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特定口座は確定申告が不要? 確定申告をして還付金をもらおう

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最終更新日: 2024年06月28日

特定口座内で生じた利益に課される税金については、確定申告が不要だという話を聞いた経験はないでしょうか?

株の売買や配当で得た利益を確定申告するかどうかの判断は、特定口座の使用の有無によって異なります。

結論から言うと、源泉徴収あり」の特定口座を利用している人は、原則確定申告は不要です。ただし20万円以下の利益であっても、自動的に納税されてしまう点に注意しましょう。この場合、確定申告をしても還付を受けられません。

特定口座でどんな場合に確定申告が必要になるのか、還付を受けられるのはどんなときかをまとめました。

この記事を監修した税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

特定口座(源泉徴収あり)は確定申告が不要!

特定口座、非課税口座、一般口座の違い
証券会社で開設できる口座と確定申告の有無

特定口座とは株や投資信託をはじめる際に証券会社で開設する取引口座のひとつです。「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、どちらか好きな方を選択できます。

特定口座(源泉徴収あり)は基本的に確定申告しなくて良い

源泉徴収ありの特定口座を選択すれば、譲渡益に対して課される税金があらかじめ差し引かれた上で口座に振り込まれます。そのため、確定申告は必要ありません

株式投資では譲渡益以外にも配当金や分配金も利益の源です。この配当金や分配金も、確定申告をしなくとも、源泉徴収ありの特定口座で得た売買益との損益通算が可能です。

損益通算した結果、課税所得が減ったため源泉徴収額に過払い金が生じる場合があります。この場合、源泉徴収ありの特定口座を利用していれば自動的に還付金が振り込まれるので手続きが楽です。

源泉徴収「あり」か「なし」かどうかが分からない場合、証券会社から交付される「特定口座年間取引報告書」の「源泉徴収の選択」欄を確認しましょう。

特定口座(源泉徴収あり)で確定申告して還付を受けられるケース

特定口座(源泉徴収あり)で確定申告したほうが有利な場合

源泉徴収ありの特定口座でも、条件によっては確定申告することで還付を受けられる場合があります。以下で紹介する3つの事例のどれかに当てはまると、確定申告によってメリットが得られるので、どんな風に有利になるか確認してください。

他社口座でも取引があり、どちらかが損失が出た場合

一般口座や他社の特定口座など、2社以上の口座で株や投資信託の取引をしており、その口座で生じた損失と損益通算する場合、確定申告した方がお得です。

損益と合算し利益が少なくなるため、これまで源泉徴収で支払った金額に過払い分が発生します。

同じ会社内の取引であれば、源泉徴収ありの特定口座では自動で損益通算され還付金を受け取ることが可能です。ただし他社との取引の場合、自動では相殺されないため、確定申告しないと過払い分の還付金を受け取れません

個人が開設できる口座数には制限がなく、複数の証券会社間においても口座の開設は可能です。たとえば、A証券の特定口座(源泉徴収あり)で得られた60万円の利益を、B証券の一般口座で生じた20万円の損失と合算し、その年の売買益を40万円として申告できます。

年間の株式取引額に損失がでた場合

年間の株式取引額に損失が生じた場合、翌年以降3年間その損失を繰越できる制度を「譲渡損失の繰越控除」といいます。

つまりその年の損失を、翌年以降の取引で生じた利益と相殺できるということです。繰越損失と当年度の利益を合算して課税所得が減らせるので、確定申告により還付金を受け取ることが可能です

ただし譲渡損失の繰越控除を行う際は、3年間毎年確定申告を行う必要があります。途中で確定申告を怠ると、翌年度以降は繰越控除ができなくなるので注意してください。

課税所得が695万円以下で配当控除を受けたい場合

源泉徴収ありの特定口座に配当金等を受け入れた場合には、確定申告をしなくとも問題ありません。

ただし配当控除を受けたい場合には、配当控除の規定が適用される「総合課税制度」利用のために、確定申告をする必要があります。

特定口座(源泉徴収あり)の源泉徴収税額は、一律20.315%です。一方、配当控除は所得によって税率が変わる累進課税制度を取っており、課税所得が695万円以下であれば、所得税が20%以下になります。

一定の収入以下で、申告分離課税の税率より総合課税の税率の方が低くなる場合には、総合課税で確定申告すれば還付金を受け取ることが可能です

特定口座は源泉徴収あり・なしのどちらを選べば良い?

