引越しや買い替えに伴い、今使っているエアコンを自分で取り外して新居に取り付けたいと考える人もいるでしょう。具体的な手順や必要な道具を知っておけば、自分で取り外しや取り付けができますが、専門の施工業者に依頼したほうが時間と費用を抑えられることがあります。
この記事では、自分でエアコンの取り外しと取り付けを行う手順について、業者への依頼やエアコンを買い替えたほうがいいケースも含めて解説します。
エアコンの取り外しや取り付けをしたいときはどうする?
エアコンを取り外して、新たな場所に取り付けるとき、下記いずれかの方法なら可能です。
エアコンの取り外しと取り付けは自分で行えますが、専門的な知識や技術がないと難しいほか、初めて作業する場合、完了するのに2~3時間かかります。
時間も知識や技術に自信がなければ、エアコン専門の施工業者や引越し業者、家電量販店など、経験豊富な知識や技術を持った業者に依頼するのも選択肢として考えておきましょう。
エアコンの取り外し・取り付け作業前のチェック項目7選
エアコンの取り外しと取り付けは必要な道具を揃えたうえで、正しい手順で行えば、自分で作業ができます。実際に作業を行う前に、下記7つのチェック項目を確認しておきましょう。
1.エアコンの容量が部屋の広さに合うか
エアコンを取り外して新たな場所に取り付ける際、エアコンの容量が部屋の広さに合っているか事前に確認しましょう。エアコンの容量は6〜8畳、10〜14畳などがあり、メーカーによって異なります。
容量が足りないエアコンを設置すると、冷暖房が効かなくなるほか、電力も大幅に消費して、電気代が高くなります。容量を確認したうえで新しいエアコンを購入したり、引越し先でエアコンの容量が足りないときは、買い替えるようにしましょう。
2.ベランダや平地に室外機が置けるか
家のベランダや平地に室外機が置けるスペースがあるか、必ず確認しましょう。スペースや2階以上にベランダがないときなどは、配管を伸ばしたり、屋根や壁に取り付けたりするなど、特殊な工事を行う必要があります。
3.取り付けたい場所にエアコン用の配管穴があるか
エアコンを取り付けたい場所にダクトを通す配管の穴があるか確認することも大切です。室外から室内へ穴を貫通しないと配管を通せないため、空いていないときは電動工具などを使用し穴を開ける作業が発生します。
4.電圧の切り替えやコンセント交換が必要か
エアコンを取り外す前に、取り付け先で電圧を切り替えたり、エアコン専用のコンセントの増設または交換が必要かどうか確認しましょう。
たとえば10畳用のエアコンを使うとき、最低でも20Aの消費電力が必要で、コンセントのアンペアや電圧が足りない場合、電圧を変更する工事や専用のコンセントを増設する工事が必要です。
5.大家や管理会社から許可を取っているか
賃貸物件でエアコンを取り外したり、取り付けたりするときは必ず大家または管理会社に相談して許可を取ってから行いましょう。
エアコンを取り付ける際、壁に新たな穴を開けるなど、建物の設備に手を加えるほか、退去時に入居時の部屋の状態に戻す義務が発生するからです。物件によっては取り付け、または取り外しが断られるケースもあるので注意しましょう。
6.電気工事士の資格を持っているか
エアコンの室内機と室外機を電線ケーブルでつないだり、コンセントを増設する作業は電気工事にあたります。それに伴い、自分で作業を行うには第二種電気工事士の資格が必要です。
資格を持ってないまま作業を行うと法律違反になるほか、危険が伴うため絶対にやめて専門の施工業者に依頼しましょう。
7.必要な道具が揃っているか
自分でエアコンの取り外し・取り付け作業を行うとき、知識や技術、資格に加えて、以下の道具を準備しましょう。
必要な道具の種類 | 使用用途 | 値段 |
真空ポンプ | 室外機に残った空気を抜く | 10,000円〜 |
パイプベンダー | ガス管や電線を曲げる | 2,000円〜 |
パテ | 壁穴の隙間を塞ぐ | 200円〜 |
メジャー | 背板に取り付ける位置の確認 | 400円〜 |
モンキーレンチ | ガス管やネジを締める、エアコンカバーを取り外す | 1,000円〜 |
水平器 | 背板に取り付ける位置の確認 | 1,000円〜 |
トルクレンチ | 一定の強さでネジを締める、エアコンカバーを取り外す | 3,000円〜 |
六角レンチ | エアコンバルブを開放する | 1,000円〜 |
ニッパー | エアコンの配線を切る | 1,000円〜 |
ペンチ | エアコンの配線を切ったり、曲げたりする | 1,000円〜 |
