テレワークは通常の勤務体制とは異なるため、労務管理上さまざまな対応が必要です。コロナ禍を機に、また社員の働きやすい環境作りのためにテレワークを導入したものの、労務上の管理について課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか?
本記事では、テレワークにおける課題とその対処法、実際の対応事例やテレワークのガイドラインなどをわかりやすく解説します。
テレワーク時は労働基準法が適応されますか?
適応されます。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務どれでも適応されます。
テレワーク実施時の通信費・水道光熱費は会社と従業員どちらが負担するの?
基本的には会社が負担するケースが多いです。プライベートとの区別が難しいため、一律でテレワーク勤務手当として支払うケースがほとんどです。
テレワーク労務管理の基本
テレワークを導入するには、労働基準法や労働関連法が適用されるため、従来出社勤務でも行っていた労務管理を見直す必要があります。テレワークに対する労務管理の基本事項は以下の4つです。
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就業規則・契約の変更
労働基準法15条において、企業は従業員の賃金・労働時間・就業場所を書面などで明示しなければならないと定められています。
そのためテレワークを導入するには、就業規則項目の改訂及び従業員との契約を変更し、通達する必要があるのです。
まず就業場所は変更になるため、必ずその点は変更し契約を改訂しましょう。そのほかの就業規則や契約を変更するケースは企業ごとの状況によって異なりますが、主に以下が考えられます。
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基本的には就業規則が変更となるため、現状の規則を見直し従業員に明示しましょう。
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勤務形態・人事評価の方法の見直し
勤務形態とは基本的には「固定労働制」や「フレックスタイム制」など労働のあり方を指し示す言葉です。
以下についてまとめているので、深く知りたい方はご覧ください。
テレワークへの切り替えを行うと、従来の勤務形態だと齟齬が生まれる可能性があります。従業員へのヒアリングを行うなどして、適した勤務形態かどうかを見直しましょう。
また人事評価についても、対面でないと運用そもそもが難しい可能性があります。現場視点での問題点を洗い出し、場合によっては正しい評価方法に刷新した方が良いかと思います。
主にテレワークでも運用しやすいと言われている人事評価制度はOKRとMBOを基軸にした評価方法です。
どちらも以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
作業環境の整備
テレワーク中の作業環境に対しては、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」にて、十分な状況が示されています。
従業員へは、ガイドラインを参考に適切な作業環境について共有するなどしましょう。
またそのための整備費や通信費を「在宅勤務手当」として支給できるよう、整備をする必要もあります。
労働時間の管理方法を適正化
テレワークを導入することで、目視での労働時間の管理が難しくなります。
また従業員も、プライベートとビジネスの差別化ができず、労働時間が短くなってしまったり逆にプライベートタイムに仕事をしてしまったりなどの不都合が生じることも。
そのためPCの使用記録をとる、勤怠ツールを導入するなどの管理方法を検討すると良いでしょう。
テレワーク中の労務管理7つの課題と解決策
テレワークの基本的な労務管理事項を満たしても、運用上の不具合は生まれてきます。
そこでよくあるテレワークの労務管理に以下7つの課題についてご紹介。実際の事例を交えて、解決策を解説します。
【テレワーク時7つの労務課題】
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(1) 勤怠管理の状況を把握しにくい
テレワークの労務管理において、もっとも多い課題が「勤怠管理の状況を把握しにくい」「勤務状況の変動に合わせて、勤務状況を記録しなければいけない」ことです。
テレワークでは、出退勤の時間や作業時間の実態が把握しにくいため、勤怠管理対策を必ず行う必要があります。もし、勤怠管理対策を行わずにテレワークを導入した場合、作業効率の悪化や無駄な残業が発生してしまいます。
【解決策】
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勤怠管理の関する課題は、イレギュラーな勤務状況にも柔軟に対応できるよう、勤怠管理ツールを導入するようにしましょう。勤怠管理ツールを導入することで、始業・休憩・終業時刻や作業状況を正確に記録することができます。加えて給与システムとの連携を行うことで作業効率を高めることも可能です。
その他にはWeb会議システムやチャットの活用も有効的です。始業時・終業時、中抜けする場合はチャットやメールで報告するなどの仕組みを整えましょう。
【他企業の具体的な事例】
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フレックスタイム制や勤務時間の一部だけをテレワークする場合は、テレワーク場所までの移動時間の扱いに注意が必要です。会社都合の場合は労働時間に、自己都合の場合は休憩時間になります。
(2) テレワーク時の費用・手当の負担が明確ではない
