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【税理士監修】税務調査で誤りを指摘されたら「修正申告」?「更正」?

最終更新日: 2024年06月28日

税務調査で申告・納付の誤りを指摘されたら、追加の税金を支払わなければなりません。その際に必要な手続きが「修正申告」または「更正」です。

この記事では、税務調査における修正申告の意味・「修正申告」と「更正」の違い・修正申告の流れ等について解説しています。また、申告・納付の修正の意味では似たような手続きである「訂正申告」「事前の修正申告」そして「更正の請求」についても解説いたします。

この記事を監修した税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

 税務調査における「修正申告」とは

そもそも修正申告とは?

税務調査で申告漏れなどの指摘があった場合、納税者は二つの手続きのうちどちらかで対応をしなければなりません。一つが「修正申告」。納税者が指摘を認めて自ら申告内容を修正する手続きです。

納税者が指摘を認めず「修正申告」をしなかったら、税務署が納税額を決定する「更正」の手続きが行われます。

修正申告とは

修正申告とは、税務調査の指摘に対して、指摘内容を認めて自ら申告内容を修正する手続きを言います。修正申告を行うには、所得税の場合ですと、「申告書B第一表」と「第五表(修正申告書・別表)」からなる「修正申告書」を税務署に提出することになります。

更正とは

更正とは、税務調査の指摘に対して、指摘内容を認めず修正申告をしない場合に、税務署が納税額を決定する手続きを言います。税務署が納税者に対し、指摘内容を織り込んだ税額と、延滞税などの追徴課税額を通知することになります。

修正申告と更正は何が違うの?

更正と修正申告の大きな違いは2点です。手続きを行うのが納税者なのか税務署なのかということと、不服の申し立てができるかどうかということの2点です。

修正申告を行うと不服の申し立てができなくなってしまいます。税務調査官が指摘した事項は、必ずしも正しいとは限りません。経理マンの間では、「見解の相違」や「お土産どれくらいかな」などの表現がよくつかわれます。単年度の1回限りの経理処理についての指摘なら、早めに調査を終わってもらうためにも、認めても構いません。

ただ、会社にとって重要な事項への指摘は、今後の決算や申告・納付に影響します。安易に妥協することなく、きちんと事情を説明して、不服申し立てを行う選択をすべきです。追徴課税の金額については、更正であっても修正申告であっても差はありません。

修正申告または更正処分で課される税金

税務調査後は、少なく申告した税金や支払っていなかった税金は、当然追加で支払わなければなりません。さらに、本税に対して課せられた「延滞税」、場合によっては「加算税」も合わせて納付することになり、その総称が「追徴課税」と呼ばれています。

追徴課税 内容 加算税率
過少申告加算税 期限内に申告・納付したものの、金額が少なかった場合に課される 10~15%
無申告加算税 確定申告の期限内に申告を行わなかった場合に課される 15~20%
重加算税 二重帳簿や書類の改ざんといった悪質な不正行為が認められる場合に課される 35~40%
延滞税 納期限後に納付をする場合のペナルティとして課される 国税庁 延滞税の料率

修正申告後の仕訳の方法

修正申告は確定した決算後に行うため、会計を修正することはありません。すべて法人税の別表上で修正を行います。したがって仕訳はありません。

追加で納付した法人税などがあれば以下の仕訳をします。

法人税等 〇〇 現金預金 〇〇

【税務調査】修正申告・更正処分までの流れ

0.決算・確定申告

確定申告を行い、納税額を申告します。確定申告の期間は、法人と個人とで次のように異なります。

法人:期末から2ヶ月以内

個人:毎年2月~3月(例:2020/2/17~2020/3/16)

