家を売却するときには22個のやってはいけないことがあります。損をしないためにやってはいけないことのほか、法律に触れるためやってはいけないこともあるので、事前にやってはいけないことを把握しておきましょう。
安心して売買をし、引き渡しまで完了させるために「売却準備中」「売却活動中」「売却後」の3つのステージに分けて家の売却でやってはいけないことをご紹介します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
【ステージ別】家の売却でやってはいけないこと
家の売却でやってはいけないことは複数あります。全てのやってはいけないことを覚えようとすると大変なので、売却のステップごとにやってはいけないことを確認しましょう。
売却時のステップは「売却準備中」「売却活動中」「売却後」この3つのステージのいずれかに属します。まずは全体の流れを確認し、それぞれのステージごとにやってはいけないことを解説します。
売却時のステップ | やってはいけないこと |
---|---|
査定を依頼する前 | |
査定を依頼した後 | |
査定を受けた後 |
売却時のステップ | やってはいけないこと |
---|---|
売却活動を初めてすぐ | |
購入希望者との交渉中 |
売却時のステップ | やってはいけないこと |
---|---|
売買契約締結前 | |
引き渡しまで | |
家の売却後 |
家の売却準備中にやってはいけないこと9選
家の売却準備中にやってはいけないことは9つあります。
このタイミングでやってはいけないこととは、売却益が少なくなることを防ぐためのものです。つまり損をしないためにやってはいけないことという意味合いが強いです。
1.売却計画を立てずに不動産会社を探す
家を売り出してから引き渡しまでは平均すると3~6ヶ月かかります。引き渡しまでにある程度時間がかかることを知っていないと、引越しなどのスケジュールにも差し障りが出る可能性があります。
家の売却を考えたらまず、いつまでに引き渡しを終えて、新生活を始めたいかゴールを設定しましょう。
ゴールから逆算して売却の準備を始めれば、トラブルが発生した場合もリカバリーをしやすくなります。
おおよその計画を立てられたら不動産会社に伝えて、そのスケジュールに間に合うように協力して売却活動を進めましょう。
2.ローンを借りている金融機関に相談せず売却活動を始める
住宅ローンの残っている家を売却するのであれば、住宅ローンを借り入れている金融機関に相談する必要があります。住宅ローン返済中の家には抵当権が設定されており、抵当権を解除しないままだと不動産会社も売却活動をしてくれません。
住宅ローンを完済する見込みが立たないと売却ができません。旧居を売却した代金で旧居の住宅ローンの残債を支払い、新居を購入して引っ越すことが一般的です。
住宅ローンが残っている家からの引っ越し方を詳しく知りたい方は関連記事もご覧ください。
3.複数社の査定を受けない
不動産査定を受ける時、はじめから1社に絞って査定を受けてしまうと査定内容が相場などを反映した信ぴょう性のあるものか判断できません。
その状態で売却活動に臨んでも、売却活動が難航し希望よりも大幅に値下げせざるを得ない状況になる可能性が高いです。
まずは3~5社を目安に、物件の情報のみで査定をする簡易査定(机上査定)を受けましょう。この時得られる査定額は書類的なデータのみで判断しているため精度はそれほど高くありません。
より売却額に近い額を知りたいのであれば2~3社に訪問査定を依頼してください。
不動産業者ごとに査定で重視するポイントは異なるので、査定額にも数百万円単位でばらつきが出る点にご注意ください。
4.査定額だけを見て仲介を依頼する
不動産の仲介業者を探す場合、最高額の査定額を出したからという理由だけで媒介契約を結ぶのはおすすめできません。
査定額は現況や相場観をもとに総合的に判断された価格です。ただし仲介における査定額は「この価格でなら売り出せる」という意味合いが強く、必ずしも査定額で売却できるわけではありません。
極端に高い査定額を出した業者にはきちんと根拠を尋ねる必要があります。似た条件の物件の成約価格や既に販売ルートを確保しているなど、合理性のある説明をする業者であれば安心して依頼できます。
5.手残りが少ないタイミングで売却する
住宅ローンは毎月同じ金額で返済していく「元利均等返済」と毎月の返済額のうち一定の元金が含まれる「元金均等返済」のどちらかを選んで返済していきます。毎月同じ金額を返済する、元利均等返済を選ぶことが多いです。
返済方法の名称 | 特徴 |
---|---|
元利均等返済 |
|
元金均等返済 |
|