源泉徴収あり・なしのどちらを選べば良いか
源泉徴収あり・なしのどちらを選べば良いか

特定口座をこれから開設する場合、源泉徴収あり・なしどちらを開くと良いのでしょうか。結論から言うと、一般的には確定申告の必要が無い特定口座(源泉徴収あり)が便利です。

ただし源泉徴収なしの特定口座を選択したほうが良いケースもあります。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

特定口座(源泉徴収あり)のメリット・デメリット

源泉徴収ありの特定口座の場合、基本的に確定申告は不要なので、確定申告が面倒な人におすすめです。確定申告をするにしても特定口座年間取引報告書があるため、簡単に済ませられます。

注意すべきなのは給与所得者や年金所得者の場合、確定申告によって損してしまう可能性がある点です。

会社員や年金所得者は、給与所得以外で得た所得の合計が20万円以下ならば、確定申告が不要で税金がかかりません。しかし特定口座(源泉徴収あり)の場合は20万円以下の利益に対しても源泉徴収されます。この税金は確定申告をしても還付されません。

確定申告の手間がなくなる分、税金を多く支払うリスクがある点に注意しましょう。

逆に年間の利益が20万円以上であればこのような形で損をすることはなく、確定申告の手間が省けるだけなのでメリットの方が大きくなります。

特定口座(源泉徴収なし)のメリット・デメリット

源泉徴収なしの特定口座を利用した場合、売買益にかかる税額の計算や納税までは行ってくれないため、確定申告が必要です。源泉徴収ありの特定口座で取引する際と比べ、確定申告書の作成や納税手続きなど手間がかかる点はデメリットと言えます。

また確定申告の際には、配偶者控除や扶養控除を受けたい場合、適用の可否を判断するための所得に特定口座(源泉徴収なし)で生じた株の譲渡所得も含まれる点に注意しましょう。また、国民健康保険料の決定に影響を及ぼす場合も。このように確定申告をすると譲渡益が所得額に含まれるため、控除の適用の際に不利になる可能性はあります。

年間の取引実績が20万円以下やマイナスの場合は、税金が課せられないので基本的には確定申告の必要はありません

メリットは株式を売却して得た利益をそのまま丸ごと再投資に充てられる点です。源泉徴収された場合と比べて自由に使えるお金が増え、資金繰りが良くなるでしょう。

なお証券会社側で税金の計算や自動納付はありませんが、売買益の計算や特定口座年間取引報告書の作成は行ってくれます。

確定申告で役立つ「特定口座年間取引報告書」の見方

特定口座で交付される特定口座年間取引報告書

特定口座内で発生した取引は、証券会社が本人に代わって売買内容の記録や損益の計算をしてくれます。この1年間の取引内容や損益をとりまとめた書類が「特定口座年間取引報告書」です。

特定口座年間取引報告書の内容を読み取れば、確定申告書をスムーズに作成できます。

特定口座年間取引報告書とは?

特定口座年間取引報告書とは、特定口座内における1年間の譲渡損益等を集計した報告書です。特定口座年間取引報告書には、以下の内容が記載されています。

  • 勘定の種類
  • 口座開設年月日
  • 源泉徴収の有無
  • 譲渡の対価の額
  • 取得費及び譲渡に要した費用の額
  • 譲渡損益の金額
  • 源泉徴収税額

特定口座年間取引報告書に記載された収入金額や源泉徴収額をそのまま転記すれば良いので、簡単に確定申告書を作成可能です。特定口座年間取引報告書は利用者と、証券会社の営業店を管轄する税務署の双方に、証券会社から提出されます。

特定口座年間取引報告書の見方

特定口座年間取引報告書でまず確認すべきなのは源泉徴収の選択欄です。源泉徴収ありの特定口座を利用していれば「有」に、源泉徴収なしの特定口座では「無」に〇がついています。

原則として「無」に〇があるならば、確定申告が必要です。対して「有」に〇がついていれば、確定申告の必要はありません。どちらの口座を保有しているかわからず、確定申告書を作成すべきか判断できない時は、送られてきた特定口座年間取引報告書の内容をチェックしましょう。

