OKRとは多くの企業に導入されている目標管理制度のこと。正しく導入すれば、会社や個人にさまざまな利益をもたらします。ただし、表層的にOKRを理解し導入してしまうと逆に不利益を生んでしまうことも。
導入を成功させるために知っておきたい、OKRの正しい知識を解説いたします。
OKRとは?
OKRは企業における目標設定・管理方法のひとつで「Objectives and Key Results」の頭文字を取っています。直訳すると「目標と成果指標」という意味です。
OKRの特徴は、一般的な目標設定に比べ高頻度で設定・追跡・再評価を行うことです。目標設定の更新頻度は基本3ヶ月ごととされています。
またOKRは企業と個人、それぞれの目標をつなげ、全社に公開。どんな役職でも他の社員の目標を見れる状態となります。結果、社員全員と企業の目標にずれが生じずに運用できるのです。
個人目標を事業利益と結びつけているため、社員が課題をそれぞれクリアすれば企業全体で目標達成が可能となる仕組みです。そのため社員は自身の仕事の会社への貢献度を感じやすく、モチベーションアップへとつながるでしょう。
ただし注意したいのは、OKRは社員の報酬とは結びつきません。OKRの目的はあくまで目標達成までのプランニングとオペレーションの明確化です。報酬とは結びつけない仕組みがより良い社員のパフォーマンスを生みます。
OKRは1つの目標と複数の成果指標で構成される
OKRは1つのO(目標)と複数のKR(成果指標)で構成されています。
目標(O)とはそれぞれの行動が目指す最終的な結果、成果指標(KR)とは施策ごとの成果を把握するための具体的な数値水準のこと「O」は「Objectives(直訳で目的)」KRは「Key Results(直訳で主な結果)」の略です。
ではOKRにおいてはどのような要素と役割を果たすのか細かくみていきましょう。
【O(目標)の要素と特徴】
まずO(目標)の要素と特徴は以下の通りです。
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OKRの大きな特徴は、目標を短期間に設定すること。目標を達成するための集中力が持続しやすくなるメリットがあります。
また「挑戦しがいがある目標であるか」も重要です。簡単にできてしまうものではなく、達成確率が50%ぐらいの難易度のものが良いとされています。
そして様子や変化などが数値や数量で表せない、定性的な目標を立てます。たとえば「新事業の〇〇を成功させよう」などの目標が該当するでしょう。O(目標)を定性的、KR(目標指標)を定量的に設定するのがOKRの基本です。
【KR(成果指標)の要素と特徴】
次にKR(成果指標)の要素と特徴は以下の通りです。
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成果指標を決める際は「数値的に測れるかどうか」が重要です。「売り上げ10%アップ」「新規顧客3人獲得」というように、客観的な評価ができるように設定しましょう。
設定する数は2~5個程度が推奨されており、少なすぎても多すぎても良くありません。O(目標)と同様に肌感で構わないので50%の達成確率のチャレンジングな数値にすることでより効果的に運用できるのです。
評価時、100%達成でなくても60~70%の達成率で課題クリアとみなされます。評価振り返り時に100%の達成率であった場合。目標設定基準の見直しを図らなければなりません。
なぜならばOKRは「ストレッチ ゴール」と呼ばれる自身が出来そうだと捉えるよりも高い目標値の設定で行うべき、と考えているからです。「ストレッチゴール」で設定することにより目標を達成できずとも、予想外の成果や個人の成長につながります。
このように目標達成=成果として結びつけるのではなく、高い目標でチームとしての成長を促進する「体験」をOKRではメリットとしているのです。
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OKRの発祥と理念
OKRの発祥は1970年代、インテル社が最初に導入しました。
当時インテル社は主力であるメモリチップやマイクロプロセッサ市場において他企業に遅れをとり、会社の存続に関わるほどの重大な危機に直面。挽回をかけ、社員の半分である1000人以上を動員し「クラッシュ作戦」という事業戦略を展開しました。
「クラッシュ作戦」の情報伝達系統に役立ったのがOKR。当時のインテルCEOアンディー・グローブ氏がMBOをアレンジしOKRを考案しました。
1000人以上の従業員が同じ目標で、かつ能動的に働くという大きな課題においてOKRは重要な成功の鍵に。無事競合に打ち勝ち、インテル社はその地位を確かなものに築き上げたのです。
OKR導入のメリットとデメリット
OKRを導入することで多くのメリットとデメリットが発生します。そのため導入しても思った成果が得られない、逆に社員の生産性が下がったなど不利益にもつながりかねません。OKR導入には適切な知識と特性を把握する必要があります。
