大工・とび職など建設業の中でも、会社に属さず様々な現場を行き来する「一人親方」。技術を磨いたり、多くの人たちとやり取りしたりする大変な職業です。だからこそ、普段の仕事とはかけ離れた確定申告を億劫に感じる人も多いのではないでしょうか。
「仕事に集中したいしできればやりたくない」「確定申告しなくてもばれないのでは」と考えたくなりますが、確定申告をしなければ、最悪数百万円単位以上の罰金支払いを命じられます。申告漏れは長期的に見ても信頼を損ねてしまう行為です。
とはいっても、独立して間もない一人親方は特に、確定申告の仕方がわからない・複雑で「ハードルが高い」と悩むこともあるのではないでしょうか。
本記事では、一人親方として収入を得ている人に向けた「確定申告しなかった場合のリスク」や「確定申告の方法」について解説します。確定申告に必要なものや、経費にできる項目などについてもわかりやすく説明しているので参考にしてみてください。
【数百万の追徴課税も】一人親方が確定申告をしない場合のデメリット
確定申告をしないことによるデメリットは多くあります。代表的な例に、通常よりも多くの税金支払いを命じられること。そして、事業そのものの信頼を失うきっかけになりかねないことなどが挙げられます。
特に一人親方に知ってもらいたいのが、国税庁から毎年公表しているデータに記載されている集計結果です。
「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」という資料によると、工事系の職業はほぼ毎年申告漏れの金額が高い職業としてランキング内に記載があります。簡単にいうと、確定申告をしていない職業と、職業別に申告のなかった金額がわかる内容です。
1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種(令和4年度版)
- 経営コンサルタント 3,367万円
- くず金卸売業 2,483万円
- ブリーダー 2,075万円
- 焼肉 1,611万円
- タイル工事 1,598万円
- 冷暖房設備工事 1,520万円
- 鉄骨、鉄筋工事 1,440万円
- 太陽光発電 1,391万円
- バー 1,391万円
- 電気通信工事 1,374万円
過去10年のデータを見る限り、工事系はほぼ毎年申告漏れの金額が高い職業として何かしらが上位10位以内にランクインしています。
よって以下で紹介するデメリットを被らないよう、毎年しっかりと確定申告を行なう必要があります。
一人親方は目を付けられやすい?追加の納税義務発生リスクも
先述した国税庁からの資料を見る限り、工事関係の仕事は相対的に他の職業よりも目を付けられやすいといわれても仕方ない結果でした。
もちろん法人化されている建設業者も含まれた内容ではあるでしょう。ただ、同じ工事関係である以上、個人で仕事を請け負っている一人親方は余計に厳しくチェックされている可能性が高いと意識すべきです。
ある意味理不尽ですが「正しい内容で確定申告をしていない」「申告漏れの疑いがある」と判断されると調査が入り、最悪、仕事が受注できなくなってしまう可能性もあります。
納税義務があるのに、期限内に確定申告をしていないと「無申告加算税」が課せられる場合があります。期限を過ぎてしまっても、1か月以内に自主的に確定申告を行なえば無申告加算税が課せられることはないのですが、税務調査によって申告漏れが発覚すると大きな額の無申告加算税が課されることになるでしょう。
また同時に納税が滞った日数に応じて「延滞税」も課されるため、確定申告しないとさらに多くの税金を納めなければなりません。
加えて、期限後の申告となった場合には、青色申告特別控除は10万円までしか受けられなくなりますので、この点にも注意が必要です。
なお、追徴課税についてはこちらの記事でも解説しています。
建設業許可が下りない=仕事の受注もストップ
一人親方として活動している方の中には、「現在は別の建設業者の下請けとして仕事をしているけれど、いずれは自分で工務店などから仕事を受注して、大きな仕事をしていきたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
建設業者が自分の名義で本格的な工事を受注する場合、都道府県知事から建設業の許可を受けなくてはなりませんが、その際には、細かくは自治体によって異なりますが、基本的に過去5年分の確定申告書類を提出するように義務付けられています。
毎年確定申告をしておかないと、せっかく仕事の経験を積んできたのに、審査が通らないために建設業の許可を受けられない……ということにもなりかねません。
