築50年の一戸建ては、築年数が古いことから買う人がいない場合が多いです。しかし築浅物件と比べて売却しづらいものの、相場を理解したうえでコツを掴めば、売却できる可能性があります。
今回は築50年の一戸建てを売却する方法について、相場や成功させるコツを含めて紹介します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
築50年の一戸建ての売却相場はいくら?
築50年の一戸建てを売却するうえで大切なことは、相場を把握することです。不動産は築年数が経過するにつれて価値は下がり、木造一戸建ての場合、築20年を経過すると建物自体の価値は、ほとんどないと判断されます。
その理由は国が定義している「住宅の耐用年数」が関係しています。木造一戸建て住宅の法定耐用年数は22年のため、築50年の一戸建ては大幅に耐用年数が過ぎていることから、建物の価値はなくなります。
築50年でも価値がつく可能性がある条件とは
築50年の一戸建てでも、地域や建物の状態、条件が良ければ、建物そのものに価値がつくケースがあります。具体的には、下記のような物件です。
- 伝統的な工法で建てられた古民家
- 歴史的な価値を持つ貴重な建物
- リノベーションまたリフォームをした物件(古民家カフェ、宿泊施設など)
築年数は経過しているものの、水回りや内装がきれいな状態を維持している場合や、大規模な改修工事の必要がないケースでは高く売却できる可能性があります。ただし不動産会社によって判断が異なるため、売却を検討している人は、相談することをおすすめします。
築50年の一戸建てを売却する5つの方法
築50年の一戸建てを売却するにあたって、売却が決まるまでのスピードや売却価格などによって違いがあります。よく理解したうえで納得する売却方法を決めましょう。具体的な方法は、下記の5つです。
売却方法 | メリット | デメリット |
古家付き土地として仲介で売却する | 相場より高く売れる可能性がある | 仲介手数料の支払いが必要 |
解体して更地で売却 | 建物を残した状態よりも早く売却できる可能性がある | 建物の解体費用は売主負担、固定資産税の軽減措置は適用外 |
リフォームやリノベーションして売却する | そのまま建物を売り出すよりも買い手がつきやすい | 解体費用よりも負担が大きいケースがある |
不動産買取会社に売却する | 短期間で売却できる可能性がある | 仲介と比べて売却価格は相場の6~8割程度 |
空き家バンクを利用する | 買主が見つかりやすい | 買主と売買に関するトラブルに巻き込まれる可能性がある |
1.古家付き土地として仲介で売却する
築50年の一戸建てでも「古民家」として価値が見込める場合、不動産会社に仲介で売却する方法があります。古家付き土地として売却することで、解体費用をかけずに済むほか、自分で売却価格を決められます。
相場よりも高い金額で売却できることもありますが、家屋の管理状態が悪いと難しいほか、仲介手数料を引いた金額が売却価格になるので注意しましょう。
2.解体して更地で売却
築50年の一戸建てを解体し、更地にしてから売却するのも選択肢のひとつです。一戸建ての状態が悪くて住めないとき、土地だけ売却することで新築を建てたい人のニーズに応えられます。
ただし、一戸建ての解体費用は売主が負担することに注意しましょう。木造一戸建て住宅の場合、1坪あたり3万〜5万円が相場とされており、坪数によっては費用が膨大になります。さらに建物の解体に伴い、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、税負担が重くなる点も注意が必要です。
3.リフォームやリノベーションして売却する
一戸建ての解体費用をかけたくない場合は、リフォームやリノベーション工事を行い、ニーズを広げて売却する方法があります。水廻りや内装部分を中心に新築時の状態に回復させることで価値がつくほか、売却時に買い手がつく可能性があります。
その一方で、一戸建ての状態次第では解体費用よりもリフォーム費用がかかるケースがあるので注意が必要です。加えて、購入希望者によっては自分好みでリフォームやリノベーションしたい人もいます。不動産会社に相談したうえで工事を実施するか決めましょう。
4.不動産買取会社に売却する
売り出してから6か月以上経っても、買い手が見つからない場合があります。早めに売却したい人は、不動産買取会社に売却するのも方法のひとつです。買い手を探す必要がないため、短期間で売却できます。
ただし、仲介と比較して売却価格が相場の6~8割程度になるので注意しましょう。背景として物件を買い取った後、不動産会社はリフォームやリノベーションして再度販売し、利益を得るためにも安い価格で仕入れる必要があるからです。
5.空き家バンクを利用する
費用を抑えて築50年の一戸建てを売却したい人は、地方自治体が運営するマッチングサービス「空き家バンク」を利用するのもおすすめです。空き家を探している人と買いたい人、住みたい人とをマッチングさせるサービスで、物件の広告掲載費用をかけずに買い手を探せます。
ただし、全国各地にあるわけではないため、一戸建てがあるエリアで利用できるか確認しておきましょう。加えて不動産会社を介さずに売買が行われることがあり、買主との間でトラブルに巻き込まれる可能性があります。不動産会社が仲介しないときは、慎重に売却を進めましょう。
築50年の一戸建てを損せずに売却する5つのポイント
できる限り損しない価格で築50年の一戸建てを売却したい人は、下記5つのポイントを押さえておくといいでしょう。
損せずに売却するポイント | 所要時間 |
自分で相場を調べる | 少し時間がかかる |
