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個人事業税とは?いつ納付書が届いていくら納付するかを計算シミュレーション

最終更新日: 2024年10月31日

個人事業税は、個人事業主のうち定められた業種に携わる事業者に課せられる税金です。個人事業税の支払い義務が生じるのはどんな業種で、どのくらい支払わなければならないのでしょうか。

税率などの計算方法やシミュレーション、経費計上の方法のほかにも、申告・納付方法などを解説するので参考にしてください。

個人事業税とは?

個人事業税は課税される職種と課税されない職種があります
個人事業税は課税される職種と課税されない職種があります

そもそも個人事業税とはどんな税金なのでしょうか。所得税や消費税を納めているにも関わらず、なぜ、個人事業税の納税義務があるのか、個人事業税がかからない業種にはどんなものがあるのか、説明します。

個人事業税=地方税

個人事業税は地方税の一つで、都道府県に納める税金です。事業を行ううえで利用している、さまざまな公共サービスを維持するための費用負担という意味合いがあります。

とはいえ、すべての個人事業主に個人事業税の課税義務があるわけではありません。個人事業税の納付義務があるのは以下の条件に当てはまる人です。

  • その都道府県に事務所や事業所がある
  • 所得(事業所得+不動産所得)が290万円以上
  • 法律で定める70の職種である

この条件に当てはまらない場合、個人事業税は非課税です。

個人事業税はいくらから発生する?

個人事業税の支払い義務があるのは事業所得と不動産所得を合わせた所得が290万円以上の人です。

これは、個人事業税を計算する際、収入から290万円の事業主控除を差し引くため。売上から必要経費を差し引いた額が290万円を超えなければ、個人事業税を払わなくてもOKです。

詳しい計算方法は、この後の項目で解説します。

なお、個人事業税が0円となった場合、納める税金がないので個人事業税の納税証明書は発行されません。

納付期限は原則8月と11月

個人事業税の納付期限は8月と11月です。納付書の送付は8月頃なので、最初の納税は、納付書が届いたらすぐに行うように準備しておきましょう。

通常、納付額が1万円以内であれば8月に一括払い、それ以上の場合は8月と11月の分割で支払うよう納税額を分けた納付書になっています。

個人事業税がかかる業種は?

個人事業税の支払い義務がある業種は法律で定められています。業種は大きく3つに区分されており、それぞれ税率が異なります。

個人事業税がかかる業種一覧

区分 税率 業種
第一種事業
(37業種)
税率5%
物品販売業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、電気供給業、土石採取業、電子通信事業、運送業、運送取扱業、船舶定係場業、倉庫業、駐車場業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業、飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、両替業、公衆浴場(むし風呂等)、演劇興行業、遊技場業、遊覧所業、商品取引業、不動産売買業、広告業、興信所業、案内業、冠婚葬祭業
第二種事業
(3業種)
税率4%
畜産業、水産業、薪炭製造業
第三種事業1
(28業種)
税率5%
医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業、公証人業、弁理士業、税理士業、公認会計士業、計理士業、社会保険労務士業、コンサルタント業、設計監督者業、不動産鑑定業、デザイン業、諸芸師匠業、理容業、美容業、クリーニング業、公衆浴場業(銭湯)、歯科衛生士業、歯科技工士業、測量士業、土地家屋調査士業、海事代理士業、印刷製版業
第三種事業2
(2業種)
税率3%
あんま・マッサージ又は指圧・あり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業

個人事業税がかからない業種の例

では、個人事業税がかからない業種にはどんなものがあるのでしょうか。

  • ライター
  • システムエンジニア
  • 通訳・翻訳業
  • 保険外交員
  • 漫画家
  • 画家
  • 音楽家
  • スポーツ選手
  • 芸能人
  • 農業

原則、上記に当てはまる業種に個人事業税は発生しません。

非課税の業種が課税される例

先述した業種の場合でも、課税対象となる業種を兼ねている場合は課税対象とみなされることもあります。

<非課税業種でも課税の対象となる例>

  1. 画家がパンフレットの制作などデザインの仕事をした
  2. ライターとデザイナーを兼ねて仕事をしている
  3. システムエンジニアが技術主導などのコンサルティングを行った
  4. 農業従事者が他の農家などから農産物を仕入れて販売した

