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租税公課とは 個人事業主が経費にできる税金・できない税金

最終更新日: 2021年03月18日

確定申告を行なう上で分かりにくい勘定科目の一つに「租税公課(そぜいこうか)」があります。「租税公課」とは、簡単に言うと税金や、公的な会費、手数料等を支払った時に使用する勘定科目のことです。この記事では、具体的な税金や仕訳例を挙げ「租税公課」について詳細に解説しています。また、間違えやすい項目についても解説していますので参考にしてみて下さい。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

租税公課(そぜいこうか)とは

租税公課とは
租税公課とは

租税公課とは、租税(消費税や自動車税、事業税、住民税といった国や地方自治体に納める税金)と公課(交通違反反則金や町会費、過料など公の団体に支払う会費や罰金)の総称です。しかし「損益計算書の勘定科目」としての意味もあります。

ここではまず総称としての租税公課について解説していきます。どのようなものが該当するか確認するようにしてください。

租税公課とは

租税公課とは、公租公課と同じ用途で使われる言葉で、自動車税や収入印紙代などの租税と、交通違反反則金などの公課のことを指します。一方で損益計算書の勘定科目としても記載されているため、個人事業主や中小企業の経営者なら聞き覚えのある方も多いはずです。

租税とは

租税とは、国や地方自治体に納める税金のことです。例えば自動車税や所得税、住民税などが該当します。

公課とは

公課とは、公共の団体に支払う会費や罰金のことです。例えば交通違反金や過料などが該当します。

租税公課で経費として計上できるもの

租税公課で経費にできる税金や手数料
租税公課で経費にできる税金や手数料

先の見出しで説明した租税公課の中には、経費としては計上出来ないものもいくつかあります。例えば住民税や法人税、交通違反反則金などです。

そのためここでは、租税公課のうち経費に計上できるものやそれらを計上する時期について詳しく解説していきます。それらを知ることは、正確に確定申告するために非常に重要なので、しっかり覚えておくようにしてください。

租税公課で経費として計上できるもの一覧

勘定科目の租税公課で経費として計上できるものを以下の表でまとめました。まずは租税からです。

  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 自動車取得税
  • 自動車重量税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 事業税・法人事業税
  • 事業所税
  • 印紙税
  • 消費税(税込経理方式の場合)
  • 都市計画税
  • 償却資産税
  • 利子税(国税)
  • ゴルフ場利用税
  • 軽油引取税
  • 申告期限延長に伴う延滞金(地方税)
  • 酒税
  • 地価税
  • 地方特別法人税

公課は以下の2つです。

  • 印鑑証明書や住民票などの発行手数料
  • おおやけの団体に支払う組合費や会費、賦課金

上記が経費として計上できる租税公課になります。ただし全額計上できないものもあるため、注意が必要です。

例えば事業で使っている自動車をプライベートでも使っている場合は、自動車税や自動車所得税、自動車重量税を使用割合に応じて家事按分する必要があります。あくまで事業に関わっている租税公課だけが計上できることを覚えておいてください。

租税公課として経費に計上する時期

租税を経費に計上できる時期は、以下の4つのケースがあります。それぞれ詳しく解説します。各税金がどのケースに当てはまるかも重要です。

申告納税方式による租税

申告納税方式とは、事業者が納めなければいけない税金を、自身で計算して申告したあとに納税する方法です。消費税や事業税、酒税などが該当します。

申告納税方式の租税を計上すべき時期は、申告や更正、決定をした事業年度です。

賦課課税方式による租税

賦課課税方式とは、国や地方自治体が納めないといけない税額を計算して課税する方法です。固定資産税や不動産取得税、自動車税などが該当します。

賦課課税方式の租税を計上すべき時期は、賦課が決定した事業年度です。ただし納付開始日または実際に支払った事業年度で計上した場合は、損金経理のあった事業年度になります。

