私たちが普段目にする機会が多い、消費税や所得税や住民税は数多くある税金の種類のほんの一部にすぎません。「自分たちが払わない税金は関係ない」と思っている人も多いのではないでしょうか?
確かに一般の個人があまり関係ない税金が多いのも事実ですが、税金を払っているという実感がないだけで、気づかない間に負担している税金も数多く存在します。今回はそんな税金の種類について解説していきます。
この記事を監修した税理士
EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木
税金の種類
税金の種類は50種類ほどあります。税金には直接税と間接税があり、直接税は税を払っているという実感があることが多いですが、間接税は間接的に税を払うので普段生活していても気づかない税金が数多くあります。
税金の種類と、納付先、納め方の違いをまずは解説していきます。
税金の種類は50種類!
税金の種類は約50種類存在します。そして、税金は国に納める国税と地方自治体に納める地方税、さらに直接税を負担する直接税と、間接的に税を納めている間接税に分かれるのです。
税金の種類は非常に豊富ですが、一覧にすると以下のようになります。
それでは国税と地方税の違い、直接税と間接税の違いはどのようなものなのでしょうか?
国税と地方税の違い
国税と地方税の違いは「どこへ納めるのか」という違いです。
国税は国へ納める税金です。そのため所轄は税務署になります。一方、地方税は地方自治体へ納める税金です。所轄は住民票や本店所在地のある市町村役場や都道府県になります。
ちなみに住民税などの納税証明書が市区町村役場、国税の納税証明書が税務署に行かなければ取れないのは、それぞれ証明している税金の種類に地方税と国税という違いがあるためです。
直接税と間接税の違い
直接税と間接税の違いは税金の徴収方法です。
直接税は納税者が直接国や地方自治体へ納める税金です。そのため自宅や会社に届く納付書などで支払うことが一般的となっています。例えば自動車税は毎年5月になると納付書が自宅へ届きます。これが直接税の代表的な形です。
一方、間接税は間接的に納税者が負担している税金です。代表的な間接税として消費税があげられます。私たちは普段の買い物で消費税を納めていますが、買い物の都度国へ消費税を納付しているわけではありません。
税金の種類は約50種類ありますが、ここでは50種類の税金のうち主な税金を国税と地方税、直接税と間接税に分けて詳しく解説していきます。
国税の中で直接税のもの
国へ納める国税の中でも直接税となる主な税金には以下のようなものがあります。
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これらの税金は多くの人が耳にしたことがある税の中でも比較的接する機会が多い税金です。個人が負担しなければならないものもあれば、法人が負担するものもあります。国税の中で直接税である、これらの税金について詳しく見ていきましょう。
所得税
所得税とは個人の所得に対して課税される税金です。
会社員の方は源泉徴収によって毎月の給料やボーナスから所得税が控除されているため、直接税の認識がない人もいます。しかし、本来は確定申告によって直接納めるのが原則で源泉徴収は会社が本人に代わって税金を支払っているものです。
所得税の税率や控除額は課税所得によって変わるので、以下の速算表を参考にしてください。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁 所得税の速算表 |
例えば課税所得が200万円の場合には、所得税は200万円×10%−97,500円=102,500円となります。
相続税
相続税とは人の死亡を原因として移転する財産に対して課税される税金で個人に課されるものです。要するに相続した財産に対して課税される税金が相続税です。相続税には3,000万円+法定相続人の数×600万円という非課税の枠があり、この非課税枠を超えた部分に対して課税がおこなわれます。
なお、2015年に相続税は改正され、現在の非課税枠は改正前より小さくなっています。
以下の表は税率と取得金額に応じた控除額の速算表です。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
例えば3,000万円の財産を相続した場合には、3,000万円×15%−50万円=400万円
参考:相続税|国税庁 |
贈与税
贈与税とは相手からの贈与によって受け取った財産に対して課税される税金で、個人に課せられるものです。相続でも給料報酬でもないのに、誰かから財産を受け取った場合には贈与にあたります。
贈与税の税率や控除額も贈与された財産の金額に応じて以下のようになっています。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
例えば、1,000万円の贈与を受けた場合の贈与税は1,000万円×40%−125万円=275万円になります。1,000万円の相続であれば100万円の税金で済むことに比べれば贈与税がいかに高額になるのかお分かりいただけるのではないでしょうか?
