「追徴課税(ついちょうかぜい)を払うように言われたが、どうすればいいの」「追徴課税の金額の見積り方がわからない」とお悩みではないでしょうか。
追徴課税とは正しく確定申告をできなかった場合に発生する税金です。支払いを求められた場合は、税理士と相談しながら、なるべく早く対処しましょう。
この記事では追徴課税の特徴や取るべき行動、金額の計算方法などについて解説します。
この記事を監修した税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
追徴課税とは:本来の納税額や期日を守れなかった時に発生する税金
追徴課税とは「本来納める税金が足りなかった場合や、納税の期日を守れなかった場合に、本来の納税額にプラスして徴収される税金」のことです。
また追徴課税のように、本来の納税に加えて徴収される税金のことを「附帯税」といいます。
追徴課税はペナルティーとしての性質が強いので、税務上の損金や会社の経費として計上することができません。
<追徴課税が課される流れ>
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追徴課税の対象
追徴課税の対象になるのは、法人や個人事業主、確定申告が必要になったサラリーマンなどです。
特に副業や相続などについて確定申告を忘れてしまって、追徴課税の支払いを命じられているケースが見かけられます。
追徴課税の支払いを防ぐためにも、常に確定申告の必要があるかどうか注意しましょう。
追徴課税の種類
追徴課税とは、4種類の附帯税を指します。
<追徴課税の種類>
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また追徴課税の支払いを命じられた場合、付帯税に加えて「延滞税」も支払うことが必要です。
過少申告加算税
過少申告加算税とは「確定申告の際に提出した申告書の申告納税額が、本来の納税額より少なかった場合に課せられる税金」です。
ただし、税務調査前に納税の誤りを発見し、自分で修正申告を行なった場合には、過少申告加算税は課されません。
無申告加算税
無申告加算税とは「法律で定められた期限までに、確定申告を行わなかった際に課せられる税金」です。
法人税の申告期限は原則として「事業年度の終了日、決算日の翌日から2ヶ月以内」なので、それまでに提出しましょう。
ただし以下の要件をすべて満たしていると、無申告加算税を課されません。
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また無申告加算税が5,000円未満の場合は、の賦する必要はありません。
不納付加算税
不納付加算税とは「源泉徴収した所得税を、期限までに支払わなかった際に課せられる税金」です。
法人は従業員の給与から所得税の源泉徴収を行い、一括して国に納める必要があります。
原則として「給与を支払った月の翌月の10日まで」に納付する必要がありますが、一定の要件を満たした法人でその届出をしている場合には「毎年1月と7月の年2回」にまとめて納付することも可能です。
また不納付加算税も、無申告加算税と同様に「納付できない正当な理由がある」などの、一定の条件を満たしている場合は課されません。
重加算税
重加算税とは「上記3つの加算税のいずれかが対象であり、納税を免れようと仮装や事実の隠ぺいを行ったことが発覚した際に課せられる税金」です。
二重帳簿や書類の改ざんなどが認められた場合、重加算税の対象となってしまいます。
重加算税はペナルティとしての性質が強く、税率が高く設定されているので注意しましょう。
延滞税
延滞税とは「定められた期限までに税金が納付されない場合に課せられる税金」です。
追徴課税を課せられたときは、本来の納税額に加えて追徴課税と延滞税を納める必要があります。
追徴課税に時効はない
追徴課税に関しては、時効による免除はありません。追徴課税をしっかりと完納する必要があります。
追徴課税の支払いを放置していると、税務署から財産の差押えが執行されるので、なるべく早く納めるようにしましょう。
追徴課税を課せられたときに取るべき行動
追徴課税を課せられたときは、まず適切なアドバイスをもらうために税理士に連絡しましょう。
税理士と相談して状況が整理出来たら、なるべく早急に一括で追徴課税を支払います。
そうすることで、少しでも安全に罰金を減らすことができるでしょう。
もし追徴課税に意義がある場合、不服申し立てを行うことができます。
とにかく税理士に連絡する【自分でやるのは危険】
追徴課税を課せられた場合には、まずはとにかく税理士に連絡しましょう。
申告書の作成を自力で行うと、どうしても不備が発生してしまいます。税務のプロである税理士に依頼すれば、正確な申告書を作成できるので、結果的に素早く対処することが可能です。
また税理士に依頼すれば申告書の作成だけでなく、税務調査の立ち合いや交渉、アドバイスなども行ってくれます。
もちろん申告書は税務署の無料相談などで、アドバイスを受けながら作成することも可能です。しかし、税務署からの指導を受けながら申告書を作成したにもかかわらず、不備のせいで追徴課税が課されたケースがあります。税理士に依頼するのが一番確実で、安全といえるでしょう。
追徴課税はできる限り早急に一括で支払う
税務署からの通知で追徴課税の対象であると分かった場合には、できる限り早急に一括で支払いましょう。分割納付が認められていないのは、本来なら期日までに支払うべき税金であるからです。
しかし、納付額が多額なため一括納付が厳しい場合には、税務署に相談することで、分割納付や納税の猶予をしてもらえることがあります。
追徴課税の対象となってしまった場合には、一番やってはいけないのは「納付書や催告書の放置・無視」です。追徴課税を納付せずに無視していると、最終催告書や差押予告書などの書面が届き、すぐに預金口座や財産の差押えなどが強制的に行われます。
追徴課税は「本来納付する必要のある税金を、納付していないために課されている税金」なので、支払いは早急に済ませましょう。