特別徴収方式による租税

特別徴収方式とは、納税義務者が直接納税するのではなく、事業者などが税金を預かり、納税する方法です。ゴルフ場利用税や軽油引取税などが該当します。

特別徴収方式の租税を計上すべき時期は、申告や更正、決定した事業年度です。ただし申告期限が来ていない租税が含まれる場合で、未払金として計上した場合は、損金経理のあった事業年度になります。

利子税・延滞金

国税の納付期限を延長したことにより課せられた利子税や、地方税の納付期限を延長したことにより課せられた延滞金を計上すべき時期は、支払った事業年度です。ただし未納額を未払金として計上している場合は、損金経理のあった事業年度になります。

消費税を租税公課として経費に計上できる場合

消費税を租税公課として経費計上する可否は、消費税課税事業者が経理方法として「税込経理」と「税抜経理」どちらを採用しているかで変わります。経費や売上を税込価格で計上する「税込経理」を採用している場合は、租税公課として計上が可能です。

一方で税抜価格で計上する「税抜経理」を採用している場合は、消費税は分けて計上されるため、租税公課での計上はできません。

租税公課で経費として計上できないもの

租税公課で経費にできない税金
租税公課で経費にできない税金

租税公課として経費に計上できないものは、以下の5つです。

  • 法人税や法人住民税
  • 加算税や延滞税
  • 罰金
  • 法人税額から控除される所得税、復興特別所得税および外国法人税
  • 事業とは関係のない個人にかかる税金

それぞれ詳しく解説していきます。

法人税や法人住民税

法人税と法人住民税は、企業の所得税と住民税です。事業に関係する税金ではありますが、法人の利益に課税される租税のため、経費計上が認められていません。

そのため「法人税、住民税及び事業税等」の勘定科目で計上してから、申告時に加算処理をするのが一般的です。

加算税や延滞税

加算税や延滞税は、経費計上できる租税で紹介した利子税と同じく「附帯税」の一種です。「附帯税」とは、確定申告が期限までに行われなかった場合や、支払わなければならない税金の納税期限をすぎた場合のペナルティとして課せられる税金になります。

では利子税や延滞金との違いは何でしょうか?それは、納税期限を過ぎる前に、税務署に連絡し許可を得ているかどうかです。無許可で納付期限を過ぎた場合は、ペナルティとして加算税や延滞税が課税され、経費計上が認められなくなります。期限までに納税するのが難しい場合は、必ず連絡して延滞の許可を取るようにしてください。

ただし、例外として海外で課せられた加算税や延滞税は、経費計上が可能です

罰金

交通違反反則金や過料のような、いわゆる罰金は経費計上が出来ません。その理由は、性質的にペナルティとして課せられているためです。

上記で述べた加算税や延滞税にも言えることですが、基本的にペナルティとして課せられているものは経費計上が認められません。

法人税額から控除される所得税、復興特別所得税および外国法人税

源泉徴収された所得税や復興特別所得税、外国法人税は、法人税額から控除することが可能です。ただし、その場合は二重課税を排除する目的の制度のため、経費計上は認められていません。

逆に、これらを経費として計上する場合は、法人税額から控除することはできません。

事業とは関係のない個人にかかる税金

個人事業主の方に課せられる所得税や住民税などの個人にかかる税金は、経費計上ができません。経費に計上できるのは、事業に関わるものだけなので、当然といえます。

事業用の預金などから支払った場合は、事業主貸で計上してください。

租税公課の仕訳例

租税公課の仕訳例
租税公課の仕訳例

ここまでに、租税公課として経費に計上できるものとできないものに関して説明してきました。この見出しでは、上記で説明した税金などを納付する際の仕訳例について解説していきます。

