エアコンを取り外すときは室外機にガスを閉じ込める「ポンプダウン」が必要です。この作業に失敗すると事故や故障にもつながります。


正しいやり方を知って安全にエアコンを撤去しましょう。エアコンの撤去を業者に依頼した方がよい理由も解説します。
エアコンのポンプダウンって何?
ポンプダウンはエアコンの室内機や配管内に残った冷媒ガス(フロンガス)を、室外機にすべて回収して閉じ込める作業を指します。
エアコンのポンプダウンをしないとどうなる?
ポンプダウンをしないと「環境破壊につながる」「エアコンの運転効率が落ちる」という2つの影響が生じます。詳しくは記事内で解説しています。
ポンプダウンとは?役割と必要性
「ポンプダウン」は部屋に設置してあるエアコンを取り外すときの重要な工程です。
エアコンの室内機や配管内に残った冷媒ガス(フロンガス)を、室外機にすべて回収して閉じ込める作業を指します。
エアコンは冷媒ガスの力で室内の空気の温度を変えており、内部にはガスがいっぱいに入っているのです。
なぜポンプダウンが必要なの?
エアコンを取り外すときにポンプダウンが必要な理由は主に以下の2点です。
- エアコンに使われる冷媒ガス(フロンガス)が大気中に放出されると、オゾン層破壊のリスクがある
- 内部の冷媒ガスが減ることで、エアコンの運転効率が落ちる
ポンプダウンを行わずにエアコンを外すと、配管内にあった冷媒ガス(フロンガス)が放出されます。
近年の冷媒ガスは、以前よりも環境破壊のリスクに配慮したものに替わっていってはいますが、なるべく排出しないほうが良いことに変わりはありません。また、古いエアコンにはまだまだ環境に悪影響なガスも多く使われています。
冷媒ガスが外に出るということは、エアコン内部のガスの総量も減ってしまいます。移設して別の場所に同じエアコンを取り付けても、ガスが少ないと本来の性能が発揮できません。
ポンプダウンは自力でできる?
ポンプダウンは自力でも行うことができます。しかし、失敗するとガス漏れ、ひどいと爆発の危険性があります。安全のためにもエアコンの取り外しはエアコン業者に依頼するのがおすすめです。
ポンプダウンを自分で行う方法~導入編~
ここからは、自力でポンプダウンを行い方向けの解説に移ります。ポンプダウンを自分で行う手順の解説に移る前に、まずは室外機の部位について理解を深めましょう。※手順だけを知りたい方は、次の手順編の解説まで読み飛ばしてください。
下記はポンプダウンを自分で行う際に理解しておきたい室外機の部位を表した図です。
なお、2分菅とは細い方の銅管で、3分菅は太い方の銅管となります。間違いやすいので注意してください。
また、ポンプダウンを行う際は、バルブとサービスポート部分につけられたナットを外しながら作業することになります。
「手順編」の解説では室外機各部位の名称を交えながら、ポンプダウンの方法を解説しますので、保存されることをおすすめします。
ポンプダウンを自分で行う方法~手順編(専門工具不要)~
ポンプダウンは正しい手順で進めないと、冷媒ガスの回収がうまくいきません。準備段階となる冷房運転からポンプダウンの完了まで、順番にやり方を見ていきましょう。
ポンプダウンの所要時間は15分程度を目安にしましょう。時間があまりにもかかってしまうと、コンプレッサーの故障につながることがあります。
ポンプダウンの手順
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ここからは、「初心者でもエアコンを簡単に取り外しできる方法③|ポンプダウン|エアコン買取」の動画を参考に、ポンプダウンを自分で行う方法を画像と一緒に丁寧に解説します。
参考動画「初心者でもエアコンを簡単に取り外しできる方法③|ポンプダウン|エアコン買取」:https://youtu.be/TYKr4DVnW_Y?feature=shared
①冷房の最低温度で運転、または強制冷房運転を約5分行う
まず、エアコンの室内機を冷房を最低温度で稼働させ、室外機のファンが回るのを待ちます。ただし冬場は外気の温度がエアコンの最低温度より低いので、普通に冷房を稼働してもファンが回らないことが多いです。この場合は「強制冷房運転」モードを使います。
多くのエアコンで「応急運転ボタン」を操作すると強制冷房運転が始まります。ただしメーカーや機種ごとにやり方が異なりますので、事前に取扱説明書をよく読んで対応しましょう。
以下に代表的なエアコンメーカーの強制冷房運転の方法を挙げました。
ダイキン |
「運転強制冷房スイッチ」を5秒以上長押しする。停止するときはもう一度同じスイッチを押す。
※詳細は「ダイキンコンタクトセンター」にお問い合わせください。 <問い合わせ窓口> |
日立 |
「応急運転」を5秒以上長押しする。 |
シャープ |
本体を運転中に「応急運転」ボタンを5秒押す。ピッと音が鳴り運転ランプが点滅したら強制冷房運転が開始。 |
パナソニック |
エアコンの前面パネルを開け、「応急運転ボタン」を5秒以上押す。ピッと音が鳴ると強制冷房運転が開始。
参考: |
東芝 |
ボタンがある機種 運転停止中に「応急運転」「強制冷房運転」「自動運転」ボタンを10秒以上押す。 ※ボタン名称は製品によって異なるスライドスイッチがある機種 運転停止中にスライドスイッチを「冷房」の位置に合わせる。参考:東芝製ルームエアコンの強制冷房運転について|日本冷凍空調工業会 |
富士通 |
冷房運転中に「試運転ボタン」を押す。
※詳細はコールセンターへお問い合わせください。 <問い合わせ窓口> 修理・工事・アフターサポート|富士通ゼネラル |
三菱電機 |
応急運転ボタンがある機種の場合 「応急運転ボタン」を1回押す。(1回押すごとに「冷房」→「暖房」→「停止」と切り替わる)その他のタイプについては以下のサイトも参考にしてください。参考:三菱電機製ルームエアコンの強制冷房運転に関するご案内|日本冷凍空調工業会 |
三菱重工 |
本体の電源を入れた後、「強制冷房運転ボタン」を5秒以上押す。 |
コロナ |
ヒーポンインバーター Wタイプ リモコンのふたを開き、「試運転ボタン」を細いもので押す。リモコン液晶の「冷房」という文字が点滅し、強制冷房運転が開始。ヒーポンインバーター N/Bタイプ、インバーター冷房専用タイプ リモコンの「風量設定ボタン」を押しながら「運転/停止ボタン」を押す。リモコン液晶の「c」が点滅して強制冷房運転が開始。参考:コロナ製ルームエアコンの強制冷房運転について|日本冷凍空調工業会 |
②カバーを固定しているビスを外す