そこで特に影響値の高い4つのメリットと3つのデメリットをまとめました。各メリットとデメリットを正確に把握することで、OKR導入の可否はもちろん、より良い運用に役立てましょう。
OKR4つのメリット
OKRで主に期待できるメリットは以下の通りです。
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【高い目標を設定できる】
OKRを導入すると高い目標を設定でき、最終的な到達点もレベルが上がります。社員のそれぞれが現状に満足することなく、次に向かっていきやすくなるのです。
目標を高めに設定することでより多くの努力をするようになるでしょう。
またOKRは基本、社員の報酬の決定とは関係なく運用。失敗しても給与に反映されるわけではないので、思い切って高い目標に取り組めます。
たとえ失敗したとしても「難しい目標に取り組んだ経験」が、社員の成長や団結につながるのです。
【状況に応じた目標設定がしやすい】
OKRは目標設定のスパンが3ヶ月程度とされています。そのため短期スパンでの会社全体の利益目標の変更や人事異動にも対応しやすいでしょう。
通年で目標を策定し、なかなか変更がない企業だとOKRの目標は策定しづらいですが、ベンチャーや四半期ごとに状況が変わるような企業だとOKRの目標策定は適応しやすいです。
【会社の団結力が高まる】
OKRでは個々の目標が全体に共有されるため、チームで連携して仕事に当たるという意識もアップします。そのため会社の団結力を高められるでしょう。
目標達成に向けコミュニケーションが活性化することで、より生産性が高まる効果も見込めます。
【自身の目標が会社に貢献できていると実感しやすい】
OKRは自身の目標を会社目標から分解して策定します。かつ自身の目標や他の社員の目標が会社の目標と紐づいて全社に公開されるのです。
そのため目標設定が論理的になり、社員の意識が同じ方向へ。チームや個人間での意思疎通もうまくいくようになり、仲間を信頼する心を育めます。
会社全体の動きが具体的に見えるため、自身の目標がどのように会社に貢献しているのか見えやすく、働くことへのやりがいを感じることができるでしょう。
OKR3つのデメリット
OKRのデメリットは以下の通りです。
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【目標策定に時間とコミュケーションコストがかかる】
OKRは基本的に3ヶ月ごとの短期スパンで行われます。目標策定と目標満期のたびにミーティングを組む必要があり、かつ目標達成シートの作成など社員の作業コストもかかるでしょう。
また効率的な目標策定を行うため、各社員へのOKRへの理解やオペレーションの構築が必須となります。導入する際には、そのコストも考えなければなりません。そのため導入コストと作業コストの換算が必須となります。
【人事評価とは結びつかない】
OKRは人事評価には結びつけることは目的からずれてしまい難しいでしょう。
安易に人事評価と結びつけると、O(目標)を定性的としているため、評価基準の温度差が生まれてしまいます。すると評価者にとっては納得のいかない結果になってしまう可能性があるのです。
人事評価でOKRを策定する場合は、特性を理解した上での自社アレンジをするか別の目標設定方法に切り替えることをおすすめします。
【場合によってモチベーション低下の原因にも】
高い目標に対しどう取り組んだらよいのかわからず、モチベーションが下がってしまう可能性がある社員も中にはいることを考えなければなりません。
全力を尽くしても達成できないことに、ストレスを感じてしまうのです。
そのため社員にOKRの目的は「挑戦的な目標に取り組むこと自体」が重要なのであって、100%の結果を出すことが目的ではないと周知する必要があるでしょう。
OKRがマッチする企業
OKRの特徴を理解すると、自ずと考えるのが自社にあった目標設定方法なのかどうか。より自社にあった目標設定方法を選び、自社の利益へと結びつけたいですよね。
では具体的にどのような企業がOKRにマッチするのでしょうか。詳しく解説していきます。
マッチする企業
OKRがマッチすると言われている企業は以下の通りです。
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OKRは目標設定のスパンが短期であるかつ社員が能動的に会社のために動く仕組み。そのため会社全体の利益目標が変更になりやすい会社ほど、利点を活かせます。
特に成長フェーズにある企業は、限られた人員・期間で目標を達成しなければならない状況下。そのような場合OKRは情報伝達機能としても社員のモチベーションを上げる意味でも、良いパフォーマンスを発揮する可能性が高いのです。
そうでない企業
OKRを導入しても生産性が上がりにくい企業は以下の通りです。
