「税務調査に備えて何か税理士に相談しようかな」
「急に税務調査の連絡が来たけど、頼れる税理士がいない」
「税理士の立会いにいくら払えばいいの?」
そんな疑問のお持ちの方に、税務調査の流れから税理士に立会いをしてもらうメリット、さらに報酬相場までをまとめてご紹介します。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
一般的な税務調査の流れ
税務調査とは、納税者から提出された帳簿書類などに記載されている納税額の申告内容にミスや問題がないか、詳細に調査する制度です。主に国税庁が管轄する税務署によって行われ、調査の結果、誤りがあった場合や申告していなかったことが判明した場合、金額の是正が求められます。
税務調査は国税の法律に基づいて行なわれ、税務署の調査官は納税者に質問をしたり、帳簿書類などを調査したり、帳簿書類の提示や提出を求めたりする権限が与えられますが、どんな流れで税務調査が行われるのでしょうか。
事前に通知がくる
税務調査は、原則として納税者の同意を得て行う「任意調査」と脱税の疑いがある納税者に対し、裁判官による許可状を得て強制的に行う「強制調査」の2つのケースがあります。通常は悪質な脱税などの疑いがない限り、税務署から電話で事前通知をしたうえで調査が実施され、税務署と対象者との間で日程調整を行った上で調査の日付が決まります。
通知後、やむを得ない事情が生じたなど、筋の通った理由がある場合、調査日時の変更を相談できますが、正当な理由がなく調査を拒否すると罰則の対象になるため注意が必要です。また事前に通知することなく税務調査が行われる場合もあり、税理士に相談するなど、冷静に対応するようにしましょう。
調査当日の進め方
税務調査当日、開始時間にあわせて税務署の調査官が訪ねてきます。調査の対象者が事業内容や取引の流れなどを説明し、経理担当者がいれば、細かいお金の流れについて質問に答えていく流れです。必要に応じて立会いの税理士のサポートやアドバイスを受けながら調査を進めます。
税務書類、帳簿のチェック
税務調査で必ず行われるのが、税務書類や帳簿の内容の確認です。売上に計上漏れがないか、経費に不自然な支出がないかなど、確定申告書と領収書、帳簿を見て相違がないかチェックします。また調査官による質問が行われ、簡単な質問から不適切な内容が指摘されるケースもあるので、慎重に回答しましょう。
税務署からの指摘
調査が終わると、税務調査官から矛盾や不備と思われる点を指摘されます。税理士が立ち会っていれば、依頼者を守るため必要に応じて法律に基づいた説明や指摘に対して反論してもらえるでしょう。
調査の結果次第では、修正申告も
調査の結果は、通常1週間から3カ月程度で調査の対象者に知らされ、問題がなければ、「申告是認」としてそのまま調査は終了します。ただし、書類の不備や不適切な会計処理などが発覚した場合、修正申告の対応が必要です。また悪質なケースだと罰則を課せられる可能性があります。税務署から「修正申告」を受けた場合、税理士に相談して正しい金額を申告しましょう。
押さえたいポイント:
- 税務調査とは、税務署が納税者に対して申告内容にミスや問題がないか、詳細に調査する制度
- 税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類あり、原則として「任意調査」で行うケースが多い。
- 調査当日は税務署の調査官によるヒアリングや書類、帳簿の確認などが行われ、問題があれば修正申告等の対応が求められることがある。
税理士に税務調査の立会いをしてもらうメリット
税務調査において、調査の対象者は日頃の取引から帳簿のつけ方まで税務調査官に説明を求められます。なんら問題なく答えられるなら、税理士の立会いは必要ないかもしれません。
しかし外部に記帳代行をお願いしていたり、税法に詳しくなかったりすると伝え方があやふやになり、調査官へ事情がうまく伝わらないことがあります。場合によっては、コミュニケーションがうまく取れないことが原因で、修正申告をしなければならないケースもあるでしょう。
そこで調査官と対等に話を伝えられる税理士の手を借りるのがおすすめです。ここでは税理士に税務調査の立会いをしてもらうメリットについて紹介します。
当日の調査に備えて事前準備ができる
税務調査の対象期間は通常3年ですが、場合によっては最長7年分の調査が行われる可能性もあります。税務調査対策を事前に税理士に依頼することで、税務書類や帳簿などを見て、どの部分が調査対象になるのかを想定し、アドバイスしてもらえるでしょう。調査官からの質問に対する回答も練習できるため、冷静に対応できます。
不要な追徴課税が避けられる
当日の税務調査の立会いを税理士に依頼することで不要な追徴課税が避けられる可能性があります。たとえば、調査官から軽費の詳細について問われた時、ただしく計上していても、曖昧な回答をすると、経費の計上が否認されてしまい、最悪の場合、本来納める所得税とあわせて追加で重加算税や延滞税などを納めなければなりません。
