所得税法では所得を10の種類に分けています。そのうちのひとつ「譲渡所得」は、建物や土地、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって発生する所得です。
譲渡所得の税率や計算方法、また、譲渡所得にかかる税金を節税する方法について見ていきましょう。また、譲渡によって損失が出た場合に適用される特例についても解説します。
この記事の監修税理士
菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区
譲渡所得とは
譲渡所得は譲渡した資産や所有期間などによって課税方法が異なり、譲渡であっても課税されないことがあります。ここでは譲渡所得について区分や資産の内容などを簡単に、わかりやすく解説します。
資産の譲渡により得た所得のこと
譲渡所得とは土地や建物、株式などの資産の譲渡によって発生した所得のことで、資産の種類や所有期間などにより、計算方法が違います。土地や建物、株式などの譲渡は申告分離課税で給与所得などとは別に計算されます。一方車や貴金属、宝石などの譲渡は総合課税で給与所得などと合計して税金が計算されます。
また所有期間によって短期と長期に区分され、税率や計算方法が違います。譲渡所得は「何を譲渡したのか」「いつ譲渡したのか」「所有期間は何年か」によって6つに区分されます。以下は譲渡所得についてまとめたものです。
譲渡した資産の種類 | 所有期間の判定日 | 所有期間 | 譲渡所得の区分 | 課税方法 |
土地や建物など | 譲渡の年の1月1日現在 | 5年以下 | 短期譲渡所得 | 申告分離課税 |
5年超 | 長期譲渡所得 | |||
株式など | - | 上場株式等に係る譲渡所得 | 申告分離課税 | |
一般株式等に係る譲渡所得 | ||||
車や宝石などの一般の資産 | 譲渡の日現在 | 5年以下 | 短期譲渡所得 | 総合課税 |
5年超 | 長期譲渡所得 |
資産を「譲渡」するとは
譲渡とは有償無償関係なく所有資産を移転させる行為のことです。売買だけでなく例えば「交換・競売・収用・贈与・財産分与・寄付」なども譲渡になります。これら以外にも以下の4つについても譲渡があったものとされます。
|
「譲渡所得」となる資産
譲渡所得の対象となる資産は土地・建物・株式・ゴルフ会員権・宝石・船舶・車などです。ただし棚卸資産や貸付金・売掛金などの金銭債権は除外されます。総合課税になる資産と分離課税になる資産の具体例は以下のものがあります。
課税方法 | 具体例 |
総合課税 |
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申告分離課税 |
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対象外 |
|
所得税が課税されない資産
資産の譲渡であっても課税されない所得があります。譲渡所得となる資産の中に車がありますが、車を下取りに出した時に確定申告をした経験はあるでしょうか。ほとんどの人が確定申告をしていないでしょう。
それは基本的には確定申告が不要だからです。個人が所有する通勤用などの車の売却に関しては確定申告が必要ありません。他には具体的に以下のような所得についても課税されません。
所得 | 内容 |
生活用動産の譲渡による所得 | 家具、通勤用の車、衣類などの生活に通常必要な動産 |
強制換価手続により資産が競売などをされたことによる資産 | 債務の返済が著しく困難で、滞納処分などの強制換価手続によって資産を譲渡、強制換価手続の執行が避けられない場合で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたもの |
地方公共団体に対して財産を寄付した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄付で国税庁長官の承認を受けた場合の所得 | 文化財保護法により指定されている重要文化財を国や地方公共団体などに譲渡した場合 |
財産を相続税の物納に充てた場合の所得 | 財産を相続税の物納に充てた場合は、許可限度額まではその財産の譲渡はなかったものとみなされる |
土地や建物を売るときの譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算は複雑ではなく、エクセルなどでも計算が可能です。譲渡所得でわかりにくいのは計算式ではなく収入金額や取得費、課税方法がどれになるかです。また相続した場合は取得費や取得時期を引き継ぎます。
ここでは譲渡所得の計算に必要な収入金額や取得費、譲渡費用などをわかりやすく丁寧にご紹介します。
譲渡所得の計算式
土地や建物を譲渡した時は分離課税の譲渡所得になります。分離課税の譲渡所得の金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を減じ特別控除を減じます。計算式にすると以下になります。
譲渡所得 = 収入金額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額 |
収入金額・取得費・譲渡費用・特別控除額についてそれぞれ確認していきます。
収入金額とは
収入金額は土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金額で、まだ入金されていない未収入金や精算金も含まれます。いつの時点で譲渡の日になるかがポイントです。
譲渡の日は原則「資産の引渡しがあった日」ですが、「契約効力発生の日」を選択することもできます。どちらかの日に代金決済が完了をしていなくても、入金されていない未収入金も収入金額になります。
