不動産の無料査定を受けるメリットは、所有している不動産の価値が分かることとより高く売ってくれる業者と媒介契約を結べる点です。
とはいえ注意しないとトラブルに巻き込まれてしまい、長期間不動産が売却できなかったり想定よりも安値で売却せざるを得なくなったりと、不本意な結果に終わる可能性があります。
不動産の無料査定でよくあるトラブルとその対処法、なぜ無料で査定を受けられるのかなどを解説します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
不動産の無料査定でよくある3つのトラブル
不動産の無料査定で起こりやすいトラブルを3つご紹介します。
それぞれの対策や対処法もあわせて紹介します。
1.査定依頼後も結果が届かない
インターネットで不動産の無料査定を依頼したときに、いつまでも連絡が来ないことがあります。原因は大きく分けると2つです。
1つ目の原因は、査定対象の不動産が売りにくいエリアにあるなどの理由で、対応できる不動産業者がいないことです。この場合は他のサービスを利用することで対応できる不動産業者が見つかることがあります。
2つ目の原因は、連絡先として入力した情報が間違っていることです。余計な空白スペースが入っていたり、1文字だけ全角文字になっているなどうっかりミスで連絡が届かないこともあります。連絡先情報が間違っている場合は査定依頼の受付完了メールが届いていないことが多いので、迷惑メールフォルダ等にも受信していないのであれば誤入力の可能性が高いでしょう。
2.相場とは大きく異なる査定額を出される
査定基準は不動産業者ごとに異なるため、査定額に差があることそのものは当たり前のことです。しかし相場とは大きく異なる査定額を出してくる業者もいます。
相場とは大きく離れた査定額の業者と媒介契約を結んでしまうことには以下に挙げるようなデメリットがあります。
相場より高すぎる場合
- 相場相当まで値下げせざるを得なくなり、売却に時間がかかる
- 長期間売り出し中のため何か事情がある不動産かと敬遠される
相場より安すぎる場合
- 手元に残る額が少なくなる
- 売却活動に力を入れてもらえない
自分でも相場を調べておき、複数社の無料査定を受けることで査定額に起因するトラブルをある程度回避できます。
3.執拗に営業電話がかかってくる
不動産の無料査定を利用した途端、営業電話がかかってくるようになることがあります。頻繁にかかってくるだけではなく、夜間など非常識な時間に電話をかけられてしまうと辟易することもあるでしょう。
対処法は3つあります。
- 個人情報の入力なしで利用できるサービスを使う
- 営業不要ときっぱり断る
- 第三者機関に相談をする
もし売却の意思があまり強くない段階で不動産の無料査定を受けるのであれば、個人情報を入力しなくても査定を受けられる匿名査定の利用をおすすめします。
売却の意思はあるものの電話が苦手という場合は、電話番号入力が任意のサービスか、備考欄に「営業電話不要」または「連絡はメールでお願いします」等、連絡方法に関する要望を記載しましょう。
同じ業者から何度も電話が来て困っているのなら、はっきりと「営業電話は不要です」と伝えましょう。拒絶の意思を示しているにも関わらず引き続き営業電話をかけてくることは宅地建物取引業法により規制されています。
営業電話をかけないで欲しいと伝えているにも関わらず、勧誘が何度も続くようであれば消費生活センターや宅地建物取引業の免許を与えている都道府県などに情報提供や相談をしましょう。
不動産無料査定でのトラブルを避ける4つの方法
不動産無料査定でのトラブルを避けるには4つの対策があります。無料査定を受ける前にチェックしておくことで、トラブルに巻き込まれる可能性を低くできます。
自分でも売却相場について調べる
査定額に起因するトラブルを避けたいのであれば、自分でも相場について調べておく必要があります。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」を利用し、似たような条件の不動産の成約価格がいくらかを調べましょう。全く同一条件の不動産はないので参考資料程度として扱うべきですが、不動産会社が提示する査定額が妥当か否かの判断基準にはなり得ます。
不動産情報ライブラリでは地図を表示し、選択したエリアの情報を一覧に出すことも可能です。レインズ・マーケット・インフォメーション(RMI)で公表されているデータも確認できるので、活用することで効率的に情報収集できます。
提示された査定額について根拠を尋ねる
不動産の無料査定を依頼し、査定額を提示されたら必ずどうしてその額になったのか根拠を尋ねましょう。
相場よりも高い額を提示するということは、経験などからその価格でも売却できると判断したためなので、その根拠があるはずです。
根拠を尋ねてみて説得力のない説明をした不動産会社は候補から外すことをおすすめします。
一括査定サービスを利用する
不動産の無料査定を受けるなら、一括査定サービスを利用しましょう。
一括査定サービスを利用することには以下のメリットがあります。
- 複数社にも簡単に査定依頼を出せる
- 大手・中小の両方から査定を受けられる
- 営業担当者の質の比較もしやすい
不動産の無料一括査定サービスを使えば、売却活動に必要な情報を素早く効率的に集められます。
トラブルが発生したときの相談先を確認しておく