譲渡の対価の額や取得及び譲渡に要した費用、譲渡所得等の金額には年間のトータル額が記載されます。損失の場合には金額の前についている「-」を見落とさないようにしましょう。源泉徴収税の金額は所得税と住民税がそれぞれ別個に表示されます。

特定口座の確定申告のやり方

特定口座の確定申告
特定口座の確定申告

特定口座で確定申告をする場合の必要書類や手続きの流れを解説します。通常の特定口座の確定申告と、繰越控除・損益通算を受ける場合では必要な書類が異なる点に注意してください

確定申告書の作成・提出は、ネットで作成した申告書をそのままネット上で提出できるe-Tax、もしくは国税庁の「確定申告書作成コーナー」の利用が便利です。

特定口座の確定申告に必要な書類

株取引に関する申告を行う際は、確定申告書(第一表、第二表、第三表)が必要です。※確定申告書作成コーナー利用の場合は必要なし

従来は確定申告書の添付書類として特定口座年間取引報告書の提出も必要でしたが、納税者の利便性向上の観点から手続きの簡素化が図られ、平成31年4月1日以降は特定口座年間取引報告書の添付が不要になりました。

確定申告の際は個人番号や本人確認書類も必要なので、必ず持参しましょう。

繰越控除・損益通算に必要な書類

特定口座で繰越控除や損益通算の適用を受けるためには、上記の書類と合わせて以下に挙げる書類も必要です。

上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等を損益通算する場合

  • 確定申告書付表「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する場合

〈譲渡損失の金額が生じた年度〉

  • 確定申告書付表「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

〈譲渡損失の金額が生じた年度より後の年度〉

  • 確定申告書付表「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」

〈繰越控除を受ける年度〉

  • 確定申告書付表「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

特定口座での確定申告の流れ

確定申告は1年間(1月1日~12月31日)の所得や税金を、翌年の2月16日~3月15日の間に申告する手続きになります。申告書の作成はネット上で確定申告書を作れる国税庁のHP(確定申告書等作成コーナー)を利用した方が便利です。確定申告書等作成コーナーでの確定申告書作成の大まかな流れを解説します。

  1. 国税庁の「確定申告書作成コーナー」にアクセスする
  2. 「申告書等を作成する」から「作成開始」をクリック
  3. 税務署への提出方法を選択 ※提出方法はe-taxにより提出するか印刷して税務署に郵送等するか
  4. 「令和〇年分の申告書等の作成」から「所得税」を選択
  5. 「申告書の作成をはじめる前に」の画面に進み、生年月日等を入力、「申告内容に関する質問」に答える
  6. 収入金額・所得金額の入力。配当所得がある場合、課税方法を「総合課税」「申告分離課税」「配当等がない」の中から選択し、「特定口座年間取引報告書の内容を入力する」ボタンをクリック
  7. 特定口座年間取引報告書の内容をもとに、「源泉徴収の有無」「譲渡の対価の額(収入金額)」「取得費及び譲渡に要した費用等」「金融商品取引業者等」の項目を入力
  8. 「上場株式等の譲渡損失の金額を繰越しましたか?」の質問に対して「いいえ」を選択し「入力終了(次へ)」をクリック
  9. 入力した内容に基づいて計算結果が表示されるので、金額を確認し「確認終了」をクリック

なお確定申告の方法がよく分からない場合には、国税庁が提供している以下の資料も参考にしてください。

配当所得で住民税の確定申告を有利にするには?

配当所得で住民税の税額を有利にするには?
配当所得で住民税の税額を有利にするには?

特定口座内で生じた配当所得に対しては所得税15.315%、住民税5%、計20.315%の税金がかかります。利益の20%を税金で徴収されてしまうのは中々の痛手です。できればもう少し税金を安くできないかなと考える人も多いでしょう。実は配当所得では住民税の確定申告を有利にできるので、その方法を紹介します。

所得税と住民税は別々の申告方法を選べる!