元利均等返済で住宅ローンを借り入れた場合、買ったばかりの家を売却しようとすると手残りが少なくなる可能性が高くなります。
返済を始めてしばらくは元金がなかなか減らないので、この状態で家を売却しようとすると思っているよりも元金残債が多く、手元に残るお金がわずかになってしまいます。
住宅ローンの残債総額だけでなく、元金がいくら残っているかも必ず確認するようにしましょう。
6.仲介と買取の違いを知らない
不動産会社に依頼して家を売却する場合、家を買いたい人を見つけてもらう「仲介」と不動産会社に家を買ってもらう「買取」の2パターンがあります。
仲介と買取にはそれぞれ違いがあり、違いを知らないまま話を進めてしまうとももったいない思いをしてしまいます。
仲介 | 買取 | |
---|---|---|
購入相手 | 個人が主 | 不動産会社 |
売却額 | 売却相場に近い | 相場の7割程度 |
売却までのスピード | 売り出しから3~6ヶ月 | 1ヶ月以内 |
仲介手数料の要不要 | 必要 | 不要 |
高額で売却したいのであれば「仲介」、素早く現金化したいのであれば「買取」を選ぶことが多いです。
仲介でも高く売れる条件の物件を買取で安く手放してしまう、買取の方が早く現金化できる物件を仲介で長期間売却活動をするなどしないよう、仲介と買取の違いはしっかり理解しておきましょう。
7.売却時にかかる税金や費用について調べない
家を売却したときには様々な税金や費用が発生します。必要経費を考慮せずに売り出し価格を決めてしまうと、想定よりも手残りが少なくなり売却後の資金計画が狂ってしまうことが考えられます。
家の売却でかかる税金や費用は売却価格を基準に算出されることが多いです。査定額や相場価格をもとに必要な経費を計算しておきましょう。
家の売却でかかる税金や費用のうち、代表的なものは以下の通りです。
- 不動産会社の仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 抵当権抹消費用
- 登記費用
- 測量費用
- ハウスクリーニング代
- 引越し代
関連記事では家の売却時に課税される税金の種類や税額の計算方法などを解説しています。あわせてご確認ください。
8.適当に媒介契約を結ぶ
不動産業者に買主を仲介してもらう場合、媒介契約を結びます。媒介契約は3種類あり、違いを知らないまま契約してしまうと売却活動に支障が出ることがあります。
違いを簡単にまとめると以下の通りです。
媒介契約の名称 | 自己発見取引 | 契約社数 |
---|---|---|
専属専任媒介契約 | 不可 | 1社のみ |
専任媒介契約 | 可能 | 1社のみ |
一般媒介 | 可能 | 複数社とも可能 |
売却したい不動産の特徴を鑑みてこの3種類のうちいずれかの契約を結びます。一概にどの契約が良いというものではないので、媒介契約についてはよく検討をしましょう。
関連記事では媒介契約の違いも含めて、不動産売却をするときに知っておきたい基礎的な知識を解説しています。
9.安易にリフォーム・リノベーションを行う
住宅を売却するときはなるべく早く、高く売りたいものです。中古住宅は築浅物件と比べて魅力が少ないから、大規模なリノベーション工事を施してからの方が売りやすくなると考えるかもしれません。
確かに築年数が経過している物件は、物件としての価値はなくなっていることが多いのでほとんど土地代のみで取引されます。
しかし築年数が経過した物件を求める人の中には、新築物件を建てるよりも安く土地と建物を手に入れて、リノベーション等で自分好みに改築したいと考える人が一定数います。
安易にリフォーム等を施すとかえって売却しづらくなることがあるので、リフォーム等を検討しているのなら、必要か不動産会社の担当者に尋ねてからにしましょう。
関連記事では築古の一軒家を売るときの注意点と高く売るコツを紹介しています。あわせてご覧ください。
家の売却活動中にやってはいけないこと7選
売却中にやってはいけないことは7つあります。法律に触れてしまう行為も含まれているので、うっかり法に触れてしまわないようあらかじめよく確認しておきましょう。
1.広告規制を無視した広告を作成する
不動産の広告を作成するときは、「宅建業法」と「不動産の表示に関する公正競争規約について」が定めているルールや規制に則ったものを作成しましょう。ルールに違反する広告を出稿すると不動産会社は業務停止処分などの重い罰が下されます。
宅建業法と不動産の表示に関する公正競争規約で定められているルールをいくつか紹介します。
規制の内容 | 注意するポイント | 規制の根拠 |
---|---|---|
誇大広告の禁止 |
|
宅建業法 |
取引様態の明示 |
|
宅建業法 |
広告に使用する文字の大きさ |