法人税
法人税とは法人の所得に対して課税される税金です。簡単に言えば、法人が利益を出したとき、その利益に対して課税される税金が法人税となります。法人税の税率は原則23.2%です。なお、 資本金1億円以下の中小法人については、原則として年800万円までの所得金額には15%の軽減税率が適用されます。
参考:法人税|国税庁 |
地方法人税
地方法人税とは会社が事業から得た所得に対して課税される税金です。この税金は2014年に新たに創設された税金です。地方法人税の創設によって、これまで地方自治体に納めていた地方税の一部を国に納税するようになりました。地方法人税は国から各自治体に配分する地方交付税の財源になります。
これによって自治体間の税収のばらつきを縮小することができます。企業の数が多い地域ばかりに税収が偏ることを防ぐ効果があるのです。
地方法人税の税率は以下のようになります。
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なお、2016年に地方法人税は税率が改正されており、法人住民税の税率が下がった分だけ地方法人税の税率が上がりました。これによって地域の財源の格差を是正する効果が期待されています。
国税の中で間接税
国税の中で間接税にあたる税金としては以下のようなものがあります。
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国税の中の間接税は個人も法人も負担するものです。間接税が発生する商品を購入すれば関節税を支払っていることになり、商品は個人も法人も購入するものだからです。
国税の中の間接税である、これらの税金についてもう少し詳しく深掘りしていきましょう。
消費税
2019年10月1日から10%に増税されたことも記憶に新しい消費税は代表的な間接税です。消費税は店舗へ顧客が税を支払い、顧客から預かった消費税を事業者が支払いを行うのです。2019年10月の消費増税と同時に導入されたのが軽減税率で、外食と酒類以外の飲食料品は8%のまま消費税率は据え置かれています。
なお、消費税率は国税と地方税に分かれており、10%適用分は7.8%、8%適用分は6.24%が国税として国へ納められます。
酒税
酒税は酒税法に基づいて酒類に対して課税される税金です。酒に分類されるものはアルコール分1%以上の飲料とされています。税率は酒の種類ごとに細かく17段階に分かれており、代表的な酒の税率は1キロリットルあたり以下の通りです。
- ビール:220,000円
- 清酒(清酒、果樹酒など):140,000円
- 蒸留酒類(ウイスキー、焼酎など):200,000円(20度を超えると1度こどに10,000円加算)
これを私たちが普段購入する単位に置き換えると以下のようになります。
- ビール350ml:77円
- 清酒一升:216円
- ウィスキー700ml:301円
200円前後で販売されているビール1本に4割程度の77円の酒税を実は払っていることになります。酒税は消費者が店舗へ支払い、事業者が納税しているので間接税です。
参考:酒税|国税庁 |
揮発油税
揮発油税とは私たちがガソリンを入れる際にガソリン価格に含まれる税金です。揮発油税は国税で、地方税である地方揮発油税という税金と合わせてガソリン税と呼ばれます。
揮発油税の税率は「1キロリットルあたり24,300円」、地方揮発油税の税率は「1キロリットルあたり4,400円」と定められており、合算して1キロリットルあたり28,700円がガソリン税です。つまり、ガソリン1リットルあたり28.7円がガソリン税ということになります。
揮発油税も税金が商品価格に含まれ、事業者が納税するため間接税になります。
たばこ税
たばこ税はたばこに課税される税金です。
たばこ税は
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の4段階に分かれており合計でたばこ1,000本あたり12,244円の税金が課せられます。一箱(20本)につき実に244円もの税金が課せられます。さらに、たばこ本体とたばこ税に消費税が課せられるので、たばこの税負担率は6割以上にもなります。
日常生活の中で最も高負担を強いられているのがたばこと言っても過言ではないでしょう。もちろんたばこ税も間接税です。
関税
関税とは、外国から輸入するものに対して国家が課す税金です。税率は品目ごとに詳細に分かれています。私たちが輸入品を購入する時には関税代金も商品代金に上乗せされ、輸入業者が関税を支払っているので、関税も間接税です。