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OKRはチャレンジングな目標を会社全体で取り組んで達成するという目的があります。そのため、現状維持を求めている会社やチャレンジングな目標を設定する必要のない会社はあまり特性が活きないでしょう。
またOKRは全社に公開するという特徴があります。そのため、会社目標を公表しなければ目標設定することができません。
【ただしOKRは併用・アレンジできる】
OKRにマッチする企業・そうでない企業を紹介しましたが、あくまで形骸的であり実際は定義することは難しいと言われています。
なぜならばOKRはMBOなどと併用する企業や、会社にあった要素のみ活かし自社の事業モデルに合わせてアレンジする企業も多いからです。
例えば、以下のような企業があります。
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よりパフォーマンスを発揮するには、表層的にOKRのシステムを理解し丸々導入するのではなく、各企業文化にあった方法で運用することをおすすめします。
OKR目標設定のコツ
OKRの目標を作成する際に意識するポイントは以下の通りです。
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ムーンショットを意識する
OKRはムーンショットな目標作成を意識しましょう。ルーフショットな目標では意味がありません。
ムーンショットとは「Moon(月)に届くほどのショット」を意味しています。名前の通りチャレンジングな目標設定を指しており、月に届くほどの努力をしなければその目標を達成できないということです。
OKRは60%〜70%の達成率になる目標を設定する必要があるため、ムーンショットをイメージするとよりブラッシュアップされた目標になるでしょう。
「完璧な達成でなくても良い」という認識で目標を作成することがポイントです。
対してルーフショットは「(屋根)に届くほどのショット」を意味しています。100%達成でなければ失敗としており、OKRの目標設定には不向きとされています。
各目標の自信度を設定する
OKRは各目標に対して達成の自信度を主観で決めると、さらにわかりやすくなります。10段階評価で以下を指標にすると良いです。
- 「10」絶対の自信がある
- 「5」できるかもしれないしできないかもしれない
- 「1」絶対にできない
10段階で自信の度合いを見える化することで、さらに目標と向き合うことができるでしょう。
スコアリングで振り返る
OKRは振り返りの際に、必ずスコアリングを行いましょう。スコアリングとは達成度を採点することを指します。
スコアリングの際は、下記をルール化します。
- KRごとに0.0〜1.0内で評価(もしくは%でも良い)
- KRの平均を算出→Oのスコアとする
スコアリングは、ロジカルに目標値を算出できるため社員の満足度につながります。また具体的な達成度を指標化するため、次回のOKR目標が策定しやすくなるでしょう。
OKR目標達成シートの作成
書くべき項目・テンプレート
OKRを実施するにあたって目標管理シートや書き方を決めておけば、目標管理をしやすいでしょう。形式はエクセルや紙、目標管理用のツールのいずれでもかまいませんが、電子共有ツールを用いると機密性をもって全社に公開できるためおすすめです。
関連記事:OKRツールおすすめ9選!選び方や導入のメリットも解説|ミツモア |
目標管理シートを用意すれば、OKRを効率的に運用できます。
【目標管理シートの項目例】
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【目標管理シートのテンプレート】
目標管理シートのテンプレートを掲載します。参考にして自社向けにアレンジしてみてください。
目標達成シート作成例
以下では、ビジネスシートの作成例を紹介します。様々な部署の作成例を共有するので、参考にしてください。
【会社全体目標】
会社全体粗利を160%成長させる |
【具体例1:ビジネスチーム Aさん】
O(目標):SEOで売上貢献
KR1(成果指標):4,000 session/月から8,000 session/月へグロース KR2(成果指標):CV数を150%成長 KR3(成果指標):お客様アンケート「サービスをどこで知りましたか」項目の「検索して知った」票数を150%成長 |
【具体例2:営業チーム Bさん】
O(目標):部署売上をあげる
KR1(成果指標):架電を○件行う KR2(成果指標):アポを○件取る KR3(成果指標):成約を○件取る |
【具体例3:開発チーム Cさん】
O(目標):開発コストを下げる
KR1(成果指標):セキリュティ分野コスト○%削減 KR2(成果指標):アップデート分野コスト○%削減 KR3(成果指標):社内リソースでの開発を全体の○割に引き上げる |
【具体例4:クリエイティブチーム Dさん】
O(目標):より成果の高いクリエイティブを効率的に作る
KR1(成果指標):CTRを5%改善 KR2(成果指標):デザイン出戻り率の10%削減 |