|
不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約) |
不動産取引では多額の金銭の授受が行われるため、取引する対象について誤認をしたまま取引を完了しないように配慮されています。家の売却で広告を作成するのは不動産業者が主ですが、念のため広告の規制についてチェックすることをおすすめします。
2.不動産会社に売却活動を丸投げする
不動産会社の担当者は不動産取引のプロですから、プロの知識量や腕前を信用することは大切です。しかし売却活動を丸投げすると、かえって家の売却完了までが遅くなってしまう可能性があります。
家の売却は不動産業者と売主が二人三脚で行っていくものです。不動産業者は取引全般に関する知識があり、売主は売りたい物件に関して所有者だからこそ分かる情報を持っています。どちらの協力が欠けても家の売却はうまくいきません。
専属専任媒介契約と専任媒介契約はREINSへの登録と売主への状況報告が法律で義務付けられています。情報共有を上手く活用して、期限内に売却できるように戦略を練りましょう。
3.相場からかけ離れた金額で売り出す
家の売り出し価格は必ず周辺の売却相場を確認してから決定しましょう。高すぎる価格はもちろんのこと、安すぎても売れ行きはよくありません。
家の取引をするときは値引き交渉を行うことが一般的なので、売り出し価格がそのまま売却価格になることは稀です。
価格交渉を受けた場合、1割ほど値引きして売却することが多いです。売り出し価格は実際に売却したい額に1~1.5割ほど上乗せした価格にできると良いでしょう。
4.価格交渉などに応じない
家を売却は交渉が発生するタイミングが多いです。交渉を一切せずに取引を終えることはほぼありません。
家の売買で発生しやすい交渉は以下の通りです。
- 不動産の価格交渉
- 引き渡し日の調整
- ハウスクリーニングの要否
- ハウスクリーニング代の負担者
これらの交渉に一切応じないと売却は遠ざかります。交渉が起こりやすい条件に関しては妥協できないラインを決めておき、そのラインを超えない範囲であれば柔軟な対応をするように心がけましょう。
5.物件の問題点(瑕疵)を隠す
物件になんらかの問題点つまり瑕疵(かし)があった場合、それらを隠して売買契約を結んでしまうと契約不適合責任を問われます。
契約不適合責任という言葉に聞き覚えがなくとも、瑕疵担保責任という言葉なら聞いたことがある人もいるでしょう。2020年に民法が改正され、瑕疵担保責任は契約不適合責任となりました。
改正後の民法では買主が気づけなかった「隠れた瑕疵」についての要件が撤廃されており、改正前と比較すると買主が有利になっています。
雨漏りやシロアリ被害、周辺に嫌悪物件があるなどの瑕疵は隠さず誠実に取引を行うことが、最終的には最もスピーディに取引を完了させる手段となります。
瑕疵について把握するにはホームインスペクションを受けることをおすすめします。住宅全体を調査し、不備の有無を確認するものです。
ホームインスペクションについてもっと知りたい方は関連記事をご覧ください。
6.内覧の準備をしない
内覧を希望する人の多くはその物件を購入しようと考えているので、内覧に力を入れれば売却までスムーズに進むことも少なくありません。
内覧時には物件が相手に魅力的に映るように準備をしておきましょう。
内覧日までに行うことの例
- 家具・不用品回収の処分をする
- 部屋や家全体の掃除・片付けをする
- 家の周辺環境に関する情報をまとめておく
家は新築同様にきれいにする必要はありませんが、普段家に誰かを呼ぶときくらいにはきれいにしおきましょう。
また住んでいるからこそ分かる情報についてまとめておくことも重要です。日当たりや風通しなどのほか、夜間の道の明るさや治安など、ネットなどで集めるには限界がある情報を提供できると、購入の後押しになるかもしれません。
そのほか家具や不用品の処分は計画的に行いましょう。早い段階で処分業者の予約を取っておくことで、内覧の直前になってから慌てて処分先を探さずにすみます。
7.不適当な内覧対応をする
不動産売買におけるやりとりは不動産業者が間に入って行うことがほとんどなので、売主と買主が直接顔を合わせる機会は限られてます。内覧では売主と買主が直接やり取りをできるチャンスです。
内覧時に気をつけたい点をいくつかご紹介します。
- 内覧日までに掃除・片付けをしない
- 内覧者へ不愛想・不親切な対応をする
- 内覧者からの質問に適切に答えない
- しつこく熱心に物件をアピールする
これらの行為は内覧者から不快感や不信感を抱かれやすいです。
内覧の対応をするときは清潔感のある装いをし、購入希望者からの質問に誠実に答えるという当たり前のことをしましょう。
