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個人事業主が税務調査で聞かれる質問は?【税理士コメント付き】

最終更新日: 2022年12月13日

税務署による税務調査は、法人だけでなく個人事業主が対象になる可能性も十分あります。ちゃんと納税しているはずなのに勘違いによって追徴課税になったらと思うと心配ですよね。

本記事は、「どのような人が税務調査の対象になりやすいの?」「どんなことを調査されるの?」「日頃から出来る税務調査対策は?」といった個人事業主の皆さんが税務調査に対して抱える疑問にお答えします。

個人事業主の税務調査の実態

税務調査というと怖いイメージを抱く方もいるかもしれません。とはいえ、必要以上に身構えなくても大丈夫です。実は税務調査に入られやすい時期や、調査の対象になりやすい個人事業主の特徴があります。

これらを押さえておけば、事前に対策を立てることができます。

個人事業主も税務調査の対象に…

個人事業主も法人同様、税務調査の対象になる

法人のほうが税務調査に入られる件数は多いですが、個人事業主も法人と同じように、税務調査の対象となります。

国税庁は納税者数に対する税務調査の件数の割合を表す「実調率」を公表しています。たとえば2015年では、法人の実調率は3.1%で、個人の実調率は1.1%でした。たしかに法人のほうが税務調査に入られる確率は高いです。

しかし個人事業主も法人と同様に、税務調査が行なわれていることが分かります。

また、税務署は「KSK」と呼ばれる国税総合管理システムで、納税者のお金の流れを場合によっては納税者自身よりも詳しく把握しています。さらに税務署は銀行へ入手金の履歴を照会することができるので、情報を隠すことは非常に難しいです。

税務署はあなたの資産状況をすべて把握していると言っても過言ではありません。

個人事業主への税務調査は主に「所得税」と「消費税」が対象

個人事業主の税務調査の対象は、「所得税」と「消費税」が基本です。この2つの税金は「国税」というカテゴリーのもので、税務署が管理しています。そのため、個人事業主が税務調査を受けると、まず所得税と消費税が調査対象となります。

ただし、調査を進めるにつれて、事業税・住民税・国民健康保険料などについても調査対象とされることもあるので気をつけてください。

所得税と消費税に関する平成29年度の税務調査のデータを見てみましょう。

所得税+消費税
(納税者全体)
実施数(件)申告漏れ等の非違件数(件)追徴税額(億円)
(本税+加算税)
一件あたりの追徴税額(万円)
(本税+加算税)
実地調査72,953 60,338(約83%)947130
簡易な接触549,684323,570(約59%)249 5
調査全体622,637 383,908(約62%)1,196 19
消費税
(個人事業主)
実施数(件)申告漏れ等の非違件数(件)追徴税額(億円)
(本税+加算税)
一件あたりの追徴税額(万円)
(本税+加算税)
実地調査37,919 31,125(約82%)227 72
簡易な接触49,631 31,080(約63%)4710
調査全体87,55062,205(約71%)27437
  • 非違件数とは、申告漏れや誤りを指摘された件数のことを指す。
  • 簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものである。

参考元:国税庁−平成29事務年度 所得税及び消費税調査等の状況−

表からわかる通り、所得税も消費税に関しても、実地調査に入れられた場合の非違件数の割合は、なんと80%を超えています。税務調査に入られるとほとんど指摘を受けるといえるでしょう。

先ほどご紹介したように、個人に対する税務調査の実調率は1.1%でしたが、これはあくまで割合です。年間10万件近く調査は行われていますし、申告内容に誤りがある可能性が濃厚であると税務署に判断されれば、税務調査に入られやすくなります。

いつ税務調査が来ても適正です、と言える申告をしましょう。

税務調査の通知が来る可能性が高い時期

一般的に税務調査が多く行なわれる時期は、7~11月だと言われます。

「6月に税務署で人事異動があるからだ」という説もありますが、税務の繁忙期ではない時期に税務調査を済ませてしまうというのが実情だと思います。

とはいっても、確定申告前の2月に税務調査が行なわれることもあります。あくまで参考程度にしておきましょう。

税務調査の対象になりやすいのは?

