「引越しの見積書」は、引越し当日に業者が行う作業内容と金額を示した書類です。契約書とは異なり、提示された段階で断ってもキャンセル料はかかりません。しかし、書面の名称や作業人数など、細部まで確認しないと、引越し当日に追加料金が発生し、思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。
今回は引越しの見積書で確認すべき項目について、注意点や引越し当日に追加料金の支払を回避する方法を含めて解説します。
引越しの見積書で必ず確認すべき項目10選
引越しの見積書は業者によってフォーマットが異なるものの、全日本トラック協会の「標準見積書」を参考に荷物量や新居の情報などを確認したうえで作成します。料金や家財品目といった項目がありますが、契約後トラブルが発生しないように必ず確認すべき項目は下記の10点です。
引越しの見積書で必ず確認すべき10項目
1.書面の名称に「契約書」が含まれていないか
引越し業者から見積書を受け取った後は安易にサインを書かず、書面に「契約書」と記載されていないか確認をしましょう。基本的に見積書と契約書は別で作成しますが、業者によっては「見積書兼契約書」を提示するケースがあります。
「契約書」と文言が記載されていると引越しをキャンセルする際、タイミングによってはキャンセル料がかかる場合があるので、注意が必要です。
2.引越し業者の会社名・連絡先・担当者名
引越し業者の社名や住所、電話番号、担当者名は必ず確認しておきましょう。見積書の内容について不明点があったり、引越し当日に持っていく荷物が増えてしまったなど、何か問題が発生したとき、担当者に問い合わせができるようにするためです。
3.引越しの日時
「引渡日」や「梱包日」、「開梱日」など、引越しの日にちや作業開始時刻の確認も大切です。業者によって異なりますが、引越しの時間帯は下記のとおりに分かれています。
希望の時間帯 | メリット | デメリット |
午前便 | ・早く引越し作業が終わる
・その日のうちに荷解きを終わらせられる |
・引越し料金が高くなる
・引越しの予約が集中しやすい |
午後便 | ・午前便より引越し料金が安くなる
・引越しの予約が取りやすい ・午前中に引越しの準備や挨拶の時間を確保できる |
・引越しの開始や完了時間が遅れる可能性がある |
フリー便 | ・午前便や午後便と比べて安くなる(日付けのみ指定できるため)
・引越しの予約が取りやすい |
・引越し当日のスケジュールが立てにくくなる
・夜遅くや深夜に引越し作業が発生する可能性がある ・夜の場合、近隣への配慮が求められる |
その際、繁忙期(2月~4月)や土日祝日、時間帯によって引越し料金は大きく変わります。もし間違いがあれば必ず連絡をしましょう。
4.引越し当日の作業人数
荷造りや開梱など、引越し当日にかかわる作業スタッフの人数も確認しておきましょう。「荷役作業員料」や「人件費」の項目に記載されており、人数によって引越し料金が大きく変わります。またスタッフの人数が少なすぎると、引越し時間がかかってしまうため注意が必要です。
5.トラックのサイズ
引越し業者によっては見積書に運ぶ荷物の量や、手配するトラックのサイズが記載されているのでチェックしましょう。新居へ運ぶ荷物の大きさや作業スタッフの人数によって引越しの見積もりは大きく変わります。トラックの大きさによる積み込める荷物量や、料金相場の目安は下記のとおりです。
トラックのサイズ | 特徴 | 料金相場 |
軽トラック | ・ワンルーム~1K程度の荷物量に対応 ・ダンボールの積載数(10箱~15箱程度) |
約15,000円~ |
ショートトラック(2トン) | ・ワンルーム~2K程度の荷物量に対応 ・ダンボールの積載数(20箱程度) |
約30,000円~ |
ロングトラック(2トン) | ・2K~2DK程度の荷物量に対(二人暮らし向け)
・ダンボールの積載数(20箱~50箱程度) |
約40,000円~ |
3トントラック | ・2K~2DK程度の荷物量に対(二人暮らし向け)
・ダンボールの積載数(20箱~50箱程度) ・ハンガーボックスも積載可能 |
約45,000円~ |
4トントラック | ・2LDK~3K程度の荷物量に対(二人以上の世帯向け)
・ダンボールの積載数(40箱~65箱程度) |
約57,000円~ |
単身者は2トンのショートトラック、2人家族は2トンのロングトラックを使うことが多いですが、現住所や新居周辺でトラックが通れるか、停まって作業できるかどうか確認しましょう。
6.荷物の積み降ろし場所
荷物を積む現住所と荷物を降ろす転居先の情報も確認しましょう。郵便番号や住所の漢字、部屋番号などの情報が間違ったままだと引越し当日に荷物が届かないトラブルが発生します。
特に注意が必要なのは同棲や結婚生活を始める人です。複数の住所から荷物を新居に運ぶため、住所と同時に新居に運ぶ荷物量もチェックしておきましょう。引越し業者によっては2か所以上回ってもらえる「立ち寄りプラン」を提供していますが、荷物量によってはトラックが2台以上必要になり、その分引越し料金が高くなります。
7.荷物の積み切り契約の有無
引越し業者によっては、見積書に「積み切り」と呼ばれる「トラックに積み切れない荷物は運ばない」旨が記載されているケースもあります。引越し当日に積み切れない荷物を運ぶ際、追加料金が発生してトラブルになる可能性があるので確認しましょう。
8.オプションサービスの有無
引越し当日の作業は、基本的に荷物の積み下ろしや輸送、搬入などです。エアコンの取り付け・取り外しやクリーニング、家具の配置替えといったオプションサービスを利用する人は、見積書の「付帯サービス」の項目に記載されているかチェックしましょう。引越し業者によっては専門業者に依頼する場合があり、記載されていないと当日作業ができないトラブルが発生します。