もし時間的余裕があるのならあらかじめ対応の練習をしておくことをおすすめします。
家の売却後にやってはいけないこと6選
家の売却後にやってはいけないことは6つあります。
物件を引き渡した後にも注意すべきポイントがあるので、取引が終わったからと安心しすぎないようにしましょう。
1.売買契約書を細部まで確認せず契約する
不動産の売買契約書には取引金額や支払日、取引する物件や土地の面積など様々な事項が記載されています。それらすべてに目を通すのが大変だからといって細部まで確認せずに契約に同意をしてはいけません。
売買契約書には買主、売主双方が負うべき責任なども記載されています。契約書にサインをした時点で内容に異議がないと同意したことになります。後から不利な条件が見つかったとしても契約書に同意した以上はその不利な条件を履行しなくてはなりません。
売買契約書を確認したときに疑問点があれば不動産業者の担当者に説明を求めるようにしましょう。
2.売買契約締結後に自己都合でキャンセルする
売買契約を締結したあとは買主の同意を得ない限りキャンセルできません。
売主の自己都合で契約をキャンセルする場合は、買主に手付金を変換したうえで売買契約で定めてある違約金を払うことが一般的です。
契約内容によっては莫大な違約金を支払うことになりかねないので、契約の破棄にいたるようなトラブルが発生しないよう注意しましょう。
3.家の引き渡し日までに転居をしない
引き渡し日までに家を引き渡せる状態にしていない場合も契約違反になります。
引越し業者が見つからないなどの理由があっても契約違反であることには変わりないので、遅くとも引き渡し日の前日までには転居を済ませておくようにしましょう。
転居先が見つからない場合はトランクルームなどに家財を預けるなど、売却した家に荷物を残さないようにしてください。
4.家具や遺品などを処分せず引き渡す
契約書に記載をしていない限り、家具や家電などはすべて引き払った状態で引き渡します。
もう使わない家財道具であれば不用品回収業者に依頼して処分してもらいましょう。古物商許可がある業者であれば、状態の良い不用品を買い取ってくれる可能性があります。
売却した家に多くの遺品が残っているのであれば、遺品整理業者に依頼するのも1つの手段です。
遺品整理業者と不用品回収業者は似て非なるもので、遺品整理業者は遺族に寄り添って遺品を整理します。形見分けなども行い、本当に不要なものに限って処分をします。
一方、不用品回収業者は遺品であってもゴミとして回収・処分するので人によっては乱暴に遺品を処分したと感じるかもしれません。
5.確定申告を行わない
家を売却したときは利益の有無にかかわらず確定申告を行いましょう。
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、不動産売買を行ったときは青色申告を行います。
不動産売買で利益が発生していた場合、確定申告を行わないと意図しないまま脱税となってしまい、延滞金や無申告加算税を請求されます。
関連記事は不動産売却後の確定申告について、税理士が監修した記事です。あわせてご覧ください。
6.控除等の情報を集めずに確定申告をする
マイホームを売買するときには様々な税制上の優遇措置が受けられます。控除や特例を適用させるには確定申告をするときに必要書類を添えて申請が必要です。
家の売却で受けられる控除のうち、代表的なものは以下の4つです。
控除等の名称 | 詳細 |
---|---|
マイホームを売ったときの特例 | よくある税の質問 – 国税庁 |
特定のマイホームを買い換えたときの特例 | よくある税の質問 – 国税庁 |
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 | よくある税の質問 – 国税庁 |
マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき | よくある税の質問 – 国税庁 |
これらの控除や特例を適用させるには要件があります。国税庁のホームページや税務署窓口などで確認しましょう。
関連記事では家の売却時にかかる税金の計算方法や控除・特例について詳しく解説しています。
家の売却で後悔しないためには不動産会社選びが重要
家を売却するときにやってはいけないことは数多くあります。1度にすべてを覚えることはできないので、売却時のステップと合わせて確認することをおすすめします。
家の売却で損をしないためには事前に情報を集めることと信頼できる不動産業者と媒介契約を結ぶことが大切です。
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