そこで税理士が税務調査に立ち会い、税法の専門家の立場から根拠に基づいて経費や書類の内容について説明することで経費計上や申告内容が否認される可能性が軽減できます。
一任して税務調査官とのやり取りができる
顧問税理士がいる場合は、税務調査の前に税理士に連絡が入ります。連絡後の日程調整や調査当日の税務調査官とのやり取りなどは税理士自身が行うため、調査対象者の負担は大きく軽減され、「対応にかかる時間」だけでなく、「心理的な負担」も軽減できます。
調査官の発言の妥当性を判断してもらえる
調査官も人間です。いくら税務のプロでも、間違った発言や解釈をすることがあります。そして、立ち会ってくれる税理士がいなければ、調査官の発言や解釈に妥当性があるかが検討できません。そのまま追徴課税を課せられる恐れがあります。
一方で立会い税理士がいれば、妥当性のない税務の発言や解釈は、退けることができます。税務署職員による「誤った指導」の可能性がないとは言い切れません。自分の会社の身を守るためにも、立会い税理士は必要でしょう
押さえたいポイント:
税理士に税務調査の立会いを依頼するメリットは主に4つです。
- 当日の調査に備えて事前準備ができる
- 不要な追徴課税が避けられる
- 税務調査官とのやり取りを任せられる
- 調査官から指摘された内容があっているか判断してもらえる
税務調査の立会いをしてもらう報酬相場は?
税理士とのやり取りがない人にとっては、報酬相場と言われても想像がつかないでしょう。税理士の報酬相場は、依頼内容によって異なります。
報酬額については、顧問税理士であろうと立会いの都度依頼する税理士であろうと変わらない場合もあれば、顧問契約をしていると安くなる場合もありますが、ここでは、税務調査の事前準備にかかる費用や当日の調査の立会いにかかる費用、さらに修正申告を税理士に依頼する際にかかる費用の相場について詳しく解説します。
事前準備にかかる費用は1日4万円~6万円
税理士に対して税務調査の事前準備を依頼した場合、1日あたりの費用相場は4万円~6万円です。税理士に直接現場まで足を運んでもらうケースもあり、必要に応じて交通費や宿泊費も負担しなければなりません。内容や企業規模次第では、準備に数日かかることもあり、費用がかさみますので、注意が必要です。
税務調査の立会いにかかる費用は1日3万円~5万円
税務調査の立会い料金は、1日当たり3〜5万円です。日当制を採用している税理士事務所が多く、立会い料金に含まれるサービスの内容は、調査官への説明・交渉のみです。しかし、税理士事務所によっては、事前の提出資料をまとめた目録の作成なども立会い料金に含まれていることがあります。
税務調査の結果として修正申告が必要になった場合は、別途10万円〜20万円の料金が請求されます。立会い料金やそこに含まれるサービスについては、ばらつきがあるので複数の税理士事務所から見積もりを取るのがオススメです。
修正申告にかかる費用は5万円~20万円
税務調査の結果、税務署から修正申告を行うように指導を受け、その手続きの代行業務を税理士に依頼すると、5万円〜20万円の費用がかかります。納めるべき税金よりも少なく納税していた場合は修正申告を、多く納税していた場合は還付申請を行いましょう。
請求金額が5万円〜20万円と相場にかなり幅があるのは、修正に必要な金額によって費用が大きく変わるからです。修正の範囲が小さければ数万円で収まりますが、大幅な修正を求める場合、数十万円単位の費用がかかることもあります。
年間売上高との関係は
税務調査対策にかかる費用相場は、年間売上高によって大きく変動します。年間の売上高が高くなればなるほど、事前準備や税務調査でかかる日数が増えるため、高額な費用がかかるでしょう。例えば、年間売上高が3,000万円で修正申告が少ない企業と年間売上高が8,000万円で修正が多い企業と比較すると、下記の表の通りになります。
売上高 | 事前準備費用 | 税務調査の立会い費用 | 修正申告費 | 合計 |
---|---|---|---|---|
3,000万円 | 4万円 | 3万円×2日分 | 5万円 | 15万円 |
8,000万円 | 6万円×2日分 | 5万円×2日分 | 15万円 | 37万円 |
押さえたいポイント:
- 事前準備にかかる費用は1日4万円~6万円
- 税務調査の立会いにかかる費用は1日3万円~5万円
- 修正申告にかかる費用は5万円~20万円
- 企業、個人事業主の年間売上高によって税理士に支払う費用が変わってくる
顧問税理士に税務調査の立会いなどを依頼する場合
では顧問税理士を雇っている場合、税務調査の事前準備や当日の立会い費用、修正申告にかかる費用は変わるのでしょうか。
顧問税理士の場合だと変わるの?