1.税務調査

税務署の事前調査により、税務調査を行う会社(法人・個人)を選びます。この際、次のような法人・個人は税務調査の対象となりやすいです。

・過去に税務調査で問題を指摘されたことがある

・前回の税務調査から期間が空いている

・脱税や申告漏れなどの問題が多い業界・業種・職業

・売上や利益の変動が大きい法人・個人

・売上や利益・納税額が多い法人・個人

税務調査では聞き取り調査や帳簿調査などが行われ、一般的に確定申告後の春先か夏の終わりころから秋ごろに実施されます。

2-1.申告是認

税務調査の結果、問題なしと判断されると、ここで調査は終了です。この場合は、税務署から申告内容が適正であるという是認通知が届きます。国税庁によると、申告是認となるのは税務調査の約25%とされています。

2-2.修正申告

税務調査の結果、問題ありと判断されると、申告内容の修正を求められます。問題点を認めて修正を受け入れる場合は、修正申告を行います。

2-3.更正処分

税務調査で申告内容の修正を求められたにも関わらず、問題点を認めず修正も受け入れない場合は更正処分が科せられます。この場合は税務署が強制的に修正を行うとともに、追加分の税金の納付を求められます。この更正処分の内容を受け入れる場合は、税務署が発行する更正通知書記載の納税額を納付すると、税務調査は終了です。反対に更正処分の内容に不満がある場合は、異議申し立てや審査請求を行えます。

3.修正申告の提出 

修正申告を行う場合、修正申告書の提出と追加分の税金を納付します。この段階で税務調査は終了です。修正申告は次のようなケースで行われます。

・納税申告書の納付税額が不足している場合

・納税申告書の欠損金額・還付金額が過大な場合

・納付しなければいけない税金があるのに、納税申告書に納付税額を記載しなかった場合

修正申告書を提出してしまうと、後から修正への異議申立ができなくなってしまうことに注意しましょう。

4.納税 

確定申告での内容に問題があった場合、ペナルティとして追加の税金が科せられます。このときの追加の納税額は、修正申告であっても更正処分であっても変わりません。ペナルティとして課税される税金には、次のようなものがあります。

(1)過少申告加算税

申告はされているが、税額が少なく申告されている場合に適用されます。

(2)無申告加算税

申告がされていない場合に適用されます。

(3)重加算税

隠蔽や仮装などのように、申告内容の問題点が悪質と認められる場合に適用されます。

(4)延滞税

法定納付期限までに完納していない場合に適用されます。

5. 不服を申し立てる場合は?

更正処分を受けてから3ヶ月以内であれば、税務署もしくは国税不服審判所長に納税申告の内容の再審査を依頼できる不服申し立ての権利があります。税務署への再審査の結果にも納得がいなかい場合は、その結果通知後の1ヶ月以内であれば国税不服審判所長に審査請求をすることが可能です。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/07_2.htm#img16
不服申し立ての流れ

【出典】国税庁 「税務署長の処分に不服があるとき」

修正申告の期限と加算税・延滞税

加算税・延滞税の画像
修正申告の期限と加算税・延滞税

「修正申告」も「事前の修正申告」も提出書類など手続きは同じです。「修正確定申告書」と、修正に必要な添付書類を提出します。ここでは、修正申告の手続きを確定申告期間中、確定申告期間後~税務調査実施前、税務調査実施後に分けてご説明します。

1)確定申告期間中

確定申告の提出後から確定申告期限内(個人事業主は3月15日まで、法人は決算日から2ヵ月以内)に内容の不備や計算間違いなどが見つかった場合、新たな内容で確定申告をしなおすことになります。これを訂正申告といいます。

訂正申告には専用の書式や書類はありません。新しい内容に訂正しなおした確定申告書を提出します。その際は訂正前の申告日と間違って申告した税額を余白に記載すること、確定申告書上部に「訂正申告」という朱書きをすること、訂正内容に関わる書類の添付が必要なことに注意しましょう。

申告しなおした税金の納付期限は、修正申告書を提出する日です。

2)確定申告期間後~税務調査実施前

所得税等の修正申告をする場合は、「修正申告書B第一表」と「第五表(修正申告書・別表)」、法人税の場合は法人格などにより該当する修正確定申告書別表一と、その他、修正に関わる別表の明細書等に必要事項を記入して税務署に提出します。

修正申告による税額は、納期限(修正申告書を提出する日)までに納付しなければなりません。税務署からの指摘(更正)を受けるまではいつでもできます。また、不足している税額のほかに延滞税が課されます。

但し、調査通知を受けてから税務調査を受ける当日までに行う修正申告については過少申告加算税が5%になるのでご注意ください。

3)税務調査実施後

提出書類などは、「事前の修正申告」と同じです。不足している税額や延滞税のほかに、その税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い税額を超える場合には15%)の過少申告加算税が課されます。

さらに、当初の申告内容に仮装や隠ぺいがあるなど悪質と判断されると、35%(税額によって40%)の重加算税が課されることになります。

修正申告に期限はあるの?

