エアコンを取り付けるときには「真空引き」という作業が必要です。
真空引きの役割や行わなかったときのリスク、設置後のエアコンが真空引きがされているか確認する方法があるのかなどを解説します。
真空引きとはなに?なぜ必要?
エアコンを設置するときには「真空引き」という作業が必要です。
エアコンの冷媒配管内は冷媒ガスのみが通れるようにすると効率よく熱交換が行えます。真空引きをすると配管内の不純物がなくなるので、エアコンの効きも良くなります。
真空引きを含めた配管内の空気を追い出す作業をエアパージといいます。エアパージには真空引きを含め3つの種類があります。
エアパージについて詳しく知りたい人は関連記事をご覧ください。
エアコンの配管内部を真空状態にする作業
真空引きとはエアコンの室内機と室外機をつなぐ配管内を真空状態にする作業のことです。冷媒ガスを解放する前に行います。
配管内が真空状態に近づくと、水分が蒸発し余計なものが冷媒配管から出ていきます。すると配管内の冷媒ガスがスムーズに動けるようになり、効率よく熱交換ができます。
熱交換はエアコンの機能上重要な工程なので、取り付け時はもちろん移設時にも真空引きを行うことが推奨されています。
真空引きをしないとエアコンの稼働効率が落ちる
もし真空引きを行わないまま冷媒ガスを解放しても、すぐに壊れてしまうことは多くありません。
しかし不純物が残ったままエアコンを稼働させると、余計なパワーを使いながら運転することになり稼働効率が落ちます。
結果的にエアコンの寿命が縮まることに繋がるので、真空引きを行わずにエアコンを取り付けるのは推奨しません。
エアコンの真空引きの手順
真空引き自体にかかる時間は約15分、気密テストを含めたすべての工程を終えるまでの時間は約30分です。
エアコンの真空引きに必要な道具
● エアコン取り付け時の真空引きの手順
エアコンの真空引きに必要な道具
真空引き作業を行うには3つの道具が必要です。
真空引きの作業は、各器具をホースで接続し、ポンプをゲージにつないで真空度を測りながら行います。
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この中でもチャージバルブは特に重要な道具です。チャージバルブはホース脱着時の冷媒ガスの漏出や真空引き後の空気の混入を防止する役割を果たします。
室外機のサービスポートは虫ピン構造になっており、ピンを押している間は開いている状態です。このままホースを外すと空気が混入し、真空引きの作業が無駄になります。
チャージバルブのツマミを操作すると内部の突起がへこみ、虫ピンを押さなくなります。この状態でホースを外すと外気が混入せず、真空引きが完了したことになります。
1.室外機に機器を取り付ける
室外機の右側面下部にあるストップバルブに機器を取り付けます。
ストップバルブは上下に2つあり、上側が2方弁、下側が3方弁です。
機器を取り付ける前に2方弁、3方弁ともに弁が全て閉じていることを確認します。
3方弁(下側のストップバルブ)のサービスポートにチャージバルブ、チャージホース、マニホールドバルブ、真空ポンプを接続します。
2.真空ポンプを稼働させる
取り付けたバルブやゲージマニホールドのハンドルを全開にして、室外機と真空ポンプの間で空気が流れるようにします。
ゲージマニホールドのHi側ハンドルが閉まっていることを確かめてから、Lo側ハンドルを全開にします。
ハンドルLoを全開にしたら真空ポンプのスイッチを入れて真空引きを開始します。
3.連成計が-0.1Mpaを示したら真空引きをする
連成計のゲージ圧が-0.1Mpaになったことを確認したら、チャージバルブのうち外側のバルブを閉めます。
バルブを締めたら15~20分ほど真空引きを行います。真空引きを始めると一旦連成計はプラス側を示しますが、真空になると-0.1Mpaを示します。
冷媒配管内の水分をできるだけ除去するのであれば、ゲージ圧-0.1Mpa到達後さらに1時間以上真空ポンプを作動させてください。
4.真空ポンプの運転を止める
真空引きが終わったらマニホールドバルブのハンドルLoを全閉します。
真空ポンプ側のチャージホースをゆるめて空気を吸い込ませてから真空ポンプの電源を切ってください。
数分様子を見て、連成計の表示が変わらなければチャージバルブの外側バルブを緩めます。
