お得意先に突然税務署の調査が入る可能性がある反面調査。逆に取引先の不正によって自社が調査される可能性もあるため、不安に思う方も多いと思いでしょう。
当記事では反面調査に関する基礎知識を始め、拒否の可否や調査範囲、対処法などを解説します。急な反面調査にも慌てず対応できるようになりますので、ぜひご一読ください。
この記事を監修した税理士
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
反面調査とは?
反面調査は税務調査対象の納税者ではなく、納税者の取引先・利用中の銀行などに対して実行される税務署の調査です。いわゆる税務調査の一環にあたり、納税者が税務申告を正しく行っているかを裏付けるため、「取引先とのやり取り」「取引先の帳簿・書類」などに目を通します。
|
つまり「直接の聞き取りや所持情報だけでは信用に値しない」と判断されると反面調査が実行されます。調査には準備・実地・反面で1ヶ月ほどかかるのが一般的です。ただし事業所や調査内容次第で1日のみ場合や半年の長期間に渡ることもあるため、期間はケースバイケースといえます。
反面調査は税務調査を補完するもの
反面調査は対象者本人の税関係を調べる「本調査」を補完するものです。本調査中に脱税の事実や疑わしい取引内容、申告との矛盾点、納税者本人の不審な態度などが見受けられると、調査官の判断で実施されます。
「取引先への調査なんて許されるのか」とも感じますが、反面調査は調査について必要があるときに実施できると国税通則法第74条の2で定められているのです。「客観的に必要性が生じる」「調査員の合理的な判断の範疇である」場合に限り、反面調査の実行は法的に問題ありません。
税務調査でバレやすい脱税パターン
税務調査でバレやすい脱税行為は以下の5パターンです。脱税は完全な違法行為にあたり、反面調査で取引先に迷惑がかかるので絶対に避けましょう。
|
基本的には取引先に直接やってくる
反面調査は税務署が派遣する調査官が直接訪問して実施されるのが基本です。調査対象は「対象者との取引について」のみなので、取引先が大掛かりな税務調査の対象になるわけではありません。もし簡単な確認のみで十分と判断されれば、書面のやり取り・電話での聞き取り調査だけで終了するケースも存在します。
ただいずれのパターンにせよ、突然の反面調査が発生することで取引先からの信用を失う恐れがあるでしょう。税務署からの連絡が行く前に、あらかじめ必要な書類やデータの準備をこちらから取引先にお願いしておくのがベストです。
事前通知は行われない場合もある
反面調査を実行する旨はあらかじめ通知されるのが原則ですが、事前通知がないケースも存在します。特に調査対象への警戒が強い場合、「口裏合わせ」「領収書・請求書の改ざん・隠蔽」を懸念し、連絡なしの直接訪問になることも多いです。
実は法令上では反面調査の事前通知を行う義務は定められていません。ただし実際は「調べる前に反面調査の対象者への連絡を行う」と国税庁は述べています。(※一部の間接諸税の調査を除く)
いつ実施されるかは決まっていない
確定申告を始めとする税務手続きと違い、反面調査はいつ頃実施されるのかは原則決まっていません。過去に東京高裁やその他の判決で下された「調査官の合理的判断に委ねられる」の判例に則り、調査する時期は税務署の判断で決まります。
ただ反面調査は税務調査からの派生で実行する性質上、税務調査とセットで実施されるものです。税務調査は税務署内の人事異動・チーム再編などが終了する「夏の終わり頃~秋(9月~11月)」がピーク期間なので、反面調査の実施も同じタイミングがピークと考えてよいでしょう。
税務調査の時期に関してさらなる詳細を知りたい場合は、ミツモアメディア内の記事「税務調査が行われやすい時期はいつ?|突然来るの?どこまで調べるの?」をぜひご覧ください。
反面調査は拒否できる?