- カバーを固定しているビスをドライバーを使って取り外す
- ネジをなくさないように注意
③カバーを取り外す

- 下方向に引っ張りながら、カバーを取り外す
- 先ほど取り外したビスと一緒に作業の邪魔にならない場所に置きましょう
④モンチーレンチを使って2分管と3分管のバブルキャップを取り外す

- モンキーレンチを使って2分管と3分管バブルキャップを取り外します
- 反時計回りにバブルキャップを回しましょう
- ある程度緩めば、手を使って取り外しても構いません
⑤モンチーレンチを使ってサービスバブルを取り外す

- モンチーレンチを使ってサービスバブルを同様に取り外していきます
- サービスバブルも半時計回りに回しながら取り外すようにしましょう
⑥六角レンチ(4mm)を使って2分・3分のバブルを閉める

- 次に六角レンチ(4mm)を使って2分・3分のバブルを閉めていきましょう
- 六角の形がバブルにはまる部分ポイントを探ります
- 六角レンチがはまれば、途中で回らなくなるポイントが来るまで、六角レンチを時計回りに回しましょう
- 2分管のバブルを閉め終えたら、60秒ほど放置したあとで、3分管のバブルを時計回りに閉めてください
⑦六角レンチ(4mm)を使って、冷媒ガスの回収を確認する