つづいて両方のストップバルブの弁棒を六角レンチで全開にします。ストッパーに当たるまで回して、当たったらそれ以上無理に回さないでください。
5.真空ポンプなどの機器を取り外す
3方弁のサービスポートからチャージバルブを外します。
チャージバルブを外したら、サービスポートのキャップと2方弁、3方弁両方のキャップをトルクレンチで締めてください。手締めは冷媒ガス漏れの原因になるので絶対に行ってはいけません。
6.ガス漏れチェックをする
機器を取り外したらガス漏れチェックを行います。フレアナット接続部にガス検知器を近づけて検査を行ってください。
ガス漏れがあったら締め付けを強くするなどの方法で対処できます。
ガス漏れ検知器は必ず使用している冷媒ガスに適した物を使いましょう。
真空引きを自分でやらない方がいい理由
道具を用意できれば真空引き作業は自分で行うこともできます。
しかし道具を用意できたとしても真空引きはプロに依頼することをおすすめします。理由は下記の3つです。
真空引き作業は難易度が高い
真空引きは普段使わない工具などを使って作業をします。作業そのものの難易度も高く、気をつけるべきポイントも複数あります。
またレンタル工具を利用して真空引きをするのであれば、レンタル品を壊さないように細心の注意を払う必要があります。
複数のことがらに注意を払って慣れない作業をすると、心理的なプレッシャーもあいまってケガなどのリスクも高まるので注意してください。
エアコンが故障するリスクが大きい
真空引きは配管内部を真空状態にして、不純物を無くすことが目的で行われます。
真空引きのよくある失敗のひとつに、コンプレッサーオイルの逆流があります。オイルは冷媒からすると異物そのものです。
冷媒管内にオイルがあるとエアコンの故障の原因になります。修理費用などを考えると自分で真空引きを行うメリットはないでしょう。
自分で行ってもさほど節約にならない
真空引きはエアコン取り付け作業の1工程なので、真空引きを含めた取り付け作業の費用と所要時間を比較します。
エアコン取り付け業者 | 自分で取り付け | |
---|---|---|
費用 | 10,000~20,000円 | 15,000~20,000円 |
所要時間 | 1時間半~2時間 (うち真空引きは15~20分) |
2~3時間 (うち真空引きは15~20分) |
費用を大幅に節約できるわけでもなく、所要時間も伸びる可能性が高いです。コストパフォーマンスという観点から見ても真空引きやエアコン取り付けを自分で行うのは推奨しません。
真空引きの所要時間と費用相場はどのくらい?
エアコン取り付け工事に必須の真空引き作業には、どのくらいの時間がかかり費用相場はいくらくらいなのでしょうか?
真空引き作業についてよくある疑問を解説します。
真空引きは標準工事に含まれていることが多い
真空引きはエアコン取り付け作業の1工程なので、真空引きのみを行ってもらうことはほぼありません。そのため真空引きのみの料金を提示している業者は少ないです。
真空引きの作業料金を比較することは難しいですが、取付工事全体にいくらかかるかを比較することでおおよその比較ができます。
大手家電量販店ではビックカメラとヤマダ電機では公式サイトで真空引きを行うと明記しています。
標準取り付け工事料金 | |
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ビックカメラ | 14,300円(冷房能力3.6kw以下のエアコン) 19,800円(冷房能力3.7kw以上のエアコン) |
ヤマダ電機 | 16,500円(冷房能力2.2~4.9kwのエアコン) 22,000円(冷房能力5.6kw以上のエアコン) |
このほかの家電量販店は公式サイト内での記載は確認できませんでしたが、標準工事に含めている口コミも確認できました。
エアコンの取り付けを家電量販店経由で依頼するときは真空引きを行っているかを念のため確認しておくと良いでしょう。
真空引きの所要時間は15分程度
配管内を真空にする作業はおよそ10~15分程度かかります。
前後に行う道具類の準備や気密テストなども含めても、真空引き作業は20~30分程度で完了することが多いです。
ただし雨天時など湿度が極端に高い日の場合は、配管内に水分が入り込まないよう長めに真空作業時間をとることがあるので時間が延びる傾向があります。
真空引きがきちんと行われたか確かめる方法はある?
