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賞与にかかる所得税の基礎から計算方法まで解説

最終更新日: 2021年06月08日

賞与にも毎月の給与と同様に所得税がかかります。従業員には源泉徴収をしてから支払いますが、具体的にはどのように計算するのかご存知でしょうか。また、賞与にかかる所得税は前月の給与によっても計算方法が変わることがあります。この記事ではさまざまなケースにおける賞与の所得税計算や支払届の作成について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

 
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賞与について

賞与の所得税を計算する前に、そもそも賞与とは何なのかをもう一度確認しておきましょう。賞与には所得税だけでなく社会保険料もかかりますが、所得税と社会保険では賞与の定義が異なるため、注意が必要です。

賞与とは

賞与とは、定期的に支給する給与とは異なり、基本的には不定期に支給する報酬を指すことが一般的です。ボーナスや夏期手当、年末手当と呼ぶこともあります。例えば以下のものは賞与と分類できるでしょう。

  • 企業業績が好調だったため利益の一部を従業員に支給したもの
  • 支給額や支給基準を定めずに支給するもの
  • 就業規則などに支給時期や計算方法などを定めているもの
  • 従業員や役員の業績に連動して支払われる給与

賞与についての規定を就業規則などで定めている場合は、定められている時期に定められている計算方法に基づいて支給します。また従業員の業績に連動して賞与を支給する場合も、就業規則などで計算方法を決めておく必要があるでしょう。賞与についての規定を定めていない場合は、賞与を支払わなくても問題はありません。

なお社会保険(健康保険と厚生年金保険)においては、支給が年3回以下のものを賞与としており、年4回以上になると賞与ではなく給与として扱います。しかし、雇用保険においては賞与と給与の区別はなく、給与に含めて保険料を算出します。

給与にかかる所得税と賞与にかかる所得税の違い

給与にかかる所得税と賞与にかかる所得税の計算方法は違うため、注意が必要です。定期的な給与にかかる所得税は「源泉徴収税額表」に基づいて算出しますが、賞与にかかる所得税に関しては「賞与の源泉徴収税額表」に基づき算出します。

また、通常の給与とは異なり、賞与の所得税額は実際に支給した賞与額だけでなく前月の給与なども加味して計算しなければいけません。詳しい計算方法については次の見出しで説明していきます。

賞与にかかる所得税の計算方法と計算例

計算をしている様子から、賞与所得の計算について解説していくことがわかる画像
賞与にかかる所得税の計算方法

賞与の所得税は、3つのステップから求めることができます。

  1. 前月の給与から社会保険料を引く
  2. 賞与から社会保険料を差し引く
  3. 扶養家族の人数から税率を求める

それぞれの計算を詳しく解説していきます。

前月の給与から社会保険料を引く

まず、先月の給与から社会保険料を差し引きます。給与とは、基本給に住宅手当や交通費なども含めた総支給額を指します。

賞与から社会保険料を差し引く

次に、賞与から社会保険料を差し引きます。

扶養家族の人数から税率を求める

賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)
賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)

次に、前月の給与から給与にかかる社会保険料を差し引いた金額と扶養家族の人数から、賞与にかかる所得税の税率を求めます。

例えば、給与が210,000円で社会保険料額が30,000円、扶養家族が1人の場合は課税対象額が18万円になり、上記の表の扶養親族が1人の列の「9万4,000円以上24万3,000円未満」に当てはまります。その左側の「賞与の金額に乗ずべき率」の列に記載された率が賞与の所得税率と分かり、この場合の税率は2.042%です。

賞与にかかる所得税の計算例

最後に賞与から社会保険料を差し引いた額に、上記で求めた税率を掛けて所得税額を算出します。以下の例で計算します。

前月に給与収入があり、扶養家族が1人
前月の給与 30万円
給与にかかる社会保険料等 4万円
賞与 50万円
賞与にかかる社会保険料等 8万円

前月の給与から給与にかかる社会保険料を差し引く

30万円 – 4万円 = 26万円

賞与から賞与にかかる社会保険料を差し引く

50万円 – 8万円 = 42万円

扶養家族の人数から税率を求める

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を見ると、扶養家族が1人で前月の給与から給与にかかる社会保険料を引いた額が26万円の場合は、賞与の所得税率は4.084%です。

賞与にかかる所得税額を求める

賞与から社会保険料を差し引いた額である42万円に税率4.084%を掛けると、賞与にかかる所得税額は17,152円です。

42万円×4.084%=17152.8=17,152円

なお退職後に賞与を支給する場合、在職者に支給する賞与と同性質のものであれば、上記で紹介した方法で所得税を計算して源泉徴収して支払います。しかし、退職したことを理由に支払う賞与であれば、退職手当の扱いとなり計算方法も異なるため注意しましょう。

特別な計算をするケース

特別な計算をするケース
特別な計算をするケース

一般的な場合における賞与の所得税額の求め方を紹介しました。前月の給与と社会保険料、扶養家族の人数が分かれば、賞与の所得税額が求められます。しかし、「前月に給与がない場合」と「前月の給与の10倍以上の賞与を支払う場合」は、一般的な求め方では所得税額を求めることができません。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

前月に給与がない場合の計算方法

前月に給与を支給していない場合には、賞与額と賞与にかかる社会保険料額を元に所得税の計算を行います。ただし、賞与の対象となる期間が半年以下か半年を超えるかで計算式が異なる点に注意しましょう。

  1. (賞与 – 社会保険料)÷ 6(半年を超える場合は12)
  2. (1)の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめる
  3. (2)× 6(半年を超える場合は12)

賞与の対象となる期間が半年以下であるときは、賞与から賞与にかかる社会保険料額を差し引いて6で割り、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から所得税額を求めて6倍した数字が源泉徴収する所得税額となります。