- 冷媒ガスが室外機に回収できているか確認しましょう
- 六角レンチをサービスポートに差し込むと、初めは冷媒ガスが抜ける「シュー」という音が鳴りますが、冷媒ガスの回収に成功している場合は、次第にこの音が消えます
※冷媒ガスの抜ける音が聞こえなくなるということは、2分管の付け根から3分管まで冷媒ガスがすべて室外機側に入っていることの証拠になりまます
※参考:ゲージマニホールドを使って冷媒ガスを室外機に回収する方法
ゲージマニホールドという工具を使えば、ガスの圧力を目で確認しながらポンプダウンを進められます。ゲージマニホールドを使う場合は、以下の手順に沿って室外機へ冷媒ガスを回収しましょう。
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サービスポートは低圧側の太い配管で、ゲージマニホールドの低圧側は青色です。室外機のファンが動き始めたら送り側のバルブを閉じます。
室内機に送る冷媒ガスが停止した後、ゲージマニホールドのメモリが下がっていくことを確認しながら冷媒ガスを回収します。針の位置が0以下になったタイミングで、受け側のバルブを閉じましょう。
ポンプダウンを自分で行う方法~道具編~
ポンプダウンは失敗すると事故につながる危険があり、慎重さを求められる作業です。自力で行う場合は入念に準備をしてから始めましょう。必要なものは次の通りです。
- 軍手
- プラスドライバー
- 六角レンチ(4mm)
- モンキースパナ(2本)
- エアコンメーカーの説明書
- ゲージマニホールド(あれば)
ゲージマニホールドはエアコンのメンテナンスの専用工具であり、自宅にない方も多いことでしょう。ゲージマニホールドの購入費用は安くても5000円以上はしますが、冷媒ガスの補充や、真空引きといったポンプダウン以外のエアコンのメンテナンスで活躍する工具です。
普段からよくメンテナンスやDIYを行う方はこれを機に購入をしてみてもよいかもしれません。参考に、ゲージマニホールドのなかでも口コミ評価が高い製品のAmazonページのリンクを記載します。
イチネンTASCO TA123CV-1 ボールバルブ式シングルゲージマニホールドキット:https://amzn.asia/d/aXuiUKA
ただし、ゲージマニホールドは安くても5,000円以上はするため、ポンプダウンのためだけの購入はおすすめできません。ポンプダウンを購入するくらいなら、業者への依頼費用に回す方が合理的です。
自分でやるときは注意!ポンプダウンを失敗すると爆発事故の危険も
ポンプダウンは自力でもできる作業ではありますが、ガスを取り扱う作業なので、手順に漏れや間違いがあると事故を引き起こすリスクもあります。
具体的には、ガス漏れや配管接続の不備に気づかないまま作業を進めてしまった場合、配管内や室外機のコンプレッサー(圧縮機)に空気が混入し、過剰な高圧・高温状態になることで、室外機が爆発(ディーゼル爆発)するおそれがあります。
事故を防ぐためにも、以下のことに気を付けて作業を行いましょう。
- 配管に亀裂が入っていないか確認する
- 配管の接続やバルブの操作、順序が合っているか確認する
以下のページでは、ポンプダウン中に実際に発生した室外機の爆発事故の事例を紹介しています。写真の通り、破裂すると室外機が粉々になるほどの破壊力で、近くに人がいたら大けがを負う可能性が高いです。
少しでも不安を感じたら業者に依頼を
業者への依頼は費用がかかりますが、もし大事故になってしまったら、もっと取り返しのつかないことになります。
破裂しなくてもポンプダウンの失敗で室外機が故障する可能性がありますので、自力でポンプダウンをやり切る自信がない場合は、エアコンの撤去や移設は十分な技術を備えたプロに任せましょう。
ポンプダウン作業のよくある質問と対処法
ポンプダウンの作業にまつわる、よくある疑問やトラブルとその対処法をまとめました。
最初に冷房ではなく暖房で運転してしまった
ポンプダウンをはじめるときには冷房運転を行う必要がありますが、暖房運転にしてしまうと室外機がうまく冷媒ガスを回収できません。圧力差で冷媒ガスを引っ張って回収するので、冷房運転で低圧にしないといけないのです。
暖房運転でポンプダウンを行おうとすると、エアコンの故障や事故につながってしまいます。
ゲージマニホールドをつけている場合には、針がマイナス方向に動くため、暖房運転していたことに気づきやすいでしょう。万が一、暖房運転にしてしまった場合は故障の恐れがあるので、エアコン業者を呼ぶようにしましょう。
冷媒ガスが外に漏れてしまった
バルブを閉めてから配管の接続を外すとき「ブシュー」というガスが漏れ出るような音が出た場合には、ポンプダウンがうまく行われていません。
ポンプダウンに成功している場合には「ブシュッ」と短い音が出ます。
ガス漏れしてしまった場合にやり直すことはできません。エアコンの再設置の際に業者に冷媒ガスを補充してもらうようにしましょう。補充にかかる費用は12,000円~25,000円程度です。
壊れたエアコンはポンプダウンできるの?
壊れたエアコンではポンプダウンができません。この場合はエアコン業者に依頼するようにしましょう。
自分で行う場合には冷媒回収装置が必要になり、購入する場合には100,000円以上かかっていしまいます。レンタルの場合には1日当たり2,000円程で借りることができますが、借りる手間も考えると、エアコン業者に任せた方が手間がかからず楽です。
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