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真空引きの役割と重要性とは?エアコン工事のカギを握る工程を理解しよう【施工方法や費用は?】

最終更新日: 2024年03月25日

エアコン取り付け工事の工程の1つ「真空引き」は、エアコン・配管の内部から空気や水分を追い出して真空にして冷却機能を最大限に引き出すための作業です。

真空引きの役割や怠ったときのリスク、かかる費用や時間を解説します。

真空引きとは【しないとどうなる?】

エアコン 真空引き

真空引きとは?エアコン取り付け作業の重要項目

真空引きとは、真空ポンプを使って「エアコンの配管内部を真空状態にすること」です。具体的には、ポンプを使ってパイプ内が真空状態になるまで空気を抜く作業を指します。

エアコン取り付け工事は以下のような工程で行いますが、この⑦にあたる部分が真空引きです。

  1. 配管用の穴を開ける
  2. 据付板を取り付ける
  3. 室内機を取り付ける
  4. 冷媒配管のフレア加工
  5. ドレンホースを接続する
  6. 室外機側の配管を接続
  7. 真空引き(エアパージ)、ガス漏れ点検
  8. 冷媒ガスの充てん、ガス漏れ点検
  9. パテ埋めして試運転する

エアコンの稼働する仕組みは、エアコン本体(室内機)と室外機とを循環している冷媒(れいばい/フロン)ガスで熱を運び、室内の温度を保つというもの。このガスを効率よく循環させるために、パイプの中の空気や水分を排出して真空状態にするのが真空引きです。

真空引きをしないとどうなる?

もしきちんと真空引きをせず、水分やホコリなどが残っている状態のままでエアコンを稼働すると、冷媒の循環を妨げてしまうため冷房や暖房が効きづらくなります。また水分がパイプを傷つける恐れもあり、漏電などの故障の原因になることも。

真空引きはエアコンの効きをよくするためにも、故障を招かないためにも必要不可欠な作業なのです。

エアパージ、真空乾燥との違いは?

エアコン内部の不純物を取り除く方法として、真空引きのほかに「エアパージ」と「真空乾燥」があります。エアパージは真空ポンプではなくガス圧で内部の不純物を排除する方法。真空乾燥は真空引きと似ていますが、もっと時間をかけて完璧な真空状態を作る方法です。

以下にエアパージ(ガス圧使用)と真空乾燥の特徴と、真空引きとの違いをまとめたので参考にしてください。

エアパージ(ガス圧を使った方法)
  • 冷媒ガスをエアコン内部に流し込み、空気を押し出す方法で、真空ポンプを使わない
  • 現在はおもに3つの理由から推奨されていない
    • 配管内部に空気や水分が残りやすい
    • 室外機内部の冷媒ガス量が減ってしまう
    • 大気中にフロンガスを排出してしまうため、環境面の懸念がある
真空乾燥
  • 作業自体は真空引きとほとんど同じ
  • 真空引きが15分程度で行われるのに対し、1時間程度かけて完全に近い真空状態にする
  • 真空引きよりも手間がかかるが内部の異物残りが少ない

真空引き含むエアコン取り付けにかかる費用と時間【業者・DIY比較】

電卓で費用を計算する手元

基本的に真空引きだけを行うことはなく、取り付け作業の中の1工程なので、真空引きを含めたエアコン取り付け工事にかかる費用や時間を比較しました。費用はいずれも本体代を除きます。

業者 DIY
費用の目安 10,000~20,000円 15,000~20,000円
所要時間の目安 1時間半~2時間(真空引きは約15分) 2~3時間(真空引きは約15分)

DIYの費用に含まれるのは、工具のレンタル代や購入費用です。モンキーレンチやニッパー、ドライバーなどが家にあれば比較的安く収まります。

所要時間は個人の作業スピードに左右されます。住宅設備のDIYに慣れていない方であれば、3時間は見ておくとよいでしょう。真空引き作業自体にかかる時間は、手際によりますがDIYと業者でそこまで変わりません。

エアコンのDIYに必要な道具や、真空引き以外の手順は以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事:エアコン取り付けはDIYできる?失敗しないためのチェックポイント、作業手順や費用相場などを詳しく解説!|ミツモア

基本的には業者への依頼がおすすめ

真空引きをともなうエアコン工事はDIYではなく業者に依頼するのがおすすめです。真空引きは非常に複雑で難しく、素人が行うと多大な時間を消費するうえ失敗する可能性が高いからです。