「テレワーク時に使うパソコンや机・イスなどの設備や、光熱費・通信費などの費用は、誰が負担するのか」「コワーキングスペースやサテライトオフィスの利用料や交通費は誰が負担するのか」などのテレワーク時の費用・手当の負担が明確に設定できていない企業も多いです。
自宅で作業を行うため、水道光熱費や通信費が社員にとって大きな負担となります。プライベートとの線引きが難しいですが、どこまで会社が費用負担をするのかを決めておく必要があります。
【解決策】
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テレワークに関わる費用負担や手当は、就業規則を明確にすることが重要です。就業規則に定めるときは、労使または社員と十分に話し合って了承を得るようにしましょう。
就業規則の内容としては、費用の負担範囲や限度上限はいくらか、費用代金の支払いまたは手当として支給するのか、請求方法はどうするのかなどを定めましょう。
費用や手当については、国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」が参考になります。
【他企業の具体的な事例】
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テレワークで使用する機器や通信費などの費用負担は、労使または社員との話し合いを経て、就業規則にしっかりと明記しましょう。
(3) テレワーク中の作業環境や健康管理が難しい
「テレワーク中の照明や換気状況などは管理が難しい」「健康面・メンタル面の不調に気付きにくい」など、テレワークは作業環境や健康管理が難しいという課題があります。
テレワークによって仕事のオンとオフがうまく切り替えられず、長時間労働に陥ってしまう従業員も多いです。そのため、企業はテレワークによる社員の心身の負担を抑える必要な措置を講じなければいけません。
【解決策】
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テレワークで望まれる部屋の明るさや温度・作業姿勢を提示し、健康管理はもちろん、メンタルヘルスのサポート体制を整えることが重要になります。
【他企業の具体的な事例】
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他企業で行っている施策を参考にし、テレワークでも働きやすい環境を整えましょう。
(4) 労災認定の判断が難しい
「テレワークに労災は適用されるのか」「業務に関する傷病なのか、把握するのが難しい」「テレワークでの労災認定は、どう判断するといいのか」などの悩みを抱えた企業も多いです。
たとえテレワークであっても、業務に関係した傷病であれば労災保険が適用されます。テレワークだからと言って、労災の申請に一切応じない行為は違反となります。
【解決策】
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テレワークの場合も、会社で勤務するのと同じように労働基準法が適用され、会社は労災の補償責任があります。部屋の明るさや温度・設備などの作業環境の確認と指導、心身の健康管理をサポートする体制を整え、労災リスクを抑えましょう。
【テレワークで労災認定された事例】
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この事例は私用ではなく、業務中における転倒であったため、労災認定となりました。労災認定の基準は難しいため、万が一トラブルが起こった場合、どのような場合であれば労災に認定されるのかをしっかりと社員に周知することが大切です。
(5) 就業規則の作成・変更の方法が分からない
「テレワークの就業規則や既存の就業規則を変更方法が分からない」「テレワークの就業規則にはどのような内容を入れるといいのか」だどのなどの悩みを抱えた企業も多いです。
【解決策】
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テレワークに対応する就業規則は、労務管理を行う上でも重要です。就業規則には次の項目を明記しましょう。
- テレワーク対象者と実施条件
- 労働時間と確認方法(始業・終業・休憩時間の扱い、始業・終業時の連絡方法など)
- テレワークに必要な費用負担(手当として給付、経費として計上など)
- 定期会議や回覧物について
- 労災適用の明示
- 情報セキュリティ規則
- 人事評価
- 健康管理措置
【他企業の具体的な事例】
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就業規則の作成・変更は、労働条件の変更に関わるため、労働組合や社員との話し合い・合意が必要となります。
(6)人事評価が難しい
テレワークにおいては、成果の見えにくい仕事や作業プロセスの評価が難しいという課題があります。営業職や技術職などの成果が分かる職種においての評価は簡単ですが、事務職などの成果が明確ではない職種においては判断が難しいです。
明確な人事評価制度を定めることなくテレワークを取り入れてしまうと、従業員からの不満が発生する要因となるため注意しましょう。
【解決策】
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具体的な内容としては以下の通りです。
- 評価内容を明確にし、仕事内容と照らし合わせて評価しやすいようにする
- プロセスが見えにくいテレワークに関しては、マネージャーの評価訓練も大切
- 自己評価できるようにする(例:目標達成プロセスや到達度で評価できるようにする)
- 360度評価など、新しい評価制度を導入する
詳しい人事評価制度については以下の記事を参考にしてみてください。
【他企業の具体的な事例】
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自社の働き方に合わせ、従業員の意見を取り入れながら新しい人事評価制度を設定しましょう。