建設業許可を取りたくても会社に呼ばれない
仕事を紹介してくれる事業者が建設業許可の手続きをしている途中ということもあるでしょう。
この場合、仕事を依頼している一人親方がきちんと確定申告しているか?といったことも手続き上チェックされます。
当然ながら、この業者としては「きちんと確定申告をしてくれている職人さんに依頼したい」と考えるでしょうから、この点がきちんとしていないと仕事の紹介をしてもらえない可能性もあります。
「条件は満たしているはずなのに、なぜか仕事の紹介を断られた」となったらもったいないですよね。
せっかくのビジネスチャンスを逃すことは大きな損失ですから、確定申告は毎年きちんと行なうようにしましょう。
ローンが組めなくなる可能性もある【納税証明の未取得】
本来、確定申告をしなくてはならない一人親方の人が確定申告をしていないと、生活上でも支障が出る可能性もあります。
確定申告をしていないと納税時に発行される、「納税証明」を取得できません。そして、この納税証明がないと、住宅ローンや自動車を買う際のローンを組めないことが多く、必要な時に手続きが進まないという事態になる可能性があります。
賃貸マンションを借りたい場合にも、家賃の支払い能力を証明するための書類として、納税証明や確定申告書の控えなどを求められることが多いです。
一人親方で確定申告をしていないと、このようにさまざまな場面でデメリットを被る恐れがある点に注意しておかなくてはなりません。
【基礎知識をおさらい】一人親方が経費で落とせるもの一覧
経費を多く計上すれば、節税になります。
経費にはごく一般的なものから一人親方ならではの項目まであります。経費にできる項目を見逃していたら非常にもったいないことです。項目についても把握した上で、抜け漏れのないように集計していきましょう。
一人親方が経費計上することの多い項目は以下の通りです。
経費 | 説明 |
---|---|
組合費 | 加入している土建組合などの年会費 |
材料費 | 仕事をするうえで必要な材料を購入した時の費用 |
損害保険料 | 仕事で使っている自動車の保険料など |
法定福利費 | 従業員の社会保険料のうち、事業主負担の分 |
接待交際費 | 仕事を紹介してくれる人と食事をしたような場合の費用 |
租税公課 | 印紙や(事業設備に対しての)固定資産税など |
旅費交通費 | 仕事場に行くためのガソリン代や高速道路代 |
広告宣伝費 | 職人さんを募集するために求人広告を出した時の費用 |
通信費 | 仕事で使っている携帯電話代 |
消耗品費 | 仕事で使う事務用品などの購入費 |
荷造運賃 | 仕事のために荷物を遠方に郵送したような場合の運送費用 |
減価償却費 | 仕事用の自動車など数年間使用できるものの購入費用を使用年数で分割し、その1年分の費用(償却率というものを使って計算する) |
福利厚生費 | 従業員の慰労のために支出した費用 |
外注費 | 外部の職人さんに仕事を依頼するための費用 |
支払利息 | 金融機関から借りている借入金に対してかかる利息 (なお、住宅ローンの分については必要経費に含めない) |
地代家賃 | 事務所の毎月の家賃 |
専従者給与 | 家族従業員に対して支払っている給料の金額 |
雑費 | 上の一覧のいずれにも該当しない支出 |
旅費交通費・荷造運賃
- 電車賃、ガソリン代、高速道路代、駐車場代
- 宅配便代、バイク便代
交通費は「現場に行くため」などの、事業に直接関係するものです。
ガソリン代など、事業用とプライベート用が明確に分類しにくいものは、何らかの基準を設けて按分し、事業用の部分のみを経費とする必要があります。
材料費・消耗品・雑費
- 建築材料代(素材費)、部品代
- 工事道具代(10万円未満)、油などの消耗品代
- 事務用品代
- 清掃代などの雑多な費用
業務に使用する材料費や消耗品も計上できます。事務用品など、プライベートでも使用するものは何らかの基準を設けて按分し、事業用の部分のみを経費とする必要があります。
なお使用したものだけが経費となり、未使用のものは来期に繰り越す「棚卸資産」とします。
材料費や消耗品に明確に分類できないものは、雑費として計上しましょう。分類できるものは、できる限り適切な科目に計上する必要があります。
工事保険・損害保険
- 事業用賠償責任保険
- 建設工事保険
- 自動車保険
工事保険・損害保険は、保険料の科目で処理します。
自動車を自宅用としても使っている場合、関連する保険料は、自動車が事業に使用する部分のみを経費として計上しましょう。