税務調査の対象となる個人事業主は、下記のような特徴があると言われています。

  1. 税務署からの問い合わせに回答していない
    税務署は確定申告の内容に疑問を持つと、納税者へ問い合わせをすることがあります。これに回答しないと「何かやましいことがあるのでは?」と見なされ、税務調査の対象になりやすいようです。
  2. 売上が900万円くらい
    課税売上が1,000万円を超えると2年後に消費税の確定申告が必要になるため、売上を不正調整してしまう事業者がいます。そこで、売上900万円程度の事業者は税務調査の対象になりやすいと言われています。
  3. 売上に対して利益が少ない
    利益が少ないと「不正な経費を入れて脱税しているのでは?」と疑われる原因に。
  4. 副業が赤字
    何年も赤字なのに同じ副業を続けていれば、疑問を持たれやすくなります。また、副業の場合は事業所得ではなく、「雑所得」として扱われることも。雑所得として扱われると、他の所得と損益通算ができませんので所得が増えてしまいますよね。

このように税務調査に入られやすい事業者には特徴があります。しかしこの条件に当てはまらないから税務調査を受けないということではないので参考程度に留め、適切な経理処理を進めてください。

税理士先生からのコメント

中山陽介税理士事務所 - 埼玉県川口市道合

「調査対象になりづらい業種はあるように感じますが、その年々で異なると思います。 傾向としては、前年比で大きな増減がある場合や特別損失を計上している場合や、欠損金がなくなった翌事業年度に税務調査になりやすいと考えております。」

原・久川会計事務所 - 東京都品川区東五反田

「現金での物品販売業・パチンコ店・好況な業種・売上や所得が高い事業などは、税務署から重点的に税務調査の対象にされていると思います。あとは、税務署で集めている資料情報を根拠にした税務調査もあります。」

税務調査の流れ

一年を通した税理士の仕事の流れ
税務調査の流れとは (画像提供:PIXTA)

税務調査の流れを簡単にまとめると、以下のようになります。

  1. 税務調査の事前通知が来る
  2. 実地で税務調査を行なう(1〜2日間)
  3. 税務官との交渉また修正申告書の提出等

それぞれの段階についてご説明していきます。

①.税務調査の事前通知が来る

事前に税務調査を行なう通知が来ます。このときに下記について打ち合わせをします。

  • 調査の日程
  • 調査を行う場所
  • 調査に必要な会計資料

税務官は調査の希望日を伝えてきますが、繁忙期などの理由で予定が合わなければ、別の日程でも構いません。

税務調査を行なう場所については、個人事業主の事務所で行なうことが多いです。しかし、税務調査を行なえるほど事務所のスペースを確保できない場合や、事務所がない場合は、税務署で調査を受けることもできます。税務官も柔軟に対応してくれるので、相談してみましょう。

また、税務調査の連絡が来たときに、調査に必要な会計資料を準備するようにお願いされます。円滑に税務調査が終わらせるためにも、調査日までに準備しましょう。

②実地で税務調査を行なう(1~2日間)

実際に税務調査が始めると、まず事業内容、会社の状況、経理体制について質問があります。

「事業をはじめたきっかけは?」

「従業員は何人かかえていますか?」

「現金の管理はどのようにしていますか?」

上記はあくまで一例ですが、このような質問をたくさんされます。

その後は、事前に指定されていた会計資料の調査が行なわれます。ここで会計処理のミスはないか、不正な計上が行なわれていないかなどについて調べられます。

③税務官と交渉また修正申告書の提出等

実地の税務調査が終わった後は、税務官から取引内容などに関する質問や、会計処理に間違いがあれば指導があります。

そして税務署の指摘に納得できた場合は修正申告等を行い、税金を納付します。修正申告をする場合は追徴課税が課されます。

追徴課税には加算税(申告が適正にされなかった場合に課されるペナルティ)と延滞税(法定納付期限までに支払われるべき税金を納付していない場合に課されるペナルティ)があり、

一方で、税務署の指摘に納得できない場合は、税務署と交渉を重ねて行きます。

ただし税務調査が行なわれても、しっかり帳簿をつけていれば何も間違いを指摘されません。「税務調査=税金を払う」というわけではないので、身構え過ぎることはないでしょう。

個人事業主の税務調査のポイント

個人事業主の税務調査のポイントとは

税務調査で聞かれる内容は、実はある程度決まっています。帳簿で間違えやすい箇所や不正が行なわれるパターンには傾向があるからです。

税務調査で何を見られるのか、事前に分かっていたら対策を取りやすいですよね。それでは税務調査のポイントについて解説していきます。

税務調査で聞かれやすい内容

税務調査の流れを把握していただいた後は、税務調査で聞かれやすい内容についても知っておきましょう。一言でいえば、「取引を計上する時期」と「経費の内容」を見られていることが分かります。