修正申告を提出できるのは更正処分を受けるまでです。更正処分は法定申告期限から5年以内までが期限なので、それまでに更正処分がなければ実質的に時効だと言えます。

ただ、税務調査で指摘を受けるリスクを考えると、事前の修正申告をしていないと過少申告加算税や延滞税の支払い額が増えます。過少申告が判明した場合は、早めに修正申告を行ったほうが得策です。

【番外編】 税金を納め過ぎていたことに気づいたらどうするの?

確定申告期限後に、申告した税額が本来よりも多いと気づいた場合のリカバリーとして「更正の請求」があります。「更正の請求」を行うことで、払いすぎた税金が還付されるのです。

納める税金が多過ぎた場合や還付される税金が少な過ぎた場合、納税者は、税務署に対して「更正の請求」の手続ができます。納税者は、更正の請求書を税務署長に提出し、払い過ぎの税金があると認めた場合には、減額更正により税金が還付されます。

更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

 税務調査に不安を感じたら税理士にご相談を!

税理士に相談する画像
税務調査に不安を感じたら税理士に相談を!

事業者にとって税務調査はとても不安です。特に、調査官は税金を払ってもらうことを前提に調査しますので、受け答えや交渉はかなりのストレスです。

税務調査は、自分で対応できなくはないですが、税務署に言われるがままに追加の税金を払ってしまうこともよくあります。 税務調査に精通した税理士から適切なアドバイスを受けることで安心して税務調査官と交渉することができます。

 税理士にお願いできること

税理士には税理士だけに独占的に許されている3つの独占業務があります。

①税務の代理 ②税務書類の作成の代理③税務相談と、いずれも税金の申告や納付に直接関連する業務です。税務に関連し、次のようなことをお願いすることができます。

  • 税務に関する適切なアドバイス
  • 効果が期待できる節税案の提案
  • 正確な税務申告
  • 税務調査への対応

顧問税理士をつけるメリットとデメリット

税理士と顧問契約を結んだ場合のメリットやデメリットは次の通りです。

メリット

  1.  独占業務なので安心して税務関連業務をお願いすることができる
  2.  正しい経理業務や税務業務が行えるので、銀行などの信用力が高まる
  3.  経理業務などを委託できるので、本業に専念できる

デメリット

  1.  顧問料の支払いが必要で固定費が増える
  2.  一人の税理士だとカバーする範囲が狭い場合もある

監修税理士のコメント

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

税務調査において否認事項があった場合、調査官は基本的には納税者に修正申告をして追徴の税金を払うよう促してきます。しかし反論できる余地があるにも関わらず、言われるままに修正申告をしてしまったら、その後異議申立てなどができなくなり、その修正が完全に確定することになります。税務調査では安易に妥協せず、ときには交渉しながら調査の落としどころを探っていくことが大切です。また信頼できる顧問税理士を探し、日頃から税務調査がきても安心できる体制を整備しておけば、おそれることなく税務調査に臨めると思います。

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この記事を監修した税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

高崎文秀(たかさきふみひで)文京区水道橋駅近くで、低価格で品質の高いサービスをご提供する税理士事務所を運営。起業家向けに月額1万円、決算料なしからの税務顧問を提供する。 創業したばかりでお金と時間に余裕がない、という方でも経理、節税、税務調査などを心配せず、本業に集中して頂き、1日でも早く事業を軌道に乗せて頂くことをコンセプトしている。事務所HP : https://ft-taxacc.com/