真空引きは重要な作業ですから、取り付けてもらったエアコンがきちんと真空引きされているのか気になる方もいるでしょう。
残念なことに取り付けが終わってから真空引きがしっかりされているか確認する術はありません。その理由を解説します。
取付工事が完了したらチェックできない
真空引き作業は真空状態にすることが重要なので、取り付け工事が完了してから真空引きがきちんとされているか確認できません。
もし今使っているエアコンがきちんと真空引きされているか不安なのであれば、エアコン使用時のことを思い出してください。
たとえ真空引きが不完全であっても利用上は問題ないので、冷房運転をしているのに冷えないなど不具合がなければ修理等は必要ありません。
取付直後から調子が悪いなら施工業者に連絡をしよう
エアコンを取り付けた直後にも関わらずエアコンの調子が悪いのであれば、真空引きが不完全だったために不具合が生じている可能性があります。
まずはエアコンの製造メーカーのサポートセンターに相談し、修理等のサポートが受けられるかを確認しましょう。
エアコン取り付け業者に取り付けを依頼するときのチェックポイント
エアコンの取り付けを業者に依頼するときは以下の4つのポイントを意識してください。
標準工事に真空引きが含まれているか確認する
エアコンの取り付け工事では、機器の設置だけでなく配管や既存のアース線への接続などの作業は「標準工事」としてパッケージプランとして提供されています。
ただしどの作業を標準工事に含んでいるかは取り付け工事を行う業者ごとに異なります。
正式に依頼申し込みをする前に、標準工事の中に真空引きが含まれているか確認しましょう。
真空ポンプを使用しているかを確認する
真空引きや真空乾燥を行うには真空ポンプという道具が必要です。真空ポンプを使わずに配管内を真空状態にするにはガス圧によるエアパージが行われます。
ただしガス圧によるエアパージでは真空度が不完全であり、内部に不純物が残る可能性も高いです。冷媒ガスであるフロンの漏出による地球温暖化の増進などの理由もあり、現在は行われないことになっています。
打合せ段階から「真空ポンプを使って真空引きをしてください」等伝えておくと、真空引きに関する認識のズレが発生しにくくなるのでおすすめです。
使用する真空ポンプの種類は気にしなくてもOK
真空ポンプは電動式と手動の2種類があります。電動式の方が真空度が高まるように思えますが、プロが作業を行うのであれば違いはありません。
エアコンの取り付けになれた熟練の技術者であれば、手動式のポンプでも高い真空度を保てます。
なるべく安く依頼するなら繁忙期を避ける
エアコンの取り付け工事には依頼が集中する繁忙期があります。
6~8月は気温が高く、特に依頼が集中する時期なので安く取り付け工事をしてもらいたいのなら避けた方が良いでしょう。
また3~4月や9月頃は進学や入社、転勤などの理由でエアコンの移設工事が増えます。
この時期に依頼するのであれば相見積もりを取って業者を比較することは必須といえます。
真空引きをきちんと行う業者をミツモアで探そう
エアコンの性能を最大限に活用するためには真空引きが必要です。
エアコン取り付け業者を探すときは真空引きをきちんと行ってくれるかを必ず確認しましょう。
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