しかし、たとえば「追徴課税を支払うと支出が大きくなり、資金繰りが一気に苦しくなってしまう」みたいな場合があるかもしれません。どうしても早急に納付できない場合は、必ず税務署に相談しましょう。
追徴課税に納得いかない場合不服申し立てができる
税務署の追徴課税に納得できない場合は、処分の取り消しや再調査を求めて不服申し立てを行うことが可能です。
不服申し立てには「再調査請求」と「審査請求」の二つの方法があります。
再調査の請求
再調査の請求とは「更正等の通知を受けた翌日から3カ月以内に、税務署長または国税局長に対して処分の見直しを求める手続き」です。
しかし、更正処分等のと見直しを判断する者が同一であることから、更正処分の決定が覆ることはほとんどありません。
審査請求
審査請求とは「更正処分の通知を受けた翌日から3カ月以内に、国税不服審判所長に処分の見直しを求める手続き」です。国税不服審判所は税務署とは別の行政機関であることから、異なった立場から主張を受けてもらえるというメリットがあります。
更正処分に不服があった場合、再調査請求か審査請求にするかは納税者の判断で選択可能です。また再調査請求を経て、審査請求をすることもできます。
追徴課税はいくら?税率や計算方法【具体例で解説】
追徴課税は種類や条件によって異なっており、納税額も様々です。
追徴課税が大体いくらかかるのか把握しておくことで、資金繰りで苦しまないで済むかもしれません。
過少申告加算税
【過少申告加算税の税率】
修正申告をしたタイミング | 追加税額:50万円以下 | 追加税額:50万円超 |
---|---|---|
税務調査に関する事前通知前 | なし | なし |
事前通知後から税務調査まで | 5% | 10% |
税務調査後 | 10% | 15% |
※令和6年1月1日以降に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)について、税務調査等で帳簿の提示又は提出を求められた際、帳簿の提示等をしなかった場合および帳簿への売上金額の記載が本来記載等すべき金額の2分の1未満だった場合は、納付すべき税額に対して10パーセントの割合を乗じて計算した金額が、帳簿への売上金額の記載等が本来記載等すべき金額の3分の2未満だった場合は納付すべき税額に対して5パーセントの割合を乗じて計算した金額が、加算されます。
【過少申告加算税の計算例】
本来の納税額は300万円であったが50万円として申告しており、税務調査が行われてから納税したような場合は、次の通りです。
300万円(本来の納税額)-50万円(納付済の税額)=250万円(不足の税額)
250万円のうち、50万円までが10%、残りの200万円が15%の税率です。 50万円×10%=50,000円 (250万円-50万円)×15%=300,000円 過少申告加算税:50,000+300,000円=350,000円 不足額250万円に加えて、過少申告課税350,000円と延滞税を納める流れになります。 |
無申告加算税
【無申告加算税の税率】
修正申告のタイミング | 追加税額:50万円以下 | 追加税額:50万円超300万円まで | 追徴税額:300万円超 |
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税務調査に関する事前通知前 | 5% | 5% | 5% |
事前通知後から税務調査まで | 10% | 15% | 25% |
税務調査後 | 15% | 20% | 30% |
※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)について、税務調査等で帳簿の提示又は提出を求められた際、帳簿の提示等をしなかった場合および帳簿への売上金額の記載等が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は、納付すべき税額に対して10パーセントの割合を乗じて計算した金額が、帳簿への売上金額の記載等が本来記載等すべき金額の3分の2未満だった場合は納付すべき税額に対して5パーセントの割合を乗じて計算した金額が、加算されます。
※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)について、税務調査等により、期限後申告書の提出があった場合において、その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前の日までの間に、所得税について無申告加算税または重加算税が課されたことがある場合やその期限後申告書に係る年分の前年および前々年の所得税について無申告加算税もしくは無申告加算税に代えて課される重加算税が課されたことがあるときまたは課されるべきと認められるときには、納付すべき金額に、10パーセントの割合を乗じて計算した金額が、加算されます。
【無申告加算税の計算例】
本来の納税額は300万円であったが、確定申告をしておらず、税務調査によって指摘されて納付した場合、次の通りです。
300万円の内、50万円が15%、残り250万円が20%の税率です。
無申告加算税:50万円×15%+250万円×20%=575,000円 本来の納税額300万円に加え、無申告加算税として575,000円と延滞税を納める流れになります。 |
不納付加算税
【不納付加算税の税率】
納付のタイミング | 税率 |
税務署から指摘を受ける前(告知前) | 5% |
税務署からの指摘後 | 10% |
なお、計算した不納付加算税の金額が、5,000円未満であれば、免除されます。
【不納付加算税の計算例】
本来納めるべき源泉所得税が200,000円であったが納付していなかったことに、自分で気づき、税務署から指摘を受ける前に納付した場合は、次の通りです。
無申告加算税:20万円×5%=10,000円
本来の納税額20万円に加え、無申告加算税として1万円と延滞税を納める流れになります。 |
重加算税
【重加算税の税率】
税金の種類 | 税率 |
過少申告加算税・不納付加算税 | 35% |