なお、国民健康保険料や労災保険料は組合費や損害保険料など経費として落とすのではなく、社会保険料控除として扱われることに注意が必要です。
接待交際費
- 取引先との飲食代
- 取引先の接待費用(ゴルフなど)
- 業務関係者に対する贈答品代
- 元請け会社や取引先への中元・歳暮代
業務に関連しているか、今後仕事につなげる目的があるものであれば、食費や接待費用を「接待交際費」として経費にできます。
プライベートと見分けがつきにくい費用であるため、誰と行ったか、誰に贈答したかなど「業務に関係している」ことを記録しておくことが大切です。
不相応に高額であると税務調査の対象となる可能性があるため注意しましょう。
地代家賃・光熱費・通信費
- 事務所の家賃、光熱費、通信費
- 自宅の家賃の一部(事業割合部分)
- 自宅の電気、水道、ガス代の一部(事業割合部分)
- 自宅の電話代、携帯電話代(事業割合部分)
自宅兼事務所の場合は、事業分とプライベート分(家事割合)を何らかの基準を設けて按分し、事業用の部分のみを経費とする必要があります。
使用時間や面積など「何らかの基準」の根拠を決め、説明できるように記録しておきましょう。
組合費
一人親方が労災保険に加入する場合、保険料だけでなく、加入する団体によっては入会金、組合費、入会手数料が発生することがあります。
組合費は、全額を経費として計上できます。勘定科目は一般的に諸会費や租税公課で処理しますが、必ずしも決まってはいません。
ただし保険料は、経費ではなく社会保険料控除として所得控除の対象ですので注意しましょう。
租税公課(証明書の手数料や罰金)
- 事業で使用する印紙代
- 行政での各種証明書発行手数料
- 自動車税、自動車重量税(事業割合部分)
自動車を自宅用としても使っている場合、自動車が事業に使用する部分のみを経費として計上しましょう。
駐車違反などの罰金は経費になりません。延滞税といった税金のペナルティも経費にならないため除きましょう。
減価償却費
10万円以上の工具器具備品、機械装置、車両などは支出時に全額を経費とできず、決められた耐用年数にわたって経費とします。この経費が減価償却費です。
青色申告をしている方は、10万円以上であっても30万円未満であれば年間300万円を上限に、全額を支出時に経費にできることがあります(少額減価償却資産の特例)。
耐用年数表は、国税庁「確定申告書等作成コーナー」などで確認できます。
注意点は以下のとおりです。
- 減価償却費の計算方法には定額法と定率法があるが、個人事業主は原則として定額法で計算をすること
- 定率法の方が早めに経費にできる計算方法だが、個人事業主が選択する場合は「所得税の減価償却資産の償却方法の届出」を提出する必要があること
一人親方が確定申告をするときの注意点
「確定申告」とはその名の通り、納めるべき納税額を「確定」して、「申告」する手続きのことです。
確定申告を行う上での注意点はおもに4つあります。
確定申告の時期と種類を確認【青色申告と白色申告】
確定申告の手続きは、毎年2月16日~3月15日の期間に行わなくてはなりません。
確定申告では前年1年分の収入や所得(収入から経費や保険料を引いた額)を算出して申告します。
たとえば2024年度の確定申告は、2025年2月17日~3月17日の期間に行います。この期間に申告するのは、2024年1月1日~12月31日の間に得た所得です。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。2つにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、大まかな違いだけでも理解しておきましょう。
青色申告の場合
白色申告
- 開業届を出さなくても良い
- 単式簿記(簡単な収支内訳書)でかまわない
- 税金の控除は原則なし※例外はある
簡単に説明すると、青色申告は「ちょっと手続きが煩雑だけれど、税金が安くなる方法」で、白色申告は「手続きは簡単だけれど、税金がちょっと高くなる方法」といえるでしょう。
一人親方であれば、開業届を出している人がほとんどだと思いますので、以下では青色申告のメリットをもう少し詳しく説明します。
青色申告のメリット①:最大65万円の控除を受けられる
青色申告の具体的なメリットとしては、年間の所得から最大65万円を差し引きしてもらうことができる「青色申告特別控除」というものがあります。
年間の所得から65万円を差し引きしてもらえるということは、所得税の税率が10%だったとすると、所得税が6万5000円だけ安くなるということです。