また、業者に依頼するなら依頼すればあとは任せるだけですが、DIYの場合は作業時間のほかに工具をそろえたり、レンタル・返却したりする手間もかかります

「冷房の効きが悪い」などの症状は、真空引きだけでは解決しません。ガス漏れやパイプの劣化など、別の要因がセットになっている場合がほとんどです。業者に依頼した方が効率よく症状を改善できるでしょう。

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エアコン取り付けを業者に依頼する費用についてはこちらの記事もご覧ください。追加工事が必要な状況やその費用など、より詳しく解説しています。

関連記事:エアコン取り付け工事の費用相場はいくら?追加料金と標準工事との違いをおさえよう【工事費込みの場合も解説】|ミツモア

真空引きの手順

真空引きの機材のつなぎ方

真空引きは、以下のような手順でおこないます。真空引き自体にかかる時間は約15分、気密テストを含めたすべての工程を終えるまでの時間は約30分を見ておくと良いでしょう。

  1. 室外機のサービスポートのナットを取り外す
  2. 室外機と真空ポンプをチャージングホースで接続する
  3. 真空ポンプを稼働させる
  4. 約15分放置する
  5. 「-0.1MPa」になったら気密テストをする
  6. ガス漏れ確認
  7. 真空ポンプを取り外して完了

①室外機のサービスポートのナットを取り外す

室外機からサービスポートのナットを取り外します。その際、サービスバルブは2カ所とも閉めたままの状態です。

②室外機と真空ポンプをチャージングホースで接続する

ゲージマニホールド(計測器)を真空ポンプに装着し、室外機の低圧側サービスポートとゲージマニホールドの低圧側とをチャージングホースでつなぎます。

③真空ポンプを稼働させる

チャージングホースのバルブと、室外機のサービスポートに接続したチャージバルブのツマミを開きます。室外機と真空ポンプの間に空気が流れる状態になったら真空ポンプの電源を入れます。

④15~20分放置する

空気を抜き始めると同時に真空ゲージの数値は下がっていくでしょう。真空ポンプを稼働させた状態で15~20分程放置しておきます。業務用エアコンの場合は1時間ほど置きましょう。

⑤「-0.1MPa」になったら気密テストをする

真空ゲージの数値が「-0.1MPa」になっていることを確認できたら、バルブを閉めてポンプを停止しましょう。

この状態で5〜10分程放置し、ゲージマニホールドの数値が「0」側に傾いていないかチェックします。もしこのときに針が動いていればガス漏れしている可能性があるため、再度真空引きを行わなければなりません。

⑥ガス漏れ確認

ゲージマニホールドの数値が動かなくなったら、ガス漏れの確認です。

2カ所のサービスバルのうち、細い方を六角レンチで90度回します。5秒経ったらすぐに閉じてガス漏れが発生していないかチェックしましょう。ガスが漏れているとゲージマニホールドの針が動きます。

⑦真空ポンプを取り外して完了

全てのバルブが閉じているかチェックし、室外機のサービスポートからチャージホースを外します。これで真空引きは終了です。

動画で真空引きの流れを確認!

真空引き作業の流れを紹介した動画もあるので、ぜひ参考にしてみてください。



参考:(株)ヒカリ電機 Youtubeチャンネル

真空引きをDIYでやるときに必要なアイテム

関連記事:エアコン取り付けはDIYできる?失敗しないためのチェックポイント、作業手順や費用相場などを詳しく解説!|ミツモア

真空引きに必要な3つの工具とレンタル料金

もしDIYで真空引きを行うなら、必要な道具は3つあります。それぞれの役割と、購入した場合の参考価格をまとめました。

レンタル費用の相場は、これら3つまとめて1,000~3,000円程度です。

真空ポンプ

  • パイプ内の空気を抜き出す
  • 10,000~30,000円
ゲージマニホールド

  • パイプ内の真空度を測る
  • 15,000~30,000円
チャージングホース

  • 各器具とエアコンを接続する
  • 2,000~5,000円

真空引きの作業は、各器具をホースで接続し、ポンプをゲージにつないで真空度を測りながら行います。

購入するとかなり高額なうえ、業者でなければ頻繁に使うものでもないので、真空引きに必要な工具はレンタルするのが良いでしょう

取り付け工具一式をレンタルするサービスがあるほか、ヤフオク!などでも安価にレンタルできます。

真空引き工具一式レンタル

真空ポンプの選び方は?DIYなら電動式がおすすめ

DIYで使う真空ポンプは、手動ではなく電動式をおすすめします。安定した強度でしっかりと空気を抜いてくれるからです。

そのほかに、真空ポンプを選ぶ際のポイントを3点に絞って解説します。

まずは「電源の種類」。AC電源式と充電式の2種類に大別されます。電池切れの心配をしたくないならAC電源式を、機動性を求めるならば充電式がよいでしょう。価格は充電式の方が高価です。