固定資産税

固定資産税は経費への計上が認められている租税です。そのため処理する勘定科目は「租税公課」になります。

例えば事業に要する不動産において26万円の固定資産税が課税され、支払いを各期限ごとに行なう場合は、以下のような仕訳です。

借方 貸方 概要
租税公課260,000 未払金260,000 固定資産税

その後、1期分の65,000円を支払った場合は以下のような仕訳になります。

借方 貸方 概要
未払金65,000 現金65,000 固定資産税

個人事業税

課税された個人事業税12万円を事業用口座から支払った場合の仕訳例は、以下のようになります。

借方 貸方 概要
租税公課120,000 預金120,000 個人事業税

消費税

消費税は「税込経理方式」と「税抜経理方式」どちらを採用しているかで、仕訳が変わります。今回は以下の例でそれぞれの仕訳を紹介していきます。

  • 880円(税込)で仕入れた商品を1,100円(税込)で売る
  • 現金で納税

税込経理方式の仕訳例

税込経理方式の仕訳は以下です。

仕入れ時

借方 貸方 概要
仕入880 買掛金880 仕入

売上時

借方 貸方 概要
売掛金1,100 売上1,100 売上

決算時

借方 貸方 概要
租税公課200,000 未払消費税200,000 消費税

納税時

借方 貸方 概要
未払消費税200,000 現金200,000 消費税

上記のように税込経理方式の場合は、租税公課で経費計上します。

税抜経理方式の仕訳例

税抜経理方式の仕訳は以下です。

仕入れ時

借方 貸方 概要
仕入800

仮払消費税80

買掛金880 仕入

売上時

借方 貸方 概要
売掛金1,100 売上1,000

借受消費税100

売上

決算時

借方 貸方 概要
借受消費税1000,000 仮払消費税800,000

未払消費税200,000

消費税

納税時

借方 貸方 概要
未払消費税200,000 現金200,000 消費税

上記のように税抜経理方式では、租税公課で計上はしません。

印紙税

印紙税は収入印紙を購入することで支払う租税です。印紙税は経費計上が認められているため、租税公課で計上します。ただし収入印紙を購入する場所によって、消費税がかかることがあるので注意が必要です。

消費税がかかる金券ショップとかからない郵便局やコンビニ、それぞれで10万円分ずつ購入した場合の仕訳例を紹介します。

郵便局やコンビニの場合

借方 貸方 概要
租税公課100,000 現金100,000 印紙税

金券ショップの場合

借方 貸方 概要
租税公課100,000

仮払消費税10,000

現金110,000 印紙税

上記のように金券ショップでかかる消費税は、仮払消費税として計上します。

所得税や住民税

所得税や住民税のような個人に課税される税金は、経費として計上することはできません。そのため租税公課ではなく、事業主貸で計上します。

住民税22万円を納付しときの仕訳例が以下です。

借方 貸方 概要
事業主貸220,000 現金220,000 住民税

当然ながら計上しても経費に落とすことはできないので、申告書の作成時に加算処理をします。

事業とプライベート両方に関する税金は按分する

自宅の一部を事業所として使用する場合や、自動車をプライベート用と仕事用の両方で使用している場合はそれらに関する租税公課の一部を経費として計上できます。按分方法については以下のようなものがあります。

  • 事業用として使用しているスペースの面積の割合で按分
  • 事業として作業を行なっている時間の割合で按分
  • 事業用として自動車を使用した日数の割合で按分

例えば、自宅の床面積が50㎡、事業所の床面積が20㎡、固定資産税が50万円の場合には、事業用割合は40%(20㎡÷50㎡)となり、固定資産税の20万円を租税公課として経費に計上できます。

自動車に関して、平日は事業用として使用、土日はプライベート用として使用し、自動車税が21万円の場合には、事業用割合は5/7となり15万円の自動車税を租税公課として経費に計上できます。

上記の固定資産税を例にした場合には、以下のような仕訳を行ないます。なお支払いは事業用口座から行われたものとします。

借方 貸方 概要
租税公課200,000

事業主貸300,000

預金500,000円 固定資産税納付

租税公課で経費になる税金の計算方法

租税公課で経費になる税金の計算方法
租税公課で経費になる税金の計算方法

税金の計算方法はそれぞれ異なります。所得を基準に税額を計算するものもあれば、所得とは無関係に一定の税率で計算するものもあります。計算方法を知れば節税できる税金があるかも知れません。いくつかの税金についてその計算方法を解説していきますので参考にして下さい。