税務署から突然「反面調査を行います」と連絡が来ると混乱しそうですが、反面調査は条件が揃えば拒否できます。結論を言えば「反面調査を絶対にやらないとダメな理由」が客観的に認められなければ、応じる必要はありません。
たとえば以下のケースだと、反面調査の拒否が認められる可能性があります。
|
ただし【断るための正式な理由や正当性がないときの拒否は法律違反になる】ので注意しましょう。
反面調査は原則拒否できない
反面調査は理由がない限り原則拒否できません。質問検査権に基づいた正式な調査であるためです(国税通則法第74条の2~74条の6・元法人税法第154条など)。つまり以下の主張や主観での拒否は認められません。
|
また「納税者の合意や了解なしでの無断反面調査」を争った過去の判例でも、調査自体に問題なしと判決が下っています。拒否を希望するときは税理士に相談し、税務調査の立会い依頼や事前対策の実施がおすすめです。
反面調査と個人情報保護法との関係性
「反面調査は会社の守秘義務やプライバシーの侵害に該当するのでは?」と、いわゆる個人情報保護法との関係性が気になると思います。結論から言えば違反ではありません。その理由は以下のとおりです。
|
税務調査は「法令に基づく場合」に含まれます。つまり税務署側は個人情報の開示請求や調査を行えるため、個人情報の提出を求められたら素直に応じてください。逆に調査に関係ない書類・資料の開示については従う必要はありません。
拒否による罰則について
反面調査を正当な理由なしで拒否することは、国税通則法第127条の罰則に値します。1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるため注意しましょう。これは国税通則法における「受忍義務違反」にあたります。
日程を伸ばすことは可能
反面調査は延期の申し出が可能なので、日程を伸ばしたり再調整を求めたりできます。あくまで対象者の都合や企業活動が優先されるからです。
たとえば会社の代表者・対応者の不在、緊急を要するトラブルの発生などが重なった時は、事前通告の有無に関わらず日にちの調整を申請しましょう。
反面調査の対象になるケース
反面調査の対象になるケースとして多いのは、対象者の「架空計上」「書類の不足」「協力姿勢を見せないこと」の3つです。ほとんどは納税者自身の在り方・ミス・違反が原因で、取引先への反面調査実行が決まります。
ここからは3つの要因について、順番に詳細を見ていきましょう。
対象者の架空計上が疑われている
「架空計上」いわゆる「あるはずのない経費・仕入れ・企業との取引記録」が疑われるケースです。「実際にはない支出をでっちあげて節税を狙っている」と判断されると、税務署は不正を暴くため調査に乗り出します。特に架空計上で多い例を以下で確認しておきましょう。
|
架空計上で特定の会社名・従業員名が使われていた場合、その企業や個人に対して事実確認・聞き取り調査が実行されます。
対象者の書類が不足している
税務調査時に書類を紛失していたり、書類に適切な記載がなかったりすると、取引先にある保管資料で取引内容や実行の事実をチェックします。請求書・領収書の紛失や内容の不備、取引記録の記載不足などがあると、税務署が情報不足と判断して裏付けや事実確認が行われるでしょう。
税務調査に非協力的である
税務調査中の態度が悪い、質問への対応が適切でないなどして「調査に非協力的」と判断されると、取引先への反面調査に発展するケースもあります。非協力的態度は質問の回答を濁す・嘘をつく、帳簿や書類の提出・開示を渋るといった、調査を著しく妨害する行為です。
混乱を招く態度を繰り返すと、税務署側としても反面調査によって事実確認や整合性の判断をせざるえなくなるので注意しましょう。
反面調査はどこまで調べる?
反面調査はあくまで「調査対象の企業と対象者のやり取りや記録」のみをチェックしますが、調べられる書類や期間を知っておくことで急な調査にも対応しやすくなります。以下より反面調査でチェックする書類や過去の範囲について見ていきましょう。
調べられる書類とは
反面調査でチェックする書類は、主に帳簿・通帳・請求書・領収書など、金銭のやり取りや税金に関わる記録の書類が中心になるでしょう。その中でも「納税者が出し渋った情報や記録」に関するものを調査します。簡単に言えば、対象者の代替として情報が調べられるイメージです。
万が一反面調査を受けることになる場合は自身で書類の準備をし、あなたの取引先が対象になった場合は取引先に書類の準備依頼を行ってください。
基本は3年前まで調べられる
税務調査は過去3年分のチェックが基本なので、反面調査も同様に3年前までさかのぼって事実確認すると考えられます。この3年を基準とし、問題の大きさやミスの多さなどの要素で期間の長さが変わるのです。
参考として税務調査期間の変動を以下の表でまとめました。
通常の税務調査期間 | 3年 |
ミスや拒否などの問題があるケース | 5年 |
脱税や粉飾など悪質なトラブルがあるケース | 7年 |
国税通則法第70条の4では「当該各号に定める期限または日から7年を経過するまで」との記載があるため、最長で7年分調査されると考えておきましょう。
