「賞与の手取り金額がなんだか少ない気がする…」などの疑問をお持ちではないでしょうか。賞与から天引きされる所得税は前月の給与をもとにして、自分でも計算可能です。
この記事では賞与にかかる所得税の計算方法をわかりやすく解説します。賞与の明細と照らし合わせながら、所得税額が正しいかどうかチェックしてみましょう。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
賞与の所得税は前月の給与をもとに計算する
賞与にかかる所得税は賞与が支給された前月の給与をもとにして、以下の4つのステップで計算できます。
【賞与にかかる所得税の計算方法】
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ここでいう賞与とは、毎月の給与と別で支給されるものを指します。例えばボーナスはもちろん、夏期手当や年末手当などもあてはまります。
賞与が支給された前月の給与額から社会保険料等を引いて基準金額を求める
まずは賞与が支給された前月の給与額から社会保険料等を引いて、所得税がかかる基準金額を求めましょう。賞与にかかる所得税の税率はここで計算した金額をもとに決定します。
住宅手当や交通費なども含めた前月給与の総支給額から、健康保険や厚生年金、雇用保険などの社会保険料を差し引きましょう。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って税率を求める
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って、賞与にかかる所得税の税率を求めていきます。先ほど計算した基準金額と扶養親族等の数を照らし合わせて、税率を算出しましょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している場合は「甲欄」を、提出していない場合は「乙欄」を参照してください。
【例:前月給与が30万円で社会保険料等の額が4万円、扶養家族が1人の場合】
このケースでは基準金額が26万円になり「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の扶養親族が1人の列の「24万3,000円以上28万2,000円未満」にあてはまります。 左側の「賞与の金額に乗ずべき率」の列に記載された率が賞与にかかる所得税率で、この場合の税率は4.084%です。 |
賞与額から社会保険料等を引いて課税対象額を求める
賞与額から社会保険料等を引いて課税対象額を求めます。なお、課税対象額は賞与の明細に記載されていることもあります。明細に記載があれば、その金額をそのまま使用してかまいません。
「課税対象額×税率」の計算式で所得税額を求める
これまでに算出した課税対象額と税率を使って、源泉徴収される所得税額を求めます。
【所得税額の計算式】
所得税額=課税対象額×税率 |
なお、所得税額の小数点以下は切り捨てです。
賞与が80万円で前月の給与が30万円だった場合の計算例
よりイメージが湧きやすくなるように、具体例に沿って計算方法を解説します。
例:食品メーカーの営業職Aさん (30歳)
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まずは「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から賞与にかかる所得税の税率を算出します。5月の給与から社会保険料等を差し引いた金額の「26万円」と扶養家族等の人数1人を表にあてはめると、税率は4.084%だとわかります。
6月の賞与から社会保険料等を差し引いた課税対象額の「70万円」に4.084%の税率をかけ合わせた「28,588円」が、賞与から源泉徴収される所得税額です。
前月の給与がない場合はどうする?特別な計算をするケース
前月の給与がない場合や、賞与額が前月給与の10倍以上の場合、これまでの計算方法では所得税額を求めることができません。
これらのケースにあてはまる場合は「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使って税率を求め、賞与にかかる所得税を計算します。
前月の給与がない場合の計算方法
前月の給与がない場合、賞与額と賞与にかかる社会保険料額を元に所得税の計算を行います。
【計算の手順】
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賞与の対象となる期間が半年以下であるときは、賞与から賞与にかかる社会保険料額を差し引いて6で割り、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から所得税額を求めて6倍した数字が源泉徴収される所得税額となります。
一方、賞与の対象となる期間が半年を超えるときは、賞与から賞与にかかる社会保険料額を差し引いて12で割り、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から所得税額を求めて12倍した数字が源泉徴収される所得税額です。
前月の給与がない場合の計算例
前月に収入がなく、扶養家族がいない | |
前月の給与 | 0円 |
賞与 | 100万円 |
賞与にかかる社会保険料等 | 16万円 |
上記の例で賞与にかかる所得税額を計算してみましょう。ただし、賞与の対象となる期間が半年以下とします。
まず賞与から賞与にかかる社会保険料等を差し引き、6で割ります。
(100万円-16万円)÷6=14万円 |
「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を見ると、扶養家族が2人の場合、賞与から賞与にかかる社会保険料を差し引いて6で割った金額が14万円のときの所得税額は2,680円であることがわかります。
求めた税額を6倍にして賞与にかかる所得税額を求めます。
2,680円×6=16,080円 |
今回のケースで賞与にかかる所得税は「16,080円」であることがわかりました。もし1円未満の端数が出たときは切り捨てます。
賞与額が前月給与の10倍以上の場合の計算方法
賞与額が前月の給与の10倍以上の場合は、賞与と賞与にかかる社会保険料、前月の給与、前月の給与と扶養家族の人数で求める源泉徴収額から賞与の所得税額を求めます。
【計算の手順】
※賞与の対象期間が半年を超える場合は6を12にして計算する |
賞与にかかる所得税の税率は、月給5か月分の賞与が支払われる場合を想定して設定されています。賞与が前月の給与の10倍以上支払われると、控除される税額が過剰に少なくなってしまうため、上記の計算方法で調整されます。
賞与額が前月給与の10倍以上の場合の計算例
以下の例で賞与にかかる所得税額を計算してみましょう。
前月給与の10倍以上の賞与があり、扶養家族が2人 | |
前月の給与 | 30万円 |
給与にかかる社会保険料等 | 2万円 |
賞与 | 300万円 |
賞与にかかる社会保険料等 | 30万円 |
まず賞与から賞与にかかる社会保険料等を引き、6で割ります。
(300万円-30万円)÷6=45万円 |
求めた金額に、前月の給与から給与にかかる社会保険料等を差し引いた金額を足します。
45万円+(30万円-2万円)=73万円 |
「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から、扶養家族の人数が2人で縦軸が73万円の欄を見ると税額は58,310円であることがわかります。
前月の給与から給与にかかる社会保険料を除いた金額(30万円 – 2万円 = 28万円)に対する源泉徴収額は、扶養家族の人数が2人の場合は以下の表より4,370円です。
それぞれの源泉徴収額を差し引き、6倍して賞与にかかる所得税額を求めます。
(58,310円-4,370円)×6=323,640円 |
今回のケースで賞与にかかる所得税は「323,640円」です。もし1円未満の端数が出たときは切り捨てます。
賞与の手取りが少ないと感じたら自分でチェックしてみよう
賞与から源泉徴収で天引きされる所得税は前月の給与額に応じて決定するなど、給与とは異なる計算方法を取ります。
基本的に間違いはないはずですが「所得税が高いかもしれない…?」などと疑問に感じた際は、ご自身で確認してみるとよいでしょう。
なお、賞与や給与の支給時に差し引かれた源泉所得税額と本来の税額に過不足がある場合は、年末調整によって精算されます。
年に数回の大きな収入となる賞与。金額に納得できれば、今後の仕事のモチベーションにも大きくつながるのではないでしょうか。
監修税理士からのコメント
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