確定申告によってその年の特定口座内で生じた利益に対する所得税額と住民税額が確定しますが、所得税と住民税は別々の申告方法を選べます。

たとえば、配当所得に係る所得税・住民税の申告方法は「申告不要」「総合課税方式による申告」「申告分離課税による申告」の3つから選択可能です。

所得税と住民税の申告方法は異なっていても問題ないため、所得税は総合課税で算出し、住民税は申告しない方法も取れます。申告方法の組み合わせによっては税金が安くなる場合もあるので、節税の手段として知っておきましょう。

配当所得において住民税は申告不要を選ぶと有利(課税所得900万円以下の場合)

一般的に確定申告では配当所得に係る所得税は総合課税、住民税は申告不要を選択すると有利です。

総合課税方式で住民税を算出すると、税率が10%で配当控除が2.8%なので実質税率が7.2%ですが、申告不要を選択すれば源泉徴収の5%で済みます。税率が低くなれば当然税金も安くなるため、基本的に住民税は申告不要を選んだ方が有利です。ただし、これは配当金以外の所得も含めた合計所得金額が900万円以下の場合に限られる点に注意してください。

配当金の源泉徴収は住民税5%の他、所得税15.315%も差し引かれています。所得税の税率は累進課税方式を採用しており、所得額が上がるほど税率も上昇する仕組みです。合計所得金額が900万円を超えると税率が15%を超えてくるので、900万円以上の所得があるケースではかえって不利になってしまいます。

譲渡所得の場合、ケースによっては上記の法則が適用されない場合もある点に注意です。損益通算や繰越控除の金額によって課税所得額に変動が生じます。そもそも源泉徴収ありの特定口座で管理していなければ、申告不要の選択は取れません。

住民税で申告不要を選択する場合は手続きが必要

特定口座内で生じた利益について所得税を確定申告し住民税を申告不要とする場合、別途手続きが必要です。何もしなければ所得税と同じ方法を住民税でも取るとみなされてしまいます。

この手続きは住民税の支払先である自治体に対して行う必要がありますが、必要な手続きの方法は自治体によって様々です。ホームページで所得税と住民税の取扱いが異なる場合の対処法を十分に説明している自治体はあまり見受けられません。このため、住民税で申告不要を選択する場合、まずは自治体に問い合わせてみるのがおすすめです。

【まとめ】源泉徴収ありの特定口座なら確定申告が不要!

特定口座(源泉徴収あり)で生じた利益に対しては証券会社で源泉徴収を行ってくれるため、確定申告の必要が無くなります。基本的には源泉徴収ありの特定口座を選択した方が便利と言えるでしょう。

ただし給与所得者や年金所得者の場合、特定口座(源泉徴収なし)であれば税金が発生しない20万円以下の利益に対しても、特定口座(源泉徴収あり)では源泉徴収が課せられてしまう点に注意してください。

また損益通算や繰越控除の適用を受ける際は、確定申告によって税額を少なく抑えられる場合もあります。

もし特定口座で確定申告するならば、判断が難しい部分も多々あるため税理士に相談することをおすすめします。

監修税理士からのコメント

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

給与所得者で上場株式の売買をされている方は、通常源泉徴収ありの特定口座を利用されていて、毎年確定申告をしない方がほとんどだと思います。しかし上記で記載したように、確定申告をした方が税金を軽減できることがあります。またその他にも、配当については申告分離課税ではなく総合課税を選択した方が配当控除を受けられるので有利になったりするケースもあります。最善の方法を選択するためにも、一度ご自身の申告の内容が上記のようなケースに該当していないか、確認してみましょう。

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源泉徴収なしの特定口座や一般口座を利用する場合、確定申告が必要です。確定申告の際は税理士に相談をおすすめします。

書類の作成方法は簡単ではなく、税金の知識があまりない人が1人で行うと申告漏れや記載ミスが発生してしまうかもしれません。そうなると、後で追徴金を支払う必要があるため、損してしまう可能性が高いです。また税金に関する制度は頻繁に改正が行われており、誤った添付書類をつけてしまう危険もあります。確定申告をするなら、プロの税理士の助けを借りた方が良いでしょう。

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高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

高崎文秀(たかさきふみひで)文京区水道橋駅近くで、低価格で品質の高いサービスをご提供する税理士事務所を運営。 起業家向けに月額1万円、決算料なしからの税務顧問を提供する。 創業したばかりでお金と時間に余裕がない、という方でも経理、節税、税務調査などを心配せず、本業に集中して頂き、1日でも早く事業を軌道に乗せて頂くことをコンセプトとしている。 事務所HP : https://ft-taxacc.com/