電動ドリル | 取り付け時に壁に穴を開ける | 7,000円〜 |
ドライバー | ガス管やネジを締める | 500円〜 |
脚立 | 高所で作業する | 4,000円〜 |
軍手 | 作業時のケガを防ぐ | 100円~ |
上記の道具はホームセンターや工具店、ネットショップで購入できます。あわせて作業中に必要な工具を取り出せる「工具ベルト」も用意しておくと便利です。
自分でエアコンの取り外し作業を行う手順
作業前のチェック項目を確認したところで、エアコンの取り外し作業を行いましょう。手順は下記のとおりです。
1.エアコンの搬出経路を確保して本体の下に養生マットを敷く
室外機を取り外すスペースを確保しましょう。物が散乱したり、植木があると安全に取り外すことができません。
スペースを確保した後、エアコン本体(室内機)の下にブルーシートや養生マットを敷き、脚立を用意しましょう。本体を安全に取り外す際、排水で床を汚したり、工具を落として傷つけたりしないようにするためです。
2.ドライバーで室外機の側面カバーを開ける
ブルーシートや養生マットを敷いたら、ドライバーで室外機の配線がつながっている側面のカバーを開けます。電源コードに触れると感電の恐れがあるため、電源類には触れないように作業しましょう。
3.バルブキャップを外す
白い〇で囲んだ六角形の「バルブキャップ」をモンキースパナで外します。誤って配管と接続している「六角ナット」を回さないようにしましょう。六角ナットを外してしまうと、冷媒ガスが漏れてしまい、肌の凍傷や目が失明する可能性があります。
4.エアコンの強制冷房運転を行う
エアコンの説明書を参照しながら「強制冷房運転」を行い、正常に運転できるか確認します。スイッチはエアコン本体の右端にあるカバーを開けると、強制冷房運転ボタン(応急運転ボタン)があり、5〜10秒間長押しすると強制冷房運転に切り替わる場合が多いです。
5.送り側のバルブを締め、強制冷房運転後に受け側のバルブを締める
強制冷房運転を始めたら、稼働させたまま、室外機の細い銅管がついている配管のバルブ(送り側のバルブ)を六角レンチで締め、2〜3分間運転を続けましょう。エアコン本体の内部や配管内に溜まった冷媒ガスが室外機に入ってきます。
強制冷房運転を止めた後、太い銅管がついているバルブ(受け側のバルブ)を締めます。これがエアコン内部に残っている冷媒ガスを回収する「ポンプダウン」という作業です。
6.電源プラグをコンセントから抜く
ポンプダウンの作業が終わったら、速やかにリモコンでエアコンの運転を止めましょう。本体の風向板と室外機のファンが止まったことを確認してから、コンセントから電源プラグを抜きます。
7.バルブキャップを付け直した後、室外機を取り外す
手順3のときに外したバルブキャップを再び取り付けた後、室外機を取り外します。細い配管、太い配管の順に外した後、グレーのカバー内にある配線を取り外しましょう。
カバー内には3本の配線があり、一度に切ってしまうと危険なため、1本ずつ切断します。配管と配線をすべて取り外したら、室外機を固定しているプラスチックブロックの台座を取り外して室外機を撤去しましょう。
8.室内機(エアコン本体)を取り外す
室外機を取り外したら、エアコン本体(室内機)を取り外しましょう。配管を覆っている化粧カバーをドライバーで取り外し、カッターナイフやニッパーなどで室外機側の銅管とドレンホースを切断します。
その後、脚立を使ってエアコン本体を取り外します。勢いよく持ち上げてしまうと、重量でバランスを崩して転倒し、大きなケガをする恐れがあるので十分注意しましょう。本体を取り外した後は、壁に残った据付板(背板)を取り外し、壁に空いた穴をパテなどで埋めれば、取り外し作業は終了です。
自分でエアコンの取り付け作業を行う手順
買い替えまたは旧居にあったエアコンを自分で取り付ける手順は、以下のとおりです。
1.部屋に取り付ける場所を確認して養生マットを敷く
エアコン本体を取り付けたい場所について、コンセントや穴が空いているか確認しましょう。この時点で問題がなければ、養生マットやブルーシートを敷いて、エアコンを取り付ける準備を行います。
2.室外機を設置する
エアコン本体とあわせて室外機を置く場所も確認しましょう。配管穴の真下に設置するのが最適ですが、ベランダの広さや賃貸物件によっては難しい場合があります。その際は、本体を含め専門の施工業者に依頼するのがおすすめです。
3.据付板を取り付ける
室外機の取り付け場所が決まったら、本体を取り付けるための背板(据付板)を取り付けましょう。あわせて近くに穴が空いていないときは、背板の右側下部のへこみ付近に電動ドリルで穴を開けます。
