業主が税理士に任せられる仕事の2つ目は、決算書・申告書の作成業務です。

個人事業主が作成する必要がある書類の中で、税理士が代行できる書類には以下のようなものがあります。

書類の作成には帳票の整理やデータ入力、決算整理などさまざまな作業が必要です。

また、作成には消費税や法人税、給与所得に関する税金などについての知識も求められます。

これらを個人で行う場合は非常に多くの時間と労力がかかるため、作成が手間に感じられる場合は税理士に任せるとよいでしょう。

決算業務

個人事業主が税理士に任せられる仕事の3つ目は、決算業務です。

決算業務には以下のようなものがあります。

税理士には決算に必要な記帳の代行や書類の作成も任せることが可能です。決算業務には「月次決算」と「年次決算」の2種類がありますが、税理士に依頼すればどちらも対応してもらえます。

加えて、決算に関してのコンサルティングを実施してもらうことも可能です。

資金繰りのサポート

個人事業主が税理士に任せられる仕事の4つ目は、資金繰りのサポートです。

税理士をつけることで、決算書や申告書の作成や記帳代行などの実務面以外でも、資金調達や節税のアドバイスなどを受けられます。

資金状況に応じた相談が可能なため、税金の知識が乏しい方には非常に大きなメリットだと言えるでしょう。

自分で判断できない小さな疑問でも、税理士をつけていればすぐに相談できます。

個人事業主の税理士への依頼費用はいくらが相場？

個人事業主が税理士に業務を依頼した場合の費用相場は、月額顧問料で1万円〜3万円ほど、確定申告であれば4万円〜10万円ほどです。

その他業務の相場や詳しい内容は以下で解説していきます。

税理士費用の内訳と相場

顧問料　

税理士と顧問契約を結んで事業の財務状況を見てもらい、定期的なアドバイスを受ける場合は月額顧問料が発生します。顧問料の相場は事業規模に比例して高くなっていきますが、売上高1,000万円程度の場合は月当たり1万〜3万円ほどが相場です。

メールや電話のみの対応の場合は顧問料が安く、訪問による面談を希望すると顧問料は高くなります。

帳簿作成　

毎月の記帳業務を全て依頼する場合は、記帳代行料として毎月5千〜1万円程度(100仕訳／月)がかかります。仕訳本数が増加するにしたがって代行料も高くなる仕組みです。データ処理を事業主が行い、チェックのみ税理士に依頼する場合は、帳簿作成費用は半額程度まで安くなります。

なお、記帳代行料が顧問料に含まれているケースもありますので、依頼する際にはよく確認しておきましょう。

確定申告　

年に一度の確定申告時にかかる税理士費用の相場は4万〜10万円程度です。料金を月額顧問料の4ヶ月〜6ヶ月分というように設定している税理士もいます。また、顧問契約をしないで確定申告のみを依頼する場合は、料金は割高になりますので注意しておきましょう。

税務相談　　

顧問税理士として契約をしていない場合で、必要に応じて相談をしたいという時には、単発の税務相談を利用できます。この場合は税務相談料金として、その都度1〜2万円程度の料金が発生します。

税理士費用を抑える2つの節約術

税理士と顧問契約した場合には、顧問料と確定申告費用で最低でも年間20万円程度が必要になります。

これでは負担が大きすぎると感じたら、税理士費用を節約する方法を考えなければなりません。ここでは税理士費用を抑える2つの節約術を紹介します。

相見積もりを取って費用を比較する

1つ目は、複数の税理士から相見積もりをとって、費用の比較をすることです。

知人の紹介などで安易に税理士を選んでしまわないように、費用について納得した上で契約する必要があります。

例として、ミツモアに登録されている税理士事務所の顧問料をいくつか紹介します。

このように税理士によって顧問料は大きく異なります。必ず相見積もりをとって比較し、自分に合った税理士の中から比較的費用が安い業者を選ぶようにしましょう。

顧問契約を結ばず単発で依頼する

2つ目は、ビジネス状況に合わせて、必要な業務だけに絞って税理士に依頼することです。

税理士にときどき単発で税務処理を依頼する方であれば、単発業務での依頼の方が安く済む可能性があります。

例えば、月額顧問料が20,000円の税理士の場合は、年間で24万円の費用がかかります。しかし、年に一度確定申告業務のみ依頼したいという場合は、およそ4万円〜10万円の費用で済ませることが可能です。

依頼したい作業を明確にし、必要最低限の依頼に絞れば効果的に税理士費用を抑えられるでしょう。

個人事業主が税理士に依頼する5つのメリット

個人事業主の方が税理士に業務を依頼するメリットは以下の5つです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

本業に専念できる

どんなビジネスでも、日々の経理や税務処理は欠かすことのできない重要な業務です。しかし、ビジネスの規模が大きくなればなるほど、その業務に時間と手間がかかります。

事業主本人が全てをこなすとなれば、場合によっては本業の時間までも圧迫する可能性があります。税理士に業務を依頼することで、事業主にしかできない本来の業務に専念する余裕が生まれるのは大きなメリットです。