  • 売上の計上漏れ…意図的に売上を抜いていないか
  • 在庫の計上漏れ…棚卸しで利益の調整をしていないか
  • 経費の用途…プライベートな経費が含まれていないか
  • 交際費の用途…プライベートなものが含まれていないか
  • 外注費の用途…外注費と給与は明確に区別されているか
  • 架空の人件費…タイムカードが正しく記録されているか
  • 事業と家事の割合…事業と家事按分の割合は適切であるか
  • 売上の計上時期…今期に計上すべき売上が含まれていないか
  • 経費の計上時期…今期に入れるべきではない経費が含まれていないか

上記に当てはまるものがないか、時間があるときにチェックしてみてください。

個人事業主ができる税務調査の対策

個人事業主は日頃から税務調査の対策を取ることが大事です。特に、下記の3つのポイントを意識してください。

  1. 正しい会計帳簿をつける
  2. 個人と事業でお金の管理を分ける
  3. 経費は事業との関連性を説明できるようにする

大前提なのは、正しい会計帳簿をつけることです。税務調査で帳簿のミスを指摘され経費が少なくなると、所得が増えてしまうのでペナルティ付きで税金を払うことになります。

また事業とプライベートでお金の管理も分けてください。銀行口座はもちろん、クレジットカードも事業とプライベートで分けましょう。

経費については、事業との関連性を説明できるようにすることも大切です。事業とは関係ないものは経費にできませんので、「なぜこの費用が必要なのか」を第三者に説明できるように日頃から心掛けてください。

領収書・レシートの保管と日常の帳簿つけが大事

税務調査は最大で過去7年分まで行なわれます。そのため領収書・レシートや総勘定元帳などの会計帳簿は、最低7年間は保管してください。

繰り返しお伝えしますが、大事なことは日々正しく会計帳簿をつけ、会計資料をきちんと保管することです。日頃の事務作業をおろそかにしてしまうと、税務調査のときに資料が手元にない状態になってしまい、税務官の指摘に反論できなくなってしまいます。

税務調査の連絡が来たら税理士に相談を

税務調査 税理士
税務調査は税理士に任せれば安心! (画像提供:Dragon Images/Shutterstock.com)

税務調査の連絡が来たら、まず税理士に相談しましょう。税金のプロである税務官を相手に、素人が対応しては税務官に言い包められてしまいます。

こちらも税金のプロである税理士に対応を任せた方が安心です。

税務調査の結果、追徴課税を受ける恐れも

税務調査で記帳ミスなどを指摘されると、追徴課税を受けることがあります。

たとえば「コンビニで買ったお弁当代は生活費である」と指摘され、経費から除外するとします。このケースでは経費が減るので、所得は増えてしまいますよね。
つまり、少ない所得で確定申告をしていたと見なされるので、増えた所得に対して過少申告加算税がかけられます。

また架空の経費をたくさん計上しているなどの場合、当然ながら悪質な脱税だと判断されるので、重加算税が課せられる恐れがあります。重加算税の税率は最大で40%にもなるので、気をつけてください。

嘘の確定申告は必ずばれてしまいますし、ちょっとならと思っていても指摘されて修正申告になれば本来払うべき税金より多くの税金を払うことになってしまうので、脱税を考えるのは絶対にやめましょう。

取引相手にも調査がおよぶ可能性がある

税務調査で申告漏れや虚偽の記載をしていると、取引相手にも税務官の調査が及ぶことがあります。取引があった事実を確認するためです。

たとえば下請け会社に架空の請求書を作られるといったことが実際に起きています。そのため、税務署は取引の事実があったのか、取引先に確認するのです。

正しい会計処理をしていないと、取引先までに迷惑をかけることになるかもしれません。

税務調査対策は税理士におまかせで安心

税務調査に備えるには、専門家である税理士を顧問につけるのが近道です。

税理士なら税務調査に入られたときに、指摘されやすいポイントを熟知しているので、対策を講じてくれます。

また税務調査の期間中は、ストレスが非常にかかります。個人事業主が事業の傍らで税金のプロである税務官の質疑に答え、交渉も行なうのは大変です。税理士に任せてしまった方が、ずっと負担は少なくなると言えるでしょう。

こちらの記事ではミツモアに登録している税理士の紹介と、依頼に必要な費用や選び方を解説しているので合わせてご確認ください。>>個人事業主にお勧めの税理士55選と税理士の選び方

税務調査の連絡が来てからでも相談可能

すべての個人事業主に税務調査が必ず来るわけではないので、実際に税務調査の連絡が来てから税理士に相談することも可能です。

しかし税務調査が入られた時点で相談した場合では、対策は限られてしまいます。税務調査では過去の年度の申告を調査するので、後からのごまかしはききません。過去の事実を丁寧に説明するしかありません。

「税務調査でなにか指摘されたら心配だ」と感じている方がおられましたら、なるべく早い段階で税理士に相談してみましょう。

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