一方、賞与の対象となる期間が半年を超えるときは、賞与から賞与にかかる社会保険料額を差し引いて12で割り、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から所得税額を求めて12倍した数字が源泉徴収する所得税額です。

前月に給与がない場合の計算例

前月に収入がなく、扶養家族がいない
前月の給与 0円
賞与 100万円
賞与にかかる社会保険料等 16万円

以下の例で賞与にかかる所得税額を計算してみましょう。ただし、賞与の対象となる期間が半年以下とします。

まず賞与から賞与にかかる社会保険料等を差し引き、6で割ります。

(100万円 – 16万円)÷ 6 = 14万円

「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を見ると、扶養家族が2人の場合、賞与から賞与にかかる社会保険料を差し引いて6で割った金額が14万円のときの所得税額は2,680円であることが分かります。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

最後に求めた税額を6倍にして賞与にかかる所得税額を求めます。この場合は16,080円です。もし1円未満の端数が出たときは切り捨てます。

2,680円 × 6 = 16,080円

前月給与の10倍以上賞与を支払う場合の計算方法

前月給与の10倍以上の高い賞与を支払う場合は、賞与と賞与にかかる社会保険料、前月の給与、前月の給与と扶養家族の人数で求める源泉徴収額から賞与の所得税額を求めます。ただし、前月給与なしの場合と同じく、賞与の対象となる期間によって計算方法が異なる点に注意が必要です。

  1. (賞与 – 社会保険料等)÷ 6(賞与の対象となる期間が半年を超える場合は12)
  2. (1)+(前月の給与 – 社会保険料)
  3. (2)の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめる
  4. (3) – 前月の給与に対する源泉徴収税額(月額表を確認)
  5. (4)× 6(賞与の対象となる期間が半年を超える場合は12)

賞与の対象となる期間が半年以下の場合には、賞与から賞与にかかる社会保険料額を差し引いて6で割ります。その次に、前月の給与から給与にかかる社会保険料を差し引いて求めた金額を加え、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から源泉徴収税税額を求めます。前月の給与から給与にかかる社会保険料を差し引いた金額にかかる源泉徴収税額との差を6倍した金額が、実際に源泉徴収する所得税額です。

前月給与の10倍以上賞与を支払う場合の計算例

以下の例で賞与にかかる所得税額を計算してみましょう。

前月給与の10倍以上の賞与があり、扶養家族が2人
前月の給与 30万円
給与にかかる社会保険料等 2万円
賞与 300万円
賞与にかかる社会保険料等 30万円

まず賞与から賞与にかかる社会保険料等を引き、6で割ります。

(300万円 – 30万円)÷ 6 = 45万円

求めた金額に、前月の給与から給与にかかる社会保険料等を差し引いた金額を足します。

45万円 +(30万円 – 2万円)= 73万円

「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から、扶養家族の人数が2人で縦軸が73万円の欄を見ると税額は58,310円であることが分かります。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

前月の給与から給与にかかる社会保険料を除いた金額(30万円 – 2万円 = 28万円)に対する源泉徴収額は、扶養家族の人数が2人の場合は以下の表より4,370円です。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

それぞれの源泉徴収額を差し引き、6倍して賞与にかかる所得税額を求めます。この場合は323,640円です。もし1円未満の端数が出たときは切り捨てます。

(58,310円 – 4,370円)× 6 = 323,640円

賞与を支給した場合に必要な事務手続き

賞与を支給した際には、いくつかの事務手続きが必要です。まず賞与額と社会保険料、所得税額などを記載した「賞与明細書」を作成して従業員に渡さなくてはいけません。次に、「被保険者賞与支払届」と「被保険者賞与支払届総括表」を作成して年金事務所に提出します。

被保険者賞与支払届の作成

被保険者賞与支払届
被保険者賞与支払届

被保険者賞与支払届は賞与支給予定の前月までに年金事務所から送付されます。すでに会社名や従業員名などの基本情報が印字されていますが、間違いがないか確認しておきましょう。必要に応じて訂正し、従業員一人ひとりの給与支払額を記入します。このとき、1,000円未満は切り捨てです。現物支給に関しても金額に換算して記入しましょう。

被保険者賞与支払届総括表の作成

被保険者賞与支払届総括表
被保険者賞与支払届総括表

次に従業員すべての賞与支給をまとめた「被保険者賞与支払届総括表」を作成します。この表は賞与支払月までに年金事務所より送付されますので、万が一、予定していた月に賞与支給をしない場合も提出しましょう。

所得税の納付

賞与に関する所得税は、賞与支給の翌月10日までに行います。前月の給与にかかる所得税額と合算して納付することも可能です。なお、納期の特例申請書を提出している場合はこの限りではありません。

まとめ

賞与は、所得税額と社会保険料額を源泉徴収した状態で支給します。また賞与を支給してから5日以内に、被保険者賞与支払届などを年金事務所に提出しなくてはいけません。そのため、所得税額や社会保険料額の計算は速やかに実施することが求められます。Excelシートやアプリを使って所得税を計算する方法もありますが、計算には手間と時間がかかりますので、税理士事務所に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。

監修税理士のコメント

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

賞与は、通常の給与から差し引く社会保険料とは違って、標準報酬月額を使いません。所得税は、給与とは別に賞与に対する源泉徴収税額の表を使います。賞与の計算は、通常の給与計算とは異なり、分かりにくい点も多いと思います。ぜひ税理士などの専門家にご相談ください。
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この記事を監修した税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

仙台市宮城野区岩切に事務所を構える税理士の菅野歩と申します。日々の経理業務、会計・税務業務など経営者の皆様のニーズに合わせた適切なサポートを全力で行い、わかりやすくご説明させていただきます。
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