1と2はデザイン業として課税されます。同様に3はコンサルタント業、4は商品取引業としての課税です。

また、業務の契約の形によって、課税対象とされることもあります。例えば、個人事業主の課税対象外であるシステムエンジニアでも、「請負契約」で仕事をしている場合は請負業の扱いとなり課税対象になってしまいます。

また、個人事業税の対象業種に明記されていませんが、一人親方として建設業を営む大工も、契約形態によって課税対象になる場合があります。

課税されるかどうかの判断は、各都道府県税事務所が行います。その基準は、確定申告や開業届などに記載している内容次第で異なってしまうのです。

都道府県税事務所で判断に迷ったときは「個人事業税のお尋ね」という書類が送付されてきます。事業内容を確認し、個人事業税の課税事業者かどうかを判定するための書類なので、正しい内容で返信するようにしましょう。

個人事業税の勘定科目と仕訳例

個人事業税は租税公課として経費計上できる税金です
個人事業税は租税公課として経費計上できる税金です

所得税や住民税などと異なり、個人事業税は経費計上できる税金です。これは、個人事業税が個人にかかるのではなく、行っている事業に対して課せられているため。では、個人事業税は帳簿でどのように仕訳するとよいのでしょうか。フリーランスの方に多い青色申告で必要な複式簿記での記入方法も説明します。

個人事業税の科目は租税公課

個人事業税を経費計上する際の勘定科目は「租税公課」になります。租税公課には登録免許税や収入印紙代、固定資産税、商工会や同業者組合の会費などが含まれる科目です。

同じ税金でも、所得税や住民税など個人にかかる税金は経費にならないので租税公課には入れられません。青色申告する場合に行う複式簿記では個人的な支出として「事業主貸」として計上することとなります。

個人事業主の簿記で、複合仕訳が便利なのは、事業利用と個人的利用を明確に区分けできるという点にもあります。個人事業主の場合、税金の中でも車両税などで事業利用と個人的利用が混在している場合があります。その場合、事業で使う割合を按分し、事業使用分を租税公課として、私的使用分を「事業主貸」として計上することで、事業支出と私的な支出を区分できるのです。

事業に使った金額や取引の流れがわかりやすいので、今、「いくら使っていくら残っているのか」が分析しやすい、という特徴もあります。

一見すると難しそうな複合仕訳ですが、クラウドの会計ソフトを使えば、自動で複合仕訳での帳簿付けが可能です。「マネーフォワード」や「やよい会計」などのクラウドソフトを使用している方は、一度、試してみてください。

個人事業税の仕訳例

では具体的に、個人事業税を複合仕訳でどのように記載するのか、仕訳例を見てみましょう。

仕訳例1

個人事業税:40,000円
納付方法:事業用の普通預金口座から振替

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
租税公課 40,000 普通預金 40,000

仕訳例2

個人事業税:35,000円
納付方法:コンビニから現金支払い

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
租税公課 35,000 現金 35,000

仕訳例3

個人事業税:50,000円
納付方法:クレジットカード払い(カードは毎月末日締め、翌月末日払い)

  借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
8月31日 租税公課 50,000 未払金 50,000 個人事業税上期分
9月31日 未払金 50,000 普通預金 50,000 個人事業税カード引き落とし

どの年度の帳簿に記載する?(経費計上の算入時期)

個人事業税は前年度分を支払いますが、経費計上は支払った年に行います。例えば、令和元年の所得から計算した個人事業税の支払い時期は令和2年なので、令和2年の帳簿に記載します。

廃業した場合は、廃業から1カ月以内に個人事業税を支払うこととなっています。そのため、廃業した年の経費として算入します。

年末に廃業してしまった場合、年内に個人事業税を納付できない場合があります。また、廃業によって経費計上できないまま確定申告してしまうこともあるでしょう。

この場合は、翌年の経費として計上できず、不利益が生じてしまいます。これに対する救済措置として「事業を廃止した場合の必要経費の特例」があります。これを利用すれば、廃業後に発生する個人事業税を経費計上できます。