青色申告のメリット②:家族従業員への給与支払いを必要経費にできる
家族の従業員に対して支払っている給料を、必要経費に算入できる点もメリットです。
白色申告でも家族への支払いを必要経費にすることはできますが、上限額が決まっています(配偶者は年間86万円・その他の親族は年間50万円です)。
青色申告の場合にはこうした上限額はないので「事業を手伝ってもらっている配偶者に給料を多めに出して、所得税を安くする」といった節税も可能になります。
青色申告を選択するためには「きちんと帳簿をつける」といった条件があるのですが、会計ソフトなどを使っていればそれほど難しいことではありません。
税金を少しでも安くしたい人は、青色申告を選択するのがおすすめです。
特別控除についてはこちらの記事でも解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
「外注費」と「給与」の区別に注意
一人親方であるあなたが、別の職人や家族にお願いして仕事を手伝ってもらった場合には、当然ながら彼らに対してお金を支払わなくてはなりません。
この場合の処理の仕方としては、「給与として処理する場合」「外注費として処理する場合」の2種類があります。税務調査で指摘されることが多い、とても重要な内容ですので必ず確認しておきましょう。
1.給与として処理する場合
まずは「従業員への給与支払い」として処理する場合です。
この場合、雇い主であるあなたが従業員の代わりに、所得税を納付する必要があります。
そのために行なうのが「源泉徴収」という手続きで、毎月の給与から所得税を天引きして支払います。例えば、支払う給与が20万円の人であれば、4,770円を天引き(甲欄に該当する場合)して19万5230円を入金します。天引きする税率については、国税庁ホームページに掲載されている「源泉徴収税額表」をご参照ください。
ただし所得税は1年間の所得に対してかかるものなので、毎月天引きしていくタイミングでは正確な金額がわかりません。そのため、決まった税率で所得税額を計算して源泉徴収を行なうわけです。
そして、年末になって1年分のお給料支払い額が確定したら見込みで徴収していた所得税と実際に支払う所得税の差額を解消する「年末調整」を行なう必要があります。
「毎月の天引き額×12か月分」と「1年間の正確な天引き額」の差額を算出し、多く払いすぎていた税金を返す(還付と言います)という手続きになります。
2.外注費として処理する場合
「仕事を依頼した職人さん自身も一人親方である」ということもあるでしょう。
依頼した相手も一人親方である場合には、上のような「毎月源泉所得税を天引きして、年に1回年末調整する」ということはする必要はありません。
このような場合には、単純に支払った金額を「外注費」として処理すればOKです。
報酬を支払った相手も一人親方として確定申告をしていますから、従業員にお給料を支払ったときのような複雑な処理は自分でやってくれるというわけですね。
「給与」処理すべき支払いを「外注費」として処理するとペナルティ発生
仕事をお願いしている人が実質的には従業員で、支払ったお金は本来「給与」として処理すべきところ、源泉徴収や年末調整の手続きが面倒なので「外注費支払い」として処理していたというケースはどうなるのでしょうか。
これは実際に非常によくあるケースなのですが、こういう処理をしてしまうと、従業員として働いている人が自分で確定申告をしてくれない限り、税金を支払っていない脱税状態になってしまいます。
税務署が納税状況を調査する「税務調査」を受けた際に無申告が発覚すると、「無申告加算税」というペナルティを負うことになってしまいますので注意が必要です。
労災保険は経費ではなく「社会保険料控除」
一人親方が労災保険に加入して支払った保険料は、経費ではなく「社会保険料控除」として所得控除の対象となります。
処理の手順は以下のとおりです。
- 保険料を支払った際には「(借方)事業主貸(貸方)現金預金」で仕訳をする
- 年間の保険料の支払額を集計する
- 確定申告時には、所得控除欄の「社会保険料控除」に金額を記載する
労災保険の費用としてまとめて払うことの多い費用に、組合費があります。組合費も「社会保険料控除」と間違われがちですが、保険料とは別で支払した全額を経費として計上する点に注意してください。
年末には前年に仕入れた在庫などの棚卸をしよう
材料を仕入れて工事などに使うという形で仕事をしている一人親方の方は、年末(12月31日)のタイミングでどれだけの在庫が残っているかをチェックしなくてはなりません。