忘れがちなのが精算金です。年の途中で売買された場合、固定資産税の精算をすることが多いですが、固定資産税の精算金も収入金額になります。固定資産税の精算金は売買契約書に記載されていないことがあるので、忘れないようにしましょう。
取得費とは
取得費は、原則として資産の取得に要した金額(取得価額)に設備費や改良費を加えた合計金額です。譲渡した建物のように、時の経過によって価値が減少する資産は、取得価額から減価償却費相当額を差し引いたものが取得費になります。
贈与や相続などによって取得した土地や建物を売却する時は、原則として前所有者の取得費や取得時期を引継ぎます。前所有者の取得費が不明な場合は、収入金額の5%を取得費とすることができます。取得費の金額が判明しているが、概算取得費(収入金額の5%)の方が多い場合は概算取得費を選択できますが、他の取得に要した金額などは重複できません。
取得価額や設備費、改良費以外に取得費に含まれる主なものは以下になります。固定資産税やすでに事業所得などの必要経費に算入されたものは取得費にはなりません。
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譲渡費用とは
譲渡費用は土地や建物を売るために直接かかった費用です。主に以下のものが譲渡費用になります。
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特別控除額とは
土地や建物を譲渡した場合、一定の要件を満たせば所得から控除される特別控除額があります。特別控除の内容と特別控除額については以下です。
特別控除の内容 | 特別控除額 |
収用等により土地建物を譲渡した場合 | 5,000万円 |
マイホ-ムを譲渡した場合 | 3,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 | 1,500万円 |
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 | 1,000万円 |
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 | 800万円 |
土地や建物の譲渡所得にかかる税率と計算方法
土地や建物などの資産を譲渡した場合、税率は「資産を所有していた期間」によって異なります。土地などの不動産に関しては、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかが税率を決定する基準となるので注意しましょう。
所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」の税率
譲渡した年の1月1日時点において譲渡した土地や建物の所有期間が5年以下である場合は、「短期譲渡所得」の税率が適用されます。短期譲渡所得にかかる税金の種類と税率は以下の通りです。
- 所得税:課税短期譲渡所得金額×30%
- 復興特別所得税:所得税額×2.1%
- 住民税:課税短期譲渡所得金額×9%
なお、課税短期譲渡所得金額は以下の式で求めます。
- 課税短期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除
所有期間が5年を超える場合の「長期譲渡所得」の税率
譲渡した年の1月1日時点において譲渡した土地や建物の所有期間が5年を超える場合は、「長期譲渡所得」の税率が適用されます。長期譲渡所得にかかる税金と税率は以下の通りです。
- 所得税:課税長期譲渡所得金額×15%
- 復興特別所得税:所得税額×2.1%
- 住民税:課税長期譲渡所得金額×5%
なお、課税長期譲渡所得金額は以下の式で求めます。
- 課税長期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除
10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホ-ムを売却する場合は、長期譲渡所得よりも低い税率を適用できます。この特例に該当する場合の所得税率は以下の通りです。
- 課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下のとき:課税長期譲渡所得金額×10%
- 課税長期譲渡所得金額が6,000万円を超えるとき:(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円
この特例が適用されるためには、以下のすべての条件を満たしていなくてはなりません。
- 自分が居住する家屋、あるいは家屋と敷地を売ること
- かつて居住していた不動産を売る場合は、居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること。ただし、家屋を取り壊す場合は、取り壊された年の1月1日時点において所有期間が10年を超え、譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、家屋を取り壊してから譲渡契約を締結する日まで貸駐車場などの別の用途に使用していないこと
- 売却した年の1月1日時点において家屋・敷地ともに所有期間が10年を超えていること
- 売却した年の前年と前々年において、この特例が適用されていないこと
- 対象となる不動産に関して、マイホ-ムの買い換えや交換の特例が適用されていないこと。ただし、マイホ-ム売却の3,000万円の特別控除は同時に利用することができる
- 親子や夫婦、生計を一にする親族、売却前・売却後も同居する親族、内縁関係にある人などに売却していないこと
所有期間はいつが始まり?