税務調査の事前準備や立会い、修正申告を依頼した場合、顧問税理士も臨時で依頼をした税理士でも同等の費用を支払わなければなりません。顧問税理士とは顧問契約を結びますが、その顧問契約には税務調査の事前準備や立会い、修正申告といった税務調査対応は含まれていないことがほとんどです。
普段から顧問料を支払っていることを考慮すれば、顧問税理士の方が全体の料金が高くつくかもしれません。しかし、普段から税務調査でチェックされるような書類は、顧問税理士が適切な処理をしているので、税務調査が来ても慌てる必要がありません。
顧問税理士をつけるメリット
税務調査対応にかかる費用が、顧問税理士も臨時で依頼した税理士も変わらないなら、顧問契約なんて結ばなくてもいいのではないのか?と思った人もいることでしょう。
料金だけで比較するとあなたの考えた通りです。しかし、顧問税理士には、臨時で依頼した税理士にない強みがあります。それが以下の3つです。
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上の3つが揃っていると、税務調査でも追徴課税を必要以上に課せられにくいです。
顧問税理士を契約しておくと、上の強み全てを網羅できます。強みを手に入れられる意味でも、顧問税理士と契約を結ぶメリットは大きいです。
また、顧問税理士がいない場合は日々の会計処理が適切に行われないまま申告されていることがあります。既に誤った処理をしてしまったものを税務調査で指摘されたら、追徴を避けることは難しいです。
税務調査に税理士以外は立ち会える?
「税務調査で税理士に依頼する日当が3万円〜5万円は高い。記帳代行をしてもらっている税理士資格のない人に税務調査に立ち会ってもらいたい」と考えている経営者もいることでしょう。
実際に、記帳した内容を話せる人は必要なので、実務に関わりのある人なら、税理士以外でも立会いは許可されます。より詳しく言うと、税務調査に立ち会う第三者に制限はないため、立会いに誰が同席しても問題ありません。
しかし、交渉(主張)については、税理士の独占業務に該当するので、税理士資格のない人はできません。税理士資格のない人が主張若しくは陳述した場合は、税理士法に規定されている”税務代理”と呼ばれる業務に違反し、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。(税理士法第52条)
税理士が同席している場合は、納税者本人が調査に立ち会う必要がありません。時間を効率的に使うといった意味でも、税務調査が来た場合は迷わず税理士にも同席してもらうことをオススメします。
押さえたいポイント:
- 顧問税理士に依頼しても新規で担当する税理士に依頼する金額に差異はなし
- 日頃から会社や事業の実態を把握しておくためにも顧問税理士をつけておくといい
- 税理士資格を持っていない方でも税務調査の立会いは可能だが、交渉は法律で禁止
税務調査に強い税理士を選ぶポイント
税務調査の事前準備や当日の立会いなどを依頼しようとしても、どの税理士もその領域を得意としているとは限りません。スムーズに対応してもらうためには、税務調査に強い税理士を見定めることが大切です。
豊富な経験を持っているか
税務調査の対応を依頼する際は、国税庁出身の税理士や、過去に何度も税務調査に対応した実績を持つ税理士に依頼するといいでしょう。国税庁の「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、令和4事務年度に法人税の実地調査が行われた件数は6万2,000件となっているため、法人税の税務調査を対応した経験を持つ税理士も少なくはありません。できれば、契約をする前に税務調査対応した経験の有無について聞いてみましょう。
顧客の立場に立って対応してもらえるか
税務調査の多くは納税者による「任意調査」で行われますが、担当の調査官によっては威圧的な態度をとったり、調査に関係のないプライベートに関する資料の提示を求めてくるケースがあります。そのような調査官と対峙する際に「顧客の立場に立って、意見や反論してもらえる税理士」がいれば、心強いでしょう。
調査官への交渉力があるか
税務調査では、調査官と納税者との間で事実の認定と税法の解釈を照らし合わせ、見解が異なる点についてどのように着地させるかがポイントになります。もしも調査官からの質問に対して正確に答えられなかったり、納得できる回答ができなければ、調査官のイメージを悪くするだけです。
税務調査に強い税理士に依頼をすれば、調査官から指摘された点に対して専門知識に基づいて説明するため、論理的な交渉が期待できます。
押さえたいポイント:
税務調査に強い税理士を選ぶポイント
- 税務調査で豊富な経験を持っている方
- 顧客の立場で対応できる方
- 税務調査官と交渉できる方
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監修税理士のコメント
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
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