反面調査‐当日の対応方法‐
もし自分の会社が反面調査の対象になったとしても、焦らず冷静に対応することが大切です。脱税や不正取引、書類改ざんなどのやましい行為をしていなければ、慌てる必要は微塵もありません。
ここからは実際に反面調査の対象になったときに取るべき対応方法を解説していきます。
調査官が訪問した際の対応
税務署の調査官が訪問した際に一番大切なのは、嘘偽りなく誠実に対応することです。こちらに落ち度がなければ、罪に問われたり追徴課税が発生したりすることはありません。
ただしなんの確認もしない素通しは危険です。必ず「調査官の名刺・身分証明書」「来社理由」「どこの取引先・取引年月日・取引内容を調査するのか」を事前に確認してください。調査官がベテランだと必要以上の情報を入手しようとしたり、そもそも調査官自体が偽物だったりすることも考えられるためです。
取引先に忖度して答える必要はない
取引先に忖度して「嘘の情報を流す・不正事実の否定」といった不誠実な応答は避けましょう。たしかに情報を話すことで取引先からの信頼が失墜しないか心配かもしれません。
しかし国税調査官は国税通則法第126条の守秘義務によって、外部に情報を漏らすことが禁止されています。つまりどんなやり取りをしたのかは、取引先やその他の企業に伝わることはありません。自社が税務署のターゲットにされないためにも、誠実な応答を心がけてください。
確認書への押印は任意
企業と調査官のやり取りをまとめた「質問応答記録書」を始めとする書類への署名・押印は任意です。応じるとその書類が追徴課税を課すための証拠になるため、税制面で不利になる可能性があります。
取引内容に関する確認書・申立書の提出・押印は慎重に判断しましょう。ただし押印拒否の事実は記録して残ります。確認した上で納得いかない部分や相違点がある場合、内容の修正依頼を出せますので覚えておきましょう。
反面調査を受けた場合の取引先への対応方法
もしあなたが反面調査を受けた場合、対象者へはどう対応すればよいのでしょうか。この章では誠実かつ偽りのない対応・回答を前提として、反面調査に関する取引先への対応方法を解説します。反面調査に入られたときに取るべき行動について見ていきましょう。
取引先に一報を入れるべき?
取引先に反面調査を受けた旨を伝えるかどうかは完全に自主判断です。税務署から止められる可能性はありますが、税務署は強制する権利を持っていません。今後の関係を良好に保ちたいのであれば、取引先に一報入れることをおすすめします。ただし調査官に見られない、声が聞かれない位置での連絡を行いましょう。
口裏合わせは厳禁!
取引先と口裏を合わせ、脱税の事実や不利な情報を意図的に隠匿する真似は絶対に避けてください。もし隠した事実が発覚すれば、取引先・対象者ともに「不正加担者」と税務署に名簿登録され、ブラック企業と判断されます。もちろん書類改ざんも同様です。必ず事実のみの掲示に留めてください。
【反面調査】不安を感じたら税理士に立会いを依頼しましょう
反面調査は税務関係のややこしい部分をチェックするため、うまく乗り切れるか不安に感じることも多いと思います。もし突然の反面調査実施となったときは、顧問税理士に立会いを依頼することが可能です。
ただし取引先が反面調査を受けるケースでは、こちらからの顧問税理士の派遣が難しいので注意してください。
もし反面調査を始めとする税務調査への税理士立会い依頼に興味ある場合は、ミツモアメディアの「税務調査|税理士に立会いを依頼するメリットや報酬相場は?」にて詳しくご紹介しています。税理士を付けるメリットや依頼の相場価格などを解説していますので、ぜひ一度ご覧ください。
監修税理士のコメント
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
ミツモアで税理士を探そう!
税理士とのお付き合いは、そのときだけのものではなく、長期間に渡るものです。だからこそ、費用だけでなく、相性や対応の誠実さも、事前に十分に確認しておきたいですね。
そんな税理士選びにおすすめなのが、全国の税理士が登録しているマッチングサイト「ミツモア」です。地域と依頼したい内容に応じて、まずは見積もりが確認できます。その後、メッセージでのやりとりで担当業務の範囲やオプションなどを確認できるので、面談するのと同じように、税理士の人柄が見えてきます。
簡単!2分で税理士を探せる!
ミツモアなら簡単な質問に答えていただくだけで2分で見積もり依頼が完了です。
パソコンやスマートフォンからお手軽に行うことが出来ます。
最大5件の見積りが届く
見積もり依頼をすると、税理士より最大5件の見積もりが届きます。その見積もりから、条件にあった税理士を探してみましょう。税理士によって料金や条件など異なるので、比較できるのもメリットです。
チャットで相談ができる
依頼内容に合う税理士がみつかったら、依頼の詳細や見積もり内容などチャットで相談ができます。チャットだからやり取りも簡単で、自分の要望もより伝えやすいでしょう。
税理士に依頼するならミツモアで見積もり依頼をしてみてはいかがでしょうか?