家族構成やライフスタイルの変化は住み慣れた住宅を売却するきっかけのひとつです。中古住宅の中では築20年の一戸建ては比較的売りやすいことを知っていましたか?
築20年の一戸建ては価値がほぼゼロ円と言われることも多いですが、だからといって成約価格が大幅に安くなったり、売れなかったりするわけではありません。
築20年一戸建てにはどのような需要があるのか、売却時に気をつけたい点などを解説します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
築20年一戸建て住宅の売却相場
公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した、2024年1~3月の中古住宅成約状況によると築後20年経過した一戸建てであっても、平均成約価格は4304万円です。
築年数 | 成約件数 | 成約価格 |
---|---|---|
築0~築5年 | 366件 | 5166万円 |
築6~築10年 | 553件 | 4909万円 |
築11~築15年 | 424件 | 4911万円 |
築16~築20年 | 431件 | 4304万円 |
築21~築25年 | 395件 | 4019万円 |
築25~築30年 | 380件 | 3483万円 |
築30年~ | 862件 | 2526万円 |
築後年数が経過するに従って成約価格は落ちていくものの、成約件数そのものは築後20年まで400件を下回ることはなく、中古住宅そのものの需要の高さがうかがえます。
築後20年以上経過した住宅の価値はほぼゼロ円です。そのため、築20年以上経過した物件の取引金額はほとんど土地代と言えます。そのため売却額は土地の価値と広さに大きく左右されます
自分が所有する築20年一戸建て住宅の売却相場を知りたいのであればインターネット等で行える簡易査定(机上査定)を受けるのがおすすめです。
築20年一戸建て住宅の強みとは?
一戸建て住宅の売買を含め、不動産売買に関する情報を集めていると「価値」という言葉が頻出することに気がつくでしょう。
これから売却活動を始めていくにあたって、「不動産の価値」について知っておかないと損をすることになるかもしれません。
住宅の「価値」とは何を指しているのか、築20年一戸建てでも売却できる理由を解説します。
住宅の「価値」は法定耐用年数を指すことが多い
住宅の売買に関する場面では、法定耐用年数を基準にして価値を測っていることが多いです。
住宅は構造によって耐用年数が定められていますが、耐用年数を過ぎたからといってその住宅の安全性が失われるわけではありません。あくまで税金の計算上で価値が失われるということです。
国税庁が公開している住宅用物件の耐用年数は以下の表をご参照ください。
構造・用途 | 耐用年数 |
---|---|
木造・合成樹脂造 | 22年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 | 47年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
れんが造または石造、ブロック造 | 38年 |
金属造 | 19~34年(骨格材の厚さにより異なる) |
リノベーション需要にもこたえられる
築後20年経過した木造住宅の場合、耐用年数をもとに考えると建物としての価値はほぼゼロ円になっています。そのためほとんど土地代のみで購入できるケースが多いです。
新築で思い通りの住宅を建てるよりも、状態の良い中古住宅を購入してリノベーションをした方が安上がりになるケースもあります。
木造住宅の耐用年数は22年なので、築後20年程度の物件であれば価値ゼロ円の建物の中では築浅に分類されます。リノベーションで改良したあとも比較的長く住めるため、人気が出る傾向があります。
土地そのものの価値は変わらない
住宅の売買をするときは物件の価値を考えることが多いですが、土地の価値にも注目しましょう。
築20年の一戸建て住宅は法定耐用年数の関係上、価値がほぼゼロ円になります。しかし住宅が建つ土地には耐用年数の考え方が適用されないため、土地の価格が大幅に変動することはめったにありません。
建物の価値がほぼゼロ円になる築後20年以上経過した住宅のうち、築20年の物件は築浅の部類に入ります。
売主は土地代を確保したうえでリノベーション目的の人に売却でき、買主は比較的安価に一戸建て住宅を手に入れられ、リノベーションができます。
このように需要と供給が合致するため、築20年一戸建て住宅は不動産売買において一定以上の価値があると見なされています。
築20年一戸建て住宅を高く売るコツ
築20年一戸建ての住宅を高く売るには7つのコツがあります。いずれも重要なことなので、売却準備を始める前にチェックしておきましょう。
中古一戸建て売却に強い不動産業者と媒介契約を結ぶ
不動産会社は数多くあり、会社によっては得意分野と苦手な分野がはっきり分かれていることがあります。
売却が得意な会社であっても、仲介が得意なのか買取が得意かによって対応が変わりますし、売却戦略の立て方も違うでしょう。
築20年一戸建てを売却するのであれば、中古一戸建て住宅の売却に強みを持つ業者に媒介契約を結ぶのがベストです。
中小不動産業者であれば自社ホームページに取引実績の一部を掲載していることがあります。それらの情報も確認し、売却したい物件の条件にあった不動産業者を探しましょう。
複数の不動産業者から査定を受ける
一般的に不動産を売却するときは査定を受けます。この時複数の不動産業者から査定を受けることをおすすめします。
複数の査定があれば売りたい物件の売却相場が分かるうえに、業者同士の比較検討をして最も優れている業者と契約可能です。
不動産の査定については注意点が2つあります。仲介と買取で査定額の示す意味が変わることと、査定額がそのまま売却金額になるとは限らない点です
。
仲介で売却する場合、実際に購入するのは買主であって不動産業者ではありません。そのため1000万円の査定を受けた物件であっても、900万円で売買契約を結ばざるを得ないこともあります。