「排気速度」も重要な要素です。1分間に排気可能な空気量を指しており、数値が高くなるにつれ作業を短時間で行えます。エアコンが大型であれば速度が速い方が良いです。

「真空到達度」もチェックしましょう。動作能力を示す基準のひとつで、完全な真空状態である絶対真空へといかに近づけるかを表した値です。ミクロンで表示された数値が小さくなればなるほど、性能が高い商品です

エアコン取り付けはどこに頼む?真空引きしている業者は?

エアコン取付業者

エアコンの取り付けを依頼できる業者は、おもに以下のような選択肢があります。どこに依頼する場合も、真空引きが工事に含まれているかどうかは必ず契約前に確認しましょう。

  • 家電量販店
  • エアコン取り付け業者
  • 引越し業者(引越しで移設する場合)
  • 工務店、ハウスメーカー(新築の場合)

エアコンを新しく家電量販店で購入する場合、あわせて工事を依頼すると楽でしょう。下請け業者が施工するので、仲介手数料が入る分費用は高めですが、アフター保証はしっかりついていることが多いです。

自分で購入したエアコンを業者に取り付けてもらうなら、エアコン取り付け専門業者を探すのがおすすめです。もちろん、エアコン本体の手配まで業者に依頼することもできます。

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真空引きが標準工事に含まれる家電量販店と料金設定

家電量販店でエアコンを買うのとあわせて工事も依頼してしまいたいという方も多いですよね。

「真空引きを必ず行う」と明言している大手家電量販店と、それぞれの標準工事の費用目安をリストアップしました。標準工事の価格はエアコンの能力によって変わります。

標準工事の費用目安
ヤマダ電機
  • ~3.6kw:10,466円
  • 3.7kw~4.0kw:15,714円
  • 4.0kw~:18,857円
ケーズデンキ 標準工事は本体価格に含む

オプション:エアコン購入前のチェックポイント|ケーズデンキ

ジョーシン
  • 12畳用(3.6kwまで):10,000円
  • 14畳用(4.6kwまで):15,000円
  • 16~18畳用(5.6kwまで):18,000円
  • 20~30畳用(9.6kwまで)24,000円
ビックカメラ
  • 6~12畳用(3.6kw以下):10,780円
  • 14畳用~(3.7kw以上):15,950円
ヨドバシカメラ
  • 2.2kw~3.9kw:10,780円
  • 4.0kw~:15,950円
ノジマ
  • ~2.2kw:15,290円
  • 2.5~4.5kw:15,290円
  • 4.0kw:17,380円
  • 5.0~6.3kw:17,380円
  • 6.4~7.1kw:20,460円

真空引きだけを業者に依頼することはできる?

エアコン工事で「真空引き」だけを依頼することは難しいです。真空引きはあくまでエアコン取り付けの工程の1つであり、冷媒の移動をスムーズにして、設置したエアコンの効きをよくするための作業です。

業者に依頼するときは、一連の取り付け作業をお願いすることになります。

業者に真空引きを依頼するときのチェックポイント

チェックポイント

真空引きが必要な内容のエアコン工事を依頼するとき、確認しておくべきチェックポイントを紹介します。施工不良があると故障にもつながりかねない重要な作業なので、着工の前に確認しておきましょう。

標準工事に真空引きが含まれているか確認する

標準工事とは、エアコン取り付け工事に含まれる工程をまとめて、一式パックにした施工内容のことです。標準工事にどんな作業内容が含まれているかは業者によって異なります。

標準工事のなかに真空引きが入っていないと追加料金が発生してしまいます。標準工事に真空引きが含まれているか事前に確認しておきましょう。

使用する真空ポンプの種類は気にしなくてもOK

真空ポンプ|Amazon
真空ポンプ|Amazon


真空ポンプは大きく分けて手動式と電動式があります。「どちらを使うかによって品質に差が出るかも……」と思ってしまいますが、業者にエアコン工事を依頼するなら真空ポンプの種類はどちらでも問題ありません

手動式も電動式も最終的な真空度の高さに差異はなく、手慣れているプロならむしろ手動の方が真空度は高いこともあります。

エアパージではなく真空引きかを確認する

業者にエアコン工事を依頼するときには、ガス圧を利用した「エアパージ」ではなく、真空ポンプを使って空気を抜く「真空引き」かどうかを確認しましょう

現在エアパージは推奨されていません。室外機内の冷媒ガスが減ってしまう、配管内に空気や水分が残りやすいというエアコン使用上の問題があるほか、環境にもあまりよくない行為です。トラブルを防ぐためにも、見積もり時にしっかり確認しましょう。