正しい知識で正確な税務処理ができる

帳簿への記帳は一見簡単そうに見えますが、項目の仕訳など専門的な知識がないと効率よく進めることができません。税理士に記帳代行を依頼してしまえば、正しい知識で正確な処理をしてもらえるので、完璧な帳簿を保持することが可能です。

確定申告のストレスが軽減される

税理士が最も大きな存在感を発揮するのが年に一度の確定申告です。確定申告は時期が決まっているので、その時期になると手つかずの書類を見て気持ちばかりが焦ってしまう個人事業主の方が多くいらっしゃいます。

確定申告時には本来の業務に集中できず、損失が発生するというケースも少なくありません。確定申告に関しても税理士に依頼することで、精神的なストレスが大きく軽減されるでしょう。

節税などの経営上のアドバイスをもらえる

税理士は税務代行に付随するお金の流れを見ることによって、それが適正かそうでないかを見極めることができます。また顧問税理士として継続的に経営状況を把握してもらうことで、今後の経営戦略についてタイムリーなアドバイスをしてもらうことも可能です。

節税対策の相談など、経営コンサルタントとして頼れる存在になってくれるでしょう。

事務の従業員を雇うより費用が抑えられる

税務関係の業務が増えることにともない、従業員の雇用を考える個人事業主の方も多いといえるでしょう。実際には、週に数回勤務のパートタイムの従業員の給与を支払うよりも、必要に応じてアウトソーシングできる税理士の方が費用を安く抑えられます。

なお「確定申告を税理士に代行してもらうメリット」も以下の記事で解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

個人事業主が税理士に依頼する2つのリスク・デメリット

個人事業主の方が、税理士に業務を依頼するリスクやデメリットは以下2点です。メリット以外にもリスクやデメリットを把握しておくことで、実際に必要かどうかの判断材料となります。

費用がかかる

税理士への依頼にかかる費用は決して安くはありません。依頼することで軽減される負担と、かかるコストを十分に見極め慎重に判断することをおすすめします。

本業に専念することで、税理士にかけるコストよりも高い利益を生み出せる場合は依頼を検討しましょう。

申告や会計のやり方が自分と違う可能性がある

税理士に依頼すると指定の会計ソフトがあったり、領収書を郵送する必要があったりするケースがあります。

個人で手続きをしていた時とやり方が異なってしまうと、慣れるまでは負担に感じることもあるかもしれません。税理士と契約する場合は、今までどのように税務を行っていたかをしっかりと伝え、税務方針を話し合いましょう。

また事前に「どの会計ソフトを使用しているのか」「個人事業主側で準備しておく必要があるのか」といった点も確認してください。場合によっては、税理士側が所有している会計ソフトを共有してもらい「レンタル」という形で経理を進めることもあります。

個人事業主の税理士の選び方3つのポイント

個人事業主の方が税理士を選ぶ際のポイントは以下の3つです。

お金に関する重要な業務を依頼するのですから、信頼のおける税理士に出会うためのポイントを詳しく押さえておきましょう。

豊富な知識と経験があるか

個人事業主が税理士を選ぶ際には、必ず得意分野を確認しておきましょう。どんなに有能な税理士でも大きな法人を専門にしていたり、対応している業種に全く関連性がなかったりすれば、あなたのビジネスに必要な対応ができません。

ウェブサイトや面談などから力を入れている分野や過去の実績を把握し、あなたのビジネス分野における知識と経験があることを確認しておきましょう。

スピーディで誠意のある対応をしているか

税理士に依頼することになった場合は、その担当税理士への信頼が必要不可欠です。

契約前でも問い合わせや見積もり依頼の対応を見れば、信頼が築けるかどうかある程度予測できます。

対応に時間がかかりすぎたり、誠意が感じられなかったりした場合は、実際に依頼しても不都合が生じることがほとんどです。

最初の対応を通じて、スピーディで誠意のある対応をしてくれるかをよく見極めておきましょう。

料金システムが明確か

個人事業主にとって税理士費用は大きな出費になります。

料金だけを見て安い高いと判断するのではなく、費用の中に含まれている項目をきちんと確認して、自分のニーズにあっているかを判断しましょう。

月々の顧問料が高いと感じても、そこに必要な記帳代行料や十分な頻度の面談が含まれていたら、総合的に見るとリーズナブルという場合もあります。

税理士費用の詳細について疑問点があれば、事前に必ず確認して明確にしておきましょう。

信頼できる税理士を探す

不満があれば税理士の変更も考えよう

慎重に選んだ税理士でも、実際に業務上のやりとりをしていく中で、サービスに不満を感じる場面も出てきます。

個人事業主自身と税理士の関係にも相性があるので、スムーズな対応が期待できないと感じたり、料金と業務内容が見合っていないと感じたりしたら税理士を変更することも考えましょう。

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