登録免許税
登録免許税は登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課せられる国税です。
登録免許税は納税義務者と担税者(税を負担する人)が同じであれば直接税になりますが、不動産売買のように納税義務者は新旧所有者共同義務で担税者は一般的には購入者であるような納税義務者と担税者が異なる場合には間接税になります。
簡単に言えば、不動産売買をした場合には購入者が登録免許税分までを売買代金に含めて支払うことがありますが、納税義務者は土地所有者であるため間接税になることもあるということです。
印紙税
印紙税とは課税物件に該当する文書に対して課税される税金です。5万円以上の領収書や銀行からお金を借りる際の金銭消費貸借契約書には収入印紙を貼付して印紙税を支払います。
自分で収入印紙を購入して税を払うこともありますが、例えば銀行でお金を借りる時などは収入印紙代を銀行に支払って銀行が用意している収入を契約書に貼付することもあるのです。
この場合に印紙税は間接税になります。
参考:印紙税|国税庁 |
地方税の中で直接税
地方税の中で直接税にあたる税金としては以下のようなものがあります。
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やはり地方税であっても直接税は毎年納付書が届くものが多いので、税を負担しているという実感があるものばかりではないでしょうか?事業税だけは法人が払うものですが、その他の税金は個人も法人も支払います。
地方税のうち直接税にあたるものについて、詳しく解説していきます。
住民税
住民税は都道府県へ支払う都道府県民税と市区町村へ支払う市町村民税を合わせた税の呼び方です。居住する都道府県と市区町村へ支払う税金です。
住民税には所得に関係なく皆が均等に負担する均等割と、所得に応じて税額が決定する所得割という2つの区分があり、均等割額や利率は地方自治体によって異なります。会社員は給料から源泉徴収されますが、それ以外の人は毎年納付書が届き、納付書によって支払うので直接税です。
自動車税
自動車税は自動車の所有者に対して課せられる都道府県に支払う税金です。また、軽自動車税は市町村へ支払います。税率は排気量と新車登録時期によって異なり自家用普通車の自動車税は以下のようになります。
総排気量 | 新車登録時期別の税額 | |
---|---|---|
令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以降 | |
1リットル以下 | 29,500円 | 25,000円 |
1リットル超~1.5リットル以下 | 34,500円 | 30,500円 |
1.5リットル超~2.0リットル以下 | 39,500円 | 36,000円 |
2.0リットル超~2.5リットル以下 | 45,000円 | 43,500円 |
2.5リットル超~3.0リットル以下 | 51,000円 | 50,000円 |
3.0リットル超~3.5リットル以下 | 58,000円 | 57,000円 |
3.5リットル超~4.0リットル以下 | 66,500円 | 65,500円 |
4.0リットル超~4.5リットル以下 | 76,500円 | 75,500円 |
4.5リットル超~6.0リットル以下 | 88,000円 | 87,000円 |
6.0リットル超 | 111,000円 | 110,000円 |
消費増税対策の一環として、消費増税以降に新車登録した自動車は自動車税は安くなっています。なお、自家用軽自動車は一律10,800円となっています。
自動車税は毎年5月に納付書が届き、その納付書をコンビニや銀行に持参して支払うので直接税です。
参考:自動車税|東京都主税局 |
固定資産税
固定資産税は固定資産に対して課税される地方税です。標準税率は1.4%ですが、税率は地方自治体が決めることも可能です。3年に1回評価換えされる市町村が算出した固定資産評価基準の地価に税率を乗じて固定資産税額は決定します。なお、住宅用地や新築建物の場合には固定資産税が減額される特例があります。
固定資産税も毎年納付書が届き、固定資産所有者が直接支払うので直接税です。
事業税
事業税は事業者の所得に対して都道府県が課税する税金です。所得の額が290万円超で法律で規定された業種だけが課税される税金です。確定申告時に事業税の申告も行うので、事業所自ら申告し自ら支払う直接税になります。