方法は2つ。1つは確定申告時にまだ支払っていない個人事業税の見込み額を「確定申告の際の見込額の計上」として計上する方法です。もう一つは個人事業税の金額が通知されてから「更正の請求」を行って、所得税額を計算し直す方法になります。

個人事業税の計算方法

個人事業税の計算は所得額と控除額、税率で決まります
個人事業税の計算は所得額と控除額、税率で決まります

個人事業税は、住民税などと同様、確定申告を行うと、行政が計算していくら納めるのかを送付してくれます。計算自体はそれほど難しくないので、事前にどのくらいかかるのか計算しておくと支払い忘れも防げます。

個人事業税の計算式

個人事業税は以下の計算式で算出します。

(事業収入+不動産収入―必要経費―各種控除―事業主控除)×税率

青色申告をしている個人事業主の場合、所得税や住民税の計算では青色申告特別控除が所得から差し引かれますが、個人事業税の場合は青色申告特別控除が適用されないことに注意しましょう。

個人事業税の各種控除

個人事業税を計算する際にはいくつかの控除があります。

  • 事業主控除
    すべての事業者が受けられる控除です。1年間事業を行えば290万円が一律控除されます。1年の途中に開業した場合は、月割りで控除額が決まります。
  • 赤字の繰越控除
    青色申告をしている人が対象となる控除です。事業収入が赤字になった場合、翌年以降3年以内の事業所得から、赤字分を差引くことができます。
  • 被災事業用資産の損失の繰越控除
    白色申告をしている人が対象となる控除です。地震や風水害、火災などの自然災害により、事業用資産が被害を受けた場合、金銭的損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。
  • 譲渡損失の控除と繰越控除
    事業用資産を他者に譲渡したころによる損失を、事業所得から差し引くものです。青色申告者は翌年以降3年間、繰越控除できます。

業種別の計算例

では、ごく一部ですが業種ごとの個人事業税の計算をシミュレーションしてみましょう。

建設業(年収800万円)の場合
請負業は第一種事業に該当するので、税率は5%です。そのほかの条件は以下で計算します。

  • 年収 800万円
  • 経費 200万円

計算式に当てはめるとこうなります。

(800万円―200万円―290万円)×0.05=15.5万円

課税される個人事業税は15万5,000円になります。

デザイン業(年収500万円)の場合

請負業は第三種事業1に該当するので、税率は5%です。そのほかの条件は以下で計算します。

  • 年収 500万円
  • 経費 150万円

計算式に当てはめるとこうなります。

(500万円―150万円―290万円)×0.05=3万円

課税される個人事業税は30,000円になります。

整体師(年収350万円)の場合

請負業は第一種事業に該当するので、税率は5%です。そのほかの条件は以下で計算します。

  • 年収 350万円
  • 経費 90万円

計算式に当てはめるとこうなります。

(350万円―90万円―290万円)×0.05=―1.5万(=0円)

経費を差し引いた年収が290万円を下回るため、個人事業税は発生しません。ただし、こちらから年収か経費(あるいは両方)が増えると290万円を超えます。その時点で個人事業税が発生するので注意が必要です。

個人事業税の申告方法

廃業した際も個人事業税の申告手続きが必要です
廃業した際も個人事業税の申告手続きが必要

法で定められた業種であり、290万円を超える所得がある個人事業主は、翌年の3月15日までに個人事業税の申告を行なうことが義務付けられています。確定申告を行う個人事業主であれば、別に個人事業税の申告をする必要はありません。

個人事業税の確定申告書への書き方

確定申告書には第一表と第二表があり、個人事業税に関する記載があるのは第二表です。

確定申告書第二表
確定申告書第二表 出典:国税庁

所得の内訳」の欄に、所得の種類や支払者の会社名、収入額、源泉徴収額の総額を記入します。支払者が多い場合は、「所得の内訳書」という別紙を作成します。

「社会保険料控除」や「生命保険料控除」などの欄に、控除を受ける項目の金額を記入します。

住民税・事業税に関する事項」の部分では、住民税の部分に扶養親族の氏名や個人番号を記入します。事業税の部分は該当する部分があれば記入します。非課税所得のほか、前年度の途中で開業・廃業した場合もここに記入します。