4.エアコン本体(室内機)を取り付ける
室外機に電力を送るための電線を室内機の基板に差し込んだ後、壁に設置した背板に室内機を引っ掛けて取り付けます。プレート上側のツメ部分、そのあとで下側を密着させるようにして固定することが大切です。固定が不十分だと本体が落下する可能性があります。
5.冷媒用銅管のフレア加工を行って配管パイプに施す
補助配管と呼ばれる本体側から出ている管と、室外機につながる冷媒配管を接続します。その際、「フレア加工」という配管パイプの中にある銅管の端部を、ラッパ状に広げる工事が行われていないときは、正しく接続できるようにフレア加工を施しましょう。
その後、エアコンの配管パイプを切断し、リーマーという工具でパイプの銅管の内側に付いたバリを取り除いたら、切断したパイプにフレアツールを使ってフレアナットを取り付けます。
6.冷媒銅管と室外機を接続する
フレアナットを取り付けたら、スパナやトルクレンチなどの工具を使ってフレアナットを固定し、冷媒銅管と室外機を接続します。フレアナットが緩すぎるとガス漏れの原因になるので注意しましょう。
室外機の脚部にプラブロックを取り付けたら、エアコンの排水を通すためのドレンホースとVVFケーブルをエアコン本体と接続します。
7.真空引きを行って冷媒ガスを解放させる
接続が終わったら、真空ポンプを使って「真空引き(エアパージ)」という作業を行います。冷媒の能力を維持するために配管内の空気や水分を取り除き、冷媒ガスと混ざらないようにするのが目的です。ポンプのゲージ圧が-0.1MPaになるのを確認し、15~20分間運転を続けて急激な変化がなければ、問題ありません。
真空引きを行った後はガス漏れがないか確認した後、バルブキャップを外しましょう。その後、真空ポンプと真空ゲージを取り外し、六角レンチを使って細い管と太い管を緩めて冷媒ガスを解放します。
8.試運転を行う
電源ケーブルや冷媒用の銅管がしっかり接続されているか、各部のナットやボルトに緩みがないか確認を行います。問題がなければ、パテで穴のすき間を埋めた後、試運転を行いましょう。
冷暖房の運転時に吹き出し口から風が出たり、排水がきちんと行われているかチェックして問題がなければ、取り付け作業は終了です。
何か問題があるときは、故障の原因になるので、専門の施工業者に相談しましょう。
エアコンの取り外し・取り付け作業の依頼先
エアコンの取り外し・取り付け作業を自分で行うのは難しいほか、配線やコンセントを増設するのに電気工事士の資格が必要です。作業内容の難易度や技術を考慮すると、業者に依頼したほうが効率が良く、内容次第では時間がかからず、費用も安く抑えられる可能性があります。
エアコンの取り外し・取り付け作業の主な依頼先は、下記のとおりです。
依頼先 | 取り外し費用 | 取り付け費用 | 運搬費用 | 合計 |
エアコン施工業者(※) | 4,000~5,500円 | 13,500~17,000円 | 3,000~5,500円 | 20,500~28,000円 |
引越し業者(※※) | 8,800円~ | 13,200円~ | 要見積もり | 22,000円~ |
家電量販店(※※※) | 6,600円~ | 16,500円~ | 無料 | 23,100円~ |
(※)ミツモアにおけるエアコン取り付け工事の成約価格より参照(2023年6月1日~2024年5月31日、取り付け費用は新品エアコンの取り付けた場合で算出)
(※※)ヤマトホームコンビニエンスに依頼したとき(家庭用:冷房能力4kWまで)の費用を算出
(※※※)「ヤマダ電機 エアコン工事料金の目安について」を参照。ただし不要になったエアコンを回収する場合は、3,490円(リサイクル回収料金と収集運搬料金の合計)〜かかる。
エアコン施工業者
新品や中古、既存のエアコンの取り外しや取り付けたい人は、エアコン専門の施工業者に依頼しましょう。引越し業者や家電量販店と比較すると、費用が1,500円〜2,500円安くなるほか、時間も約1時間で作業が完了します。
引越し会社や運送会社に依頼するとき、実際に作業するのは提携のエアコン施工業者であるケースが多いです。
引越し業者
引越しに伴って、エアコンの取り外しや取り付けを考えている人におすすめです。業者によって異なりますが、オプションとしてサービスを提供する際、運搬費用込みで引越し料金の見積もりを提示する業者があれば、別途運搬費用がかかる業者もあるので確認しましょう。
なおエアコン移設を受け付けていなくても、エアコン施工事業者を紹介してくれる引越し業者もあります。ただし下請け業者が作業するケースがあり、トラブルが発生したとき、責任者が曖昧になる可能性があるので注意が必要です。