チェックした数量は「棚卸表」という形で資料として残しておきましょう。
期末の在庫棚卸高は、確定申告では「売上原価」を計算するために必要な資料となります。
具体的には次の計算式を用いて売上原価を計算し、売上高から差し引きすることで粗利益を求めることになります。
たとえば期首に材料の在庫が100個あり、期中に材料を50個仕入れ、期末にチェックしてみたら60個残っていたとします。この場合、1年間で使った材料の数は90個(100個+50個-60個)ということになります。
「1年間で発生した売上高」はこの「1年間の売上原価によって得たもの」といえるため、棚卸の作業によって、「今年はいくらの売上原価を使って、いくらの売上高をあげることができたか?」を知ることができるのです。
一人親方の確定申告で必要な書類
一人親方が確定申告するときに必要な書類についてもおさらいしましょう。
青色申告か白色申告どちらかによって、必須書類の数は異なります。
青色申告に必要な書類は5つ
- 確定申告書
- 青色申告決算書
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 各種控除などの添付書類
確定申告書用紙は、税務署や市役所、国税庁のWebサイト「確定申告書等の様式・手引き等」で入手できます。
青色申告決算書も国税庁のWebサイト「確定申告書等の様式・手引き等」で入手が可能です。「貸借対照表」「損益計算書」が対になっています。
なお確定申告書等作成コーナーを利用すれば、紙の書類を用意する必要はありません。電子申告をしなくても、簡単に確定申告書や青色申告決算書を作成できます。プリントアウトもできるため便利です。
所得控除や税額控除を受けたい場合は、証明書を用意しておきましょう。準備する控除証明書の例は、以下のとおりです。
- 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 寄附金受領証明書(ふるさと納税をした場合等)
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書(2年目以降に住宅ローン控除を受ける場合)
控除書類を紛失した場合は、再発行を依頼しましょう。近年、控除証明書の電子交付化が進んでおり、便利な面もあります。
ふるさと納税は、寄附金受領証明書に代えて、特定事業者(いわゆる、ふるさと納税ポータルサイト等)が発行する「寄附金控除に関する証明書」の添付でも可能になりました。年間寄附額が記載されており、個々の入力を省けて便利です。
白色申告に必要な書類は3つ
- 確定申告書
- 収支内訳書
- 各種控除などの添付書類
収支内訳書も国税庁のWebサイト「確定申告書等の様式・手引き等」で入手できます。こちらも確定申告書等作成コーナーを利用すれば紙で用意する必要はありません。
書類以外で必要なもの
- マイナンバー(本人確認書類)
- 会計帳簿
- 工事台帳や領収書
- 金融機関の口座情報
青色申告決算書や収支内訳書を作成する際には、各種帳簿や領収書が必要です。また確定申告を提出する際にはマイナンバーカードや金融機関の口座情報を記入します。
期限直前に焦らないように、事前に用意しておきましょう。
一人親方が確定申告する方法
ここからは、一人親方の人が実際に確定申告を行なうときの方法について、具体例を挙げながら見ていきましょう。
確定申告で知りたい所得金額は3段階で求められる
確定申告を簡単に説明すると、「納めるべき所得税の金額を求める計算手続き」のことです。つまり「確定申告のゴール = 所得税の金額が分かった状態」ということです。
所得税額は、次のような順番で計算を行います。
「所得」の金額を求める
「課税所得金額」を求める 「所得税額」を求める |
難しく感じるかもしれませんが、言葉が難しいだけで実際にやっていることは単純な足し算・引き算です。
初めての方も丁寧に計算していけば問題ありませんので、以下の事例の数字を当てはめながら順番に見ていきましょう。
事例:一人親方のAさん(今年独立したばかり)
収入金額:800万円 必要経費:600万円 所得控除の合計額:50万円(社会保険料の支払合計額などです) 税額控除の合計額:0円 |
1.「所得」の金額を求める
所得 = 収入 - 必要経費
事例の一人親方Aさんの事例では、800万円-600万円=200万円が所得の金額となります。
2.「課税所得金額」を求める
課税所得金額 = 所得 - 所得控除
