家をなるべく良い条件で売却するには、適切な売り出し価格を設定する必要があります。適正価格を知るために、まず家の売却相場を確認しておきましょう。相場のリサーチ方法と、それぞれの特徴について詳しく解説します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
築年数・購入価格別の売却相場の目安
家の売却を考え始めたら、ローン完済や住み替え資金の試算をするためにも、どのくらいの価格で売れるか知っておく必要があります。まずは、売却価格の下落割合と、築年数ごとの売却相場を確認しましょう。
一戸建て売却価格の下落割合
木造戸建ての建物部分は築年数が浅いほど高く売れるため、いずれ手放すつもりなら、早めの売却を検討するとよいでしょう。
新築同様であっても人が住んでしまえば中古物件となり、築15年ほどまでは1年につき約5%の割合で資産価値が下落していくと予想されます。
家の売却価格相場は新築時の購入価格×下落率で算出できます。例えば建物2,000万円・土地3,000万円で購入した築10年の戸建てなら、2,000万円(建物)×0.5(下落率50%)+3,000万円(土地)=4,000万円(売却価格)です。
あくまで概算となるため、査定額とは異なる場合があります。なお、資産価値が下がるのは建物のみで、土地の資産価値については、築年数は関係ありません。
築年数ごとの売却相場一覧
以下は、築年数ごとにだいたいの売却相場を表にしたものです。
築年数 | 残存価値率 | 新築時の購入価格(土地3,000万円の場合) | |||
---|---|---|---|---|---|
4,000万円 | 5,000万円 | 6,000万円 | 7,000万円 | ||
築5年 | 75% | 3,750万円 | 4,500万円 | 5,250万円 | 6,000万円 |
築10年 | 50% | 3,500万円 | 4,000万円 | 4,500万円 | 5,000万円 |
築15年 | 25% | 3,250万円 | 3,500万円 | 3,750万円 | 4,000万円 |
築20年 | 15% | 3,150万円 | 3,300万円 | 3,450万円 | 3,600万円 |
築25年 | 10%以下 | – | – | – | – |
建物の資産価値は築15年までは急速に下落していきますが、築15年以降になると緩やかに下落し、築25年以降はほとんど変動しません。
土地の資産価値は、築年数ではなく需要の有無によって変動します。例えば過疎化の進む地域では値が下がり、大規模開発が予定されているエリアでは値上がりすることもあります。
家の売却価格の相場を詳しく調べる方法
家の売却価格の相場を調べるツールとして、不動産情報サイト・取引データベース・一括査定サービスが挙げられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
不動産情報サイトの売り出し価格を見る
売却価格の参考にするなら、購入者向けの不動産情報サイトに載っている、現在売りに出されている物件の価格が参考になります。売却したい家の周辺エリアで、似た物件を探してみましょう。
類似物件の売り出し価格が分かれば、実際に査定してもらった後の査定額と比較できます。エリアによっては表示される物件が少ないため、精度は下がりますが条件を広げて探してみましょう。
なお、不動産情報サイトに載っている価格は、売り主が提示した売り出し価格であって、そのままの価格で売れるとは限りません。
データベースで過去の事例を調べる
売り出し価格ではなく、成約価格から売却価格の相場を調べる方法もあります。その場合は、実際に取引された情報をまとめたデータベースを利用します。
不動産売買に関する過去の取引事例を調べられるデータベースは、『土地総合情報システム』『レインズマーケットインフォメーション』の2つです。
どちらも全国の取引情報が閲覧できますが、少々異なる部分もあります。それぞれの特徴を使い方と併せて紹介します。
土地総合情報システム
土地総合情報システムとは国土交通省の運営により、戸建て・マンション・土地など全国約488万件の取引価格を集計・掲載しているサイトです。
不動産を売買した人を対象に行ったアンケート結果を提供しているもので、結果は四半期ごとに公表されます。アンケート結果は、土地総合情報システムのトップページから『不動産取引価格情報検索』へ移動すると検索できます。
1つだけ注意したいのは、ここで確認できる売却価格はアンケートの回答だということです。取引価格は自己申告となっており、実際の取引情報を基にしたものではありません。
レインズマーケットインフォメーション
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通省の指定を受けた全国指定流通機構連絡協議会が運営するサイトです。日本全国の物件取引情報を提供しているため、こちらも売却価格の相場を調べるのに適しています。
トップページで都道府県・地域を選択すると、検索結果ページに直近1年の取引情報グラフが表示されます。さらに条件を絞って検索するために、同じページにある『追加検索条件』を指定しましょう。
実際の取引情報であるため精度は高いですが、戸建ての査定額には内装や設備などの個別要素も加味されることから、こちらも参考程度に考えておくことが大切です。
一括査定サービスを利用する
一括査定サービスは、複数の不動産会社に、一度に簡易的な査定を依頼できるシステムです。土地総合情報システムやレインズマーケットインフォメーションで類似物件が少なくても、直接不動産会社に依頼してしまえば問題ありません。
一括査定サービスは、以下の条件に注意して選びましょう。
- 得意なエリアと物件
- 掲載されている情報量
- 提携する不動産会社の数
全国対応となっていても、「特に関東に強い」といったケースもあります。特に地方の戸建てを売却する際には、よく確認することをおすすめします。
家の売却価格と手取り額には差がある
家を売却できたとしても、売却価格そのままの金額が手に入るわけではありません。売却後の資金計画のために、売却価格と手取り額の差について知っておきましょう。
売却価格から諸費用と税金が引かれる
家の売却にかかる諸費用と税金は、主に以下の6つです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
- 住宅ローン返済手数料
- 引越し費用
- 譲渡所得税
これら費用のほか、測量や解体を行った場合はその費用もかかります。そのため、家を売却したお金で新居を購入しようとしている場合は、手取り額で資金計画を立てておかなければいけません。
譲渡所得は『不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)』で算出されます。概算の時点では、売却価格の約3~5%が諸費用として引かれると考えておきましょう。
相場を調べて家の売却を有利に進めよう
木造の戸建ては築15年までの間に急速に資産価値が下落します。築15年後はやや緩やかになるものの下落を続け、約20年後には資産価値がほとんど残らないのが一般的です。
今、売りたい物件にどのくらい価値があるのか調べるには、不動産サイトの売り出し価格や、全国の取引情報、一括査定サービスを利用するとよいでしょう。
家の売却にはさまざまな費用がかかるため、売却価格と手取り額の差を想定し、綿密な資金計画を立てておくことが大切です。