なお、税率は業種によって異なり3%〜5%が適用されます。
地方税の中で間接税
地方税の中で間接税にあたるものとして以下のような税金をあげることができます。
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これらの税金は払っているという実感がない人がほとんどです。ゴルフ場を利用する時に、料金の中に税金が含まれているということは多くの人が知りません。また温泉も同様です。これらの税金は個人も法人も負担します。
払っている実感がないからこそ、税金について知識を深めておきましょう。地方税の中でも間接税にあたるものについて詳しく解説します。
地方消費税
前述したように間接税である消費税には国税部分と地方税部分に分かれています。消費税のうち地方税部分の税率は以下の通りです。
- 10%適用時:2.2%
- 8%(軽減税率適用時):1.76%
私たちが消費税を支払っている時には国にも地方にも税金を支払っていることになるのです。
ゴルフ場利用税
ゴルフ場利用税とは、ゴルフ場を利用した場合に1日当たりの定額で、ゴルフ場の所在する都道府県に支払う税金です。標準税率は1日あたり800円で都道府県ごとに1,200円を上限として任意に設定することができます。
都道府県ごとに税率はまちまちで、例えば埼玉県は300円、北海道は400円などと標準税率よりもかなり安く設定している都道府県も存在します。ゴルフ場利用税は利用者がゴルフ場に支払い、納税義務者はゴルフ場経営者なので、担税者と納税者義務者が異なる間接税です。
入湯税
入湯税とは鉱泉浴場が所在している市町村が入湯客に対して課税する税金です。標準税率は150円となっており、宿泊客や日帰り客などによって税率が異なる市町村もあります。入湯税も施設に利用者が支払い、施設が納税するため間接税となっています。
税金の使い道はどうなっている?
これら、私たちが支払う税金は国や地方自治体によって使われています。自分たちが払った税金がどのように使われているかを知ることは、納税者として有権者としても非常に重要です。ここでは、国が税金を何に使っているのかについて解説していきたいと思います。
1位 社会保障 約33%
税金のうち実に3割は社会保障へ使われています。
社会保障の内訳は以下の通りです。
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このうち、介護、医療費、年金については高齢化に伴い支出の増大が止まりません。増え続ける社会保障費抑制のために、保険料の引き上げや年金支給開始年齢の引き上げなどが行われていますが、それでも税支出の増大には全く歯止めがかかっていません。
2位 国債 約24%
この部分は過去の国債の返済分です。
ただし、政府は過去の国債の返済は新規国債の発行によって行なっているため、実際に国債返済に対する税収入からの支出はそれほど多くはありません。
新規で赤字国債を発行しなくても収支が黒字化する状態を「プライマリーバランスの黒字化」などと言いますが、増え続ける社会保障費によって毎年政府は赤字国債を発行し、借金は増え続けています。
いくら国債の返済に支出は伴わないと言っても日本に対外的な信用がなくなれば金利上昇によって利息負担は増えていきますので、早期に社会保障制度の改革を行い赤字国債の発行にストップをかけるべきでしょう。
3位 地方交付税交付金 約16%
地方自治体は人口や経済規模によって、地方税の税収に大きく偏りがあります。この地方間格差を埋めるために存在するのが地方交付税交付金です。1度国が徴収した税金を地方に交付金として分配することによって、自主財源が少ない地方もある程度の財源を確保することができるようになります。
地方分権推進のため、地方の自主財源を増やし地方交付税交付金を減らすべきだという意見もあります。
4位 公共事業費 約6%
道路や橋や町や災害対策などの公共物の整備を行うための支出です。最近では毎年のように起こる災害のため、公共事業費を増やそうという意見が多く聞かれるようになりました。
監修税理士からのコメント
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この記事を監修した税理士
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