無申告加算税 | 40% |
<注意点>
- 過去5年内に、更正・決定予知による無申告加算税、もしくは重加算税の賦課があった場合には、さらに10%加算する
- スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関して生じる仮装隠蔽があった場合の申告漏れについては、重加算税を10%加算する(令和3年度改正)
【重加算税の計算例】
仮装隠蔽によって、本来100万円支払うべきところを無申告のままでいたが、税務調査でそれを指摘されて追徴課税を支払った場合は、次の通りです。
重加算税:100万円×40%=40万円
本来納めるべきであった納税額100万円に加え、重加算税として40万円と延滞税を納める流れになります。 |
延滞税
【延滞税の税率】
納付の時期 | 税率 |
納付期限の翌日から2ヶ月以内 | 年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合 |
納付期限の翌日から2ヶ月超 | 年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合 |
納付期限から2ヶ月以内
[令和3年1月1日から令和3年12月31日まで] |
年「2.5%」(延滞税特例基準割合+1%) |
納付期限から2ヶ月超
[令和3年1月1日から令和3年12月31日まで] |
年「8.8%」(延滞税特例基準割合+7.3%) |
納付期限の翌日から2ヶ月以内
[令和4年1月1日から令和6年12月31日まで] |
年「2.4%」(延滞税特例基準割合+1%) |
納付期限の翌日から2ヶ月超
[令和4年1月1日から令和6年12月31日まで] |
年「8.7%」(延滞税特例基準割合+7.3%) |
<注意点>
延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1パーセントの割合を加算した割合をいいます。各年度における延滞税の税率を知りたい方は、次の記事を参照してください。
参考:延滞税の割合|国税庁 |
【延滞税の計算例】
令和6年に納付すべき税額が365万円で、納期限後90日後に全額を納付した場合は次の通りです。
初めの2か月間(60日間)が2.5%で、残りの1か月間(30日間)が8.8%の税率です。
365万円×2.4%×60日÷365日=144,00円 365万円×8.7%×30日÷365日=26,100円 延滞税:14,400円+26,100円=40,500円 本来納めるべき納税額365万円に加えて、延滞税として40,500円と加算税を納める必要があります。 |
追徴課税が支払えない場合どうなる?対処方法を知ろう
いきなり追徴課税の支払いを求められても、支払うことができない場合もあるでしょう。
税務署からの連絡を無視していると財産の差押えが行われてしまいます。
しかし、一部の該当者については2年間の猶予をもらうことが可能です。
もし支払えない場合でも、税務署に支払う意思だけは示しておきましょう。
最悪の場合財産の差押えが強制執行される
追徴課税を納付しないで放置していると、税務署によって財産が差押えられてしまうかもしれません。
【差押えの流れ】
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【差押えの対象となる財産】
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ただし、次のことに留意する必要があります。
- 国内の行政権の及ぶ地域でしか、その効力が及ばない
- 財産が滞納者に帰属していれば、名義又は所持者が誰であるかは問わない
- 財産が実質的に滞納者に帰属していても、登記(登録)の名義が滞納者でない場合には、差押えの登記(登録)ができないので、その名義を滞納者に変更する必要がある
最大2年間の猶予をもらえる制度がある
事前に申請手続きをすることで、追徴課税を支払う猶予期間が与えられる制度があります。
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換価の猶予
換価の猶予では、延滞税の全額または一部が免除されます。
猶予されるもの |
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期間 | 1年間の分納 |
要件 | 追徴課税を納税すると「事業の継続」または「生活の維持」が困難になる可能性がある |
申請期限 | 猶予を受ける追徴課税の納付期限から6ヶ月以内 |
納税の猶予
納税の猶予では、猶予期間中の延滞税の全額または一部が免除されます。
猶予されるもの | 追徴課税の納税 |
期間 | 原則として1年以内で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができる期間とされている |
要件 |
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申請期限 | 修正申告書と納税の猶予申告書を同時に提出 |
支払えないと思ったら納付する意思だけでも示そう
追徴課税を支払うが難しいと思ったら、税務署に納付する意思だけでも示すべきです。場合によっては、修正申告をする前に支払う意思を示すために、税理士に相談しましょう。
追徴課税が発生した場合に、一番やってはいけないのは税務署からの連絡の無視です。税金の取り立ては非常に厳しく、財産を差押えられてしまうので注意しましょう。
監修税理士からのコメント
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
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追徴課税を支払う際に税理士の存在は欠かせません。少しでも円滑で、安全に手続きを進めるために税理士に依頼しましょう。
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