売買で不動産を取得した場合は、引き渡しがあった日あるいは売買契約を締結した日が所有期間の始まりの日です。どちらを取得日とするかは法律で決まっていますが、他から取得した資産については、どちらを取得日にするかを納税者自身で決めることができます。
自分で建設した場合は建設が完了した日、業者に依頼して建設した場合は引き渡し日がそれぞれ取得日です。一方、相続や贈与により不動産を取得した場合は、被相続人や贈与者が不動産を取得した日が取得日となります。そのため、相続・贈与を受けた瞬間から長期譲渡所得に該当するケ-スもあるでしょう。ただし、限定承認による相続・取得に関しては、相続人あるいは取得人が取得した日が取得日となります。
土地や建物の譲渡所得にかかる税率の一覧表
上記で説明した税率を一覧表にしたものが以下です。
譲渡所得のシミュレーション
土地や建物を売った場合、税金がどのくらい発生するかシミュレーションしてみましょう。下記のような土地と建物を売却するとします。
(単位:万円)
譲渡資産 | 収入金額 | 取得費 | 減価償却費相当額 | 譲渡費用 | 特別控除額 |
土地 | 2,000 | 1,200 | - | 60 | - |
建物 | 1,000 | 2,000 | 1,100 | 40 | - |
長期と短期だった場合で、所得税額に以下のような違いが現れます。ほぼ倍額違うことがわかりますね。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
収入金額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
取得費 | 2,100万円 | 2,100万円 |
譲渡費用 | 100万円 | 100万円 |
特別控除額 | 0円 | 0円 |
課税所得金額 | 800万円 | 800万円 |
所得税 | 2,450,400円 | 1,225,200円 |
住民税 | 720,000円 | 400,000円 |
税金の合計 | 3,170,400円 | 1,625,200円 |
譲渡の際に使える特例について
先程、簡単に触れましたが、譲渡所得の税金を計算する際には特別控除などの特例があります。上手に活用すれば所得税や住民税などを大幅に引き下げることができるので、ぜひ確認しておきましょう。また、特例は組み合わせて適用できることがあるため、複数の条件に該当する場合はさらに節税することができます。
譲渡によって利益が発生した場合に利用できる特例
譲渡価額が取得や譲渡にかかった費用よりも高いと、利益が生じます。利益に対しては所得税や住民税が発生しますが、特例が適用できれば課税対象額を減らすことが可能です。利益が生じたときに利用できる特例を紹介するので、条件に該当する場合はぜひ活用して課税対象額を減らしましょう。
3000万円特別控除の特例
マイホ-ムを売却した場合は、最大3,000万円の特別控除が適用されます。ただし、前年あるいは前々年に同じ特別控除が適用されている方は、特例を受けることはできません。また、住宅ロ-ン控除との併用もできないので、どちらのほうが節税効果が高いか計算してから利用しましょう。
例えば5,000万円で購入したマイホ-ムを7,000万円で売却し、譲渡費用に500万円かかったとすると、特別控除適用前の譲渡所得は以下の通りです。
特別控除が適用されないときは、1,500万円が課税対象額となります。しかし、マイホ-ムを売ったときの特例が適用されることで課税対象額全額が非課税になり、所得税も住民税もかかりません。
特定居住用財産の買換え特例
「特定居住用財産の買換え特例」とは、マイホ-ムを買換えた際に、元の住宅の売却価格よりも新規購入価格が高額な場合には、次回売却するときまで課税が繰り延べられるという特例です。ただし、この特例は2021年12月31日までにマイホ-ムを売却し、以下の全ての要件を満たしている場合のみ適用されます。
- 現在住んでいる住宅を売却すること、あるいは、以前に住んでおり、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却すること
- 売却した前年と前々年に同じ特例を適用していないこと。あるいは、3,000万円の特別控除や10年超所有軽減税率の特例、譲渡損失の繰越控除を適用していないこと
- 売却価格が1億円以下であること
- 新規購入する住宅の床面積が50平方メ-トル以上で、土地の面積が500平方メ-トル以下であること
- 売却した年と前後の年の3年間の間に新規購入すること
- 新規購入する住宅が耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は一定の耐震基準を満たすものであること
- 新規購入する住宅が耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、又は、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること
- 売却した相手が親子や同居する家族などではないこと
- 売却した事実を確定申告すること
譲渡損失が発生した場合に利用できる特例