家電量販店
新しいエアコンを購入した後、取り外しや取り付けをしたい人におすすめです。量販店によってサービス内容が異なりますが、既存のエアコンの取り外しや回収、新品の取り付けまで対応してもらえます。あわせてセールや型落ち品を購入すると、新品よりも費用が抑えられる可能性があります。
ただし原則としてエアコンを購入するのが前提で、不要になったエアコンを引き取ってもらう際、リサイクル回収料金と収集運搬料金がかかるので注意しましょう。
施工業者にエアコン取り外し・取り付けを依頼したときの流れ
エアコンの施工業者にエアコンの取り外しや取り付けを依頼したとき、下記のような流れで作業を行います。
エアコン取り外しを依頼したときの流れ
- 現場の状況確認と費用の確定
- 作業場所周辺の養生(シート等での保護)
- エアコンの取り外し作業
- 取り外し完了後は簡易清掃、養生の撤去
依頼先によって多少の違いはありますが、30分~60分で作業が完了します。
取り付けを依頼した際の流れ
一方で、エアコン専門の施工業者に取り付けを依頼すると、下記の工程で作業を行います。
- 現場の状況確認と費用の確定
- 作業場所周辺の養生(シート等での保護)
- エアコンの取り付け作業
- 取り付け後、真空引き作業
- 試運転
- 簡易清掃、養生の撤去
ただし配管用の穴を開けたり、屋根や吊り下げて室外機を置いたりするなど、追加で工事が発生すると、作業時間と費用が増えます。期間と費用に余裕を持って工事を依頼しましょう。
専門業者にエアコン取り外し・取り付けを依頼する際の注意点
エアコンの施工業者をはじめ、引越し業者や家電量販店にエアコンの取り外しや取り付けを依頼する際、下記3つのポイントに注意しましょう。
1.6~8月の繁忙期はなるべく避ける
6〜8月は気温が上がって暑くなる時期で、それに伴って業者にエアコンの取り外しまたは、取り付け工事を依頼する人が増えます。スムーズに作業を完結したい人は、6〜8月の前に依頼しましょう。
2.正式に依頼する前に作業内容や費用の説明を受ける
エアコンの取り外し・取り付け作業を業者に依頼するとき、見積もりの段階で現場の状況や追加工事について説明してもらえる業者を選びましょう。特殊な壁の穴あけや4m以上配管を延長するなど、状況によっては追加で工事を行う必要があり、それに伴って料金が高くなる場合があります。
3.損害賠償責任保険に加入しているか確認する
エアコンの取り外し・取り付け工事中に、エアコン本体や床、家財などに傷がついたり、排水で汚れてしまう可能性があります。
依頼する際、施工業者が損害賠償責任保険に加入しているかどうか確認しましょう。仮に傷つけたり、汚してしまったりしたとき、賠償金を支払ってもらえます。なお損害賠償責任保険は任意で金額や補償内容が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
エアコンの買い替えを検討したほうがよいケース
現在使用中のエアコンを取り外して新居に取り付けようとしても、下記のようなケースでは、買い替えたほうが良い場合があります。
エアコンの製造年が7~8年以上経過している
メーカーによって異なりますが、エアコンの標準使用期間は10年といわれています。製造から7〜8年以上経過したエアコンを取り付けても、2〜3年で寿命を迎えることがあります。
現在使用中のエアコンを取り外して、新居に取り付けたい人は、エアコンの使用期間を確認したうえで買い替えを含めて検討しましょう。
取り付け先の部屋の広さが異なる
新居でエアコンを取り付ける際、部屋の広さが変わる場合があります。それに伴って部屋の広さがエアコンの容量に合っていないとエアコンが効かず、消費電力が大きくなる可能性があります。旧居よりも部屋が広い、または狭くなったときは、エアコンを買い替えたほうがいいでしょう。
ミツモアでエアコン取り外し・取り付け業者に依頼しよう
エアコンの取り外しと取り付け作業は、道具を揃えたうえで正しい手順で行えば
自分で行うことができます。しかし配線や冷媒ガスの取り扱いを含め、専門的な知識や技術が必要で、自分で無理にやろうとすると、故障や事故につながりかねません。知識や技術がなければ、専門の施工業者に依頼しましょう。
ミツモアなら、エアコンの種類や室外機の設置場所など、簡単な質問に答えるだけで最大5つの施工業者から見積もりが届きます。料金や施工内容などを比較できるほか、追加工事の必要性を含め、わからないことはチャットで相談できるので安心です。