9.支払い方法
引越しの見積書には「支払い方法」が記載されています。荷物量や移動距離などによって変わりますが、数万円からの支払いになるため、現金やクレジットカードといった支払い方法も確認しておきましょう。特にクレジットカード払いをしたい人は前日までに確認しないと、引越し当日に決済できる場合があります。
10.引越しの総額
トラックのサイズや作業人数などをチェックしたところで、引越しにかかる総額を確認しましょう。複数の引越し業者と比較して料金が安い業者を選びたくなりますが、安易に金額だけで判断してはいけません。あわせて消費税込みの金額か、追加料金が発生する可能性もあるのか確認することも大切です。
引越しの見積書を確認する際の注意点
引越し業者から見積書を受け取る際、引越し当日にトラブルが起こらないように下記3つのポイントにも注意が必要です。
複数の引越し業者で比較すること
複数の引越し業者から見積書を受け取り、料金やサービス内容を判断したうえで決めましょう。訪問見積もりが面倒だからといって1社だけで判断してしまうと、正確な引越し料金の相場を把握できず、高額な料金が請求される可能性があります。
少しでも引越し料金を抑えたい人は、ミツモアをはじめとした複数の引越し業者から相見積もりを取れるサービスがあるので、利用してみてください。
必ず見積書の複写を保管しておく
引越しの見積書に確認のサインをすると、依頼者用に1枚複写がもらえるので、大切に保管しておきましょう。複写した見積書の裏には注意事項が書かれており、保証内容も確認できます。
新居への引渡日を確認する
新居に運び入れる荷物の搬入日も確認しておきましょう。短距離で引越しをする場合、引越日と引渡日が同日になりますが、長距離の場合、時間帯によって引渡日が翌日以降になる可能性もあります。鍵の引き渡しなどで新居へ入居するスケジュールがずれないように調整しましょう。
キャンセル料がかかるかどうか確認する
見積書のみの場合はキャンセル料がかかりません。ただし書面の名称を確認せずに契約すると、タイミングによっては引越しを解約または延期する際、国土交通省の標準引越運送約款に基づいて、下記のようなキャンセル料がかかってしまうので注意しましょう。
解約または延期の時期 | キャンセル料 |
引越しの前々日 | 引越し料金の20%以内 |
引越し前日 | 引越し料金の30%以内 |
引越し当日 | 引越し料金の50%以内 |
引越し業者から見積書を受け取る方法
引越し業者に見積もりを依頼した後、見積書を受け取る方法は主に下記の4つです。
直接対面
引越し業者による訪問見積もりを受けた際、営業担当から直接見積書を受け取る方法です。荷物量や引越し当日の内容などについてヒアリングを行ったうえで、正確な引越し料金が記載された見積書を受け取れます。疑問や懸念点があってもすぐに確認できるでしょう。
メール
電話やメール、Webサイトで見積もりを依頼した場合、メールで見積書が送られるケースがあります。プライバシーの保護や時間の短縮において役立つ一方で、正確に荷物量や大きさをつたえきれないことから、見積書に記載された総額より実際の引越し当日の料金が高くなることがあるので、注意しましょう。
チャット
LINEやチャットを活用して見積書を送付する引越し業者もいます。自宅だけでなく、外出先で内容を確認できる一方で、荷物量が正確に確認できないことから引越し料金を高く見積もってくる場合があります。
郵送
ビデオ通話で引越し見積もりを依頼した際、紙で受け取りたい人は後日自宅へ郵送してもらえる場合があります。ただし、到着するまで時間がかかるため、会社都合などによる引越しで会社に見積書を提出する必要があるときは、なるべく早めに依頼しましょう。
引越し当日に追加料金を支払わないようにするための対策
引越し当日に追加料金を支払わないようにするため、見積書の段階でどれくらいの費用になるのか確認しておく必要があります。具体的な対策は下記のとおりです。
引越しの日時を複数考えておく
繫忙期をはじめ、午前中や土日祝日などは人気のため、引越し料金は高くなる傾向があります。新居へ引越す日にちまでの時間に余裕がある人は見積もりを依頼する際、できる限り希望する日にちや時間帯を複数考えておきましょう。
見積もりを依頼する前に不用品を処分する
引越し料金はトラックのサイズや作業スタッフの人件費で大部分を占めています。新居に持っていく荷物が多ければその分料金が高くなるので、引越し業者に依頼する前に不用品を処分しましょう。
資源ごみとして回収業者に依頼するほか、回収費用をかけたくない人は、使えそうなものに限りますが、リサイクルショップやフリマアプリなどで売却する方法もあります。
自分で荷造りや荷解きをする
自分で荷造りや荷解きをするのも追加料金を支払わないようにする方法のひとつです。引越し業者によっては、オプションとして荷造りから荷解きまでやってもらえるサービスがありますが、その分追加料金がかかります。依頼主側で荷造りや荷解きをすれば、作業スタッフの工数が減る分、引越し料金を節約できるでしょう。
複数の引越し見積書を見て最適な業者を決めよう
引越しの見積書で確認すべき項目について解説しました。引越しの日時や荷物の積み降ろしの情報、トラックのサイズ、作業スタッフの人数などをしっかりチェックすることで契約を結ぶ前に疑問や懸念点を解消できるでしょう。
あわせて複数の引越し業者から見積書を受け取り、料金やサービス内容を比較したうえで引越し業者を決めるのも大切です。ミツモアなら、簡単な質問に答えるだけで、最大5社から見積書を受け取れて、チャットで引越し業者とやり取りできます。口約束も発生しにくいため、冷静に最適な引越し業者を決められるでしょう。