取得費と譲渡費用の合計が売却価格よりも高額な場合は、譲渡によって損失が生じたと考えられます。しかし、この損失を利用して節税につなげることが可能です。
マイホ-ムを買い換えた場合に譲渡損失が生じた場合
マイホ-ムの買い換えで譲渡損失が生じた場合は、一定の条件を満たせば他の所得から控除することができます。この特例の対象になるのは、譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産の譲渡です。
自分が住んでいるマイホ-ムを譲渡した場合や、住んでいたマイホ-ムを住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合に、当特例制度を使えます。損失を控除しきれなかった場合は、譲渡の翌年以後3年内ならば繰り越して控除することが可能です。
例えば買い換えで2,000万円の損失が出たとしましょう。その年の課税所得額が500万円ならば全額が控除対象となります。また、翌年以降3年間の課税所得額に対しても、1,500万円を上限として控除することが可能です。
住宅ロ-ンが残っているマイホ-ムを売却して譲渡損失が生じた場合
住宅ロ-ンが残っているマイホ-ムを売却して譲渡損失が生じた場合も、一定の条件を満たせばその年の他の所得から控除することができます。控除しきれなかった場合には、翌年から3年以内ならば繰り越して控除することが可能です。
なお、この特例に関しては、マイホ-ムを買い替えないときでも適用されます。ただし、次のすべての条件を満たしている場合のみです。
- 自分が住んでいるマイホ-ムを譲渡すること。以前に住んでいたマイホ-ムを譲渡する場合は、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
- 家屋を取り壊す場合は、取り壊した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること。なおかつ、家屋を取り壊してから1年以内に譲渡契約を完了し、居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること。家屋を取り壊してから譲渡契約する日まで貸駐車場などのその他の用途に用いていないこと
- 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 譲渡契約の前日において、住宅ロ-ンの返済期間が10年以上残っていること
- マイホ-ムの譲渡価額が住宅ロ-ン残高より少ないこと
例えば5,000万円で購入し、まだ住宅ロ-ンが4,000万円残っているマイホ-ムを3,000万円で売却したとしましょう。マイホ-ム譲渡にかかった費用が500万円ならば、以下の金額の損失が生じたことになります。
この年の課税所得額が500万円ならば全額が控除対象となり、さらに翌年から3年にわたって1,000万円を上限として繰り越し控除されます。
不動産譲渡所得の確定申告
不動産を譲渡した場合、確定申告が必要になることが考えられますが、では売却損が出ても確定申告が必要になるのでしょうか。ここでは不動産譲渡の確定申告と必要書類について見ていきましょう。
売却益が出た場合
会社員の場合は給与所得・退職所得以外に20万円超の所得があると確定申告が必要になり、個人事業主の場合は基礎控除額などの所得控除額を超える所得があると基本的に確定申告が必要です。不動産の売却益は高額になることが多く、不動産の売却で利益を得た場合には多くのケ-スで確定申告の義務が生じます。
そのため不動産譲渡で売却益が出たときも、忘れずに確定申告をしましょう。売却益は「課税譲渡所得」に区分されます。
売却損が出た場合
売却損が出た場合は、原則として確定申告は不要です。しかし、損失を他の所得と損益通算したり翌年以降に繰り越したりするためには確定申告が必要となります。損失を無駄にしないためにも、必ず確定申告をするようにしましょう。
確定申告時に必要な書類
譲渡所得を確定申告する時には、以下の書類が必要となります。
- 確定申告書B
- 申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 購入時や売却時の売買契約書
- 仲介手数料などの領収書
- 譲渡する不動産の登記事項証明書
相続した土地や建物を売却する場合
相続した土地や建物を所有することもできますが、固定資産税が毎年発生することなどを考えて、売却するという選択も考えられるでしょう。相続した不動産の売却益に関しても、特例が適用されて大幅な節税が可能なケ-スがあります。どのような条件下で特例が適用されるのかについて見ていきましょう。
相続した土地・建物に居住している場合
相続によって所有した土地・建物に居住していた場合は、売却によって生じた譲渡所得は一定の条件を満たせば以下の特例が適用されます。
- マイホ-ム売却に関する3,000万円の特別控除
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買換え特例
- 譲渡損失あるいは買換え損失における繰越控除
この場合、取得額は被相続人が購入したときの金額となります。例えば親が2,000万円で購入した住宅を7,000万円で譲渡し、譲渡の際に500万円の費用がかかったとしましょう。マイホ-ム売却に関する3,000万円の特別控除が適用されると、課税所得額は以下のように計算できます。