専従専業者に関する事項」欄は、家族と所得金額の欄に事業収入や給与収入から経費を引いた「所得」を記入します。

廃業した場合の申告方法

廃業した場合は、1カ月以内に個人事業税を申告することが定められています。確定申告とは別に申告しないといけないので忘れがちですが、申告し、納税しておけば、その年の確定申告で経費計上が可能です。

個人事業税の申告書は、各都道府県で配布されています。開業届や廃業届と同様に配布されていることが多いので、配布場所などは問い合わせてみましょう。

納付書が届かない理由は主に2つ

納付義務があると思っていたけれど「納付書が届かない」場合はどうしたらいいのでしょうか。原因は2つ考えられます。

  • 納付義務がない
    所得が下がったり、事業内容の変更で対象事業者ではなくなった、など、個人事業税の課税対象者ではなくなった可能性があります。支払い義務がない事業者には納付書は発送されません。
  • 住所の事業所の場所が異なる
    居住地と事業所の場所が市町村や都道府県をまたぐ場合は、行政同士の連携がとれておらず、納付書の発送が遅れる場合があります。この場合は、納付期限も伸びるので、心配はありません。

ただしいずれの場合も、「忘れたころにまとめて請求されて困った」という事例も少なくありません。納付書が届かなくても、自分で計算してみて疑問に思ったら、早めに都道府県税事務所に問い合わせてみましょう。

個人事業税の納付方法

個人事業税はクレジットカードでも納付できます
個人事業税はクレジットカードでも納付できます

納付書が届いた場合は、速やかに個人事業税を納付する必要があります。納付期限は先述の通り8月と11月ですが、実際の納付にはどのような支払方法が使えるのでしょうか。

個人事業税の納付方法

利用可能な支払方法

  • 窓口納付
  • コンビニ納付
  • クレジットカード納付
  • 口座振替納付

個人事業税の支払い方法は、主に上記の手段が利用できます。

中でもクレジットカード支払いはカードのポイントが付く場合があったりその場で現金支払いせずに済み、納付まで若干の猶予がある点がメリットです。

ただし、クレジットカードは都道府県税事務所によっては受け付けていないケースもあります。なお、手数料がかかったりその場で領収書がもらえなかったりなどのデメリットもあるので注意が必要です。

コンビニ払いは店舗が営業していれば24時間支払い可能で、その場で領収書(受領書)が受け取れます。30万円以下を納付する場合にしか利用できません。

口座振替は一度設定しておけば手間がかからない点が便利。次回の支払いから自動的に口座から引き落としてもらえて払い忘れがないので安心です。

納付書の紛失・納付遅れが発生した場合は?

送付された個人事業税の納付書をなくしたり、納付期限に遅れてしまった場合はどうなるのでしょうか。

まず、納付漏れが発生していると金融機関から融資を受ける際に必要な納税証明書や領収書が揃いません。将来的の事業拡大や新規事業展開などに関わってしまうのです。

紛失が発覚した時点で都道府県税事務所に連絡

紛失に気付いた場合は、すぐに都道府県税事務所に連絡しましょう。紛失した旨を説明し、再発行を依頼すれば、送付してもらえます。すぐに発送してもらえないかもしれないので、納付期限に遅れないよう、早めに連絡することが大切です。

期限翌日からは延滞税が発生

納付期限を忘れた、資金が足りなかったなど、どんな理由であっても、納付期限に遅れた場合は、期限翌日から延滞税がかかります。延滞税は納付期限の翌日から2カ月を経過する日までは年2.6%、それ以降は年8.9%と高額です。1日でも過ぎると発生するので気づいたら早めに支払いましょう。

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個人事業税は、個人事業主の義務。ある程度事業が拡大してきたら、支払っていかねばならないものです。事業の記載方法や経費計上の方法などを知っていれば、余分な税金を支払わずに済む方法もあります。

複雑で変更も多い税金のことは、税金のプロである税理士さんのアドバイスを受けるのがおすすめです。確定申告も個人事業税もまとめて相談すれば、分からないことで不安になることもありませんよ。

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この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

仙台市宮城野区岩切に事務所を構える税理士の菅野歩と申します。日々の経理業務、会計・税務業務など経営者の皆様のニーズに合わせた適切なサポートを全力で行い、わかりやすくご説明させていただきます。