土地の境界線を明確にする | かなり時間がかかる |
内覧時は正直に一戸建ての状態を伝える | すぐにできる |
築古物件の売却実績が豊富な不動産会社に依頼する | 少し時間がかかる |
複数の不動産会社から査定を受ける | 少し時間がかかる |
1.自分で相場を調べる
一戸建てを売却するにあたり、不動産会社に査定を依頼しますが、その前に自分で売却相場を把握しておきましょう。調べる方法は、以下のとおりです。
- 地価を調べる
- 類似物件の取引事例を調べる
築50年の一戸建ては土地の価値が大半を占めます。国の公示地価で土地の価格を把握したり、不動産会社のポータルサイトで類似物件の価格を確認しておくといいでしょう。
加えて、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、「レインズマーケットインフォメーション」などで過去の取引事例を検索するのもおすすめです。
2.土地の境界線を明確にする
築年数が古い一戸建ての場合、建物と土地との境界線が曖昧になったまま売却時まで気づかないケースがあります。売却するときは、専門会社に土地の測量を依頼して建物との境界線を明確にしておきましょう。検証内容によっては時間がかかるため、売却したい人は早めに測量を依頼することをおすすめします。
3.内覧時は正直に一戸建ての状態を伝える
一戸建ての売却時にトラブルが多いのが、引き渡し後に起こる不具合です。たとえば、壁の劣化やフローリングの汚れを買い手に伝えないで売却したり、質問に対して曖昧な回答をしたりするケースです。このような不誠実な対応をすると、買い手に不信感を与えてしまいます。
一戸建ての売却にあたって内覧を行う際は、ネガティブな内容を含め、正直に一戸建ての情報を伝えましょう。
4.築古物件の売却実績が豊富な不動産会社に依頼する
築50年の一戸建ての売却を依頼するなら、古い物件の売却が得意な不動産会社に依頼するのも、損せずに売却できるポイントのひとつです。
具体的には、不動産会社のホームページで売却実績が詳細に明記されているか確認したり、不動産会社の口コミサイトでサービス内容や評判をチェックしたりすることで、実績が豊富な不動産会社が見つかります。
5.複数の不動産会社から査定を受ける
不動産会社を選ぶときは、複数の会社に査定を依頼してから決めましょう。会社ごとに独自の査定基準を設けており、査定を依頼する会社を1社だけにして決めてしまうと、提示された査定額が妥当かどうか判断できません。
物件の大まかな相場感を知るためにも、不動産会社の情報を網羅している不動産一括査定サイトを利用しましょう。査定結果に対する根拠や営業担当者との相性などを比較検討しながら、決められます。
築50年の一戸建てを売却するときの注意点4選
築50年の一戸建てを売却するにあたって、下記の4つのポイントに注意しましょう。
1.再建築ができる物件か確認する
築年数が経過した一戸建ての場合、解体して更地にしてしまうと、建築基準法の規定によって、その土地に新しく家を建てられない「再建築ができない」土地に該当することがあります。
自宅を解体する前に、物件の所在地を管轄する自治体に対して、再建築ができないエリアに該当するか確認しておきましょう。その際、登記事項証明書や建物図面などの書類を法務局で取得しておくと安心です。
2.契約不適合責任を免責にできるか確認する
一戸建てを買主に引き渡した後、水漏れやシロアリの食害など、不具合が見つかると売主に契約不適合責任が問われます。責任を問われると、買主は売主に対して補修費用や損害賠償請求、契約解除を求められる可能性があり、大きな負担が求められます。
費用の負担を避けたい売主は、特約で契約不適合責任を免責できる可能性があります。買主と売買契約を結ぶ前に不動産会社に確認しておきましょう。
3.あらかじめ家財を処分しておく
一戸建てを売却する場合や取り壊す場合も、あらかじめ家財道具を処分しておくとスムーズに進められます。どうしても処分できないものがあれば、レンタル収納サービスなどを利用して一時的に保管しておくといいでしょう。
4.売却時に仲介手数料や税金がかかる
一戸建てを含む不動産を売却する際、仲介手数料と譲渡所得税、住民税がかかります。なお、税金については条件次第で以下の控除や特例を受けられる可能性があります。
国の控除や特例制度 | 対象者 |
マイホーム売却時の3,000万円特別控除 | マイホームを売却したとき、一定の条件を満たした場合 |
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例 |
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マイホーム売却時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | マイホームの所有期間が5年を超える など |
ただし「マイホーム売却時の3,000万円特別控除」と、「マイホーム売却時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」との併用はできません。加えてこれらの特例を前年、または前々年に受けたときは利用できないので注意が必要です。
不動産一括査定で築50年の一戸建てを売却しよう
築50年の一戸建てを売却する際の相場や、損しないポイントについて解説しました。築50年の家は築浅の物件と比較して売りにくい傾向がありますが、リフォームや不動産会社に買い取ってもらうなど、慎重に判断すれば売却できる可能性があります。
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