10年以上にわたってこの住宅を所有しているならば、10年超所有軽減税率が適用されて、所得税は以下のように計算できます。
相続財産を譲渡した際に利用できる取得費加算の特例とは
相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を過ぎる日までの間に相続財産を売却した場合は、相続税額のうちの一定の金額を上限として譲渡の際の「取得費」として加算することが可能です。
一定の金額は、以下の計算式で求められます。
相続した土地・建物に居住していない場合
マイホ-ム売却に関する3,000万円の特別控除などの特例を適用できるのは、住んでいる住宅を売却した場合や、以前に住んでいて住まなくなってから3年目の12月31日までに売却した場合です。
そのため相続した不動産に居住していない場合には、基本的に特例の適用がなく、そのまま課税されます。
相続時に「小規模宅地等の特例」を利用している場合
相続税を減額できる特例として「小規模宅地等の特例」があります。この特例を適用している場合は、不動産を売却する際に注意が必要です。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が居住用や事業用、貸付用として使っていた土地を、一定の要件を満たす人が相続する場合に適用できる特例制度です。
特例を適用できる要件や面積は土地の用途等によって異なりますが、相続税の計算で使う土地の価格を最大80%減額できます。節税効果が大きく、相続税の節税対策として活用されることも多い特例制度です。
小規模宅地等の特例を利用している場合の売却時のデメリット
小規模宅地等の特例が適用されると、評価額が最大80%減額されるため、相続税が大幅に減額されます。しかし、相続税が減れば譲渡所得の所得税の計算で計上できる取得費も少なくなるので、ト-タルで見るとどちらが良いのかはケ-スバイケ-スと言えるでしょう。小規模宅地等の特例を適用した場合としない場合で所得税・相続税等を計算し、比較してから特例を適用するか決めてください。
株式を譲渡したときの譲渡所得の計算方法
株式を譲渡したときにも税金がかかります。株式の譲渡所得の課税方法には所有期間は関係なく、上場株式等と一般株式等の区分が必要になります。ここでは株式を譲渡したときの譲渡所得の計算方法について解説します。
株式を譲渡する時にも所得税がかかる
株式を譲渡するときにも所得税がかかり、所得区分としては譲渡所得・事業所得・雑所得のいずれかに分類されます。株式の譲渡による所得は、他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税の対象です。
さらに株式の譲渡による所得は「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に分けて計算します。所得税の税率はどちらも同じですが、両者の間で損益を通算することはできません。
「株式等」・「上場株式等」・「一般株式等」の違い
株式等とは、株式や合名会社合資会社などの社員の持分、公社債などを総称したものです。
上場株式等とは株式等のうち金融商品取引所に上場されている株式等や店頭売買登録銘柄として登録されている株式、国債及び地方債などのことをいいます。
一般株式等とは株式等のうち、上場株式等以外のものです。
詳細は下記のリンクからチェックしてください。
株式等の譲渡所得の金額と税額を求める計算式
株式等の譲渡所得の金額は上場株式等に係る譲渡所得等、一般株式等に係る譲渡所得等のどちらも同じ金額と税率になります。
区分 | 計算方法 | 税率 |
上場株式等に係る譲渡所得等 | 総収入金額 - 必要経費(取得費+売買委託手数料等) | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
一般株式等に係る譲渡所得等 |
譲渡所得に関するまとめ
ここまで譲渡所得について説明してきましたが、譲渡所得についてまとめると以下になります。
- 土地や建物などの資産を譲渡した場合、税率は資産を所有した期間によって異なる
- 土地や建物の不動産などの譲渡所得と株式などの譲渡所得は申告分離課税
- 譲渡でも通勤用の車など生活用動産の譲渡は課税されない
- 不動産の譲渡は売却損が出ても確定申告した方が良い
児童手当の現況届に譲渡所得の有無を記載する項目があるので、譲渡所得が有った場合には「有」にしましょう。
また、不動産や株式などにかかる税金は課税方式の違いや期間の違いによって計算方法が変わり、かなり複雑です。もしよく分からない場合は税金の専門家である税理士に相談してみることをお勧めします。
監修税理士からのコメント
菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区
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この記事の監修税理士
菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区