【具体例5:管理チームEさん】
O(目標):社員の生産性の高い環境を作る
KR1(成果指標):社員の平均残業時間を10時間/月削減 KR2(成果指標):社内快適度アンケートの満足度を90%以上に引き上げる |
OKRが失敗する?導入・運用の際の注意点
OKRの導入に失敗することは、大抵がパターン化されています。そのため以下3つのポイントを押さえれば、失敗確率はグンと低くなるでしょう。
高すぎず低すぎない目標にする
OKRの効果を十分に引き出すには、目標をどのくらいの高さに設定するかが重要です。あまりにも現実とかけ離れたものでは、どんなに頑張っても実現できません。
かといって、低すぎる目標だと社員がやる気を失ってしまったり期待したような成長が見込めなくなったりします。簡単に100%を達成できるレベルの目標は設定しないようにしましょう。
難しい目標に対しては達成率を下げても構いませんが、個々の能力を考慮したうえでバランスが取れたものにすることが大事です。本来できるレベルよりも、やや難しいものを設定するとよいでしょう。
企業と個人の目標をリンクさせる
OKRとほかの管理法の大きな違いは、個人と企業の目的がリンクしていることです。企業の目標が決定したら、成し遂げるために必要な成果指標を必ず決めましょう。
企業・チーム・個人の目標と、成し遂げるために必要な要素を設定し、紐付けていきます。社員それぞれが目標を達成すると、企業としての大きな目標達成となるように、つなげていくことがポイントです。
イメージとしては、ピラミッドの最下層に個人の目標と成果指標を置き、個々と部門ごとのチーム全体の目標をリンクさせ、最終的に企業が掲げたひとつの目的につながるように設定します。
定期的な確認・コーチングが重要
一度目標を設定した後、ひたすら突き進めばよいというわけではありません。進捗状況や達成率などを見て、振り返ったり指導したりすることが必要となります。
振り返りについては以下の体制を整えることをおすすめします。
- 1on1(ワン・オン・ワン)体制
- 360度評価
定期的に社員と部門の責任者がコミュニケーションを図り、質問や提案をしながら、目標を達成するための問題を解決していきましょう。部門の責任者に対しては、さらに上の責任者が同様のことを行います。
場合によっては達成に必要な手助けをするというように、やり方に柔軟性を持たせなければならないこともあるでしょう。
仕事を円滑に進めるために必要な関係性を作り「サポート体制」を整えることが不可欠です。
1on1及び360度評価については、以下の記事で詳しく説明しているので参考にしてみてください。
OKR導入企業例
OKRにはさまざまなメリットがあることから、世界の大企業や躍進が目覚ましい企業などで導入されています。1970年にインテル社で導入されたことがきっかけで、多くの企業が取り入れるようになりました。
世界的に有名な企業である「Google」や、日本のIT企業として成長を続けているフリマアプリ運営会社「メルカリ」も、OKRを導入している企業のひとつです。
Googleは現在のように多くの企業で導入される前から、OKRを運用してきました。創業機にOKRは取り入れられていたとされています。日本企業でもOKRを持ち込んだのはGoogleと言われており、これにより一気に注目を集めました。これまで解説したOKRの基軸をほとんど盛り込んでおり、模範的となるOKR運用を行なっているといえるでしょう。
GoogleのOKRに対する取り組みは以下動画で解説しています。実際に社内でOKRを運用しているチームがOKR とは何か、企業成長にOKRがどのように貢献するか、また導入する際に避けるべきことは何かなどをプレゼンテーションしています。
日本語訳の字幕でも見ることができますので、お試しください。
メルカリ
メルカリは、2015年の段階でOKRを導入しました。
「達成確率が50%程度のOKRを設定しよう」「ワクワクするOKRにしよう」というコンセンプトを基本に目標を設定。設定、進捗、振り返りの1on1だけでなく、各役職が集まり、社員の評価について共有し目線を合わせる「キャリブレーションMTG」を行なっています。「キャリブレーションMTG」を行うことで、各役職の評価が妥当か判断することに成功しました。
そのためメルカリではOKRを人事評価の具体的な指標として扱っています。
Sansan
Sansanはここ数年で急速に社員数を伸ばしたベンチャー企業です。その要因の1つがOKRと言われています。
SansanがOKRの目的の前提としているのが「出会いからイノベーションを生み出す」。今まではビジネスでの出会いを資産に変え働き方を革新するという考え方でしたが、OKRを通して個人と会社との化学反応を期待するという考え方に変わったそうです。
OKRを自社にあった形で運用し成功した例といえるでしょう。
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