一方買取であれば不動産業者が「この値段でなら購入できる」という額を提示してくるので、査定額と売却額が大幅に変わることはまれです。
不動産売買の仲介と買取について、関連記事で詳しく解説しています。あわせてチェックしてください。
ハウスクリーニングを依頼する
水回りの汚れなど通常の掃除だけで落としきれない汚れは、購入希望者が内覧に来る前にハウスクリーニングを依頼してきれいにすることをおすすめします。
購入希望者も築20年の物件であればある程度の汚れや傷みがあることは了承しています。とはいえ人によって許容範囲が異なるので、できる範囲できれいにしておくようにしましょう。
ハウスクリーニングの依頼先を探すときは、複数業者から見積もりを取って見積金額やサービス内容を比較検討しましょう。ミツモアなら簡単に最大5社からの見積もりを請求できます。
ホームインスペクション(住宅診断)を受ける
日本では古くなった住宅は解体して、新しい住宅を建てることが一般的でした。しかし建材の性能向上や地球環境への配慮などを理由に、今ある住宅を活かすという考えが広まりつつあります。
既存住宅を活かすときに欠かせないのがホームインスペクションです。住宅診断とも言われ、アメリカでは住宅取引の70~90%ほどで行われています。
日本ホームインスペクターズ協会では「家の健康診断」とたとえており、住宅の基本的な部分に不備や欠陥がないか調べることが主目的です。
長年住んでいても目に見えない部分に何らかの不具合が発生していることもあるので、中古住宅を売却する前にホームインスペクションを受けることをおすすめします。今まで気づかなかった瑕疵を発見できるので、引き渡し後のトラブルを回避できます。
関連記事ではホームインスペクション(住宅診断)の概要や調査項目などを解説しています。
築後20年経過していても安易にリフォームやリノベーションをしない
築20年一戸建てを購入する理由の中には、自分好みにリフォームやリノベーションをしたいというものがあります。
設備が古いままでは売れないのではないかと焦ってリフォームやリノベーションをしてしまうと、リフォーム等の費用がかさむだけでなくカスタマイズ性が損なわれてしまい、かえって購入者から敬遠されることにもなりかねません。
リフォームやリノベーションをしたいのであれば不動産業者に相談し、必要性や施工範囲を検討しましょう。
既存住宅売買瑕疵保険に加入する
既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険です。国土交通省の「住宅瑕疵担保制度ポータルサイト」に詳細があります。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、専門の建築士による検査に合格する必要があります。買主からすると住宅の基本的な性能について不備がないと確認された物件になるので、安心して購入できます。
もし売却後に欠陥が見つかった場合でも修繕費用等を保険からまかなえます。出費は増えるものの、売買契約成立後も保証があるので安心して売り出せるでしょう。
どうしても買手が現れなかったら買取を検討する
築20年の一戸建てを売却するコツを駆使しても買手が現れないこともあります。そのような場合は不動産会社に買い取ってもらうことを検討しましょう。
買取金額は仲介での売却金額のおよそ7割ほどになることが多いです。
売却額が仲介よりも安くなることが多いのがデメリットですが、素早く現金化できる点や仲介手数料が発生しない点、契約不適合責任が免責される点など3つのメリットがあります。
築20年一戸建ての売却準備でやるべきこと
築20年一戸建ては比較的売りやすい部類に入るものの、希望金額で売却できるとは限りません。
せっかく売却できても手数料や経費がかさんでしまい、手元に残る金額がわずかになっては意味がありません。
スムーズに築20年一戸建てを売却するために、売却準備期間中にやるべきこと3つをご紹介します。
周辺エリアの築20年一戸建ての売却相場をチェックする
相場より高すぎる場合はもちろんのこと、安すぎても売却活動が難航します。売り出し価格を決めるときには必ず周辺の売却相場を確認しましょう。
売却相場は複数社からの査定額や国土交通省が提供している「不動産ライブラリ」での検索などで調べられます。
媒介契約を結んでいる不動産業者の担当者ともよく相談することも重要です。
余裕を持った売却スケジュールを立てる
不動産は売り出してから平均3~6ヶ月で成約します。マンションは比較的成約までの期間が短く、反対に戸建ては売却活動が難航することが多いです。
築20年一戸建て住宅を売却するのであれば売却活動を終えていたい時期の半年前までに売り出せるようにしましょう。
たとえば9月末までに引き渡しまで終えていたいのであれば、2月下旬~3月上旬に売り出せると余裕をもって売却活動ができます。
売却活動期間が短いと大幅に値下げをして売らざるを得なくなるなど、資金計画等にも影響が出る可能性があります。余裕のあるスケジュールを作成するように注意してください。
住宅ローンの残債がいくらか確認する
住宅ローンの残債が残っている場合、抵当権が金融機関にあるため売却ができません。そのため住宅ローンを返済中の住宅を売却するときは、売却代金でローンを一括返済することを求められます。
仮に売却代金のみで残債を完済できないのであれば自己資金などを合わせて返済します。高値で売却できればできるほど自己資金の持ち出しが少なくなるので、売り出し価格からいくらまでなら値引きできるかなども含めて検討しましょう。
コツが分かれば築20年一戸建ても売却できる!
築20年一戸建て住宅はリノベーション需要にこたえられる、土地そのものの価値は建物に関係ないなどの点から活発に取引されています。
築古物件の中では比較的売りやすい部類に入るものの、売るためのコツを知らなければ売れ残ってしまいます。
築20年一戸建ての売却活動をスムーズに進めるためには不動産業者の選定が重要です。まずは複数社から簡易査定を受け、訪問査定依頼を出す業者を選びましょう。
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