Aさんの場合は200万円-50万円=150万円が課税所得金額となります。
所得控除というのは、国民健康保険や国民年金の保険料、生命保険料の一部などが該当します。
3.「所得税額」を求める
所得税額 = 課税所得金額 × 所得税率 - 税額控除
所得税は、課税所得金額の金額によって税率が決まっています。金額大きい人ほど税率が高くなり、税金も高くなります。
課税所得金額が150万円であるAさんの場合、所得税率は5%なので、150万円×5%=7万5000円が所得税額ということになります。
所得金額の計算から税務署への提出・納税までの流れ4STEP
所得金額を計算して確定申告書を提出し、納税するまでの手順は以下のとおりです。
- 申告に必要な書類を集める
- 所得税を計算し、確定申告書を作成する
- 確定申告書の提出
- 所得税、住民税の納税
確定申告の受付期間である2月16日~3月15日の間は、税務署がとても混み合うので、できるだけ早い時期から手続きを行なうようにしましょう。
なお経理作業を普段から行なっていないと、確定申告前に1年分の請求書や領収書を一度に集計しなければなりません。この集計作業は税理士などの専門家でも数日はかかる大変煩雑な作業になるので、可能であれば会計ソフトなどを使用して日常的に記帳作業を行なっておくのがよいでしょう。
近年ではクラウド会計ソフトが普及しており、比較的低価格で、申告書の作成だけでなく、収入、経費の集計段階で銀行取引を自動で読み込むなどの付帯機能やサポートが付いています。
会計や税金の知識については自信が無いという方や、すでに確定申告期限ぎりぎりの状態だけどまだ何も手を付けていない…という状態の方は、税理士のアドバイスを受けることも検討してみてください。
①提出や申告に必要な書類を集める
まず、前述した必要書類を集めます。
確定申告では1月1日~12月31日分の計算書類が必要です。そのため12月度の請求書が出揃う1月中旬ぐらいには準備を進めておきましょう。
②確定申告書を作成する
確定申告書の作成には、会計ソフトや国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用すると良いでしょう。
青色申告をしている方を始めとして、取引量が多い場合には、会計ソフトの利用がおすすめです。
国税庁の「確定申告書作成コーナー」は、比較的取引量が少ない方におすすめできます。特徴は以下のとおりです。
- 申告書内での加減算や税率の選択、乗算など、自動で計算してくれる
- 申告書の適切な部分に数字を転記してくれる
- マイナンバーカードなどの準備があれば、電子申告も可能
③税務署に確定申告書を提出する
確定申告書の提出方法は、3通りあります。状況に合わせて選択しましょう。
(1)紙面で提出する方法:税務署等へ持参、または郵送
(2)e-Tax(国税電子申告システム)を利用する方法
(3)税理士に依頼して代理で申告をしてもらう方法
紙面での提出は低コストですが、手間や時間がかかります。
e-Taxは自宅にいながら提出できて便利ですが、原則として、マイナンバーカードおよびマイナンバーカード読取対応のスマートフォン(またはICカードリーダライタ)が必要です。
税理士への依頼は正確かつ安心ですが、費用がかかります。
④所得税や住民税を納める
所得税の主な納税方法は以下のとおりです。3月15日までに納税しましょう。
- 窓口納付(税務署、金融機関で納付)
- 振替納税
- ダイレクト納付
- スマホアプリ納付
- クレジットカード納付
- インターネットバンキング等
住民税は通常1年分の住民税を4分割して納付します。納期限は通常、6月、8月、10月、1月の末日までの4回です。ただし一括での納付も可能です。
確定申告後6月頃に自治体から決定通知書と納付書が送られてきます。主な納税方法は窓口納付(金融機関、自治体で納付)のほか、自治体によって以下のようなさまざまな納付方法があります。お住まいの自治体を確認してみましょう。
- 口座振替
- インターネットバンキング
- スマホアプリ納付
- クレジットカード納付
確定申告は税理士に任せて業務に集中しよう!
確定申告は年に一度であり、手間がかかる上に難解に感じることも多いでしょう。確定申告を専門家に任せれば、安心して本業に注力できます。メリットは多くあるため、一度、税理士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
2024年(令和5年分)の申告に関する最新情報
申告は期限後にも行えますが、ペナルティが発生するため期限内に行いましょう。