個人事業税

個人事業税は以下の計算式により計算します。

個人事業税 =(収入-必要経費-290万円)× 税率

個人事業税を計算する場合は、一律で290万円の控除が受けられます。したがって、所得が290万円以下であれば個人事業税はかかりません。

また、税率については業種によって異なります。東京都の場合を例に説明すると、物品販売や保険業等の第1種事業は5%、水産業等の第2種業種は4%、弁護士等の士業やデザイン業等の第3種事業は5% (マッサージ等の一部の業種は3%)になります。

固定資産税

固定資産税は以下の式で計算します。

固定資産税=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)

固定資産税評価額は土地や家屋の時価のおよそ70%で、各自治体の調査によって個別に決定されます。場所や面積、形状など、さまざまな要素が評価額に反映され、3年に1度評価の見直しが行なわれることになっています。

また、標準税率は1.4%ですが地域によって異なる場合がありますので、お住まいの地域で確認をお願いします。

不動産取得税

不動産取得税は土地や建物を取得した際に課せられる地方税です。計算式は以下のようになります。

不動産取得税=固定資産税評価額×標準税率(4%)

特例により軽減税率が適用される場合もあります。

確定申告での租税公課の記入方法と注意点

確定申告の租税公課の記入方法と注意点
確定申告の租税公課の記入方法と注意点

租税公課について理解できたら、確定申告での租税公課の記入方法と注意点について知っておかなければいけません。ここでは、確定申告での租税公課の記入方法と注意点について詳細に解説していきます。

国民年金保険料や国民健康保険料は経費ではなく所得控除の対象

国民年金保険料や国民健康保険料は経費になりません。なぜなら国民年金保険料や国民健康保険料は事業に必要な支出ではないからです。しかし、その支払いが個人の負担となることから社会保険料控除という所得控除の対象となります。

所得控除とは、収入から経費を差し引いた所得から控除できる項目のことです。社会保険料控除の他に、医療費控除、配偶者控除、寄附金控除、基礎控除等があります。

社会保険料控除の場合は、納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。したがって、国民年金保険料や国民健康保険料は経費とはなりませんが、経費と同様に所得を減額する効果を有します。

確定申告での租税公課の記入方法

確定申告での租税公課の記入は、個人事業主は青色申告決算書(青色申告の場合)もしくは収支内訳書(白色申告の場合)、中小企業は決算書の中の損益計算書に記載します。記載する金額は、租税公課で経費計上した合計額です。

租税公課に関するまとめ

租税公課で計上できる経費を漏れなく計上しよう
租税公課で計上できる経費を漏れなく計上しよう

この記事では租税公課に関して詳細に解説しています。特に重要なポイントは以下のとおりです。

  • 租税公課とは、経費に計上できる税金や公的な手数料等のこと
  • 経費に計上できる租税公課は基本的に事業に関するもの
  • プライベート用と事業用の両方に関する場合は按分が必要
  • 消費税を経費にできるのは税込経理方式の場合のみ
  • 国民年金保険料や国民健康保険料は経費ではなく控除の対象
  • 経費として計上できる租税公課はその年において確定しているもの

税金や、公的な会費、手数料等の支払いは比較的多額になりやすい項目だと思います。これらを経費にできることを知らずに、そのまま申告してしまうと余計な税金を支払うこととなり損してしまいます。逆に経費にできないものを経費に計上していた場合、税務署から指摘を受け余計な罰則金を支払うことにもなりかねません。

租税公課として経費に計上できるものを理解し、正しい申告を行ないましょう。

この記事を監修した税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

租税公課は経費にできるかどうかの判定が難しい費目と言えます。個人事業主の方の場合、個人事業税を経費に入れていない方や、税込経理方式の方で消費税の納税額を経費に入れていない方などが見受けられます。非常に勿体ないので、一度ご自身の申告内容を見直してみましょう。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP®) 1987年 香川県生まれ 2008年 公認会計士試験合格 2010年 京都大学経済学部経営学科卒業 大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。

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