(7) コミュニケーションが不足する
「気軽にやり取りできなくなったことで、コミュニケーションが取れない」「指示がきちんと伝わっているか、社員同士・メンバー同士の連携が取れているかわかりにくい」「業務を進めているか、干渉しすぎたり疑ったりしてしまう」などのコミュニケーションに関する課題も多いです。
しかしコミュニケーションが不足するからと、過度な連絡を取ることは従業員のストレスの要因となるため避けましょう。
【解決策】
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通常の勤務とは異なり、直接顔の見えないテレワークでは、コミュニケーションを取るタイミングや伝え方に工夫が必要です。
業務をスムーズに進めたり、社員同士・メンバー同士のコミュニケーションを円滑に行ったりするために、下記のような各種ツールを利用しましょう。
- オンライン会議システム(Zoomなど)
- ビジネスチャット(Slackなど)
- スケジュール管理ツール・グループウェア(G Suiteなど)
- 情報共有ツール(esaなど)
- プロジェクト・タスク管理ツール(Backlogなど)
- ファイルストレージ(Boxなど)
【他企業の具体的な事例】
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従業員と話し合い、自社にとって最適なコミュニケーションの頻度を設定しましょう。
テレワーク中の労務管理に関する厚生労働省の動き
テレワークでの労務管理上の対応方法や注意点には、厚生労働省がガイドラインやQ&Aを指標として出しています。また具体的な悩みを相談できる窓口があるほか、テレワークに関するセミナーも定期的に開催されています。
「テレワークを導入しようとしている」「導入後の悩みを解決したい」という場合は、ぜひ確認してみてください。
ガイドラインの策定と公表
厚生労働省からは、テレワーク導入時に必要な労務管理整備に関するガイドラインやQ&Aサイトが出されています。またテレワーク相談センターでは、無料相談やコンサルティングを受け付けています。
テレワークの労務管理に関することは、下記サイトで確認・相談しましょう。
厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
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厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」
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厚生労働省サイト「テレワーク普及促進関連事業」
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厚生労働省委託事業:テレワーク相談センター
電話:0120-861009
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セミナーの開催
厚生労働省と総務省により、定期的にテレワークの労務管理に関するセミナーが開催されています。厚生労働省のセミナーは、終了後もYouTubeで視聴できます。
厚生労働省によるセミナー
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テレワークの労務管理の事例
テレワークの導入には多くの課題があり、その課題を解決していく必要があります。ここでは実際に労務管理システムを導入し、テレワークを行っている企業の事例を紹介します。
ノハナ社
フォトブックアプリを運営するノハナ社は「ジョブカン勤怠管理」を導入し、完全自動で勤怠と労務、給与の一元管理を行っています。「ジョブカン勤怠管理」は様々な打刻方法に対応しているため、リモートワークの従業員の勤怠管理を行うことも可能。
勤怠管理が正確に行われることでテレワークが促進され、柔軟な働き方が広がっています。
参考:リモートでの打刻や人事労務業務が可能に。自由な働き方を実現|ジョブカン勤怠管理 |
KADOKAWA Connected社
KADOKAWAグループへのICTサービス提供を行っているKADOKAWA Connected社では、「SmartHR」の導入し、各種労務手続きの簡略化に成功しました。
従来は社内でしか行うことができなかった入社手続きや年末調整を自宅で行える仕組みを整え、テレワークを促進しています。
参考:テレワークで入社手続きと年末調整を実行。変化に強い人事労務へ|SmartHR |
テレワークの労務管理おすすめツール3選
テレワークの課題を解決するために重要となるのがツール。ここでは労務管理はもちろん、モチベーションまでも管理できるおすすめのツールを紹介します。
①ジョブカン勤怠管理(株式会社Donuts)
打刻方法が豊富で、給与計算ソフトとの連携を行うことができる便利なツールです。出勤・退勤の管理だけでなく、シフト、休暇申請、工数管理も可能。業種や職種を問わず幅広く利用いただけます。
初めてであっても、無料トライアル制度やサポート窓口が設けられているため、安心して利用することができます。
②Qasee(Qasee株式会社)
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労務管理システムについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:労務管理システム比較10選!機能一覧や製品特徴を徹底解説|ミツモア |
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