トラブルは起きないに越したことはありませんが、万が一トラブルに巻き込まれてしまったときのために、あらかじめ相談先を確認しておくようにしましょう。
代表的な相談先を紹介します。
- 国民生活センター
- 首都圏不動産公正取引協議会
- 各自治体の土木課など
- 各地方の整備局
- 一括査定サービスの運営会社
不動産業を行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。この免許の許可は国土交通大臣または都道府県知事が出します。
トラブルが発生したら宅地建物取引業免許を出した相手に報告・相談・苦情を入れることをおすすめします。
一括査定サービスを利用して見つけた不動産業者とトラブルになってしまった場合は、一括査定サービスの運営会社にも連絡をしてトラブルの内容を報告しましょう。不動産業者の過失が大きいと判断された場合は利用停止措置などが取られる可能性があります。
信頼できる不動産業者の見分け方
信頼できる不動産業者を見分けるときは以下4つのポイントを確認しましょう。
複数社にコンタクトを取っているのであれば、4つのチェックポイントを参考にしてどの業者が信頼できるか絞り込んでください。
① 査定額の根拠を明確にしている
複数社から提示された査定額を見て、最も高額な価格を提示した不動産会社に仲介依頼を出したくなるかもしれませんが、必ず査定額の根拠を尋ねてからにしましょう。
「ちょうど購入しようとしている人がいる」など、客観性に乏しい理由を挙げているのであれば、媒介契約を結ぶのは考え直した方が良いかもしれません。
今までの販売実績や土地の特徴・事情等を根拠として説明するような不動産会社で媒介契約を結んでも良いでしょう。
② 懸念点も伝えてくれる
自分にとって都合の良いことだけを聞いてしまいたい気持ちになりますが、不動産を確実に売却したいのであれば懸念点をきちんと伝えてくれる誠実な業者と媒介契約を結びましょう。
不動産の取引では特に瑕疵に注意を払う必要があります。取引する不動産になんらかの瑕疵があった場合、それを伝えないで引き渡すとトラブルが発生してしまいます。
売却するうえで不利な情報であったとしても、事実を伝えどのように売却するかを説明できる業者であれば信頼できます。
③ レスポンスがよく説明が丁寧
連絡や疑問に対し、素早く的確に返事をしてくれる業者はそうでない業者よりも信頼しても良いでしょう。
返事が遅かったり、そもそも返答がなかったりする業者はもちろんのこと、返答スピードは速いものの要領を得ない回答をするような業者と媒介契約を結ぶことはおすすめできません。
不動産の売買では多額の金銭をやり取りするため、情報の行き違いがトラブルや損の原因になり得ます。トラブルなく取引を完了させるためには、レスポンスが速く説明も丁寧な業者と媒介契約を結ぶことをおすすめします。
④ 不動産業者の得意分野と売却物件の属性が一致している
不動産会社はそれぞれ得意分野と不得意分野があります。
中古一戸建ての売却をしたいのに、賃貸物件管理を得意とする業者に依頼しても仕方がないので、必ず依頼前に直近の売買実績を確認しましょう。
たとえ得意分野に合わない依頼であったとしても、不動産業者の方から依頼を断ることはほとんどありません。高額で売却したいのであれば依頼者側が自己責任でチェックをしておくことが重要です。
不動産査定を無料で行える理由
不動産の査定は無料のものと有料のものがあります。一般的な不動産売買で利用されるのは無料査定の方です。とはいえ、無料で査定が受けられることに不安を感じる人もいるでしょう。
不動産査定が無料で受けられる理由と有料の「不動産鑑定」と無料の「不動産査定」の違いを解説します。
営業活動の一環であるため
不動産査定が無料で利用できる理由は、不動産業者の営業活動の一環であるためです。不動産業者の収入の1つは仲介手数料です。媒介契約を結んでもらうためには、まず自社を知ってもらう必要があります。
自社を知ってもらう手段のひとつが不動産査定です。
営業活動のひとつであるため、無料だからといって手を抜いたり、いい加減な対応をしたりすることはありません。安心して利用できます。
有料の「不動産鑑定」との違い
不動産査定とよく似た活動に「不動産鑑定」があります。人によっては「査定よりも詳しく見てくれるのかもしれない」と思うかもしれませんが、査定と鑑定では求められる正確さが異なるので混同しないようにしましょう。
不動産鑑定は国家資格を取得した不動産鑑定士のみが行えます。個人では相続や離婚時の財産分与のときなどに行うことが多いです。公的な証明力が強い点が特徴です。
不動産鑑定は一般的に20万~数十万円ほどの費用がかかります。
不動産査定 | 不動産鑑定 | |
---|---|---|
依頼先 | 不動産業者 | 不動産鑑定士 |
費用 | 無料 | 有料(目安:20万~) |
公的な証明力 | ない | ある |
主な依頼タイミング | 不動産売買の前 | 相続、離婚時の財産分与時 |
不動産は一括査定サービスを活用して売却しよう
不動産の無料査定を活用すれば、自身が所有する不動産がいくらで売れるのか、どのくらいが価値があるのかといったことがすぐに分かります。
1度の操作で複数社に査定依頼を出せる、一括査定サービスを活用すればスピーディーに情報収集できるうえ、知名度が高くない地域密着型の不動産業者からも査定を受けられます。
不動産の無料査定で相場を知り、スムーズに不動産の取引を完了しましょう。