なるべく安く依頼するなら繁忙期(6~8月)を避ける

エアコンの取り付け工事を安く依頼するには、6月~8月の繁忙期を避けると良いでしょう。気温が上がり始めるとエアコンを購入する人が増え、取り付け料金が値上がりすることがあります。さらに購入から設置まで1ヵ月近く待たされてしまうことも。

家電量販店ではなく、エアコンの取り付け専門業者に直接依頼するのも費用を抑えるコツです。家電量販店と業者の間に発生する仲介料(マージン)を節約できるからです。

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エアコン取り付け時以外に真空引きをするタイミング

エアコン 真空引き ガスチャージ

エアコンを取り付けるとき以外に真空引きをするタイミングとして、「冷媒ガスの補充」があります。

冷媒ガスの補充

冷媒とは配管の中を通って熱を運ぶガス(フロン)のことで、室内機と室外機の間を循環しています。オゾン層を破壊してしまう従来の冷媒を代替するものとして登場したのが新冷媒です。

国連の「モントリオール議定書」を契機に、現代社会ではオゾン層を破壊する物質の削減が進んでいます。そのためエアコン工事においても、従来の冷媒から新冷媒への移行を行うことがあります。

ちなみに主な冷媒の種類は以下の通りです。

R22 単一冷媒。オゾン層破壊のリスクにより現在では生産廃止が進んでいる。
R410A 二種混合冷媒。オゾン層を破壊しない、R22に代わる冷媒として普及。
R32 単一冷媒。より地球環境への悪影響が少ない冷媒として、近年普及が進んでいる。

また冷媒の種類を移行するときに限らず、漏れなどでガスが足りなくなったときには「冷媒充てん」をします。

冷媒充てんをする工程は、一度ガスを抜ききったうえで、新しい冷媒を充てんし、真空引きを行うというもの。この場合は工事の目的が「冷媒をスムーズに動かす」ことなので、真空引きがメインの作業になると言ってもよいでしょう。費用相場は15,000~25,000円程度です。

冷媒充てん(旧冷媒) 15,000円前後
冷媒充てん(新冷媒) 25,000円前後

ガスが不足しているかどうかを確認する方法や、補充作業の手順は以下の記事をご覧ください。

関連記事:エアコンの冷媒ガスを補充・チャージする方法と、必要かどうかチェックするポイント | ミツモア

エアコンの真空引きに関するよくある疑問

悩む女性

エアコンの取り付け作業の中で重要な役割を果たす真空引き。きちんと施工されているか、気になりますよね。

真空引き作業に関してよくある疑問にお答えします。

真空引きを忘れて取り付けたエアコンは後から真空引きできる?

エアコンは一度取り付けてしまうと後から真空引きをすることはできません。

もし真空引きをせずに取り付けてエアコンを稼働させた場合、内部で冷媒ガスと空気が混ざり合った状態になっています。こうなってしまうと、一度取り外して内部の気体を回収し、新たに冷媒ガスを入れ直す必要があります。

関連記事:エアコンの冷媒ガスを補充・チャージする方法と、必要かどうかチェックするポイント!業者依頼の費用相場も解説|ミツモア

エアコン取り付け後に真空引きしたかどうか確認できる?

エアコンの取り付けが完了したあとでは、真空引きがされているかどうかを確認することはできません内部の状況を確認するには、再度エアコンを取り外す必要があります。

エアコンの運転効率に大きな違和感がなければ、そのまま使い続けても問題ありませんもし冷暖房がうまく効かないなどの不具合が発生したら、業者に点検・修理を依頼しましょう。

エアパージで設置されたエアコンはそのまま使っても大丈夫?

真空引きが主流になるよりも前に設置されたエアコンだと、エアパージで空気や水分を抜いていることもあります。現在冷暖房機能に問題を感じることなく使えているのであれば、そのまま使い続けても問題ありません。

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エアコン工事のなかに含まれる「真空引き」について、その役割や依頼時のチェックポイント、施工方法などを解説してきました。

真空引きによって配管内の空気を抜ききり、熱を運ぶ冷媒を十分に機能させることが大切です。

素人作業では難しい部分が多いため、DIYはおすすめできません。十分な知識と技術を持つプロに依頼して、快適な部屋づくりをしましょう。

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